在庫管理とは
在庫管理とは、自社が保有している在庫の数やその出入りを把握することです。これを徹底することで無駄を省くことができます。逆に在庫管理を怠ると企業の資金を大きく圧迫することになるでしょう。
在庫管理を行う目的
在庫管理はなんのために行うのでしょうか。在庫管理の目的は、過不足なく最適な量の在庫を維持することで企業の利益を最大化することです。
在庫が不足することは販売機会の損失に繋がります。注文があったときに出荷できなければ売上にならないからです。また製造業の場合、原材料や部品が欠品してしまったら完成品が出来上がらず予定通りの出荷ができないことになります。
逆に在庫が過剰になることも企業にとっては良いことではありません。商品は保管されているだけでも保管コストがかかり、期限がある商品であれば保管期間が長いほど、期限切れによる廃棄となる可能性が上がるからです。
日々の入出荷の変動に対応しつつ、過不足のない最適な在庫量をキープすることが大切です。
在庫管理を行う重要性
在庫管理を怠るとさまざまな問題が生じます。
在庫が増えすぎた場合の問題
- ・在庫維持費の増加
- ・廃棄処分の増加
- ・保管スペースの減少
- ・管理のための人件費・作業の手間の増加
在庫が少ない場合の問題
- ・供給不足によるクレーム
- ・販売機会の損失
- ・材料不足による製品製造の中断
- ・過剰発注
これらのうちどの問題が生じるかは、企業によって異なります。しかしいずれにしても無駄な費用を増やし、利益を損なうことにつながります。逆に適切な在庫管理を行うことでそれらの無駄を省き、利益を大きくすることができます。自社の商品の出入り状況を把握することで、次への戦略も立てやすくなるでしょう。
ところが、この在庫管理は容易なことではありません。だからこそ意識的に管理を徹底することが大切です。続いて在庫管理の課題について見ていきましょう。
在庫管理における課題
在庫管理は大変重要ですが、容易ではありません。その理由は大きく以下の2つに大別できます。
- ■管理方法に明確なルールが存在しない
- ■管理のための情報が充分でない
簿記や会計であれば明確な方法が存在します。教育体制も整っているため、その技術に長けた人材も育成されています。ところが在庫管理についてはそれがありません。
さらに在庫を管理するための情報そのものを管理するのが困難です。いつどれだけの商品がどこに動いたのかを知るためのデータが存在しなければ、把握のしようがありません。そのデータを得るために倉庫の中で膨大な作業をしたり、時間をかけてエクセルにデータ入力をするのもまた簡単ではありません。
このような事情があるため、在庫管理の重要性を理解している企業でさえなかなか手がつけられないでいるのが現状です。
在庫管理を上手に行う仕組みづくり
適切な在庫管理を行うためには、まず仕組みを整えることが大切です。企業に合った仕組みを構築することができれば、一部の人ではなく多くのスタッフが在庫管理を行えるようになり、より業務は効率化するでしょう。
在庫管理のルールを決める
最初に在庫管理のルールを定めましょう。
現品管理のルール
現品管理については以下の4つを意識することが大切です。
これらを総称して4Sと呼ぶことがあります。現品は数を把握するだけでなく、清潔な状態で保管することも重要です。具体的な在庫数の把握については、次のような方法があります。
- ・在庫が陳列されている棚に番号を付ける
- ・その棚の列・段に番号をつける
こうすることで、商品の空間的位置を明確に把握できます。このデータがあれば、数を調べたい商品をすぐに照会できるでしょう。そして、現在の数と出入り数をその都度入力できれば、在庫数を適切に管理できます。
在庫の期限のルール
続いて注意しなければならないのが、期限です。期限には明確なルールを設けましょう。何カ月経過したら破棄するのかをあらかじめ設定することで、その都度在庫の処遇を考える必要がなくなります。そのように迅速な判断ができることで次の一手を打つことができ、資金繰りが安定するでしょう。
業種に応じた管理方法をとる
ある程度の仕組みやルールは前段で紹介した内容を意識すれば作れますが、その際自社に応じて管理方法を取ることが大切です。例えば小売業ならオムニチャネル化などの競争激化により在庫管理の難易度も上がっています。今回は小売業・製造業での管理方法について解説します。
製造業
製造業で重要なのは、「すでに製造に使われ始めた材料(仕掛品)の管理も行うこと」です。これは在庫ですが、手つかずの材料とは別途に扱う必要があります。どれくらいの材料を使い、それにどのくらいの労力を投入したのかを把握することで、次の一手へとつなげられるでしょう。
小売業
小売業で重要なのは、「売れ筋商品の在庫を切らさないこと」です。在庫を切らすと大きな機会損失になります。どの商品が売れ筋であるかを見極めることに加え、売れた量やタイミング、期間などを把握しましょう。それが、次にいくつ発注すればよいのかを判断する鍵になります。
ミスを最小限に抑える仕組みをつくる
在庫管理業務は煩雑になりがちですが、可能な限りミスを減らす仕組みづくりが大切です。例えば、ハンディターミナルなどのツールを使用している場合は間違った操作をすると音が鳴ったり、エクセルで理論的にありえない数値は入力できない、などです。これらはミスを未然に防ぐための仕組みになっています。
在庫管理で完全にミスを無くすことは難しいかもしれませんが、業務インパクトを低減するための仕組みづくりをすることが大切です。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムとは、入出荷などの在庫の動きを追跡しリアルタイムに更新できるシステムです。システムの導入なしではタイムリーに商品の出入りを把握することは困難です。それが確実にできていないと、データ上と実際で商品数が一致しないという問題が生じます。データが信じられなければ、せっかく商品の位置や廃棄までの期間をルールで定めても無駄になってしまいます。
システムを導入すれば商品の数を容易にデータ化できます。バーコードをハンディスキャナで読み込めば、人の手による入力ミスを防げます。信頼性の高いデータを得ることが可能になるでしょう。
在庫管理システムを導入するメリット
在庫管理システムを導入することで、余剰在庫の削減・作業の効率化・在庫状況の見える化ができます。在庫管理システムでは過去のデータを元にこれからの需要を予測することができます。そのため発注のし過ぎに依る余剰在庫を減らすことができます。
在庫管理システム導入失敗を防ぐポイント
システムを導入しても適切に扱うことができなければ意味がありません。失敗を防ぐためには、最初は限定的な範囲でシステム導入することが大切です。特定の商品のみを対象に基本的な使用方法の確認をしてから、徐々に導入範囲を増やしていきましょう。
またこの機会に今まで曖昧になっていた返品などのイレギュラーな在庫変動の管理方法を統一しましょう。システムを導入しても、統一したルールがなければデータと実在庫とで不一致が起こる可能性があります。
仕組み化とシステム導入で適切に在庫管理しよう
在庫管理は明確なルールがなく難しく感じますが、今の管理方法を見直し仕組み化することで売上や経営にも影響します。在庫管理システムは在庫管理の運用を手助けすることができます。興味のある方は、製品を探してみてください。