
内部統制における文書管理の重要性
日本の企業は金融商品取引法(令和元年6月14日公布)において、内部統制体制の構築が求められています。金融商品取引法では、以下の4つを内部統制の目的として定められています。

- ■内部統制の目的4つ
- ・業務の有効性と効率性
- ・財務報告の信頼性
- ・関連法規の遵守
- ・資産の保全
では、文書管理と特に関わりが深いとされる「関連法規の遵守」と「資産の保全」について見ていきましょう。
関連法規の遵守
金融商品取引法で定められる目的のうち、関連法規の遵守において文書管理は重要な役割を果たします。
企業やその構成員が法律に反した行動をとると、社会から厳しい批判を受け、企業の存続自体が危うい状況に陥ります。逆に、適切に法令を遵守していれば社会的信頼を獲得でき、企業の経営や業績によい影響を与えるでしょう。
企業が法律を遵守していると示すには、そのための文書が必要です。説明責任を果たさなければ、たとえ法律を遵守していても疑惑の目を向けられます。
つまり、文書管理は企業が法律を遵守し、そのことを社会に向けて発信するために欠かせないでしょう。
資産保全
内部統制の目的の1つは資産の保全です。この目的を果たすうえでも文書管理は重要な役割を担います。
資産とは、商品や設備のような有形のものに限りません。知的財産や顧客情報など、無形の資産も存在します。そして、後者における資産保全のためには適切な文書管理が欠かせません。
外部からの盗難や改ざんはもちろん、内部犯行による流出なども防がなければならない脅威です。特に、現在は多くの無形資産が電子データとして管理されています。紙の書類とは異なる管理体制を築かなければ、簡単にデータが流出するおそれがあります。
また資産保全とは、自社が抱える資産を守ることのみではありません。不正な手段で情報を取得せず、個人情報などを適切に処分することも求められます。
これらの点も踏まえて文書管理体制を構築し、自社の資産の健全性を保たなければなりません。
内部統制の要件を満たすためのポイント

では、内部統制を図るにはどのようなポイントに留意すればよいのでしょうか。
6つの基本要素を意識する
金融商品取引法では、内部統制の目的を達成するための基本要素として以下の6つが定められています。これらを満たすことで適切な内部統制が実現するとされています。
- 統制環境
- 組織内の気風を決める環境のことで、ほかの基本要素の土台となる。従業員の倫理観や誠実性、管理の方針、職責など。
- リスクの評価と対応
- 目標の達成を妨害する要因を分析、評価し、その対策を検討すること。
- 統制活動
- 経営者の指示が適切に実行されるための方針や手続き。職責の付与や職務の分掌など。
- 情報と伝達
- 組織の構成員がそれぞれの職務を果たすうえで必要な情報が、速やかに伝達・理解される体制を構築すること。
- モニタリング
- 内部統制が適切に行われているかどうか、継続的に監視・評価する体制を構築すること。
- ITへの対応
- 業務の実施において必要な社内外のIT環境に対応するための、方針の決定や手続き。
証拠書類をあわせて保存する
内部統制について作成した記録は、適切に保存しましょう。
保存方法や期間、範囲は企業が法令などを基にしてそれぞれ判断する必要があります。金融商品取引法上では有価証券報告書と添付書類の縦覧期間が5年のため、それと同程度の期間保存が望ましいです。
必要に応じて第三者が検証できるよう、証拠書類とあわせて保存しましょう。
内部統制の要件を満たす方法
内部統制において、適切な文書管理が不可欠だとわかりました。では、どのような文書管理をすれば適切だといえるのでしょうか。
昨今のビジネスでは日々大量の書類が作られており、適時把握可能な状態で保存するのは至難の業といえるでしょう。
そこで有効なのが文書管理システムです。文書を電子化し、効率的な保存・検索・編集などを可能にするITツールです。
それらの機能によって実現するのは、資産の保存だけではありません。ユーザーごとのアクセス権限設定などにより、法令の遵守も実現します。書類が多すぎて人力での管理が困難だと感じている企業は、文書管理システムによって大きなメリットを得られるでしょう。
内部統制のために、適切な文書管理を!
内部統制を実現するには文書管理体制を見直す必要があります。特に、内部統制の目的のうち「関連法規の遵守」「資産の保全」においては文書管理が重要な役割を果たします。
内部統制の要件を満たすには、以下のポイントに留意しましょう。
- ■6つの基本要素を意識する
- ■証拠書類をあわせて保存する
また、文書管理システムの導入により管理が効率化します。以上を踏まえて、適切な文書管理を行いましょう。
