中小企業における在庫管理の重要性
在庫管理には膨大な手間がかかるため、特に中小企業ではおろそかになりがちです。しかし、在庫管理は売上に直結します。
たとえば、受注した際に倉庫に行かなければ在庫が分からないケースを思い浮かべてみましょう。すぐに倉庫に出向ける場面なら良いですが、そうでない場合は一度受注を保留しなければなりません。その結果、取引を逃す可能性もあります。
もし在庫管理が適切にできていれば、このような販売機会損失は発生しません。
また、在庫量が分からなければ、その量を踏まえた発注を行えません。最低限の在庫を確保できなかったり、逆に過剰な在庫を抱えたりするおそれがあります。
このようなリスクを減らすためにも、リアルタイムに在庫の状況を把握することが大切です。
中小企業が効率的に在庫管理を行う方法
中小企業は限られた労力で在庫管理を行わなければなりません。そのために知っておくべきなのが効率化の方法です。ここでは3つの方法を解説します。
販売管理と紐づける
販売管理とは、商品の販売に伴う在庫やお金の動きを管理することです。具体的には、商品ごとや取引先ごとに粗利益を計算したり、在庫の回転日数を計算したりする作業を指します。この販売管理と紐づけることで、在庫管理の手間を減らせます。
単純な例を挙げると「販売記録によると毎月15個程度売れているから、来月も15個仕入れよう」と考えることです。販売管理によって明らかになっている情報を基に仕入量を考えることで、在庫の不足や過剰在庫の発生を避けられます。
そのほか、粗利益をもとにした取扱い商品の見直しや、需要の変動を踏まえた柔軟な仕入も実現するでしょう。
不良在庫の処分を迅速に行う
処分するのはもったいないからと、不良在庫を保持しておくのはよくありません。維持するのにかえってお金がかかることになります。売れる見込みがないのであれば、潔く処分しましょう。
その際に重要なのは、どのくらいの期間売れていない在庫を不良在庫と見なすのか、線引きをしておくことです。その期間を超えた在庫は廉価販売や返品をして手放しましょう。
無駄な在庫が減れば、その分売れ筋商品を保管するスペースや労力を確保でき、企業の利益につながります。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムとは、在庫管理を支援するITツールのことです。たとえば、ハンディターミナルとバーコードを使えば、ピッキングによる在庫の変動を自動で記録できます。人の手で在庫の数を数えて記録するより正確で、労力もかかりません。このようなツールの力を借りることで在庫管理が効率化します。
ただし、中小企業においては、初期費用が数百万円もかかるような大掛かりなシステムの導入は現実的ではありません。そのため、よりコンパクトに利用できるクラウド型の在庫管理システムが適しています。
クラウド型とは、インターネットを介してサービスを利用する形態です。自社でサーバを用意したりソフトをインストールしたりする必要がありません。ネット環境さえあれば場所を選ばないうえ、数万円程度の初期費用から始められるため手軽です。下記の記事はクラウド型の在庫管理システムを紹介しています。気になる方は確認してみてください。
在庫管理に失敗した企業にありがちなこと
在庫管理システムを導入しても、管理がうまくいかないケースがあります。どのような原因で失敗してしまうのでしょうか。
現品管理がされていない
在庫管理システムのメリットは、システム上で在庫の数を把握できることです。しかし、これはシステム上のデータと実際の在庫が一致していて初めて成立するメリットです。
したがって、データと実際の状態を一致させる努力が求められます。在庫の変動を確実にシステムに反映させる体制を構築しなければなりません。
特に気をつけなければならないのが、イレギュラーな在庫の変動です。通常の出荷や販売による変動は記録していても、破損や紛失による在庫変動は見落しがちです。それらを、誰がどのようなタイミングでシステム上に反映させるのか、マニュアルなどできちんと定めておきましょう。
そのほか、単純な数量確認のミスを防ぐために倉庫作業の手順を見直したり、作業環境を改善したりする必要があります。
在庫管理システムの導入が目的になっている
在庫管理システムは在庫管理を効率化するツールです。しかし、あくまで道具であって、導入しさえすれば在庫管理がスムーズになるわけではありません。したがって、導入時にはシステムを有効活用する方法をよく考える必要があります。
導入前の段階から、いつ誰がどのようにシステムを扱うのか明確にしましょう。そして、導入と同時に速やかに新たな管理体制へと移行できる状態を整えておきます。
導入前の準備には手間がかかります。その手間をかける余裕がないと考える中小企業も多いでしょう。しかし、導入に失敗して元の体制に戻すことになれば、もっと大きな労力を要することになります。できるだけ入念にシステム導入の下地を整えたうえで、新たな体制に移りましょう。
中小企業における在庫管理システムの導入事例
実際に在庫管理システムを導入すると、業務はどのように変わるのでしょうか。具体的な導入事例を見ていきましょう。
エクセルから切り替えてデータ入力ミスを削減
アパレル商品やスポーツ用品を扱うある企業は、エクセルですべての在庫を管理していました。受注集計や出荷指示などを、すべて人の手で入力していたといいます。しかし、作業のルールを統一するのが難しかったり、関数が壊れたりと多くの課題を感じていました。
そこで、在庫管理システムの導入を決意。その結果、エクセルデータをシステムに取り込むだけで、それまで人の手で行っていた集計作業の自動化が実現。作業量が減り、残業が激減したといいます。
リアルタイムでデータを共有し生産性を向上
バッグの販売を行うある企業は、自社でカスタマイズしたソフトウェアを使って在庫管理していました。しかし、扱うデータの量が増えるにつれて次第にソフトが重くなり、リアルタイムな情報共有に難を感じていたといいます。
この課題を解決するために、在庫管理システムの導入を決断。システム導入後は、受注・在庫データの管理機能によって在庫の確認がスムーズに。その結果、入出庫の作業や人員配置が効率化し、生産性が高まったといいます。
また、データを基にした発注が実現したため、社長は発注作業をほかの従業員に任せることが可能に。その分、より重要な業務に割く時間や労力を確保できるようになったといいます。
中小企業における在庫管理をシステムで効率化しよう!
在庫管理は中小企業にとっても重要な業務です。限られた労力で効率よく行うためには以下の方法があります。
- ■販売管理と紐づける
- ■不良在庫の処分を迅速に行う
- ■在庫管理システムを導入する
また、在庫管理に失敗しないために、以下の点に気をつけましょう。
- ■現品管理を徹底する
- ■在庫管理システムを活用する体制を整える
以上を踏まえてシステムを導入し、在庫管理を効率化しましょう。