人事異動の時期と内示はいつ?
人事異動の時期は、会社によって違います。内示は、正式な発令(辞令)の前に、本人へ異動を知らせることです。ここでは、時期と内示の目安を公的な調査をもとに紹介します。
人事異動はいつ行われる?
人事異動の時期は、企業によってさまざまです。会社の年度の始まりや組織の見直し、新しく入った社員の配属などにあわせて決めることが一般的です。
そのため、どの会社にも共通する決まった月があるわけではありません。自社の時期を知りたい場合は、就業規則やこれまでの異動の時期を確認するとよいでしょう。
内示はいつ言われる?
内示をいつ伝えるかは、会社ごとの運用で決まります。目安として参考になるのが、労働政策研究・研修機構(JILPT)が2017年に公表した「企業の転勤の実態に関する調査」です。
この調査は、全国の常用労働者300人以上の企業を対象に、2016年度(2016年8月~9月)に行われました。転勤の打診を何日前までに行うかも聞いています。国内転勤では「2週間超~1ヵ月前」が34.9%で最も多く、次いで「1ヵ月超~2ヵ月前」が32.5%でした。
転勤の場合、おおむね2週間~2か月前に打診する会社が多いといえます。
参考:調査シリーズNo.174「企業の転勤の実態に関する調査」|労働政策研究・研修機構(JILPT)
人事異動の周期は何年?
同じ調査では、人事異動の頻度は「3年」が27.9%で最も多く、次いで「5年」が18.8%でした。ただし、半年ごとに異動がある会社や、組織の見直しにあわせて行う会社もあります。
また、幅広い業務を経験して従業員にさまざまな知見を得てもらう、ジョブローテーションを導入している企業もあります。そのような企業では、定期的に異動があります。
内示から発令までの流れ
人事異動は、一般的に「異動の決定→内示→発令(辞令)→着任」の順に進みます。順番や期間は会社ごとの運用で決まるため、自社のルールを確認しておきましょう。
異動の決定から内示まで
まず、事業の計画や欠員の状況をもとに、異動の対象者を選びます。対象者の経歴や評価、家庭の事情なども確かめたうえで、異動先を決めます。
転居を伴う異動では、子育てや家族の介護など、本人の事情を面談などで聞いておくと、内示のあとの話し合いがスムーズです。
内示と辞令(発令)の違い
内示は、正式な発表の前に、本人や関係する上司へ異動を知らせることです。辞令は、会社が正式に異動を命じる通知です。辞令を出すことを発令といいます。
内示の時期や伝え方は、会社ごとの運用で決まります。内示の段階で本人の事情を聞き、必要があれば条件を見直す会社もあります。
発令から着任・引き継ぎまで
発令のあとは、着任の日までに業務の引継ぎを進めます。指示する際は、まず現在の業務内容を洗い出しましょう。そして、属人化している業務の共有・引継ぎに必要な時間・引き継ぎ先などを明らかにするように指示しましょう。業務引継ぎの大枠やスケジュールを上司に報告し、承認を得るように伝えるとスムーズに行えます。
内示の情報が漏れないようにする
内示は、正式な発表の前の情報です。発令の前に広まると、本人や周りの社員が混乱したり、取引先に誤った情報が伝わったりするおそれがあります。
内示を伝えるときは、正式な発表まで口外しないよう本人に伝えましょう。人事の資料を扱える人を限ることも大切です。
人事異動の主な種類
人事異動には、部署や勤務地の変更だけでなく、昇進や降格、出向、転籍などさまざまな種類があります。実施目的や従業員への影響が異なるため、それぞれの違いを理解したうえで対応することが重要です。
配置転換
配置転換とは、同じ企業内で部署や職種、勤務地などを変更する人事異動です。従業員のスキルや経験を活かした適材適所の配置、欠員補充、組織活性化などを目的に実施されます。
昇進・昇格
昇進は役職が上がること、昇格は社内の等級や資格が上がることを指します。どちらも従業員の評価や能力、組織上の必要性に応じて行われる人事異動の一種です。
出向・転籍
出向は、雇用関係を維持したままグループ会社や関連会社などで勤務することです。一方、転籍は元の会社との雇用契約を終了し、異動先の企業と新たに雇用契約を結ぶ点が異なります。また、出向の命令が権利の濫用にあたる場合、その命令は無効になります(労働契約法第14条)。
人事異動をおこなう際の3つのポイント
人事異動をおこなう際の3つのポイントを説明します。
経営方針や経営戦略を考慮
人事異動は、事業戦略や要員計画にもとづいて行われることが一般的です。人事異動をつうじて、適材適所の人員配置をし、最終的には組織力の向上を目指します。組織力を高めるために、経営方針や経営戦略を考慮しましょう。会社にも従業員にも適した人事異動を行うようにしてください。
従業員の本音を聞き取り
人事異動は、会社だけでなく従業員の立場も考えて実施するのが理想です。従業員の立場を理解するには、面談や1on1などをとおして、本音を引き出すことが有効です。
特に、家庭の事情や身体の都合により、時間や場所に制限のある業務を望む従業員もいる可能性があります。従業員の声を聞き、100%の希望をかなえることは難しくとも、従業員の合意を得られる条件に調整できる可能性があります。そのほかにも、従業員のもつスキルなどを再認識して、今後のキャリアに沿った異動ができれば、従業員の合意も得やすくなるでしょう。
人事異動の目的を社内で共有
人事異動は、会社の大きな事業や組織変革にもとづいて行われることもあります。そのような場合には、従業員に組織の体制などを共有する必要があります。大きな変革でなくとも、従業員に人事異動の目的や意図・必要としているスキルなどの詳細な情報を共有するようにしましょう。
人事異動における注意点
人事異動における注意点を解説します。
適材適所を意識
人事異動では、会社の目標を達成するため、適材適所に人材を配置して最高のパフォーマンスを発揮できることが理想です。適材適所の人員を配置するには、どの部署や部門に何人、どういうスキルをもった人材が必要かを明確にしましょう。そのためには、現時点で企業にどのようなスキルをもった人材がいるのかなどをあらかじめ知っておく必要があります。
モチベーションがダウンした社員をフォロー
人事異動は、社員にとって大きな転機です。1からのスタートをきる社員も出てくるでしょう。それにより、以前の職場に自分はもう必要でなくなったのではないか、次の職場でうまくやっていけるだろうか、などとモチベーションが下がってしまう社員がいるかもしれません。
そのような社員には、異動の目的や社員への適度な期待を伝えるようにしましょう。社員をフォローすることも、異動前後の社員へのケアとして重要なことです。
対象の従業員へのていねいな説明
内示の際に、異動になった旨のみ簡単に伝えても、従業員は納得できるでしょうか。人事異動の対象になった従業員に対しては、納得がいくよう、丁寧な説明をおこなうようにしましょう。説明の際に、会社や組織の方向性や異動の目的・基準や適度な期待などをていねいに伝えるようにすると、合意とともに、異動先での向上心をもちやすくなります。
転勤を伴うときは引っ越し・育児・介護に配慮する
転居を伴う異動では、引っ越しの準備や子どもの転校、家族の介護など、従業員の生活への影響が大きくなります。早めに内示を伝え、準備の時間をとれるようにしましょう。
2025年10月からは、妊娠・出産の申出時や子どもが3歳になる前に、勤務地などについて従業員の意向を個別に聞き、配慮することが事業主の義務になりました。
異動を拒否されたときの対応
異動を断れるかどうかは、主に3つの点で決まります。就業規則に異動を命じられる定めがあるか、勤務地や職種を限る合意があるか、命令が権利の濫用にあたらないかです。
就業規則に定めがあり、勤務地や職種の限定がなければ、会社は本人の同意がなくても異動を命じられるというのが裁判例の考え方です。一方、職種を限る合意がある場合、本人の同意なしにその合意に反する配置転換は命じられません。
また、業務上の必要性がない場合や、不当な目的がある場合、通常よりも著しく大きな不利益を負わせる場合は、権利の濫用にあたります。拒否されたときは理由を聞いて説明を尽くし、条件の見直しや異動の取りやめも検討しましょう。
人事異動の手作業が大変な理由
人事異動では、対象者を選ぶために、従業員一人ひとりの経歴や評価、スキル、家庭の事情などを確かめる必要があります。これらをExcelや紙で管理していると、情報を集めて見比べるだけで多くの手間がかかります。
人事評価システムには、評価の記録や従業員の情報をまとめて管理できるものがあります。人事評価システムの選び方やおすすめの製品は、以下の記事で紹介しています。
人事異動の精度を高めるには、人事評価システムの活用も有効です。評価データをもとにした人材配置を行うことで、組織全体のパフォーマンス向上につながります。「自社に合う人事評価システムを診断してみたい」、「どんな観点で選べばいいかわからない」という方向けの診断ページもあります。
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人事異動に関する法律
人事異動に関連する法律は何があるのでしょうか。法律を知っておくことで人事異動の際に正しい対応を取ることができます。
就業規則と配転命令(労働契約法第3条・第7条)
労働契約法第7条では、労働契約を結ぶときに、合理的な内容の就業規則を従業員に周知していれば、その就業規則の労働条件が労働契約の内容になると定めています。ただし、個別に就業規則と違う内容で合意した部分は、その合意が優先されます。
そのため、就業規則に異動を命じられる定めがあれば、会社は配置転換を命じられるのが原則です。一方で、第3条第5項は、労働契約にもとづく権利を濫用してはならないと定めています。異動の命令も、権利の濫用にあたる場合は認められません。
2024年4月から「就業場所・業務の変更の範囲」の明示が必要に
2024年4月から、すべての労働者に対して、労働契約を結ぶときと有期契約を更新するときに、就業場所と業務の「変更の範囲」を書面で示すことが必要になりました。
将来の異動で勤務地や仕事が変わる可能性がある場合は、その範囲を労働条件通知書などで示しておきましょう。
参考:2024年4月からの労働条件明示のルール変更|厚生労働省
男女雇用機会均等法第6条
事業主は、労働者の配置(業務の配分や権限の付与を含む)や昇進、降格、職種の変更などについて、性別を理由に差別的な取扱いをしてはならないと定められています。
参考:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|e-Gov法令検索
育児・介護休業法第26条
就業の場所の変更を伴う配置の変更で、子の養育や家族の介護が難しくなる労働者がいる場合、事業主はその状況に配慮しなければならないと定められています。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律|e-Gov法令検索
人事異動をおこなう理由
人事異動が行われる理由は企業や部署などによって様々ですが、一般的にはどのような理由があるのでしょうか。
他部署の欠員補充のため
欠員補充のために人事異動を実施します。欠員には自己都合退職や定年退職、転勤、産休などがあります。人材を採用するのではなく、人事異動により欠員補充するケースです。グループ企業間の出向・転籍による欠員補充もあり得るでしょう。
人材を採用すると採用コストや人件費がかかりますが、人事異動であれば発生するコストは少なくて済みます。また、社内での異動であれば、組織の風土に馴染みやすいでしょう。こうした背景から、欠員補充のために人事異動を実施しやすいという側面もあります。
人材のスキルアップや組織活性化のため
人材のスキルアップや組織活性化を目的とすることも、人事異動をおこなう理由の1つです。日本企業では広範囲の知識や経験を持つジェネラリストを育てる育成方針を採っていることが多く、単一の部署ではなく複数の部署、あるいは複数の職種を経験してジェネラリストとして育てます。
そのため、管理監督者に昇進する時までにさまざまな経験を積んでもらい、マネジメント・リーダーシップのスキルアップを目的として人事異動をおこないます。人事異動が少ないジョブ型雇用であっても、管理監督者候補に対しては本人の同意を得て、複数の部署・職種を経験してもらうことがあるでしょう。
人材がスキルアップしてくれば組織活性化にもつながります。たとえば、本社で経理経験が豊富な人材が支社の営業部に異動し、その人材が活躍すれば、営業部全体にコスト意識が芽生える効果が得られます。
企業戦略のため
人事異動は企業戦略の実行のためにおこなわれるケースもあります。新規事業に必要な人員を社内もしくはグループ会社から調達するため、人事異動をおこなうのです。また、組織を立ち上げる時も同様で、社内・グループ会社から人事異動をおこないます。
不正行為を防止するため
不正行為を防止するのも、人事異動をおこなう理由の1つです。同じ部署に長くいると、仕事が属人的になったり、あるいは第三者との関係が深くなったりすることで、不正行為が起こりがちとなるので、定期的に人事異動をおこなって不正行為を防止するのです。従業員に対しても定期的な人事異動は「不正行為を防止するため」と伝えて浸透すれば、不正行為抑止につながるでしょう。
人事異動の時期に関するよくある質問
人事異動の時期や内示について、よく寄せられる疑問をまとめました。
- ■Q1. 人事異動はいつ決まりますか?
- 会社によって違います。会社の年度の始まりや組織の見直し、新しく入った社員の配属などにあわせて決めるのが一般的で、どの会社にも共通する決まった月はありません。
- ■Q2. 内示から異動まではどれくらいですか?
- 会社ごとの運用で決まります。労働政策研究・研修機構(JILPT)は2016年度に、常用労働者300人以上の企業へ「企業の転勤の実態に関する調査」を行いました。この調査では、国内転勤の打診は「2週間超~1ヵ月前」が34.9%で最も多く、次いで「1ヵ月超~2ヵ月前」が32.5%でした。
▼人事異動の時期と内示の目安はこちら! - ■Q3. 内示を断ることはできますか?
- 就業規則に異動の定めがあり、勤務地や職種の限定がなければ、原則として会社は異動を命じられます。ただし、職種を限る合意がある場合や、命令が権利の濫用にあたる場合は別です。まずは事情を伝えて会社と話し合いましょう。
- ■Q4. 内示を受けたら周りに話してもいいですか?
- 正式な発令の前は、話さないのが基本です。内示は正式な発表の前の情報で、会社から口外しないよう求められることもあります。家族に相談するときは、話してよい範囲を会社に確認しましょう。
人事異動の時期や注意点を知って適切におこなおう
人事異動の時期や内示のタイミングは、会社ごとに違います。内示から発令までの流れと、法律で求められる配慮を押さえておきましょう。人事異動をおこなう際の3つのポイントは以下のとおりです。
- ・経営方針や経営戦略を考慮
- ・従業員の本音を聞き取り
- ・人事異動の目的を社内で共有
人事異動における注意点を押さえて、適切な人事異動を行いましょう。



