ゲストプロフィール
イタンジ株式会社
代表取締役社長 執行役員CEO
野口 真平氏
早稲田大学卒。在学中に同大学主催のビジネスプランコンテストで優勝、学生向け SNS を企画開発し起業を経験。その後、IT企業に入社し、エンジニアとしてシステム設計を担当。
2014年2月、イタンジ株式会社に入社。 同社でWEBマーケティング、不動産仲介業務、システム開発、管理会社向けシステムのコンサルティング業務、執行役員を経て、2018年11月代表取締役に就任。
野口さんが紹介する3つのツールはこちら
はじめに
ーー御社の事業について教えてください。
弊社は、不動産の賃貸領域に特化したいわゆるプロップテック(Property×Technology)の会社です。2012年の創業時はBtoCの事業が中心でしたが、現在はBtoBの事業がメインになっており、不動産業界のインフラを整えることに取り組んでいます。
不動産業界が抱える大きな課題の一つは、データの構造にあります。不動産会社とエンドユーザーとの間には情報の非対称性があり、たとえば、既に借り手が決まってしまった部屋が不動産ポータルサイトに掲載されたままになってしまう、いわゆる”おとり物件”などの社会課題もあります。弊社では、最新の空室情報を集積したリアルタイムなデータベースを構築することで、そうした課題の解決に取り組んでいます。
BtoCの事業は、ネット不動産賃貸サービスの「OHEYAGO(オヘヤゴー)」を運営しています。BtoBの事業では、多様な不動産業務のDXサービスシリーズ「ITANDI BB+(イタンジビービー プラス)」を、不動産会社様向けに提供しています。
私が代表に就任した2018年ごろから電子申込サービスをスタートさせたのですが、2022年5月の宅建業法改正に伴う電子契約ニーズの高まりもあって、現在の急成長のドライバーとなってくれていますね。
ーー野口さんのミッションについて教えてください。
私のミッションは、いま申し上げたような不動産業界における情報の非対称性をなくすことだと考えています。消費者が、情報の不透明性により不利益を受けることなく住まい探しができるようにしたいです。また不動産業界はまだまだ生産性に大きな課題があるので、不動産企業様には取引を効率的にするという価値を提供したいです。
さらに挙げるなら、人材育成ですね。人材も、不動産業界の課題の一つです。少子高齢化の背景やハードワークの印象もあり、業界全体として人手不足は大きな課題になっています。でも、衣食住の一つである「住」を扱うわけですから、実はすごく重要な仕事なんです。
賃貸不動産業界は、約90%の企業が社員数4名以下と小規模な企業が多く、ITツール導入やDX人材の採用に十分な予算をとることが難しい状況です。私は、不動産業界に精通し、デジタルにも強い、プロップテック業界のモデルケースになるような優秀な人材をどんどん育成し、また、中小規模の不動産会社様でも活用いただけるITツールを提供することで、業界全体のDX推進に貢献していきたいと思っています。
Miro
物事を起案するときなどに使っているのが、オンラインホワイトボードのMiroです。リモート会議をしながらMiroを開いて、思いついたアイデアをその場で書き込んでいくような使い方をしています。
社内会議の相手は、開発チームや事業企画チームのメンバー、特にプロダクトマネージャーが多いですね。新しいプロダクトを考え始める初期の段階で、構成やアーキテクチャをMiroを使って図に描き共有しています。
ーーオフライン環境下でもホワイトボードはよく使われていたのですか?
かなり頻繁に使っていました。弊社はソフトウェアの会社なので、アーキテクチャに関する議論はすごく大事です。
データがどこからどこに出ているかであったり、どのサービスがどんな顧客に使われているかという関係値の整理であったり。それを言葉だけで伝えようとすると、脳で処理しなければいけない情報量が多くなってしまいますが、ビジュアルにすると伝達がスムーズで効率的になります。
リモート会議が多くなってくるにつれて、ホワイトボードを使えなくて不便だな、話しづらいなと感じていました。そんなときに、ほかの人がMiroを使っているのを見て、便利そうだったので自分でも使い始めました。
ーーMiroのどんなところが気に入っていますか?
カーソルを動かすと、その動きが捕捉されるので、画面共有をしているメンバーにも見えるところと、編集している過程をリアルタイムで共有できるところです。
リモート会議では、言葉だけのやり取りだと、どうしても‟空中戦”になってしまいますが、Miroを使うことで、いま何にフォーカスをして話しているのかが分かると、話がいっきに早くなります。
視認性の観点では、Googleスライドを使うという選択肢もありますが、デザイン性が必要になってくるんですよね。分かりやすくしようとして丸や四角のフレームを組み合わせたりしていると、それだけ時間もかかってしまう。その点、Miroは操作性が高いですし、オンラインでスピーディーに話を進めていくのに適したツールだなと思います。
- Q.どんなときに使っているか
- 社内のリモート会議で、プロダクトの構想などを話し合うときに使っています。
- Q.気に入っている機能
- カーソルの動きやボード上の編集過程を、画面共有しているメンバーがリアルタイムで見られるところ。言葉だけの会議よりスピーディーに議論が深まります。
- Q.おすすめの企業
- 一言で言うなら、リモート会議が多い企業ですね。その中でも、ソフトウェアなどのプロダクトを開発している企業や、ブレストに対するプライオリティが高い企業におすすめです。
nomad cloud
nomad cloudは、不動産仲介会社の営業業務をサポートする顧客管理システムです。弊社内ではBtoC事業を展開しているOHEYAGOのチームが使っています。
仲介会社がお客様(エンドユーザー)に物件を提案をする際、従来は個別にメールを送ったりしていて、非常に手間がかかっていました。nomad cloudでは、お部屋探しをしているお客様に対してチャットやLINEで迅速なコミュニケーションが可能です。また、希望条件に合う物件情報を自動的に配信する機能があります。つまり、顧客管理システムであると同時に、MAツールでもあるんです。
お客様としては、新たに何らかのアプリをインストールする必要はなく、LINEで友だち追加をすればいいようになっています。そうすることで、仲介会社からLINEでお部屋の提案を受け、新着物件を見逃さないようになっています。
ーー顧客対応がスムーズになることで、改善されたことはありますか?
一般的な仲介会社は残業が非常に多くなりがちなんです。その日のうちに対処しなければならない業務が多く、繁忙期は特に大変です。
しかし、nomad cloudを導入いただいた仲介会社様からは「残業がなくなった」、「それなのに反響来店率があがった」という声をよくいただきますね。弊社のOHEYAGOチームも残業をほぼしていません。
顧客対応がスピーディーになったおかげで、お客様からの口コミで「的確で素早い」と高い評価をいただいています。
ーー顧客対応の自動化以外に、どのようなポイントがありますか?
クラウドシステムなので、複数人での情報管理に適しています。お客様とメールで連絡している場合、やり取りの内容を当事者以外に共有することは結構大変ですよね。送信する際に、いちいちCCに入力しなければいけません。
nomad cloudの場合は、お客様から返事が来ると自動的にタスク化され、複数人で共同で対応することが可能です。誰も返事をしないままになっていると、「タスク漏れが発生している」という通知が来るので、対応漏れがなくなり業務が円滑に進み、お客様に素早く必要な対応が可能です。
- Q.どんなときに使っているか
- OHEYAGOの事業部で、顧客管理やお客様への物件情報の提案などに使っています。
- Q.気に入っている機能
- お客様とのやり取りに複数人で共同して対応できること。対応漏れがなくなり、業務の効率化、残業の減少につながるので、顧客満足度をアップすることができます。
- Q.おすすめの企業
- 賃貸の仲介会社様すべてです。特に、人手不足で悩んでいたり、売上・反響来店率を増やしたいと考えていらっしゃる仲介会社様には強くおすすめしたいですね。
電子契約くん
電子契約くんは、不動産の賃貸取引に特化した電子契約システムです。こちらも弊社が開発、提供しており、もちろん弊社内でも活用しています。業界最大手の大東建託グループ様を含む450社以上の不動産管理会社様にご契約いただいています。
活用が進んでいる背景として、2022年5月に宅地建物取引業法の改正法が施行されたことが挙げられます。以前は、賃貸借契約を締結するために重要事項説明書および賃貸借契約書の書⾯交付が必要だったため、対⾯や郵送でのやり取りが必要だったんです。
しかしこの法改正によって、重要事項説明の⾮対⾯化や書類の電⼦交付が可能となり、賃貸借契約のオンライン完結が実現しました。電子契約くんは、こうしたニーズに対応したサービスで、いわばクラウドサインの賃貸版と考えていただければ分かりやすいと思います。
不動産業の契約は、家主と入居者だけではなく仲介会社や時には保証人も含めた複数者間契約となり、フローも特殊です。また、保証会社、保険会社との連携などの必要性も生じてきます。そうした不動産特有の契約業務をまとめて管理できるのが、電子契約くんの強みです。
導入することで、署名押印のために不動産店舗に行く必要がなくなり、お客様も不動産会社の担当者も自宅にいながらにして、契約を完結できます。また、重要な契約書面を紙で保管する必要もなくなります。不動産事業者様の多様な働き方に貢献していけるサービスです。
ーーお部屋探しをしている人にとっても便利なサービスですね。
やはり、「いちいち不動産会社の店舗まで行かなくていい」というメリットは大きいですよね。「電子契約くん」に連携する入居申込サービスについてアンケートをした際は、エンドユーザーの75%超が「紙書類よりもWEB上で入力するほうがいい」と答えています。
不動産関連の契約書類は、とにかく量が多いです。電子契約くんを使えばまるごとスマホに情報が収まり保管もできます。私自身、書類仕事は苦手なほうなので、スマホで情報が集約できるのは非常に便利だと思っています。また、複数人の関係者間を郵送したり、記入ミスによる返送なども煩雑です。印刷や郵送・保管コストの削減にも貢献することができます。
ーー電子契約くんに対する不動産会社からの反響はいかがですか?
ありがたいことにすごく大きな反響をいただいています。現在、契約社数は約450社で、リーシング・マネジメント・コンサルティング株式会社による調査「2022年における仲介会社アンケートから見る賃貸不動産マーケットの最新トレンド」によると、電子契約を行ったことのある仲介会社様の半数近くは当社の「電子契約くん」を利用いただいているそうです。これは、数年前から電子申込のサービスを拡充してきたことが生きていますね。
- Q.どんなときに使っているか
- BtoC向けのOHEYAGOチームが、顧客との賃貸借契約締結時に活用しています。
- Q.気に入っている機能
- 煩雑な署名押印・郵送が不要になるところ。大量の契約書類を、紙ではなくスマホの中で保管、確認できるところ。
- Q.おすすめの企業
- すべての不動産会社様ですね。電子契約くんの導入でリモートワークがしやすくなる面もあるので、人手不足にお悩みで、リモートワークで業務効率化を図りたい不動産会社様などにもぜひおすすめしたいです。
電子契約くんの公式サイトはこちら
https://lp.itandibb.com/denshi-keiyaku/
編集後記
不動産業界のIT化を牽引しているイタンジの野口さん。お話を伺うと、ただシステム化することで非対面の実現や手続きの効率化を推進する、ということだけではないことが印象的でした。
システムを整備することで、情報の格差をなくして透明性を上げたり、業界の働き方をより良くし、対面でやるべきことにフォーカスできるようにしたりする。そして業界全体をよくしていこうという大きな視点で事業を進められる姿に、今後もっと「住」が面白くなる予感がして、わくわくしました。
また、どのような業界においても、システム化によって企業と顧客の間での情報が公平になったり、働く人がもっと働きやすくなったりするような社会の実現に貢献できるよいと思いますし、引き続きITトレンドでもご支援していきたいと思います。
野口さん、お忙しい中、ご協力いただきありがとうございました!
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