従業員の履歴書を管理する目的
社内で履歴書を管理しておく目的は、従業員との間に発生しうるトラブルを回避するためです。履歴書には名前や生年月日、経歴などの個人情報が詳細に記載されています。
もし従業員が経歴詐称や虚偽申告をしていた場合、履歴書はそれらを証明する証拠書類として活用できます。履歴書が保管されていないと事実確認を行う手段がなくなり、虚偽を証明できません。

履歴書管理のルール
履歴書はどんなことに気を付けて管理すれば良いのでしょうか。ここでは不採用者・労働者の2つのケースを見ていきます。
不採用者の履歴書:返却可能にしておくことが望ましい
不採用者の履歴書管理には法的な定めはありませんが、応募者からの返却の要望に応えられるようにしてください。多くの企業では履歴書の保管期間を6ケ月としているようです。
個人情報の取り扱い上の観点からは、応募書類は返却するのが望ましいでしょう。履歴書が返却されないと「個人情報が悪用されないだろうか」「履歴書はどのように扱われるのだろうか」と企業に対して不信感を覚えます。
そのため、履歴書は返却できる状態にしておき、希望者にはスムーズに対応しましょう。あらかじめ保管期間を設けておくと、履歴書を適切に管理できます。さらに応募者へは履歴書の取り扱いを明示し、了承を得ておくとトラブルにつながりにくいです。
なお、履歴書を処分する際はその記録を残すことで、後に情報の開示を求められた場合に対応しやすいでしょう。
労働者の履歴書:退職後3年間は保管しなければならない
労働者の履歴書は、在職中は保管しておく必要があります。保管期間は、退職日または死亡日から起算して3年間保管することが労働基準法第109条により義務化されています。保管期間を過ぎた履歴書に関しては法的義務はなくなるため、退職者への返却か破棄のいずれかを行うことになります。
しかし退職後3年経過していると連絡先が変わっている可能性が高く、履歴書の返却は現実的ではありません。そのため多くの企業では返却をせずに廃棄・消去を行っているようです。
履歴書の廃棄・消去を行う場合は個人情報の取り扱いに注意しましょう。紙の場合はシュレッダーで廃棄し、履歴書をデータ化していれば個人情報の流出に留意しつつ確実に消去を行ってください。
参考:労働基準法(施行日:平成三十年十二月十四日)
効率的な履歴書管理の方法
法律に基づき履歴書を管理するにはどうすれば良いのでしょうか。効率的な履歴書管理が実現する2つの方法を紹介します。
個人ごとにファイリングする
履歴書管理を行う場合は書類ごとではなく、個人ごとにファイリングしてください。文書の種類でファイリングすると個人の書類が探しにくく、見つけるのに手間がかかります。個人ごとでは書類が1箇所に集約されるため履歴書や労働契約書などが見つけやすいです。
履歴書も同様にファイリングすれば、不採用者や退職者のファイルを抜き出すだけです。その後は不採用者や退職者に応じた対応を行いましょう。
ファイリング方法は個人名でファイルを作成し、あいうえお順に並べます。社員番号なども付加すると良いでしょう。この方法を活用すれば適切な履歴書管理につながります。
なお、個人ごとのファイリングは、個人の事情により起算日が異なる書類に適しており、作成日が起算となる文書には不向きです。
履歴書を電子化する
履歴書を電子化することで効率的な履歴書管理につながります。原本のままではファイリングに手間がかかる上、紛失や破損のリスクが伴います。
そこで履歴書の電子化がおすすめです。履歴書をデータベース化することで、個人に紐づいた検索が行え、検索効率がアップします。採用活動でも原本を持ち歩かなくてもよくなり、紛失や破損のリスクがありません。
また、電子化によりファイリングミスといった人的ミスの軽減にもつながります。そして、原本は保管庫で管理し、できる限り従業員が触れる機会を少なくすることでセキュリティ性が向上します。
履歴書管理における採用管理システムのメリット
採用管理システムとは一連の採用活動をシステム上で一元管理し、作業の効率化を図るものです。履歴書管理を採用管理システム上で行うと、どんな効果が期待できるのでしょうか。
ここでは採用管理システムの利用で期待される2つのメリットを解説します。
採用側の作業時間を削減できる
採用管理システムの導入により採用活動の効率化が実現します。
履歴書データをデータベース化すれば経歴や資格など、必要な情報をリアルタイムに検索可能です。これにより求める情報を素早く収集でき、採用担当者の負担軽減につながります。
また、採用管理システムにはWeb上で送られてくる履歴書を選別する機能をもつシステムもあります。大量のメールに履歴書が埋もれることがなくなり、優秀な人材を逃すなどの機会損失の防止に効果があるでしょう。
履歴書の保管スペースを削減できる
紙での管理ではキャビネットを設置しなければならず、ある程度のスペースが必要です。
しかし、採用管理システムではサーバ上に履歴書データが保存されるため、保管スペースは必要ありません。ファイリングに伴う作業コストも発生しません。
また、データベースへのアクセス権限を設定するなど、必要に応じた措置も取れます。限られた人しか閲覧できなくなるため、安全な履歴書管理が実現します。
履歴書を適切に管理して、情報の活用とトラブル防止を!
履歴書管理は、将来従業員との間に発生しうるトラブル回避が目的です。
不採用者の履歴書は返却に対応できるようにしておきましょう。退職者は3年間の保管義務があります。効率的な履歴書管理法として、個人ごとのファイリングや情報の電子化がおすすめです。
さらに採用管理システムを導入すれば、採用側の負担を軽減し保管スペースを削減できます。これらを上手く活用して履歴書管理の効率化を図り、トラブル防止に努めましょう。
