新卒採用のメリット
多くの企業が実施する新卒採用ですが、中堅中小企業では実施していないこともあります。この機会に、新卒採用をするメリットを改めて見ていきましょう。
1.将来の幹部候補として採用できる
中途入社の社員はすでに社会人経験があるため、即戦力として活躍するでしょう。しかし、前の職場の慣習が染みつき、新しい職場の理念や風土に馴染めないケースがあります。
一方、新卒採用で入社した社員は企業理念に共感し、志望しています。さらに、中途入社の社員と異なり、前職の経験がないため、教えたことをすんなりと受け入れてくれるでしょう。自社の価値観やビジョンに共感しているからこそ、将来を担う人材に育成しやすいのです。
2.中小企業も優秀な人材を獲得できる
中小企業にとっては、中途採用よりも新卒採用マーケットの方が、優秀な人材を見つけやすいと考えられます。なぜなら、優秀な人材は安易に企業を辞めないため、中途採用マーケットに出てくる可能性が低いからです。
仮に優秀な人材が中途採用マーケットに出てきたとしても競争率が高く、採用の難易度は高くなります。給与や待遇上乗せの余裕のある大手企業が有利でしょう。
一方、新卒採用のマーケットは非常に大きく、知名度の低い中小企業でも人材獲得のチャンスがあります。
3.一人当たりの採用コストを抑制できる
人材の確保には多くのコストがかかります。採用した後にも教育の負担があることを考えると、長期的に見たコストは計り知れません。
少しでもコストを抑えるには、複数の人材をまとめて採用するのが有効です。イベントを開催する回数が少なくて済むうえ、採用担当者の負担も軽減するでしょう。
実際に、まとめて行える新卒採用とそうでない中途採用では、コストに顕著な差が生じています。株式会社リクルートキャリアの発表によると、2019年度における新卒採用コストは1人あたり93.6万円、中途採用では103.3万円となっています。
参照:就職白書2020 就職みらい研究所|リクルート
4.社内の雰囲気を活性化できる
新卒入社の社員は社会人としてのスキルや業務の経験がないため、教育・研修が必要です。
先輩社員は自分の時間を割いて、新人の教育をしなければなりません。教育コストがかかるデメリットはありますが、新人に指導することで先輩社員のモチベーションが向上するメリットもあります。
教える側に立つことで、理解が甘かった部分に気づき、技能のブラッシュアップも促進されることでしょう。さらに新卒社員は固定概念がなく、柔軟な発想や視点を持っており、職場に良い刺激を与えます。
5.企業の知名度を向上できる
新卒の採用活動では多くの学生に企業PRを行い、就活生自身も熱心に企業情報を収集するため、企業の知名度を上げる良い機会になります。
さらに、最近ではユニークな採用活動を行い、メディアに取り上げられる企業も増えています。人材育成やサービス向上に力を入れていれば企業の印象は良くなり、知名度の向上につながります。
その結果、入社志望者が増えるほか、自社のファンになる可能性も高いです。定期的に新卒採用を行っていれば企業の知名度は高くなり、相乗効果が生まれるでしょう。
6.社員の年齢構成を均等にできる
社員がある年齢層に固まってしまうというのは、安定した経営を行っていくことの障害になりえます。なぜなら、その年齢層が定年になってしまうと急激に社員数が減り、企業の体力が落ちてしまうことになるからです。
一方、毎年新卒採用を行えば、社内の年齢構成をある程度揃えられます。社員数の増減が緩やかな、安定した経営が実現するでしょう。
新卒採用のデメリット
新卒採用にあるのはメリットばかりではありません。次はデメリットを3つ紹介します。
1.戦力になるまでに時間とコストを要する
新卒入社の社員は直前まで学生であったため、即戦力としては役に立たないことが多いです。入社後に研修をしっかり行う必要があり、戦力になるまで時間がかかります。企業にもよりますが、2週間程度の場合もあれば、半年から1年間の研修を行うこともあります。
研修期間中は会社に貢献する働きは見込めません。つまり、企業にとっては赤字と言えます。投資期間として準備しておく必要があるでしょう。
2.早期離職が起こりやすい
新卒入社の社員は社会経験が足りないため、今の自身と社会人としてあるべき姿とのギャップを感じやすいです。これはどの企業にいても同じですが、新卒入社の社員は「自分はこの会社に合っていない」と考えてしまいます。
特に近年は転職を前提としてキャリアビジョンを描いている学生も少なくありません。合わないと感じたら、ためらうことなく転職に踏み切るでしょう。結果として、新卒採用者は早期離職する割合が高くなっています。
厚生労働省の発表によると、新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で39.2%、新規大卒就職者では32.0%です。特に小規模の事業所における離職率は高く、5割以上にも上ります。
参照:新規学卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者の状況)を公表します|厚生労働省
3.景気変動に左右されやすい
基本的には毎年行う新卒採用ですが、景気によっては、人材の確保が難しい年や採用しやすい年が出てくることがあります。
景気以外にも新卒採用に関係のある外的要因はあります。天災や不祥事による風評被害などが考えられます。したがって、毎年決まった人数を採用することができるとは限りません。
いずれにしても、先行投資という側面が強い新卒採用では、多少のことでは揺るがない経営基盤を持つ会社が行うことができる採用方法と言えるでしょう。
中途採用のメリット
新卒採用にメリット・デメリットの両方があるのと同じように、中途採用にもメリットとデメリットがあります。そこで、次は中途採用のメリットを見ていきましょう。
1.研修コストや時間を抑制できる
中途採用する人材はある程度の社会人経験があります。学生よりも社会人として基本的なマナーやスキルを備えている可能性が高いです。特に、同業界での勤務経験があれば即戦力として活かすこともできるでしょう。
この場合、研修にコストがかかりません。採用時にかかるコストは新卒採用より高額ですが、その後の研修コストや会社への貢献度を考慮すれば、コスパの優れた採用方法と言えるでしょう。
また、採用にかかる時間が短いのも中途採用の特徴です。新卒採用は1年間をかけてようやく採用に至る長期的なイベントですが、中途採用は数週間から数か月で完了します。コストは高くなりがちな反面、時間を節約できるのは大きなメリットです。
2.新しいスキルやノウハウを獲得できる
採用した人材が同業他社で働いた経験を持っている場合、その経験に基づくスキルやノウハウを得られるのも中途採用のメリットです。こうして得られたスキル・ノウハウは企業全体に利益をもたらしてくれるかもしれません。
また、必ずしも同業他社での勤務経験がある必要はありません。業務の一部分でも採用者の経験と関連する部分があれば、新たな気づきを得られる可能性があります。
一方、採用者が持つ人脈を得られるのもメリットです。前職での取引先と良好な関係を維持していれば、自社が新たなビジネスチャンスを獲得できる可能性があります。
中途採用のデメリット
中途採用にもデメリットはあります。代表的なものを2つ見ていきましょう。
1.会社の方針と合わないことがある
新卒採用者はまだ社会人経験がないため、即戦力としては期待できません。しかし、まだ何も学んでいない分、新しいことを吸収しやすいのがメリットです。企業にとって、新卒採用者は自社の社風に染めやすい存在と言えます。
一方、中途採用者はそうはいきません。前職で業務のやり方や考え方などが完成してしまっているため、新たに入社した企業の方針になじめないことがあります。結果として、経験があるせいで業務が円滑に進まず、商品やサービスの質が低下するリスクがあります。
2.すぐに転職されてしまうリスクがある
前述したように、中途採用者は前職での経験がある分、新しい企業に馴染めないことがあります。その結果、早い段階で転職を決断する可能性があります。また、すでに転職を経験しているため、転職そのものに抵抗がないのもこの傾向に拍車をかけているでしょう。
一方で、中途採用市場には企業の方針と合うかどうかに関係なく、性格が飽きっぽいために転職を繰り返している人材もいます。このような人は入社前の段階で見極めたいところですが、なかなか難しいのが現状です。
ただし、早期離職されるリスクは新卒採用の場合にも充分に考えられます。新卒採用か中途採用かに関係なく、採用段階で望ましい人材を見極め、入社後にフォローすることが大切です。
新卒採用のメリット・デメリットを理解して、検討しよう!
新卒採用には以下のメリット・デメリットがあります。
- 【メリット】
-
- ■幹部候補になる
- ■中小企業も優秀な人材を確保可能
- ■採用コストが低い
- ■社内の空気をフレッシュにできる
- ■企業の知名度が向上する
- ■年齢構成が均等化する
- 【デメリット】
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- ■教育コストがかかる
- ■早期離職のリスクがある
- ■景気変動に左右される
一方、中途採用にもメリットとデメリットがあり、優劣は付けられません。両方の特徴を理解して検討しましょう。