ポテンシャル採用とは
ポテンシャル採用とは、候補者の経験や実績だけでなく、潜在能力や入社後の成長可能性を重視する採用方法です。現時点で業務に必要なスキルを十分にもっていなくても、学習意欲や主体性、適性などを評価して採用します。
即戦力を求める一般的な中途採用とは異なり、採用後の教育や育成を前提としている点が特徴です。未経験者にも応募対象を広げられるため、人材不足への対応や将来の中核人材の確保を目的として活用されています。
ポテンシャル採用の対象となる人材
ポテンシャル採用では、主に第二新卒や若手の未経験者、異業種からの転職希望者などが対象になります。企業によっては、学校卒業後に就職しなかった既卒者や、留学・資格取得などを経て就職活動を始めた人材も対象に含まれます。
選考では、これまでの職歴や保有資格だけでなく、以下のような要素が重視されます。
- ●新しい知識やスキルを習得する学習意欲
- ●目標に向けて自ら行動する主体性
- ●物事を筋道立てて考える論理的思考力
- ●周囲と協力して業務を進めるコミュニケーション力
- ●企業の価値観や社風との適合性
- ●入社後に実現したいキャリアビジョン
ただし、単に若い人材や経験の浅い人材を採用することが、ポテンシャル採用ではありません。自社が求める能力や人物像を明確にしたうえで、候補者の過去の行動や学習実績などから成長可能性を判断することが重要です。
ポテンシャル採用は何歳まで?
ポテンシャル採用には年齢制限が明確に定められているわけではありませんが、実際には20代の求職者や第二新卒が中心です。第二新卒とは、学校を卒業して就職した後、数年以内に離職した人を指します。また、留学などの理由で就職活動の開始が遅れたケースでは、25歳前後までの求職者も対象となることがあります。一方で、30代以降の中途採用は、即戦力を求める採用が主流となる傾向があります。
ポテンシャル採用と新卒採用・中途採用の違い
ポテンシャル採用、新卒採用、一般的な中途採用では、対象者や主な評価基準、採用目的が異なります。それぞれの違いは以下のとおりです。
| 比較項目 | ポテンシャル採用 | 新卒採用 | 一般的な中途採用 |
|---|---|---|---|
| 主な対象者 | 第二新卒、既卒者、未経験者、異業種からの転職者など | 卒業予定の学生を中心とする新卒者 | 特定の業務経験や専門スキルをもつ転職者 |
| 主な評価基準 | 潜在能力、学習意欲、適性、主体性 | 人柄、基礎能力、将来性 | 実務経験、専門スキル、過去の実績 |
| 採用目的 | 将来の中核人材の確保、未経験人材の育成 | 長期的な人材育成、組織構成の維持 | 即戦力の確保、欠員や専門人材の補充 |
| 入社後の教育 | 必要性が高い | 必要性が高い | 比較的少ない |
| 入社時期 | 通年採用が中心 | 一括採用が中心 | 通年採用が中心 |
ポテンシャル採用は、新卒採用と同じく将来性を重視しますが、卒業時期や就業経験にかかわらず応募対象を広げやすい点が特徴です。一方、一般的な中途採用は、入社後すぐに業務を担当できる経験やスキルが重視されます。
ただし、実際の採用区分や評価基準は企業によって異なります。ポテンシャル採用を導入する際は、どのような人材を対象とし、入社後にどのように育成するのかを明確にしておきましょう。
ポテンシャル採用が注目される背景
ポテンシャル採用が注目される背景には、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、企業間の人材獲得競争の激化があります。特に専門職やIT人材などは即戦力層の採用が難しく、経験者だけを対象にすると十分な応募者を確保できないケースも少なくありません。
そこで、現時点の経験やスキルだけでなく、学習意欲や適性、将来の成長可能性を評価し、未経験者や第二新卒まで採用対象を広げる動きが進んでいます。また、働き方やキャリアの多様化により、異業種からの転職や学び直しを経て新たな職種に挑戦する人も増えています。
こうした人材を採用し、自社で計画的に育成することで、将来の中核人材を確保しやすくなる点も、ポテンシャル採用が重視される理由です。
ポテンシャル採用のメリット・デメリット
続いて、ポテンシャル採用のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット1:企業の世代交代を進めることができる
かつて、多くの企業が不況によって新卒採用の枠を減らしました。その反動から、現在は企業を構成する従業員の高齢化が問題になっています。企業内の高齢化が進むと、活気がなくなり新しい変化についていけなくなります。
そこへ、ポテンシャル採用により若手社員を広く採用することで、スムーズに世代交代を進められます。若い考えを取り込むことで、時流に沿ったビジネスが可能になるでしょう。
また、企業の存続を維持するうえでもポテンシャル採用は有益です。たとえば、早いうちに若い世代にリーダーを務めさせておけば、歳を重ねた先輩たちが会社を去った後も、若手はリーダーシップを失うことなくビジネスを継続できます。また、製造業などでは熟練の作業員から若手に技術を継承することで、企業としてノウハウを失わずに済みます。
メリット2:社会人の基礎をもつ幹部候補を確保できる
ポテンシャル採用は、社会人未経験の新入社員だけを対象にするのではありません。企業に貢献できる潜在能力があれば、若手の社会人を中途採用する場合も対象になります。
一度でも社会人経験があれば、基礎的なビジネススキルを持っています。たとえば社会人としての言葉遣いやマナー、適切に物事を判断し行動できるセルフマネジメントスキルなどは、重要なスキルと言えます。
確かに、専門スキルなどはまだ身についていないかもしれません。しかし、これはむしろメリットに働くこともあります。前職で業務を遂行していた方法に凝り固まることなく、新しいノウハウや技術を吸収できるからです。この柔軟さを重視する企業も少なくありません。
デメリット:社員教育コストがかかる
ポテンシャル採用では、潜在能力を重視して人材を採用するため、充分に業務を遂行できるようになるまでにある程度の教育コストがかかります。
特に未経験者は、その分野に関する知識と経験がありません。そのため、企業に貢献できる人材に育てるには、ゼロからスキルを獲得できる教育体制の構築が必要です。
また、獲得した人材の離職率を、どれだけ低く抑えるかも重要になります。入社後にミスマッチを感じた人材は、早期に退職する可能性が高いです。ポテンシャル採用を行う際は、応募者が短期間に何度も転職を繰り返していないかも確認しましょう。
また、前職にこだわりが強い人も、転職後の業務がスムーズに進まないケースがあります。前職での勤務年数が長ければ長いほど、こだわりが生じている可能性があるため、採用時に注意しましょう。
ポテンシャル採用で失敗しないポイント
次は、ポテンシャル採用で失敗しないためのポイントを紹介します。
ITツールや求人媒体の適切な選定
近年、深刻な人手不足が原因で企業による若手人材の取り合いが激化しています。結果として、求職者は膨大な求人情報に晒されています。その情報の中から自社を見つけてもらうのは、非常に困難と言わざるを得ません。
そこで、旧来とは違ったアプローチ方法が求められるようになりました。2つ例を見ていきましょう。
- Web上の情報を充実させる
- 現在、多くの求職者はWeb上で就職情報を探しています。したがって、Web上に自社の求人情報を掲載するかどうかで、求職者の目に留まる可能性が大きく左右されます。
- SNSなどのツールを活用する
- Webでもすでに求人情報が溢れていると感じる企業は多いでしょう。そこで、より求職者と接点を持ちやすいSNSが活用されるようになりました。頻繁に更新することで求職者の興味を惹きつけ、実際に入社するまで高いモチベーションを維持させます。
自社が求める「ポテンシャル」の具体化
ポテンシャルは、日本語で潜在能力のことを言います。しかし、そもそも潜在能力とは何でしょうか。企業がポテンシャル採用を行うにあたって、求職者のどのような能力を評価すれば良いのでしょうか。
この点を具体化しておかなければ、「なんとなく良さそう」という曖昧な基準で判断することになります。これでは求職者の本質を見抜けず、入社後にミスマッチで失敗しかねません。
自社がポテンシャル採用に際して求職者に求めるのが、論理的思考力なのか、リーダーシップなのかといった点を明確化しましょう。そして、それを測定するための指標や項目を用い、客観的評価を目指すことが大切です。
キャリアビジョンの実現ができることをアピール
求職者は企業の募集に応募する際、就職・転職後にどのようなキャリアを辿れるかを強く意識します。どれほど優れた給与や待遇が提供されても、自身が思い描くキャリアビジョンとの間に相異があれば、求職者は望んで入社してくれないでしょう。
したがって、ポテンシャル採用を行う際は、応募者が求めるキャリアビジョンと、自社で実現可能なキャリアを擦り合わせる必要があります。後にミスマッチが生じてトラブルにつながらないよう、採用プロセスの段階で明確に伝えておきましょう。
応募者の「ポテンシャル」を見極めるポイント
ポテンシャルは目に見えないものです。では、採用プロセスの中で求職者のポテンシャルを見極めるにはどうすれば良いのでしょうか。
自ら学習しているか
自ら学ぶ姿勢があるかどうかは、その人材の将来性を大きく左右します。この学習姿勢がポテンシャルそのものであると言っても過言ではないでしょう。
たとえば、エンジニアのような技術系職種を希望している人材の場合、希望している分野の勉強を行っているかどうかが、採否を判断する一つの基準になります。また、成果物があるとなお良いでしょう。口にするだけでなく実際に学習、実行しているかどうかで、職務に対する熱意を推し量ることができます。
もちろん、学習対象は専門スキルに限りません。英語やパソコンなど、あらゆるビジネスで役立つ基本スキルへの学習意欲もその人材の価値を左右します。また、一体どのような考えで学習するに至ったのかも面接で聞けば、求職者の志や熱意を深く把握できるでしょう。
最新情報をキャッチアップしているか
インターネットが発達し、様々な情報が目まぐるしく更新されるようになりました。ビジネス関連の情報も例に漏れず、情報伝達が活発になっています。
しかし、インターネット上で情報が盛んにやり取りされていることと、それをキャッチするかどうかは別です。どれほど情報が溢れていても、それを知ろうという意志がなければ、情報が頭に入ることはありません。
したがって、業界の最新情報に常にアンテナを張り巡らせているかどうかも、人材のポテンシャルを見抜く判断基準となります。こちらもあらゆる業種で通用する見抜き方であるため、面接などで確認しましょう。
目的意識をもっているか
人がキャリアチェンジを考えるときには、必ず何かしらの目的があります。そして、その目的が前向きなものであるかどうかも、人材を判断する良い材料となります。
たとえば、「前の仕事が辛いから辞めた」という退職理由は前向きではありません。自分に合わない環境から距離をとること自体は悪くありませんが、さらに未来を見据えている人の方がポテンシャルが高いのは間違いありません。
一方、新しい業界に踏み込むことで、どうしてもやりたいことがあるといった熱意を抱いている人材は、非常にポテンシャルが高いと言えます。目的を達成するために転職という行動を起こせているのですから、その行動力があれば、入社後もさまざまな苦難を乗り越えられるでしょう。
ちなみに、こうした熱意も面接で確認するのがもっとも確実です。情熱的に自らの夢や目標を語り、そこへ向かって行動を起こせている人材がいるのなら、高く評価しましょう。
積極的なポテンシャル採用で企業内の若返りを実現させよう!
ポテンシャル採用とは、人材の伸びしろを考慮した採用スタイルのことです。若い人材を社内に招いて高齢化を防ぐとともに、幹部候補を育成できるのがメリットです。ただし、即戦力ではないため育成に時間とコストがかかります。
ポテンシャル採用を成功させるには、適切な求人方法を採るとともに、選考過程で求職者のポテンシャルを見抜くことが大切です。
以上を踏まえ、自社に新しい風を吹き込みましょう。



