BPRとは
BPRとは業務プロセスを抜本的に改善し、作業工程を効率化することです。Business Process Re-engineeringの略で、日本語では「業務プロセスの再設計」と訳されます。既存のプロセスを変更するのではなく、一からプロセスを再構築するのが特徴です。
BPRの目的は、既存プロセスの「ムリ・ムダ・ムラ」を省き、効率化を図ることです。業務プロセスにはどうしても無駄が発生するため、定期的なBPRが必要になります。なお、業務改善との違いは、改善する内容です。業務改善は作業の内容を変えますが、BPRはプロセス自体を見直して業務効率化を目指します。
働き方改革においても注目が集まっている
BPRは、マサチューセッツ工科大学のマイケル・ハマー教授によって1990年に提唱されました。長期不況に陥る企業を救うために、1980年代に活躍した日本の製造業をロールモデルにしたそうです。日本でもバブル崩壊後に一時期注目を集めましたが、リストラを推進する風潮が増え始め、徐々にBPRの認知度は低下していきました。
そして、再びBPRが国内で活発になったのはつい最近です。働き方改革を推進する政府の動向を受け、業務プロセスを抜本的に改善するBPRの有用性が認知され始めました。
特に「残業時間の上限規制」は、現状の労働基準法で規制するのが難しく、BPRによる改革が期待されています。最近はBPRを効率的に実行するためのツールも多いです。

ERPとBPRの違い
ERPとBPRはどちらも業務改善に関わる概念ですが、目的やアプローチが異なります。BPR(Business Process Reengineering)は、既存の業務プロセスを抜本的に見直し、最適な業務フローを再構築する取り組みを指します。一方、ERP(Enterprise Resource Planning)は、その再構築された業務プロセスをシステム上で統合管理・自動化するためのITツールです。
観点 | BPR | ERP |
---|---|---|
目的 | 業務プロセスの抜本的な見直しと最適化 | 最適化された業務をITで効率よく運用する |
役割 | 業務の設計・改革 | 業務の運用・管理 |
対象範囲 | 業務フロー全体(人の動き、手順、組織構造) | 業務を支えるデータ・システムの統合 |
実施タイミング | 非効率・分断・属人化が課題となったとき | BPR完了後、業務プロセスに対応したITを導入 |
推進主体 | 経営層・業務部門 | 情報システム部門・業務部門 |
成果の定着手段 | 業務ルールの整備・マニュアル化 | ERPなどのITシステムによる自動化・標準化 |
BPRは、ERPの実行手段
BPRを実行するには、販売管理システムや購買管理システムなどの再構築が必要です。そこで注目を集めたのが、基幹システムを統合管理し、業務プロセスを抜本的に改革できるERPでした。
一方、業務を効率化し事業活動を柔軟に進めるには、ERPでシステムを統合管理し、データを活用するだけでは不十分です。BPRを組み込むことで、ERPに目的が生まれ、利益向上のプロセスを効率的に改善できます。「ERPの導入にBPRの実施は必須」と思っておきましょう。
どちらもMRPの発展をきっかけに普及した
もともと製造業では、在庫管理や部品発注など、生産管理を正確に行うための「MRP」が導入されていました。部品の調達から製品完成までの工数や日程を管理することで、コスト配分を最適化していたわけです。しかし生産管理を正確に行うには、在庫管理や部品発注だけでは足りず、人材や業務プロセスも改善する必要があります。
つまり「MRP」だけでは、製造プロセスを最適化できませんでした。このような背景からMRPには、販売管理や物流管理・人事管理や会計などの、各種機能が付加されるようになりました。その結果、誕生したのがERPパッケージです。
なお、MRPの基本概要やERPとの違いについては以下の記事で詳しく解説しています。
ERPとBPRの導入ポイント
ERPとBPRは、基本的にはBPRから先に導入するのが一般的です。BPRは事業活動の基本かつ重要な要素なので、企業が主体的に決めましょう。導入すべきERPもBPRに左右されるため、正確に行ってください。
その後、ERPを導入しますが、BPRに合わせて追加開発することもあります。そのため、ベンダーや現場からのサポートが欠かせません。現場からクレームがくる場合は、BPRのメリットや導入後の未来を明確に伝えましょう。
ERP導入に伴い、BPRの導入も進めていこう
BPRは、既存プロセスを抜本的に見直し、コストやサービス品質を改善させます。一方ERPは、基幹システムの統合管理手法です。BPRと連動させることで、大きな効果を発揮します。
実務では、先にBPRを導入するのが一般的です。ERPは、ベンダーや現場からのサポートを受けながら導入しましょう。
