ポテンシャル採用とは
ポテンシャル採用とは、求職者の潜在能力を評価基準とする採用方法です。即戦力ではなく、将来発揮するであろう能力に期待して人材を選考します。そのため、未経験業種への応募だとしても採用にいたる場合があります。特に人材不足が深刻なITやエンジニア系の業種で顕著に利用されています。
なお、ポテンシャル採用の対象が何歳までかは決まっていませんが、基本的には20代の求職者・第二新卒です。第二新卒とは、学校を卒業し就職後、数年のうちに離職した人のことです。留学などの理由で遅れて就職活動を始めた場合は、25歳前後までの求職者が該当します。一方で、30代以降の中途採用は、即戦力採用が主となります。
近年日本の労働力は減少し、中小企業は採用難に見舞われています。特に即戦力となる人材は競争率が高く、確保が困難です。そのため、素質のある未経験者にアプローチをかけるポテンシャル採用は、人材確保の有効な方法と考えられています。
ポテンシャル採用のメリット・デメリット
続いて、ポテンシャル採用のメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット1:企業の世代交代を進めることができる
かつて、多くの企業が不況によって新卒採用の枠を減らしました。その反動から、現在は企業を構成する従業員の高齢化が問題になっています。企業内の高齢化が進むと、活気がなくなり新しい変化についていけなくなります。
そこへ、ポテンシャル採用により若手社員を広く採用することで、スムーズに世代交代を進められます。若い考えを取り込むことで、時流に沿ったビジネスが可能になるでしょう。
また、企業の存続を維持するうえでもポテンシャル採用は有益です。たとえば、早いうちに若い世代にリーダーを務めさせておけば、歳を重ねた先輩たちが会社を去った後も、若手はリーダーシップを失うことなくビジネスを継続できます。また、製造業などでは熟練の作業員から若手に技術を継承することで、企業としてノウハウを失わずに済みます。
メリット2:社会人の基礎をもつ幹部候補を確保できる
ポテンシャル採用は、社会人未経験の新入社員だけを対象にするのではありません。企業に貢献できる潜在能力があれば、若手の社会人を中途採用する場合も対象になります。
一度でも社会人経験があれば、基礎的なビジネススキルを持っています。たとえば社会人としての言葉遣いやマナー、適切に物事を判断し行動できるセルフマネジメントスキルなどは、重要なスキルと言えます。
確かに、専門スキルなどはまだ身についていないかもしれません。しかし、これはむしろメリットに働くこともあります。前職で業務を遂行していた方法に凝り固まることなく、新しいノウハウや技術を吸収できるからです。この柔軟さを重視する企業も少なくありません。
デメリット:社員教育コストがかかる
ポテンシャル採用では、潜在能力を重視して人材を採用するため、充分に業務を遂行できるようになるまでにある程度の教育コストがかかります。
特に未経験者は、その分野に関する知識と経験がありません。そのため、企業に貢献できる人材に育てるには、ゼロからスキルを獲得できる教育体制の構築が必要です。
また、獲得した人材の離職率を、どれだけ低く抑えるかも重要になります。入社後にミスマッチを感じた人材は、早期に退職する可能性が高いです。ポテンシャル採用を行う際は、応募者が短期間に何度も転職を繰り返していないかも確認しましょう。
また、前職にこだわりが強い人も、転職後の業務がスムーズに進まないケースがあります。前職での勤務年数が長ければ長いほど、こだわりが生じている可能性があるため、採用時に注意しましょう。
ポテンシャル採用で失敗しないポイント
次は、ポテンシャル採用で失敗しないためのポイントを紹介します。
ITツールや求人媒体の適切な選定
近年、深刻な人手不足が原因で企業による若手人材の取り合いが激化しています。結果として、求職者は膨大な求人情報に晒されています。その情報の中から自社を見つけてもらうのは、非常に困難と言わざるを得ません。
そこで、旧来とは違ったアプローチ方法が求められるようになりました。2つ例を見ていきましょう。
- Web上の情報を充実させる
- 現在、多くの求職者はWeb上で就職情報を探しています。したがって、Web上に自社の求人情報を掲載するかどうかで、求職者の目に留まる可能性が大きく左右されます。
- SNSなどのツールを活用する
- Webでもすでに求人情報が溢れていると感じる企業は多いでしょう。そこで、より求職者と接点を持ちやすいSNSが活用されるようになりました。頻繁に更新することで求職者の興味を惹きつけ、実際に入社するまで高いモチベーションを維持させます。
自社が求める「ポテンシャル」の具体化
ポテンシャルは、日本語で潜在能力のことを言います。しかし、そもそも潜在能力とは何でしょうか。企業がポテンシャル採用を行うにあたって、求職者のどのような能力を評価すれば良いのでしょうか。
この点を具体化しておかなければ、「なんとなく良さそう」という曖昧な基準で判断することになります。これでは求職者の本質を見抜けず、入社後にミスマッチで失敗しかねません。
自社がポテンシャル採用に際して求職者に求めるのが、論理的思考力なのか、リーダシップなのかと言ったことを明確化しましょう。そして、それを測定するための指標や項目を用い、客観的評価を目指すことが大切です。
キャリアビジョンの実現ができることをアピール
求職者は企業の募集に応募する際、就職・転職後にどのようなキャリアを辿れるかを強く意識します。どれほど優れた給与や待遇が提供されても、自身が思い描くキャリアビジョンとの間に相異があれば、求職者は望んで入社してくれないでしょう。
したがって、ポテンシャル採用を行う際は、応募者が求めるキャリアビジョンと、自社で実現可能なキャリアを擦り合わせる必要があります。後にミスマッチが生じてトラブルにつながらないよう、採用プロセスの段階で明確に伝えておきましょう。
応募者の「ポテンシャル」を見極めるポイント
ポテンシャルは目に見えないものです。では、採用プロセスの中で求職者のポテンシャルを見極めるにはどうすれば良いのでしょうか。
自ら学習しているか
自ら学ぶ姿勢があるかどうかは、その人材の将来性を大きく左右します。この学習姿勢がポテンシャルそのものであると言っても過言ではないでしょう。
たとえば、エンジニアのような技術系職種を希望している人材の場合、希望している分野の勉強をおこなっているかどうかが採用するかどうかの一つのラインになります。また、成果物があるとなお良いでしょう。口にするだけでなく実際に学習、実行しているかどうかで、職務に対する熱意を推し量ることができます。
もちろん、学習対象は専門スキルに限りません。英語やパソコンなど、あらゆるビジネスで役立つ基本スキルへの学習意欲もその人材の価値を左右します。また、一体どのような考えで学習するに至ったのかも面接で聞けば、求職者の志や熱意を深く把握できるでしょう。
最新情報をキャッチアップしているか
インターネットが発達し、様々な情報が目まぐるしく更新されるようになりました。ビジネス関連の情報も例に漏れず、情報伝達が活発になっています。
しかし、インターネット上で情報が盛んにやり取りされていることと、それをキャッチするかどうかは別です。どれほど情報が溢れていても、それを知ろうという意志がなければ、情報が頭に入ることはありません。
したがって、業界の最新情報に常にアンテナを張り巡らせているかどうかも、人材のポテンシャルを見抜く判断基準となります。こちらもあらゆる業種で通用する見抜き方であるため、面接などで確認しましょう。
目的意識をもっているか
人がキャリアチェンジを考えるときには、必ず何かしらの目的があります。そして、その目的が前向きなものであるかどうかも、人材を判断する良い材料となります。
たとえば、「前の仕事が辛いから辞めた」という退職理由は前向きではありません。自分に合わない環境から距離をとること自体は悪くありませんが、さらに未来を見据えている人の方がポテンシャルが高いのは間違いありません。
一方、新しい業界に踏み込むことで、どうしてもやりたいことがあるといった熱意を抱いている人材は、非常にポテンシャルが高いと言えます。目的を達成するために転職という行動を起こせているのですから、その行動力があれば、入社後もさまざまな苦難を乗り越えられるでしょう。
ちなみに、こうした熱意も面接で確認するのがもっとも確実です。情熱的に自らの夢や目標を語り、そこへ向かって行動を起こせている人材がいるのなら、高く評価しましょう。
ポテンシャル採用の導入事例
最後に、ポテンシャル採用の導入事例を2つ紹介します。
インターネット事業を展開するある大手企業は、それまでの新卒一括採用を廃止し、経歴に関わらず30歳以下ならば誰でも応募できるポテンシャル採用に切り替えました。海外留学生や博士号取得者などに配慮し、制限を撤廃。就業経験の有無に関係なく、ポテンシャルで平等に判断する体制を整備し、柔軟に採用できるようにしたと言います。
また、別のIT会社は元々年齢制限を設けていたポテンシャル採用を、完全に制限なしへと切り替えました。年齢や経験に縛られることなく、誰もがチャレンジできる環境を目指しました。IT業界未経験でも関係なくさまざまなバックグラウンドを持つ人材を採用し、そうして獲得した人材が実際に業務で力を発揮していると言います。
積極的なポテンシャル採用で企業内の若返りを実現させよう!
ポテンシャル採用とは、人材の伸びしろを考慮した採用スタイルのことです。若い人材を社内に招いて高齢化を防ぐとともに、幹部候補を育成できるのがメリットです。ただし、即戦力ではないため育成に時間とコストがかかります。
ポテンシャル採用を成功させるには、適切な求人方法を採るとともに、選考過程で求職者のポテンシャルを見抜くことが大切です。
以上を踏まえ、自社に新しい風を吹き込みましょう。