BIツールを導入していない企業の課題
BIツールは、業務において蓄積されたデータを分析するためのツールです。BIツールを導入していない企業では、以下のような課題に直面することが多くあるでしょう。
- ●情報の集約に手間やコストがかかる
- ●専用アプリケーション開発の難易度が高い
- ●セキュリティ面の懸念を払拭できない
- ●投資リスクを懸念して導入が進まない
データが部門ごとに管理されている場合、営業担当者は販売促進に必要な情報を集約するため、各部門にデータ提出の依頼が必要です。また、業務システムの整備のみが先行していた場合、後に分析のための自社用アプリケーションを開発しようとしても、自社で使用する専用帳票にあわせた開発が困難な場合があります。各部門のデータ集約・分析・ユーザーの閲覧ツールを、それぞれ別の環境で開発しなければならないこともあるでしょう。
さらにセキュリティ面では、各担当者レベルのパソコンまで重要データにアクセス可能とするのは、情報漏えいなどの不安を感じる方もいるでしょう。加えて、BIツールを導入してどのような費用対効果が得られるのかが不明確で、初期投資費用やランニングコストが高額な傾向にあるBIツールへの投資がリスクと考えられることも課題として挙げられます。
中堅・中小企業においてBIツール導入が進まない理由
中小企業ではBIツールの導入があまり進んでいません。その主な理由は以下のとおりです。
- ●導入コストが高い
- ●操作が難しく扱いきれない
- ●費用対効果が悪い
それぞれの課題について詳しく解説します。
導入コストが高い
BIツールは従来オンプレミス型が主流で、導入の際にはツールだけでなく自社サーバを構築する必要があり導入コストは高額になる傾向にありました。特に中小企業にとっては必要不可欠なシステムではないため、高額なBIツールの導入はハードルが高いといわざるをえません。
操作が難しく扱いきれない
もともとBIツールは分析専門家のために開発されたツールのため、ある程度の専門知識を必要とし、操作はほかの業務システムと比べて難しくなります。そのため、「難しくて使いこなせない」「BIデータを活かしきれない」というケースも生じます。特に人的リソースが十分ではなく専門知識をもつ従業員が少ない中小企業では、扱いが困難な場合も多いでしょう。
費用対効果が悪い
従来のBIツールでは、データ分析の結果を出すのに専門知識をもった開発者やSEの力を借りる必要がありました。そのため、BIツールを活用するには多くの工数がかかり費用対効果が悪いといわれることもあります。
中小企業でBIツールを導入するメリット
BIツールを使えば、高度なデータ分析を社内で行えます。また、BIツールはリアルタイムでデータ分析ができるので、もし問題があれば迅速に対応できます。以上の効果からレポートや報告書作成にかかる時間を削減できるのもメリットの一つと言えるでしょう。
ここでは、中小企業でBIツールを導入するメリットについて詳しく解説します。
社内の情報を統合し分析・可視化が可能
BIツールは、企業内のあらゆるデータソースからの情報を統合する機能をもちます。統合されたデータは、レポートやダッシュボードなどの方法で共有が可能です。閲覧専用のアプリを社内ポータルに埋め込んだり、ExcelやPDF形式のファイルにして配布したりすれば、全社でデータ活用ができるようになります。
また、BIツールでは高速でのデータ集計を実現するためのデータベースエンジンを採用しています。あらゆる集計リクエストに対して、瞬時にレスポンスを返せます。ストレスを感じることなくスピーディーな意思決定のための集計・分析を行えるのは、大きなメリットでしょう。
専用開発環境で自社に最適なデータ分析を実現
BIツールを導入すれば、自社内のアプリケーション開発環境が整備できます。定型レポートからデータ分析(OLAP分析)・ダッシュボードまでを単一の環境で開発でき、複数の異なるデータソースを集約するのも容易です。グラフやFlashチャートなど、ビジュアルコンテンツ開発もサポートされています。
また、自社の専用帳票に対応する柔軟な開発環境も提供されます。自社のみですべてを開発する計画と比べると、最低限度の労力でデータを分析する環境が完成します。
導入規模に応じた費用で予算問題を解決
BIツール導入の支障となりがちな予算の問題を解決するのが、導入規模に応じたデータベースエンジン、用途に応じたインターフェイスコンポーネントの提供です。データベースは、クラウドでも動作可能です。
データベースエンジンとコンポーネントを適切に選択することで、初期投資を抑えて社内の一部門に導入できます。導入規模に応じて費用を調整できるため、比較的規模が小さい中小企業や、大規模企業における段階的な導入にも対応が可能です。サーバライセンスを採用した製品なら、ユーザー数を意識することなく拡張していけます。
誰でも使える分析ツールを提供
現場のデータ分析をExcelで行っている企業では、BIツールが出力するExcel用レポートを活用できます。Excelから直接分析データを読み込めるアドオンが提供されていることも多く、使い慣れたExcelを利用して情報の把握や分析が可能です。
製品によっては、Webブラウザ上でカスタマイズや分析のインタラクティブな操作ができるUIを実装しています。社内ユーザーは新たなツールを導入することなく、知りたい情報を簡単に得られます。 アクセス権を適切に管理すれば、顧客やパートナーも同じ情報を活用でき、高度な分析を提供しつつ、ブランドエクスペリエンスを高めることも可能です。
以下の記事では、BIツールのメリットについてより詳しく解説しています。BIツールの導入効果について理解を深めたい方は、あわせて参考にしてください。
中小企業でも導入しやすいクラウドBI・セルフサービスBIとは
中小企業向けBIツールとして、注目を集めているのがクラウドBI・セルフサービスBIです。それぞれのBIツールの特徴について詳しく解説します。
低コスト・短期導入可能なクラウドBI
クラウドBIとは、インターネット経由で利用できるBIツールです。オンプレミス型のようにサーバ構築や専用機器が不要で、短期間かつ低コストで導入できるのが特徴です。
インフラ整備や専門人材を用意せずに始められ、運用管理もベンダーが対応するため、導入・管理の負担を大幅に軽減できます。初期費用を抑えながらスモールスタートできるため、中小企業にも適しています。
スマートフォンやタブレットに対応した製品も多く、外出先からでもデータを確認し、その場で意思決定が可能です。クラウドBIは業務の柔軟性とスピードを高める手段として有効です。
また、導入後の活用が不安な場合でも、クラウドBIなら柔軟にスケールアップ・ダウンが行えるため、失敗してもすぐに撤退できる安心感があります。
専門知識を必要としないセルフサービスBI
セルフサービスBIとは、IT部門に頼らず、現場の担当者自身がデータ分析やレポート作成を行えるBIツールのことです。「セルフBI」とも呼ばれ、近年ではノーコード・ローコードで操作できる点が評価され、注目を集めています。
「データディスカバリツール」や「データビジュアリゼーションツール」として分類されることもあり、プログラミングの知識がなくても、直感的な操作で必要な情報を可視化し、業務改善に活用できます。
専門人材の確保が難しい中小企業でも導入しやすく、現場主導の意思決定やデータ活用を支援します。
以下の記事では、セルフサービスBIについて詳しく解説しています。セルフサービスBIについて理解を深めたい方は、あわせて参考にしてください。
中小企業におけるBIツールの選び方
中小企業において自社に最適なBIツールを選定するには、以下の3ポイントに着目して製品を選定するとよいでしょう。
コスト
BIツールを導入する際には、コストが予算にあっているか確認しましょう。特にクラウドBIは初期費用は抑えられるものの、月額費用がかかるためランニングコストが増える場合があります。長期的に使用する場合はオンプレミスの方がコストが低くなる場合もあるため、ツールの導入前に導入費用とランニングコストの両面から十分に比較検討するとよいでしょう。
また、自社システムからBIツールへのデータ転送の費用がかかる場合があります。データ量が多かったりネットワークに与える負荷が大きかったりすると、費用が高額になることもあるでしょう。データアップロードの通信料は別途料金となっている場合もあるので、サービス提供企業に確認しておくとよいでしょう。
機能
BIツールはさまざまなデータを分析する機能をもっていますが、製品によって搭載している機能は異なります。導入前に自社が必要とするデータの分析機能があるか確認し、比較検討することが重要です。また、自社内の業務システムとの連携が可能かも確認しましょう。BIツールとの連携に対応していないシステムがある場合、BIツールによる横断的なデータ分析機能が使えなくなります。導入前に製品資料やベンダーへの問い合わせで確認するのがおすすめです。
サービス提供事業者の信頼性
長期的にBIツールを使うのであれば、サービス提供事業者の信頼性をチェックしましょう。サービスの停止・経営破綻・M&Aなどのリスクがあります。また、あわせてサポート体制やセキュリティ機能も確認しておくとよいでしょう。BIツールの有効活用にはコンサルテーションも重要です。価格だけにとらわれず、トラブル発生時などに適切なサポートを提供してくれる事業者か確認したうえで導入すると安心でしょう。
以下の記事では、クラウドBIの選び方についてより詳しく解説しています。ITトレンド編集部がおすすめするクラウドBI製品も紹介しているので、導入検討の参考にしてください。
中小企業におすすめのBIツールを比較
ここでは、クラウド対応やセルフサービス機能を備えた中小企業向けのBIツールを比較紹介します。
Domo
- データ活用を実現するために必要な機能をオールインワンで提供
- SaaS型BI国内市場NO.1!※高い顧客満足度を獲得!
- モバイル標準対応なのでデータを元に迅速なアクションを促進可能
NDIソリューションズ株式会社が代理店として提供する「Domo」は、クラウド特化型のBIツールで、インフラ構築不要で迅速に導入できます。リアルタイム分析やスマートフォン対応にも優れており、非エンジニアでも扱いやすいのが特徴です。
MotionBoard
- Excelやシステム、DB、IoTなど、さまざまなデータと連携・可視化
- データの可視化だけでなく、ダッシュボードからデータを入力可能
- 国産メーカーならではの充実したサポートで、導入後も安心
ウイングアーク1st株式会社が提供する「MotionBoard」は、クラウド・オンプレ両対応の柔軟なBIツールです。多彩な可視化機能とダッシュボード作成機能を備えており、業種・業態を問わず幅広く活用できます。
Tableau Desktop
- スプレッドシートやAWSなどさまざまなソースと接続
- 統計的処理もドラッグアンドドロップで可能
- マッピング機能でデータを地図上に表示
株式会社セールスフォース・ジャパンが提供する「Tableau Desktop」は、PCにインストールして利用する分析特化型のBIツールです。高度な可視化とインタラクティブな操作が可能で、データ探索や分析に強みがあります。
Tableau Server
- オンプレミス・パブリッククラウドの柔軟な導入体系
- 利用状況を俯瞰できるガバナンス機能
- あらゆる環境から暗号化されたデータをシームレスに抽出
株式会社セールスフォース・ジャパンが「Tableau Server」は、Tableauで作成したダッシュボードを社内で共有・管理できるサーバ型のBIツールです。クラウドにも対応しており、アクセス権限の細かな制御も可能です。
Qlik Sense (クリックテック・ジャパン株式会社)
- ガートナー社から12年連続でリーダーに認定
- 世界中で50,000社以上もの導入実績
- AIを搭載した「Insight Advisor」が分析を支援
クリックテック・ジャパン株式会社が提供する「Qlik Sense」は、セルフサービス型BIツールとして人気が高く、クラウド・オンプレ両対応です。ユーザー自身で直感的にデータ分析ができ、操作性と拡張性を兼ね備えています。
より多くの製品情報が知りたい方は、以下の記事をご覧ください。それぞれの機能や価格、レビュー評価なども一覧表で比較できます。
中小企業向けBIツールで自社の課題を解決しよう
BIツールは社内のさまざまなデータを横断的に分析できることから、企業の迅速な意思決定や営業戦略などの考案には欠かせないツールとなっています。最近では中小企業でも導入がしやすいBIツールも増えているので、この機会に導入を検討してはいかがでしょうか。
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