採用活動にペルソナが必要な理由とは?
完全雇用状態にある一方で雇用の流動化が進む日本では、人材採用の難易度が上がり続けています。かつてのように、求人広告を出せば人が集まる時代ではなくなりつつあります。実際に都内の立地のよい大手企業でも、採用目標通りの人員数を採用で確保することが難しい状況になっています
需要に対して供給側である求職者が圧倒的に少ない現在の状況では、採用活動の戦い方が以前とは全く異なります。多くの企業が欲しい人材はすでに他の企業に雇われている状態です。求職者が仕事を求めていない現在の状況では、求職者が求人に応募することにメリットを感じなければなりません。
求職者にメリットを伝えるには、マーケティング手法が有効です。採用活動にマーケティング手法を導入するには、まず自社の魅力を伝えたいターゲット像を明確にすることから始まります。
ターゲット像とターゲットのニーズの分析に役立つのがペルソナです。ペルソナとは、採用したい人物像を詳細に定義することです。ペルソナを設定することにより、自社の求める人材を明確化できます。ペルソナが完成すれば、そのペルソナに当てはまる人材がどこにいるのか、そしてどんな行動をしているのかが分析することが可能になります。それにより、ただ求人広告をばらまくよりも、的確な採用活動できるようになるのです。
採用におけるペルソナの作り方
では、採用活動ではどのようにペルソナを設定すれば良いのでしょうか。ペルソナの作り方を具体的に見ていきましょう。
- 1.ヒアリングからターゲット像とニーズを洗い出す
- 2.ペルソナを整理する
- 3.出来上がったペルソナを検証する
- 4.実際の選考に活かす
1.ヒアリングからターゲット像とニーズを洗い出す
ペルソナとは、単なる人物像ではなく経歴や行動、趣味や性格も含めた人格と定義されます。つまりペルソナは、自社の代表的な社員像と言い換えることができます。そしてペルソナの設定は、「ターゲット像」×「ニーズ」から検討を行います。
「ターゲット像」とは、今後自社に欲しい人材を具体化した人材要件です。また、「ニーズ」とは「なぜこの会社に入りたいのか」という志望理由を明確化したものです。
「ターゲット像」の定義は、経営陣と採用受け入れ部門の関係者に求めている人材のスキル、行動特性、性格などの資質をヒアリングします。この時に注意したいのが、自社の社風に合う人材はどのような人物像かを考えることです。どれだけ能力の高い人材を採用しても、社風に合わなければすぐに離職してしまいます。
そこで、自社の「できる人材」はどのような人材か、を経営陣や各部門のマネージャーにヒアリングしてみてください。実は、「この人はできる」という感覚は、各社各様に異なっています。この「できる人材」を言語化してターゲット像を決めることが、社風に合った人材の採用を成功させるポイントです。
ターゲット像が決まったら、次にターゲットの「ニーズ」を検討します。「ニーズ」を知るには、直近で入社した社員の入社理由をヒアリングしましょう。なぜ、入社したのか、その決め手は何だったのか、どんな問題を解決したくて入社したのかをヒアリングしましょう。すると、給料を上げたかった、サービスに魅力を感じた、など入社のトリガーとなったポイントが明らかになります。
このように、経営陣や部門、社員からヒアリングを行いながら「ターゲット像」と「ニーズ」を明確化していきます。
2.ペルソナを整理する
ターゲット像とニーズが明確化したら、次に集めた情報をペルソナとして整理します。
ターゲット像からは、求めている人材の情報が明らかになっています。年齢、現在の職業、保有スキル、性格、学歴、国籍、性別などの属性情報がターゲット像の中心的な情報です。また、ニーズからは会社に求めることや仕事の価値観が明らかになるでしょう。こうした情報を一つの仮想的な「人格」として整理することで、ペルソナが完成します。
3.出来上がったペルソナを検証する
ペルソナが出来上がったら、このペルソナが有効かどうか検証を行います。ペルソナに経営陣や各部署の従業員からフィードバックを受け、求める人物像とのズレを修正しましょう。
例えばエンジニアの採用であれば、以下のような例になります。
- ペルソナの例
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- ・年齢:28歳
- ・学歴:都内の中堅私大の情報工学系学部を卒業
- ・経歴:新卒で現在の会社に入社して5年目。チームリーダーを任されている
- ・職業:Sierのフロントエンジニア
- ・年収:600万円程度
- ・最近の悩み:顧客対応の経験を積んだので、もう少し上流工程の開発をしたいと思っている
- ・仕事で大切にしていること:給料が高いこと、長く働けること
- ・保有スキル:高いデバッグ能力、問題解決力
- ・保有資格:応用情報技術者
このようなペルソナを整理し、経営陣・各部署と認識がずれがないか確認しましょう。同時に、人事の視点から本当に市場に存在しうる人物像か検討することも重要です。求めている人物像が市場から調達できない場合は、社内で人材を育成することを検討するのも大切な視点です。
人事の目的は、事業に必要な人材を供給することです。ペルソナを作ることを目的化せず、必要な人材を供給するには他に別の選択肢がないか常に検討しましょう。
4.実際の選考に活かす
次に設定したペルソナを基に選考方法や基準を見直しましょう。ペルソナは明確な採用基準となるため、主観や第一印象による採用を防ぐことが可能になります。
また、面接時にはペルソナを基にした適切な質問を行えます。希望の給与や待遇面など、ペルソナとリンクした質問ができれば自社が必要な人材かどうかを見極めやすいでしょう。
ペルソナの活用は、採用におけるミスマッチのリスク軽減につながります。
ペルソナ活用の注意点
ここまで、ペルソナの設定と運用についてまとめました。ペルソナを活用するうえで、特に注意することはなんでしょうか。
定期的にブラッシュアップしていく
ペルソナには市場と同様に流動性があります。経営戦略や市場動向に沿ってペルソナは設定されるべきです。一度設定したからとそのままにすることは避けましょう。
選考を重ねながら適宜ペルソナを見直し、ブラッシュアップを続けてください。ブラッシュアップしていくことで、現実味のある精度の高いペルソナへと変化していきます。
また、適切な人材を獲得できなかった場合もペルソナの見直しを行いましょう。自社の希望を押しつけたペルソナではないか、見直しにより問題点に気付くことができ、次に活かせます。
採用でのペルソナづくりが成功につながる
採用で使用するペルソナを整理することは、自社に必要な人材を明確に定義することです。ペルソナを作る取り組み自体が、採用基準や採用する人材像の整理につながります。この一連の取り組みは採用活動上とても重要です。
ペルソナを採用活動における社内でのコミュニケーションツールとして使用することで、経営陣や部門との間で自社の人材像を言語的に議論できます。
人材像を言語化することは、採用した人材の入社後の離職を防ぐことにもつながります。
適切なペルソナづくりに取り組み、採用活動を成功させましょう。