企業が内定者に渡す書類
企業が応募者の採用を決めたときに、内定者に渡すべき書類を見ていきましょう。
採用通知書(内定通知書)
採用通知書とは、その名の通り、採用が決定したことを内定者に知らせる書類です。新卒の場合は内定通知書、中途採用の場合はオファーレターとも呼ばれます。
最近は特にメールやSNSなどの通信手段も発達しており、更に売り手市場により複数の企業に応募している求職者も多いため、採用が決まったらまずは取り急ぎ電話やメールで内定を伝え、口頭で内諾を得ておくことをおすすめします。採用通知書を送付するのはその後でも構いません。
採用通知書の発行は法的義務ではないため、特に必須とする項目というのはありませんが、以下の内容を記載するのが一般的です。
- ■採用予定年月日
- ■勤務先
- ■部署・役職
- ■労働条件(給与・休日など)
- ■問い合わせ先
封書で送付するのが一般的ですが、最近ではメールの添付ファイルとして送付するケースも珍しくありません。最終選考実施後、1週間程度で送付するのが基本です。
また、採用通知書は次の項で紹介する入社承諾書などと合わせて送るのが一般的です。
一旦「内定」を出した場合は、「労働契約の承諾」という意味で、一種の契約としての拘束力を持つこととなりますので、内容には間違いのないように注意しましょう。
入社承諾書のフォーマット
入社承諾書も同様に法的義務のある書類ではありませんが、入社する側が自身の入社の意思を表明することで双方の同意を確認し合うという目的があります。採用通知書への返事としての形式で、被採用者が必要事項を記入して返送します。
入社承諾書もフォーマットは決まっていませんが、以下のような項目を記載した様式を被採用者へ送り、記入してもらう形にすると良いでしょう。
- ■記入日
- ■宛名(代表取締役社長が基本)
- ■題名(「入社承諾書」「内定承諾書」
- ■採用通知受領日
- ■入社承諾文言
- ■入社承諾後は正当な理由なく入社拒否しない旨
- ■所定の書類を期限までに提出する旨
- ■伝えるべき事柄(住所変更など)を速やかに伝える旨
上記を記載するほか、署名と捺印の欄を設けて被採用者に記入してもらうのが一般的です。返信用封筒を同封しておくと喜ばれるだけでなく、切手や封筒を用意する手間が省けるので、返送日程の短縮にもつながります。
労働条件通知書(労働契約書)
採用通知書を送り、入社承諾書の返送を確認でき次第、労働条件通知書(雇用契約書)の作成を始めましょう。
労働条件を採用者へ明示することは、法的に義務付けられています。また、労働条件の中でも雇用期間や賃金などの重要事項については、口頭ではなく書面での明示が義務付けられていることから、「労働条件通知書」または「労働契約書」などのテンプレートをあらかじめ用意しておくと、必須項目をもれなく被採用者へ通知することができます。
書面での明示が義務付けられている項目は下記の通りです。2019年4月より、書面だけでなくFAXやEメールなどでの通知も可となりました。
- ■労働契約期間(期間の有無や更新)
- ■就業場所
- ■従事する業務
- ■始業・終業時刻や休憩時間、休日
- ■賃金(計算方法や締日、手当、昇給、支給日)
- ■退職・解雇について
参考:
労働契約締結時の労働条件の明示|厚生労働省
「労働契約書」として交付する場合は2部作成し、使用者・被採用者双方の署名が必要です。これに対し「労働条件通知書」は使用者の署名のみで交付すれば済みます。
要は必要な項目が書面で通知されてさえいれば良いので、契約書と通知書どちらの形式にするかは、社内で検討して決定しましょう。
採用確定後に企業がやるべき手続き
続いて、採用確定後に企業が行うべき手続きを見ていきましょう。
健康保険・厚生年金保険の資格取得
社会保険のうち、健康保険と厚生年金保険はほとんどの従業員が加入することになります。企業は、従業員を雇用してから5日以内に手続きを行いましょう。
勤務時間の短いパートタイマーでも、一定の条件を満たせば加入義務がありますので、注意しましょう。
提出する書類は「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」です。従業員の標準報酬月額を記入する欄があるため、採用後に見込まれる1ヶ月あたりの平均給与をあらかじめ算出しておきましょう。
また、条件に応じて以下の書類が必要になります。
- 扶養家族がいる
- 健康保険被扶養者(異動)届
- 被扶養配偶者がいる
- 国民年金第3号被保険者届
扶養家族の認定には同居の有無・収入など複数の条件がありますので、従業員からの申し出があった場合は、必ず条件に該当しているかを確認しましょう。また、届出用紙の一部は従業員・被扶養者に直接記入してもらう項目があるため、受け取った際に記入漏れがないかよく確認しましょう。
資格取得届・扶養異動届にはそれぞれマイナンバーの記載も必須ですので、採用当日までに本人から提出を受けておくとスムーズに手続きできます。受け取ったマイナンバー情報(通知カードのコピーなど)の取り扱い方法は、マイナンバー法で定められていますので、くれぐれも厳重に行ってください。
参考:
社員を採用したときの手続き| 日本年金機構
雇用保険の資格取得
雇用保険は従業員の失業・雇用継続のため保証です。具体的には育児・介護等で給与がもらえなくなった際の補償や、退職した時の失業保険などがあります。こちらも週20時間以上の勤務など加入条件があります。管轄のハローワークに「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しましょう。ただし、前職がある従業員の場合は「雇用保険被保険者証」の有無に応じて以下の手続きが必要です。雇用保険番号というのは1人につき1番号なので、これまでに一度でも雇用保険に加入したことのある人は同じ番号が付与されます。
- 「雇用保険被保険者証」がある場合
- 「雇用保険被保険者証」に書かれた雇用保険者番号を、「雇用保険被保険者資格取得届」に記載する。
- 「雇用保険被保険者証」がない場合
- 以下の4つの情報で手続きを行う。
-
- 1.雇用保険者番号(わからない場合は、2~4の情報を元にハローワークで照合してもらいます)
- 2.前職の会社名
- 3.前職の在籍期間
- 4.前職の連絡先・住所
所得税・住民税の届け出
会社は社員から源泉徴収をして、代わりに所得税を納めなければなりません。社員に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいましょう。
同年中に前職がある社員の場合は「給与所得等の源泉徴収票」も提出してもらう必要があります。採用日に間に合わない場合は、年末調整時期までに準備してもらいましょう。
また、住民税も所得税と同様に源泉徴収して企業が代理で納めることが可能です。これを「特別徴収」といいます(自分で納めることは「普通徴収」といいます)。特別徴収を行う場合は以下の手続きが必要です。
- 前職で特別徴収を受けていて、現職でそれを引き継ぐ場合
- 「特別徴収にかかる給与所得者異動届出書」を、納付先市区町村に提出します。
- 普通徴収から特別徴収に切り替える場合
- 以下の2つを納付先市区町村に提出します。
-
- 1.「特別徴収への切替申請書」
- 2.未使用の住民税納付書あるいは納付済み領収書
納付先市区町村というのは、その年の1月1日時点に居住していた市区町村になりますので、転職を機に引っ越してきた人などは、引っ越し前の市町村になっている場合もあります。また、提出期限は各市区町村が定めているため、早めに確認しましょう。
労働者名簿の作成
労働基準法 では、企業が労働者の名簿を作成し管理することが義務付けられています。名簿は労働基準監督署のチェック対象であるため、適切に管理しましょう。
労働基準法では被雇用者について以下の9つを名簿に記載することが定められています。
- ■氏名
- ■生年月日
- ■性別
- ■住所
- ■従事する業務の種類
- ■雇入年月日
- ■履歴(一般的には社内での異動・昇進等の履歴)
- ■退職年月日とその事由(解雇の場合は理由も記載する)
- ■死亡年月日とその原因
業務を効率化する「採用管理システム」とは
採用活動は、採用前の準備から採用後の手続きまでやるべきことが多く大変です。そこで、採用管理システムの導入をおすすめします。
採用管理システムとは、その名のとおり採用活動を円滑化するITツールです。応募者の情報管理や面接日程調整など、採用に関する多くの機能を備えています。
これらの機能で業務が円滑化すれば、採用活動に従事する社員の負担が減少するでしょう。その結果、採用活動の質が高まるだけでなく、採用後の手続きに回せる余力も大きくなります。
また、採用管理システムで応募者の情報を一括管理できるため、手続きの際の情報確認も簡単になります。分かりやすくまとまっていれば、採用前と採用後手続きで担当者が異なっていても、スムーズに引き継げるでしょう。
採用の手続きを確認し業務を効率化しよう
採用後、企業が内定者に提出する書類は以下のとおりです。
- ■採用通知書
- ■入社承諾書
- ■労働条件通知書(雇用契約書)
採用後は、健康保険・厚生年金保険の資格取得、雇用保険の資格取得、所得税・住民税の届け出、労働者名簿の作成が必要です。
これらの業務の負担を軽減するには採用管理システムを活用することが有効です。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。