ゲストプロフィール
xID株式会社
執行役員 兼 プロダクト開発部 部長
三浦康司氏
明治大学卒業。ハードウェアやSaaSサービスの開発に従事し、数々の新製品や新規事業を立ち上げた実績をもつ。また米国や英国にてテクニカルサポートマネジメントとして、最前線の現場オペレーション経験も有する。xID参画後は、コアプロダクトxIDや新規サービスの設計開発に加えサービスとオペレーションを連携させる役割としてプロダクトマネージャーを担当。事業の加速とスケールにコミットする。
三浦さんが紹介する3つのツールはこちら
はじめに
ーー御社の事業について教えてください。
弊社は2012年創業のITベンチャーで、主に自治体をターゲットとしたGovernment×Technology企業です。現在はxID(クロスID)とSmartPOSTという2つのコアサービスを提供しています。
弊社が掲げているミッションは、「信用コストの低いデジタル社会を実現する」というものです。デジタル化が進み便利になる一方で、オンラインでつながっている人どうしの信用をどう担保するかが重要になってきますよね。情報のやり取りや取引をする相手を信用していいのか、ということを確認する必要がある。それにかかる時間やお金を、弊社では「信用コスト」と呼んでいます。このコストを最小化するサービスを提供しよう、というのが弊社のミッションなんです。
xIDは、マイナンバーカードを用いてデジタルIDを作成するサービスです。名前と住所、性別、生年月日が確実に保証されたIDとして、さまざまなサービスの認証・認可などに活用できます。
もう一つのSmartPOSTは、自治体から住民に対するさまざまな通知をデジタルで送ることができるサービスです。現状、ほとんどのお知らせは郵送されてきますが、費用的にも時間的にも大きなコストが発生します。SmartPOSTでは、xIDのアカウントを持っている人のスマホに通知を送ることができ、安価に、かつ簡単にお知らせを届けられるようになります。
ーー三浦さんのミッションについて教えてください。
端的に言えば、弊社が持っている2つのコアサービスをしっかりと進化させていくことだと思っています。
プロダクト開発部のマネージャーとしては、18名ほどのチームメンバーと協調しながら、より良いサービスをつくりあげていくことがミッションです。また、プロダクトマネージャーという立場で、プロダクトの価値を向上させて、高い収益を達成することをミッションにしています。具体的には、サービスの開発から運用にかかる部分の意思決定から実行運用までの責任を担っています。
「Done is better than perfect」が座右の銘なので、プロダクトの世界観をビジネス側のチームと一緒になってつくり、開発側と共有するといった橋渡し役を担いながら、サービスをスケールさせていく。そうして一日も早く、より良いサービスを提供していきたいと思っております。
Digital Sign
雇用関係の契約やクライアント様との契約において、電子契約サービスのDigital Signを使っています。同種のサービスが多々あるなかでDigital Signを選んだのは、費用の面から見てもかなり安く抑えられることだけでなく、主に2つの理由があります。
1つ目は、すごくシンプルなつくりになっていて、直感的に使えることですね。契約を交わす際は、弊社から相手方に対してDigital Signを使いたいとお伝えしていますが、私どもは使い慣れていても、相手方は初めて使うというケースも当然あるわけです。そうしたときに、使い方が分かりにくいと相手方が困ってしまう可能性があるので、UIやUXがシンプルであることは大事ですよね。
2つ目は、ちょっと難しい話になってしまうのですが、電子契約では立会人型の電子署名が主流となっているなかで、Digital Signでは当事者型の電子署名も選択できるところに魅力を感じたんです。
ーー電子署名の立会人型、当事者型とは、どのようなものですか?
立会人型は、契約をする当事者ではない第三者が当事者の指示にもとづいて代理で電子署名する方式を指します。
たとえばAさんとBさんが、X社の電子契約サービスを使って契約をする際、立会人型の場合は、実際に電子署名をするのはAさんやBさんではなく、X社なんです。AさんとBさんはX社から付与されたIDを使ってログインするので、ログインしている人物はAさんとBさんであると考えて間違いない、ということが前提になっています。
そのため、AさんとBさんの意向に基づいて、X社が代わりにサインをする。もちろん、Aさん、Bさん以外の誰かがログインしている可能性はありますが、それは規約で禁じられているのでなりすましは起こり得ない、という建て付けです。
一方で当事者型の場合は、当事者であるAさんとBさん、それぞれ本人のみが電子署名する方式です。ログイン時の認証の段階で、これからログインしようとしている人物が間違いなく本人であることを確認する仕組みになっているんです。
自分自身が署名しない立会人型ってちょっと微妙だな、という思いがありましたし、当事者型のほうは、確実にその人にIDを割り振るという哲学がxIDとすごくマッチしている。そうしたことも理由となって、両方の方式をサポートしているDigital Signを選びました。
- Q.どんなときに使っているか
- 社内においては雇用に関する契約の際に使っています。また、クライアントとの契約時にも、先方に不都合がなければDigital Signでの契約をお願いしています。
- Q.気に入っている機能
- シンプルなUI/UXで直感的に使えるところですね。書面の閲覧などの権限設定も簡単ですし、デジタルに精通していない方でもすぐに使いこなせます。
- Q.おすすめの企業
- 契約に関するフローが完全に構築されている大企業よりは、ベンチャー企業に向いていると思います。これまでは成長スピードを重視してきたけど、これからは契約まわりの整備にも力を入れていきたいと考えているような企業にとって、手始めのツールとしてDigital Signはおすすめですね。
Digital Signの公式サイトはこちら
https://services.digitalsign.jp/
Miro
オンラインホワイトボードツールのMiroに関しては、私が管轄しているプロダクト開発部と弊社全体とで、それぞれ異なる使い方をしています。
まずプロダクト開発部では、最初のステップとしてラフなアーキテクトを設計する際にがっつり使っています。オンライン上でメンバーが集まり、どのようにサービス間を連携させるかなどを議論しながら、Miroにフローを描いていきます。
最初の設計段階では、みんなのイメージを可視化するのが大事です。もちろん言葉でも伝えますが、どうしても行間をそれぞれの想像力に頼ることになるので、あとになって「こんなはずじゃなかった」という結果になってしまうことがあります。でも、お絵描きしながら議論すれば、「この線の中って、どんなデータを送ろうとしてるの?」「このタイミングで大丈夫?」といったように、目視で確認しながら進められるようになります。
会社全体としては、業務の仕組みやフローを可視化するためのツールとして使っています。たとえば、新たなファンクションについてPRする場合、リリースのドラフトをつくる人、それを承認する人、最終的にリリースする人といったように部署をまたいだ仕事になりますが、そのフローをMiroでしっかりと組むようにしています。そうすることで、新しい人が入ってきても「このフローの通りにやってくださいね」と言えますし、いわば業務マニュアルとしてMiroを活用しているんです。
ーーどのような経緯でMiroを導入されたのですか?
私が弊社にジョインしたのは2021年9月で、ちょうどその時期からブレストに活用できるツールをいろいろと試し始めました。各ツールに長所と短所があり、うまく可視化できるものがなかなか見つかりませんでしたが、Miroを試してみたら「これでいけそうだね」と。まず開発部で導入し、2022年に入ってから全社的に使う流れになりました。
弊社はほぼ100%リモートワークで、各メンバーは日本各地に散らばっていますし、ベトナムに弊社専用のオフショアチームもいます。常に議論はオンラインで行っていますので、Miroは大いに活用していますね。
- Q.どんなときに使っているか
- プロダクト開発部においては、開発の初期段階で、みんなで議論しながらラフなアーキテクトを設計するときに使っています。また会社全体として、業務フローを可視化するのにも活用しています。
- Q.気に入っている機能
- 複数人が同時にエディットできるところが気に入っています。しかも、編集はほとんど遅延なく反映されますし、名前付きのカーソルがリアルタイムで表示されるので、誰が何を編集しようとしているのか、どこを見て話しているのかが分かります。直感的に使うことができるので、ツールの使い方で頭を使うことなく議論に集中できるのがいいですね。
- Q.おすすめの企業
- リモートワークを導入している企業はもちろん、コミュニケーションを大事にしている企業やチームにも向いていると思います。絵に描くことで同じイメージを共有しやすくなり、コミュニケーションがワンランク上のものになりますから、チームとして何かをつくりあげたり、ディスカッションしたりすることを重視している企業におすすめですね。
Notion
弊社では、業務に関する全ての情報をNotionに集約するということが基本的な方針になっています。ディスカッションの経過を記録した議事録のほか、開発の状況やスケジュールなども全部、Notionに集約するんです。そうすることで「情報は必ずNotionの中にある」という大前提ができるので、情報へのアクセシビリティが上がり、結果的に仕事の効率が高まります。
開発部門のプロジェクト管理に関して、Jira SoftwareやRedmine、Backlogなど、専用のツールがいろいろとあります。そちらのほうがエンジニアが直感的に使えますし、間違いなく速いです。でも、そうした専用ツールを使うことで、「開発チームは今、何をつくってるんだろう」というのが見えにくくなり、ビジネスチームとの間に溝が生まれやすくなる面もある。そういう溝が生まれないようにするために、弊社ではあくまでNotion上でタスクを管理しています。
ーー情報のスムーズな共有を重視されているんですね。
弊社は、SaaSを提供している以上、開発ドリブン型の企業だとは思います。ただ、プロダクトをつくることだけではなく、サービスとして提供することが会社の使命だと考えると、開発部とセールスやPRなどを担う部門との連携、スムーズなコミュニケーションは欠かせません。また、そうした社内の連携がとれてこそ、お客様サイドのリーチャビリティやスピードも上がってくると考えています。
「Done is better than perfect(完璧を目指すよりまず終わらせろ)」というマーク・ザッカーバーグの言葉がありますが、今できるベストなソリューションを提供していくという姿勢は私どもも同じです。それによって喜んでくれるユーザーがいるのなら、とにかく出す。そのうえで、課題が見つかったらすぐに手当てをしていく。
そうした作業を繰り返しながら、ユーザーの幸福度を上げていきたいと思います。だからこそ、情報をスピーディーに共有することは大切。そこにNotionを活用しています。
- Q.どんなときに使っているか
- 全社的に、業務に関わる全ての情報をNotionに集約することにしています。
- Q.気に入っている機能
- 自由度が高いところが良いですね。Notionは基本的にはデータベースだと言えますが、このデータベースをどう構築するか。自分たちのニーズに合わせて、非常に自由度高くアレンジできます。
- Q.おすすめの企業
- 社内の情報の集約ができていない企業におすすめです。成長スピードをさらに高めていくうえで、情報集約ができていないことがボトルネックになるという課題意識を抱えているベンチャー企業などには、すごく向いていると思います。
《Notion》のPOINT
- ドラッグアンドドロップでドキュメントを管理
- オリジナルのタグを設定可能
- ほかのツールの内容をNotion内に埋め込み可能
編集後記
三浦さんのインタビュー全体を通して、イメージしやすい具体的な例を挙げながら説明いただき、なんてわかりやすい話の仕方なんだろう!というのが印象的でした。イメージを共有すること、構造を明確にしていくこと、誰でもわかるように整理しておくこと、などツールの紹介内容とも関連して思考も整理されていて、きっと三浦さんのチームは仕事のスピードがとても早いだろうなと、納得しました。
また、電子契約には立会人型と当事者型があるとのことですが、今まで契約を交わす際に全く意識したことがなかっただけに、非常に興味深かったです。
さらには、Miroを業務マニュアルとして活用する方法など、皆さんの職場でもすぐに取り入れられそうな内容が見つかったのではないでしょうか。
三浦さん、ご協力いただきありがとうございました!
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