新人教育の質向上・効率化を実現するには
新人教育の課題を把握できたところで、どのようにすれば新人教育の質を向上させ効率化できるのか見ていきましょう。
OJTの実施
「集合研修やセミナーに頼っている」という課題に対しては、OJTの実施が解決策となります。
OJTとは、現場で仕事をこなしながら上司・先輩社員の指導を受け、仕事を覚える教育方法です。習熟や経験を必要とする業務や、マニュアル化が難しい業務を新人に教える場合、OJTが向いています。
新人の能力や学習するスピードに合わせて、実務に役立つ教育を効率的に行えるのがメリットです。さらに、教育担当の社員自身が業務効率化やマネジメントを学ぶ機会にもなります。
ただし、新人は経験が浅いため、当然上手くいかないことや不安を感じることがあります。教育担当の社員が新人と密にコミュニケーションをとれば信頼関係が生まれ、新人教育をスムーズに進められるでしょう。
新人教育マニュアルの作成
「教育方法のばらつき」は、新人教育マニュアルを完備することで解決できます。新人教育マニュアルとは、新人でもスムーズに仕事ができるように、仕事の進め方や実践的な知識を記載したマニュアルのことです。
新人教育マニュアルがあれば教育の質は統一され、教育担当者によって教育方法にばらつきが生じることはありません。また、仕事をこなす上で必要な情報がマニュアルに掲載されているため、新人でも1人で安定した品質の仕事が行えます。新人教育にかける時間は短縮され、効率化につながるでしょう。
ただし、マニュアルだけで新人教育をすべてまかなえるわけではないため、OJTとうまく組み合わせるのが最適です。
eラーニングシステムの導入
「上司が忙しく、新人教育に時間を割けない」という課題には、eラーニングの導入がおすすめです。一般的にeラーニングは新人が主体となって学習を進められるため、上司が新人教育にかける手間や時間を省き、効率化できます。
ただし、eラーニング教材を単体で利用すると社員の学習実績は把握できません。そこで、eラーニングシステムを併用するのが効果的です。eラーニングシステムとは、受講した学習内容、進捗などを管理するシステムのことです。進捗状況や理解度を確認し、新人教育の課題点を見つけ、改善に活かせるでしょう。
新人教育を成功させるためのポイント
ここまでに述べたことを実施すれば、新人教育の質向上や効率化が期待できるでしょう。ただ、新人教育を成功させるためには、ほかにもポイントがありますのでご紹介します。
目的・目標を明確にする
すでに習得している知識や実務に活かされないことを教えるのは非効率であるため、避けなければなりません。
実施前に、新人教育の目的や目標を明確にすると何を教えるべきか判断でき、無駄のない教育プログラムを組めます。たとえば、営業の即戦力として育成したい、という目標を立てたなら、ロールプレイングを教育プログラムに盛り込むと効率的です。
また、新人も教育の意図を理解すれば、教育を受けるモチベーションの向上につながるでしょう。
フィードバック体制を構築する
一方的に新人教育を行っただけでは、期待していた効果を得られたか分かりません。教育担当者は質が高い教育を実施できたと思っていても、新人は「分かりにくかった」と感じているケースも多いです。
新人研修を有意義なものにするためには、フィードバック体制を整えることが大切です。具体的には、教育プログラム終了後に新人と面談を行い理解度を確認します。理解度が低かった場合は何がいけなかったのか、理解度が高かった場合は何が良かったのか、原因を探り、アドバイスや評価をしましょう。
さらに、このフィードバック内容は、次の新人教育に活かしてください。なぜなら新人教育は一度実施して終わりではなく、PDCAを回して改善していく必要があるからです。
メンター制度を採用する
メンター制度とは、上司以外の先輩社員(メンター)が新人(メンティー)の仕事に関する悩みを解決できるようサポートする制度のことです。一般的な新人教育の現場では上下関係がはっきりとしているため、新人は悩みや不満があっても言い出しにくいでしょう。
一方、メンター制度を採用した新人教育の現場では、仕事で直接の関係がない先輩社員がフォローにまわるため、新人は悩みごとを気軽に話しやすいのです。先輩社員による精神的なサポートによって新人の早期離職を防止し、新人教育を効率的に進められます。
新人教育の質や効率が向上しない理由
新人教育を効率化するためには、まず現状の課題を解決することが大切です。新人教育の質や効率が向上しない理由は3つあります。
集合研修やセミナーに頼っている
OFF-JTに頼りきりでは、新人教育の結果が現れるまでに時間がかかり、非効率になってしまいます。集合研修やセミナーなどOFF-JTは、普段学習できない知識を習得する良い機会です。
将来的に役立つ知識や考え方を学べ、視野を広げられるでしょう。しかし、習得した知識を実務に応用できなければ意味がありません。
特に、研修の実施を外部機関に委託している場合、実務への応用まで依頼するのは難しいです。受講した新人が自発的に実務に活かしていくことになり、やる気がある新人とそうではない新人に大きな差が生まれてしまいます。
教育方法にばらつきがある
研修の委託先または自社の社員が教育担当者となりますが、教育方法にばらつきが発生する可能性があります。もし教育担当者の能力や教育方法に差があれば、教育を受ける新人の成長度合にも差が出てしまいます。
教育担当者に対する教育を行えばこの差はなくなりますが、実施している企業は少ないのが現状です。つまり、新人教育の質は教育担当者次第、ということになってしまうのです。こうした状態では新人教育の効率が良いとはいえません。
上司が仕事を多く抱えている
人材不足を解消するために新人を採用したにもかかわらず、多くの現場では上司・先輩社員がさらに忙しくなる傾向があります。これは、自分の仕事に加えて新人を教育する手間がかかるからです。通常の仕事量が多いほど、新人に仕事を丁寧に教える時間はありません。
これでは、新人教育の質や効率を向上させるどころか、新人教育が実施されないケースも考えられます。
新人教育の品質向上・効率化を実現し、組織を成長させよう!
新人教育を適切に行える環境が整っていないと、研修や教育を実施しても非効率になってしまいます。
具体的な対策としては、OJTの実施や新人教育マニュアルの作成、eラーニングシステムの導入が効果的です。フィードバック体制やメンター制度を導入するなど、現状の教育体制を見直すことも重要です。
以上を踏まえて新人教育の効率化を図り、組織を成長させましょう。