
倉庫内における熱中症の現状
熱中症とは、体温の上がり過ぎにより発生するさまざまな症状のことです。主に、めまい、頭痛、吐き気などを引き起こします。
熱中症は重症になると死に至るおそれがあり、回復しても後遺症が出る可能性があります。症状が出ても応急処置をすれば最悪の事態を避けられるため、熱中症を甘くみず十分な対策を行ってください。
特に室温・湿度が高い倉庫内で長時間作業を続けていると熱中症になりやすいです。厚生労働省によると、過去3年間(平成22~24年)の業種別の熱中症の死亡災害の発生状況をみると、建設業が最も多く全体の約4割を占めています。次いで製造業で全体の約2割を占めているのが現状です。
参照:職場での熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成24年)|厚生労働省
倉庫内において効果的な熱中症対策
つづいて、倉庫内での効果的な熱中症対策を見ていきましょう。
冷房設備の導入
もっとも基本的な対策は、冷房設備を導入して室温を下げることです。たとえば、閉め切った倉庫内では熱がこもり室温が高くなりやすいため、大型扇風機を導入しましょう。大型扇風機を天井に設置し、下向きに風を送り出せば室温の上昇が抑えられ、熱中症予防になります。
ただし、冷房設備は導入コストだけでなく電気代がかかるので、コスト増に懸念がある場合は、ほかの対策が有効です。発熱する機器の横に遮へい物を設置したり、散水したりするだけでも効果があります。
空調服の着用
熱中症を防ぐためには、従業員の服装にも注意しなければなりません。倉庫で作業する際の服装は安全上、丈夫な作りのものが多いですが、このような作業服は通気性が悪く、長時間作業をしていると服の中に熱がこもって熱中症になりやすいです。
そこで、冷却機能を搭載した作業服を活用すると良いでしょう。たとえば小型のファンが服の中に取り付けられた空調服は、空気を循環させることで体温の上昇を抑えます。ほかにも体温を下げる保冷剤が付いたベストや、通気性が良いクールヘルメットを着用するのもおすすめです。
このような作業着を用意できない場合は、スポーツ用の通気性が良い服装でも問題ありません。
水分補給の徹底
熱中症を防ぐうえで欠かせない対策は、水分補給の徹底です。
のどの渇きを感じたときには体内の水分が多く失われており、そのままにしていると体温調節機能が低下します。体温が上がりやすく熱中症になるおそれがあるため、こまめに水分補給をしなければなりません。
なお、汗をかくとナトリウムなどのミネラルも同時に失われてしまいます。水分だけでなく塩分も摂取するようにしてください。定期的に水分・塩分を補給するルールを作ると良いでしょう。従業員が水分補給したことをチェックする際に、管理表を使うのが有効です。
作業時間の短縮
熱中症のリスクが高い場合は、思い切って作業時間を短くするのが大切です。もしくは連続して作業する時間を短くしましょう。こまめに涼しい場所で休憩すれば、体温の上昇を抑え、熱中症対策になります。
高温多湿な場所での作業に慣れていない従業員は、暑熱馴化のために、はじめは負担が少ない作業をさせましょう。
従業員の健康状態の事前確認
体調が悪い従業員は熱中症のリスクが高くなります。特に、高血圧や糖尿病の人は注意してください。熱中症が多くなる季節は健康意識を高めるよう従業員に注意喚起し、健康状態の事前確認を徹底してください。
日頃から体調不良であることを訴えられる雰囲気を作り、万一に備えて医療機関への連絡先を分かりやすい場所に提示しましょう。体調が悪い従業員は無理をせず休ませ、異変があればすぐに報告・対処できる体制が必要です。
倉庫内における熱中症対策の事例
倉庫は立地や建物の材質によって、室温の上昇具合が変わってきます。たとえば、日当たりがよい立地で、太陽の熱を吸収しやすい材質の建物だと、室温が50度を超えることも珍しくありません。
このような場合は、屋根や壁に断熱材を使用すれば倉庫内の温度上昇を抑えられます。室温が50度を超える倉庫でも、30度前後に維持できた事例があります。
冷房設備はランニングコストが高額になる場合が多くあります。一方、断熱材は、導入に工事費はかかりますが、ランニングコストを抑えられるためおすすめです。
倉庫での熱中症対策にはシステム導入も検討しよう
熱中症は死に至る可能性があり、重症化すると後遺症が出る危険もあるため、徹底した対策を行わなければなりません。
熱中症対策として、冷房設備や空調服の導入が有効です。こまめに水分補給を行い、作業時間を短縮するのも良いです。ほかにも、ピッキングシステムを導入すれば作業時間を短縮でき、熱中症のリスクを抑えられるでしょう。
自社に合った方法で環境を整え、熱中症対策を行ってください。
