【事前準備編】チャットボットの作り方
チャットボットを作る前にいくつかの準備をしなければなりません。4つのステップに分けて説明します。
1.作成目的を明確にする
チャットボットに限ったことではありませんが、ITツールをなんとなく導入し、成果が得られずじまいになるケースがあります。目的を明確に定めていなかったために、せっかくのツールを上手に活用できないのです。
このような失敗を防ぐために、まずは作成目標を明確にしましょう。具体的にどの業務に潜むどのような課題をチャットボットによって解決したいのかを明らかにします。
たとえば、「顧客の疑問を解決して離脱率を下げる」「自己解決を促進して問い合わせ電話数を削減する」などが考えられるでしょう。そして、目標を具体的な数値で表現します。実際に運用する際、目標数値と現状を比較することで、達成度を客観的に測定できるからです。
2.チャットボットの種類を決定する
チャットボットは主に3つの種類があり、そのタイプによって作成方法も異なります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
- 選択肢型
- 事前に設定したシナリオどおりにチャットボットが顧客対応をするタイプです。基本的には、設定した選択肢をチャットボットが顧客に提示し、顧客がその中から該当するものを選ぶ形で会話が進行します。
- 辞書型(AI)
- こちらは顧客が入力したフリーワードに対し、関連性の高い情報を提示することで問題解決を支援するタイプです。AIによりフリーワードに対応している分、選択肢型よりも柔軟な受け答えができます。ただし、あくまで事前登録した情報をそのまま引き出しているに過ぎず、自然な会話はできません。
- 機械学習型(AI)
-
- 機械学習によって過去の会話を分析・学習し、オリジナルの会話を展開します。データが蓄積されるほど賢くなり、自然な会話も行えます。ただし、十分な機械学習を行わなければ精度の高い自然な会話にはなりません。
上記のうちもっとも作り方が平易なのは選択肢型です。ついで辞書型、機械学習型の順に難しくなります。顧客情報を入力してもらう申請系のサイトや簡単なFAQであれば、選択肢型や辞書型で事足ります。しかし、人間の代わりをさせたいのであれば機械学習型が必要になるでしょう。目的に適したタイプを選ぶことで、コストを最小限に抑えられます。
3.作成方法を決定する
チャットボットの作り方は、「ゼロから自社開発する場合」と「チャットボット作成ツールを利用する場合」で違います。それぞれの作成方法を詳しく解説します。
自作
自社でチャットボット開発をする方法です。ゼロから作れるため自由度が高く、プログラミングが可能な人材を確保できれば無料で始められます。しかし、Web系の言語であるPythonやJavascriptに関する専門知識が求められるうえ、運用の負担も考えると気軽な方法とはいえません。
専用ツールの利用
近年、専門知識がなくても専用のチャットボット作成ツール(開発ツール)が販売されています。基本的に誰でも扱えるため、専門知識を持つ人材を確保できなくても問題はありません。ツールの利用に費用がかかりますが、人件費が安く済むことを考えるとかえってローコストになる可能性もあります。さまざまなツールが存在するため、導入目的や予算に適したものを選定することが大切です。
4.過去のFAQやニーズを調査する
チャットボットには、ユーザーからよく寄せられる質問とその回答メッセージを記憶させる必要があります。特にシナリオ型や辞書型では、記憶させた質問・回答情報がそのままチャットボットの品質を決定します。
過去のFAQデータを分析し、寄せられた質問とその頻度を整理しましょう。また、アンケートをとるほか、最前線で問い合わせ対応をしている現場のスタッフに協力を仰ぐことも有効です。こうして得られた質問のデータと、その回答をチャットボットに登録します。
【実践編】チャットボットの作り方
次はチャットボットの作り方を詳しく解説していきます。
選択肢型:質問と回答・シナリオを作成する
シナリオ型チャットボットとも呼ばれ、事前準備で用意した質問と回答のデータをシナリオとして組み込んでいきます。顧客が迷うことなく選べるよう、適切な選択肢をチャットボットに提示させましょう。
例えば、ECサイトに登録している住所を顧客が変更したい場合を考えてみます。最初に「登録情報について」「料金について」「申込について」など、大まかな問い合わせ内容を示す選択肢をチャットボットで表示するよう設定しましょう。
顧客は「登録情報について」を選ぶでしょうから、続いてはその詳細を示す選択肢を提示します。「ID・パスワードについて」「クレジットカードについて」「住所変更について」などが考えられるでしょう。顧客は「住所変更について」を選ぶはずなので、変更方法の解説や手続きページへの案内を応答メッセージとして表示し課題解決を支援します。
一度に提示する選択肢は5つまでに抑えるのが基本です。また、選択の回数も5回以内に抑えられると理想的といえます。
辞書型(AI):キーワードに対する回答を作成する
文章の解釈はAIが行ってくれるため、人間は選択肢を作らなくてもよいです。必要なのは、AIが読み取った質問に対する適切な回答を作成・登録することです。
AIは顧客が入力したフリーワードに対し、いくつかのフラグを見出します。たとえば「支払い方法を変更したい」と入力されれば、AIは「支払い方法」「変更」といったフラグを抽出するのです。そして、これらのフラグに紐づいた回答情報を提示します。
もし「支払い方法」「変更」のフラグに対応した回答が登録されていなければ、チャットボットは何も提示できません。チャットボットが常に回答を提示できるよう、フラグと紐づけた回答を人の手で登録する必要があります。
機械学習型(AI):学習データを用意してAIに学習させる
機械学習型は、質問の解釈も回答となる文章の作成もAIが行うため、人間が登録する必要はありません。人がやるべきことは、AIが適切な回答を作れるように学習データを与えることです。
自作する場合は、PytorchやKerasといった機械学習ライブラリにデータを与えて学習させます。AIチャットボットとして製品化されているものを導入する場合は、その製品の仕様に従ってデータを与えましょう。
失敗しないチャットボットの運用方法
チャットボットを作成したら、まずは動作確認を行いましょう。多くのチャットボットツールには、テスト質問をして動作確認ができる機能が備わっています。チャットボットに質問してみて、作成したシナリオや機械学習させた内容どおりに適切な回答が返ってくるか確認しましょう。
最初のチェックで問題がなければ、WebサイトやSNSといった実際のプラットフォーム上に実装します。
実装後は修正や改良を行いましょう。チェックの段階では問題がなくても、実装後にはさまざまな欠陥や不具合が浮き彫りになります。そのたびにシナリオを見直したりさらなるデータを与えて学習させたりして、チャットボットの対応品質向上を図ることで顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
作り方を知って自社に適したチャットボットを導入しよう
チャットボットを作るには、以下の事前準備が必要です。
- 作成目的を明確化する
- チャットボットの種類を決定する
- 作成方法を決定する
- FAQやニーズを調査する
また、実際に作る際には種類に応じて以下の作業が求められます。
- 選択肢型:質問と回答のシナリオ構築
- 辞書型:キーワードに対する回答の作成
- 機械学習型:学習データの用意
以上の作り方を踏まえ、自社に最適なチャットボットを導入しましょう。