ヘルプデスクのアウトソーシングとは
ヘルプデスクのアウトソーシングとは、企業が自社のヘルプデスク業務の一部またはすべてを外部の専門業者に委託することを指します。一般的に、ITサポート、顧客サービス、技術的な問い合わせ対応などを含む幅広い業務範囲をカバーするのが特徴です。
近年、ビジネス環境の急速な変化やデジタル化の進展にともない、多くの企業がヘルプデスク業務の効率化と質の向上を求めています。同時に、専門知識をもつ人材の確保や、24時間365日のサポート体制の維持が課題となっています。アウトソーシングは、これらの課題解決策として注目されています。
なお、ヘルプデスクのアウトソーシングは、主に以下の2種類に分類されます。
- ■社内ヘルプデスク
- 従業員向けのITサポートや業務支援を提供します。社内システムの利用方法、ハードウェアやソフトウェアのトラブルシューティングなどが主な業務です。
- ■社外ヘルプデスク
- 顧客や外部ユーザー向けのサポートを提供します。製品やサービスに関する問い合わせ、技術的なサポート、クレーム対応などを行います。
アウトソーシングを活用することで、企業は専門知識のあるスタッフを柔軟に確保し、コスト効率を高めながら、サービス品質の向上を図れるでしょう。しかし、情報セキュリティやサービス品質の管理など、考慮すべき点も多くあります。そのため、アウトソーシングの導入を検討する際は、自社のニーズと状況を十分に分析し、適切なパートナーの選択が重要です。
ヘルプデスクのアウトソーシングサービスの内容
ヘルプデスクのアウトソーシングサービスは、社内ヘルプデスクと社外ヘルプデスクに分けられます。それぞれ見ていきましょう。
社内ヘルプデスク
社内SEが社内ヘルプデスクを兼任している企業は多いでしょう。しかし、負担が集中し、ヘルプデスクが十分に機能しないことがあります。このような場合に頼れるのが、社内ヘルプデスクのアウトソーシングです。
社内ヘルプデスクのアウトソーシングは、サービス提供会社の担当者が情報システム部門に常駐し、社員からの問い合わせに対応するサービスです。パソコンやスマホ、タブレットなどの端末から、業務で用いるソフトウェアまで、IT関係全般に関するサポートを提供します。
社外ヘルプデスク
社外ヘルプデスクは、社外からの問い合わせに対応するサービスです。製品の使い方に関する問い合わせやクレームに応じます。一般的には、サポートセンターやコールセンターに所属して業務に従事します。
顧客の対応をする以上、社内ヘルプデスクよりも高度な対応技術が求められます。そのため、専門業者にアウトソーシングした方がうまくいくことも多いでしょう。
ヘルプデスクをアウトソーシングするメリット
ヘルプデスクをアウトソーシングすると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
業務効率を上げられる
アウトソーシングすることで、システムに精通した専門スタッフの配置が可能になります。例えば、IT製品に関する質問に答えるには、広範囲にわたる専門的な知識が求められます。自社のシステムだけでなく、ユーザー側の環境も確認する必要があるからです。
知識のない一般社員が対応しても、問題の解決は図れないばかりか、調べたり対応したりする時間がかかり、業務効率は上がりません。アウトソーシングすれば、自社の社員は、IT製品に関する詳細な知識の習得の時間を別の業務にあてられるので、生産性の向上が図れます。
コスト削減により利益につながる
アウトソーシングを利用することで、ヘルプデスクを運用するためのインフラ整備や人材雇用などの固定費を削減できます。また、より重要な業務に自社の人員を配置することで、企業としての収益性のアップにもつながります。
顧客満足度を上げられる
アウトソーシングにより業務遂行レベルの差が少なくなります。高い応対品質を維持し、これまでのサービス以上の価値を顧客に提供できれば、ロイヤリティの向上やリピート率の改善にもつながるでしょう。
ヘルプデスクをアウトソーシングするデメリット
ヘルプデスクのアウトソーシングにはデメリットもあります。3つ見ていきましょう。
品質の低下の恐れがある
ヘルプデスクは、顧客インサイトの主要な収集源です。収集した情報を社内共有すれば、顧客満足度向上に貢献します。しかしアウトソーシングに依存すると、問い合わせ業務に関するノウハウが蓄積されづらくなります。また、外注先企業が事業撤退したり、契約終了したりした場合に、社内で同じ品質を保てず、サービスの品質低下につながる可能性があります。
情報漏えいの恐れがある
ヘルプデスクをアウトソーシングすると、外部企業が機密情報に触れるため、不正アクセスやデータ紛失、誤送信などの情報漏えいリスクが生じます。アウトソーシング先のセキュリティポリシーが適切に定められ、十分なセキュリティ対策が講じられているかを確認しましょう。
多額の費用がかかる可能性がある
アウトソーシングには多額の費用がかかる場合があります。導入費用はもちろん、ランニングコストも侮れません。特に従量課金制の場合、問い合わせ件数が増えると費用も増えるため、コストが変動します。またオプション機能を利用するとその分料金が高くなるため注意が必要です。
ヘルプデスクアウトソーシングの費用相場
ヘルプデスクアウトソーシングの費用は、サービスの範囲や規模、要求される専門性などによって大きく異なります。次に、一般的な料金体系と、費用に影響を与える主な要因について解説します。
一般的な料金体系
ヘルプデスクアウトソーシングの料金体系は、主に次の3種類です。
- ■従量課金制
- 問い合わせ件数や対応時間に応じて課金される方式で、小規模な企業や変動の大きい需要に適しています。
- ■固定料金制
- 月額や年額で一定の料金を支払う方式です。予算管理がしやすく、大規模で安定した需要がある場合に適しています。
- ■ハイブリッド型
- 基本料金と従量課金を組み合わせた方式です。基本的なサービスは固定料金で、追加サービスは従量課金となる料金体系です。
費用に影響を与える主な要因
ヘルプデスクアウトソーシングの費用に影響を与える要因は多岐にわたります。主な要因は次のとおりです。
- ■サポート時間
- サポート時間は大きな要因の一つで、24時間365日対応か、営業時間内のみかで大きく異なります。
- ■専門性の程度
- 高度な技術知識が必要な場合は費用が高くなります。
- ■対応チャネル
- 電話、メール、チャットなど、提供するチャネルの数によってコストが変動します。
- ■サービスレベル契約(SLA)
- 応答時間や解決率などの要求水準が高いほど、コストは上昇します。
- ■カスタマイズの程度
- 自社専用のシステムや手順が必要な場合は、追加コストがかかります。
費用対効果を最大化するためには、自社のニーズを明確にし、最小限のサービスからはじめて段階的に拡大していくアプローチが有効です。また、定期的に費用と効果を検証し、必要に応じて契約内容を見直すことも欠かせません。このように、ヘルプデスクアウトソーシングの費用は多くの要因に左右されるため、慎重な検討と継続的な評価が必要です。
ヘルプデスクアウトソーシング会社の選び方
ヘルプデスクアウトソーシング会社を選ぶ際は、次に紹介するポイントに着目してみましょう。
専門性と技術力はあるか
まずは選択するアウトソーシング会社が、自社の業界や技術分野に関する十分な専門知識を持っているかを確認しましょう。類似案件の実績や、資格保有スタッフの在籍状況などもチェックポイントです。
また、最新の技術やツール、セキュアな通信環境を利用しているか、災害時のバックアップ体制は整っているかなど、技術面とインフラ面の充実度も確認しておきましょう。専門性と技術力の高い会社を選ぶことで、より的確で効率的なサポートが期待でき、将来的な技術の進化にも柔軟に対応可能です。
サービス品質は担保されているか
提供されるサービスの範囲と品質が自社のニーズを満たしているかを確認します。24時間365日対応が可能か、多言語対応できるか、対応可能なチャネルは何かなどもチェックしておきましょう。また、品質管理の方法や、定期的な報告・改善提案の仕組みがあるかも重要です。
さらに、事業の成長や変化に応じてサービスの規模や内容を柔軟に調整できるかもポイントです。柔軟性や拡張性があれば一時的なアウトソーシングにとどまらず、長期的なパートナーシップを築けるようになるでしょう。
セキュリティとコストパフォーマンスはよいか
ISO 27001などのセキュリティに関する認証を取得しているか、データ保護やプライバシー保護に関する方針が明確になっているかも確認しておきましょう。特に機密情報を扱う場合は、スタッフのセキュリティ教育レベルも最重要項目の一つです。
コスト面では、単純に最も安い業者を選ぶのではなく、提供されるサービスの質と価格のバランスを評価しましょう。初期費用、運用費用、追加料金の有無などを総合的に考慮し、長期的な視点でコストパフォーマンスを判断するのがおすすめです。セキュリティとコストのバランスを取ることで、安全かつ効率的なアウトソーシングが実現できるでしょう。
ヘルプデスクはアウトソーシングすべきか
ヘルプデスクのアウトソーシングは、業務を効率化できる便利な方法です。しかし上記のようにデメリットもあります。デメリットの方が大きい場合は、業務を自社で行う「内製化」も検討してみましょう。
重要業務のノウハウを蓄積できたり、顧客への柔軟な対応が可能になったりするのが、内製化のメリットです。最近では、ヘルプデスク専用のツールがさまざまなベンダーからリリースされています。
ノウハウの管理や、社内のワークフローをスムーズにする機能をもった製品を活用すれば、アウトソーシングよりも効率的にヘルプデスクを運営できます。以下の記事では、おすすめのサービスデスクツールを比較紹介しています。あわせてご覧ください。
まとめ
ヘルプデスクを外部に委託するアウトソーシングは、業務効率化やコスト削減、顧客満足度向上といったメリットが期待できます。一方で、対応品質の低下や情報漏えいといったリスクもともないます。
アウトソーシングにかかるコストを抑えたいなら、専門ツールの導入もおすすめです。ITトレンドでは多彩なヘルプデスクツール(サービスデスクツール)を取り扱っています。まずは複数資料を取り寄せ、各社製品を比較してみましょう。