やりっぱなし研修が発生してしまう理由
やりっぱなし研修は、なぜ発生してしまうのでしょうか。
研修目的や評価基準が不明確
研修目的や評価基準が不明確だと、研修後にどのような行動をとればよいのかが曖昧になり、やりっぱなし研修が発生します。評価ができないため、学習成果を確認することもままなりません。
評価基準が明確でないと、簡単に集計できる満足度を意識してしまいがちです。その結果、満足度だけで研修の成果を測るようになります。問題点をみつけるのは困難で、研修の内容が改善されることもありません。
これは、研修すること自体が目的になっているため発生するケースです。本来であれば満足感よりも、研修によって得られるスキルや解決できる課題の方に注目しなければなりません。
受講者のモチベーション不足
研修は一般的に「面白くない」「めんどくさい」という印象をもたれやすく、受講者からの評判もよくありません。「研修に行け」と言われるだけで、モチベーションが下がる人も多いようです。
これは、受講生自身に「研修が仕事である」という意識がないためです。このような受講生は、研修を成果を上げるために重要な場として考えていません。学習会や勉強会などと同じように、社内行事のひとつとみなしていることが多いです。
このようなモチベーション不足は企画側にも問題があるため、即座に改善する必要があります。
研修をやりっぱなしにすると効果は約1割に
研修をやりっぱなしにすると、どうなるのでしょうか。
ある研究機関による調査では、研修直後は約半数が学習した内容を現場で実践しているものの、1年後には約1割しか実践しなくなるという結果が出ています。
そのため、研修をやりっぱなしにすると研修効果は薄れていき、最終的には約1割しか効果を得られないと言えます。
やりっぱなし研修を解消する「研修転移」とは
やりっぱなし研修を解消するには、行動評価の仕組みを作り、研修で学習した内容を行動に繋げる施策が必要になります。
研修内容を行動に繋げる施策を行うために注目されているのが「研修転移」という考え方です。
「研修転移」とは「研修で学んだことが現場で実践される、成果が生み出されること」と定義されており、研修転移を実現させるためには3つのポイントがあります
期待する成果や変化を明確にし行動計画を作る
期待する成果や変化を明確にすることで、目標を達成できたかが明らかになります。研修中・研修直後・研修から一定期間後の3つのタイミングで、下記のように受講生の理想的な状況を具体的に想定しましょう。
- 研修中
- 受講生が現状の問題点を把握できる
- 研修直後
- 受講生が問題を改善するために行動している
- 研修から一定期間後
- 受講生が改善行動を続けている
また、自社の課題や研修内容に応じて、最適なゴールを設定しましょう。設定の際は、以下の視点をもってください。
- ■この研修を行わないと、どのようなデメリットがあるか
- ■受講者にどのような変化がおきればよいか
- ■会社がどのように変わればよいか
- ■会社の業績がどのくらい伸びればよいか
受講生の状況を想定できたら、研修前・研修中・研修直後・一定期間到達後の4段階で、企画側がサポートすることを決めます。サポート内容は「受講者が内容を整理できる機会を与える」などが考えられます。
最後に上記の内容を踏まえて、受講者に研修後の行動目標を立てさせましょう。
研修転移が実現しない要因の一つに受講者のモチベーションが低いことが挙げられます。これを防ぐために研修後の行動計画を受講者自身に考えさせることは非常に効果的です。
受講者が行動計画を実行に移しているか、成果が出ているかを継続的に評価・フォローすることも重要になるので、この後に紹介する2つのポイントも参考にしてください。
受講者の変化を定期的に評価する
受講者の変化を定期的に評価することで、研修目的の達成具合を確認できます。評価方法は、カークパトリックの「4段階評価モデル」が有名です。それぞれの項目(段階)と詳しい内容は、以下のとおりです。
- 反応
- 研修直後アンケート結果から受講者の満足度や理解度を確認する
- 学習
- 研修直後テスト結果から学習の習得状況を確認する
- 行動
- アンケートやヒアリングで受講者の行動を確認する
- 成果
- 研修目的が達成されたか確認する
上記のうち注意が必要なのは、研修から一定期間後に実施する「行動」と「結果」です。何もしないと時が経つにつれ成果が薄れていくため、目標を達成するには継続的なアフターケアなどが必要です。しかし、手動で学習状況やその効果をすべて管理するのは骨が折れます。
そのような時におすすめなのがLMSです。LMSは受講者情報やテスト結果などが保存されている学習システムです。eラーニングの利用履歴を一目で確認でき、受講者の管理が効率化します。
上司によるフォローアップを実施する
上司によるフォローアップは、受講者のモチベーションアップや研修後の学習継続性を高める効果があります。
たとえば「お前には期待している。研修でも頑張れ!」と声をかければ、研修に行きたくない受講生のやる気も少しは上がるでしょう。また、研修後に「研修はどうだった?」と声をかければ、受講者も気持ちよく研修内容のアウトプットができます。
上司によるフォローアップは、1か月・2か月・3か月というように、定期的に実施しましょう。研修内容を頭に入れただけで終わらせないために、具体的な行動に移させるのがポイントです。
思ったより成果が得られない場合は、改善点を明示し受講者に行動を修正してもらいましょう。研修で学んだ内容は、一朝一夕で身に付くものではありません。継続性することで初めて仕事で使えるスキルになるのです。
研修転移を促進する「ハイブリッド研修」とは
研修の効果を最大化する研修転移を促進するヒントとして「ハイブリッド研修」が挙げられます。
「ハイブリッド研修」はブレンディッド・ラーニング(Blended Learning)とも呼ばれ、対面型集合研修(ILT)の実施効率を上げるためにeラーニングを組み合わせる研修方法のことです。
ハイブリッド研修としてeラーニングを取り入れることで、受講者は研修の内容の反復学習ができ知識を記憶に定着できます。
また、対面研修を実施する前にeラーニングで受講者に事前学習をさせることで、演習やロールプレイングの効果を高めることも可能です。
例えば新人研修の場合、業界知識や製品紹介など座学で済む内容はeラーニングで研修を実施できます。対面研修ではマナーや実務スキルなどの演習・ロールプレイングのみを実施することで、研修期間を短縮しコストの削減が期待できます。
やりっぱなし研修を解消し、教育の質を向上させよう!
やりっぱなし研修が発生するのは、研修目的や評価基準が不明確で、受講者のモチベーションが不足しているからです。
研修を最大限生かすには、期待する成果を明確にして、受講者の変化を定期的に評価しましょう。上司によるフォローアップで、モチベーションや継続性を上げることも重要です。
やりっぱなし研修を解消し、教育の質を向上させましょう。