eラーニングによる教育は労働時間に含まれるのか
eラーニングの学習が労働時間に含まれるか否かは、どのような点で判断するとよいのでしょうか。
任意の参加であれば含まれない
eラーニングは、受講義務が課されていない限り、労働時間に含まれません。時間や場所が拘束されず社員の義務でない以上、学習することは受講者の自由意思に委ねられるためです。本人の自由意思に基づく行動は、労働ではなくプライベートでの活動とみなされます。
労働時間は、社員が会社の指示に従っている時間です。勤務状況が以下の要件に該当する場合は、労働時間にカウントされません。
- ■業務内容が上司や会社の指揮下にない
- ■就業場所や時間に制限がない
- ■業務の進行目標が設定されていない
命令や指示、不利益を被らせることがあれば含まれる
業務上の命令や指示がある場合、もしくは受講しなければ不利益になることが明らかな場合、eラーニングは労働時間に含まれます。eラーニングによる教育実習や社内外研修などが該当します。
この場合、「指定された期間内に必ずeラーニングを受講しなければならない」業務上の縛りがあるため、たとえ時間や場所を選ばずに学習できるeラーニングであっても労働時間にカウントされるのです。
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署

eラーニングの労働時間に関する判例
eラーニングの労働時間に関する判例は、スキル習得のためにeラーニングを推奨していた西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の判例が有名です。
eラーニングの受講はあくまで社員の自由意思によるものだと主張する会社側と、スキル習得に費やした学習時間は労働時間だと主張する社員との間で争われた事案です。
裁判は、地裁だけでは決着がつかず高裁まで進みましたが、最終的には会社側の勝訴で終わりました。eラーニングは労働とはみなされず、社員側の要求はすべて棄却されました。会社側が勝利を収めたポイントは以下のとおりです。
- ■eラーニングは会社の利益に直結するものではない
- ■試験などもなく、受講への強制があったとはいえない
参考:2018年(平成30年)労働判例・命令年間総索引|産労総合研究所
eラーニングの正しい運用方法の把握とともに、最新のeラーニングシステムについても知りたい方は以下を参考にしてください。システムの機能や特徴を詳しく知ると比較検討がしやすくなるため、気になった製品は資料請求してみましょう。
eラーニングを実施する際の注意点
eラーニングの学習時間を労働時間に含めるか否かは、会社方針によって分かれます。どちらにおいても注意すべき点があるため、eラーニングを実施する前に押さえておきましょう。
労働時間内に含めない場合:あっせん方法を考慮する
eラーニングを労働時間に含めない場合は、受講を義務化せず任意とします。受講を推奨する場合は、学習意欲向上のサポートに徹しましょう。
社員に紹介するときは「キャリア計画の必要性を伝える」「業務に役に立つスキルの習得ツールとしてeラーニングを用意している」くらいの説明にとどめるのがおすすめです。強制にならないよう、学習はあくまで社員の自由意思に任せます。
「eラーニングの受講状況と人事評価は関係ないこと」や「いつでもどこでも学習できるからといって無理しないこと」を明言するのも、自由な受講を推進するために重要です。
労働時間に含める場合:就業時間を考慮する
eラーニングを労働時間に含める場合は、原則として就業時間中に受講をさせましょう。業務時間外での受講になると割増賃金などの問題も発生し、会社への不満や労務トラブルのもとになります。
eラーニングシステムには管理機能が搭載されており、受講時間の記録や受講履歴の確認が可能です。これらの機能によって実際の受講時間が正確にわかるため、読み飛ばしや同時閲覧などの不正防止と同時に、就業時間内の受講を徹底できるでしょう。eラーニングを労働時間に含める場合は、自社に適した管理機能をもつシステムを利用することで、より運用しやすくなります。
eラーニングの労働時間を明確にして適切に実施しましょう
eラーニングが労働時間に含まれるかは、「任意」か「強制」かによって異なります。
「任意」の場合は労働時間とはならないため、割増賃金などを支払う必要がありません。一方「強制」するのであれば業務上の指示となるため、賃金の支払い義務が発生します。
トラブルを防ぐためにも、労働基準法に則り適切にeラーニングを実施しましょう。また、eラーニングシステムをお探しの際は、以下のリンクより資料請求ができるのでご活用ください。
