人事異動の時期とは
人事異動の時期を説明します。
いつ頃おこなわれる?
人事異動の時期は、企業によってさまざまです。日本の企業では、事業戦略後の要員計画に沿って行われることが一般的です。そのため、9月や3月・決算期・年度末にあわせて見直される事業戦略の後に行われることが多いようです。
周期はどれくらい?
人事異動が行われる周期も、企業によりけりです。半年周期の企業もあれば、大きな組織変革や事業戦略の見直し単位で行われる企業もあります。平均すると、2年~5年が一般的な平均周期といえるでしょう。
また、幅広い業務を経験して従業員にさまざまな知見を得てもらう、ジョブローテーションを導入している企業もあります。そのような企業は、1年~3年周期を目安に、定期的に異動があります。
内示が多く行われる時期は?
人事異動の内示とは、人事異動についての告知を前もって受けることです。転居をともなう場合は、人事異動の1か月前を目安に、所属の上司または人事担当者から連絡があり、面談などをとおして告知されることが一般的であるといわれています。転居をともなわない場合は、2~3週間前になることもあります。
業界などによる違い
人事異動の内示がされる時期は、業界、職種によってさまざまです。アパレル業界では、夏や冬のセールがあることからも、繁忙期を過ぎた時期に人事異動を行うことが多いようです。ほかにも、役所勤めなどの公務員は幅広い部署を幅広く経験できるよう、1年~3年周期を目安に、定期的に異動があります。
人事異動をおこなう際の3つのポイント
人事異動をおこなう際の3つのポイントを説明します。
内経営方針や経営戦略を考慮
人事異動は、事業戦略や要員計画にもとづいて行われることが一般的です。人事異動をつうじて、適材適所の人員配置をし、最終的には組織力の向上を目指します。組織力を高めるために、経営方針や経営戦略を考慮しましょう。会社にも従業員にも適した人事異動を行うようにしてください。
従業員の本音を聞き取り
人事異動は、会社だけでなく従業員の立場も考えて実施するのが理想です。従業員の立場を理解するには、面談や1on1などをとおして、本音を引き出すことが有効です。
特に、家庭の事情や身体の都合により、時間や場所に制限のある業務を望む従業員もいる可能性があります。従業員の声を聞き、100%の希望をかなえることは難しくとも、従業員の合意を得られる条件に調整できる可能性があります。そのほかにも、従業員のもつスキルなどを再認識して、今後のキャリアに沿った異動ができれば、従業員の合意も得やすくなるでしょう。
人事異動の目的を社内で共有
人事異動は、会社の大きな事業や組織変革にもとづいて行われることもあります。そのような場合には、従業員に組織の体制などを共有する必要があります。大きな変革でなくとも、従業員に人事異動の目的や意図・必要としているスキルなどの詳細な情報を共有するようにしましょう。
人事異動における5つの注意点
人事異動における5つの注意点を解説します。
適材適所を意識
人事異動では、会社の目標を達成するため、適材適所に人材を配置して最高のパフォーマンスを実施できることが理想です。適材適所の人員を配置するには、どの部署や部門に何人、どういうスキルをもった人材が必要かを明確にしましょう。そのためには、現時点で企業にどのようなスキルをもった人材がいるのかなどをあらかじめ知っておく必要があります。
モチベーションがダウンした社員をフォロー
人事異動は、社員にとって大きな転機です。1からのスタートをきる社員も出てくるでしょう。それにより、以前の職場に自分はもう必要でなくなったのではないか、次の職場でうまくやっていけるだろうか、などとモチベーションが下がってしまう社員がいるかもしれません。
そのような社員には、異動の目的や社員への適度な期待を伝えるようにしましょう。社員をフォローすることも、異動前後の社員へのケアとして重要なことです。
対象の従業員へのていねいな説明
内示の際に、異動になった旨のみ簡単に伝えても、従業員は納得できるでしょうか。人事異動の対象になった従業員に対しては、納得がいくよう、丁寧な説明をおこなうようにしましょう。説明の際に、会社や組織の方向性や異動の目的・基準や適度な期待などをていねいに伝えるようにすると、合意とともに、異動先での向上心をもちやすくなります。
業務の引継ぎを指示
人事異動となると、現在の業務から離れることになるので、引継ぎが必要です。指示する際は、まず現在の業務内容を洗い出しましょう。そして、属人化している業務の共有・引継ぎに必要な時間・引き継ぎ先などを明らかにするように指示しましょう。業務引継ぎの大枠やスケジュールを上司に報告し、承認を得るように伝えるとスムーズに行えます。
対象の従業員に拒否された場合の対処法
雇用契約書に即した人事異動の「辞令」は、基本的に労働者側からは拒否できません。しかし、人事異動についての告知を前もって受ける「内示」は、命令ではないので、従業員にも拒否される可能性があります。その場合は、従業員の合意が得られるように説明し、それでも拒否された場合は異動の条件見直しや異動しないことも視野に入れるようにしましょう。
人事異動に関する法律
人事異動に関連する法律は何があるのでしょうか。法律を知っておくことで人事異動の際に正しい対応を取ることができます。
労働契約法第3条
労働者が入社する時に職種や勤務地を特定して契約している場合、その変更を伴う転勤や異動は、労働者の同意がなければ、使用者が一方的に実施することはできません。配転命令権の濫用(労働契約法第3条第5項)や法令違反になる場合もあります。
参考:労働契約法|e-Gov法令検索
男女雇用機会均等法第6条
使用者は労働者の配置・昇進・降格・職種の変更に関して、性別によって差別をおこなうことを禁止しています。
参考:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|e-Gov法令検索
育児・介護休業法第26条
「労働者の育児・家族介護についての配慮」の必要性が規定されており、労働者を人事異動で転勤させる場合、使用者は育児や家族の介護などに配慮する必要があります。
参考:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|e-Gov法令検索
人事異動をおこなう理由
人事異動が行われる理由は企業や部署などによって様々ですが、一般的にはどのような理由があるのでしょうか。
他部署の欠員補充のため
欠員補充のために人事異動を実施します。欠員には自己都合退職や定年退職、転勤、産休などがあります。人材を採用するのではなく、人事異動により欠員補充するケースです。グループ企業間の出向・転籍による欠員補充もあり得るでしょう。
人材を採用すると採用コストや人件費がかかりますが、人事異動であれば発生するコストは少なくて済みます。また、社内での異動であれば、組織の風土に馴染みやすいでしょう。こうした背景から、欠員補充のために人事異動を実施しやすいという側面もあります。
人材のスキルアップや組織活性化のため
人材のスキルアップや組織活性化を目的とすることも、人事異動をおこなう理由の1つです。日本企業では広範囲の知識や経験を持つジェネラリストを育てる育成方針を採っていることが多く、単一の部署ではなく複数の部署、あるいは複数の職種を経験してジェネラリストとして育てます。
そのため、管理監督者に昇進する時までにさまざまな経験を積んでもらい、マネジメント・リーダーシップのスキルアップを目的として人事異動をおこないます。人事異動が少ないジョブ型雇用であっても、管理監督者候補に対しては本人の同意を得て、複数の部署・職種を経験してもらうことがあるでしょう。
人材がスキルアップしてくれば組織活性化にもつながります。たとえば、本社で経理経験が豊富な人材が支社の営業部に異動し、その人材が活躍すれば、営業部全体にコスト意識が芽生える効果が得られます。
企業戦略のため
人事異動は企業戦略の実行のためにおこなわれるケースもあります。新規事業に必要な人員を社内もしくはグループ会社から調達するため、人事異動をおこなうのです。また、組織を立ち上げる時も同様で、社内・グループ会社から人事異動をおこないます。
不正行為を防止するため
不正行為を防止するのも、人事異動をおこなう理由の1つです。同じ部署に長くいると、仕事が属人的になったり、あるいは第三者との関係が深くなったりすることで、不正行為が起こりがちとなるので、定期的に人事異動をおこなって不正行為を防止するのです。従業員に対しても定期的な人事異動は「不正行為を防止するため」と伝えて浸透すれば、不正行為抑止につながるでしょう。
人事異動の時期や注意点を知って適切におこなおう
人事異動は、決算期・年度末にあわせて見直される事業戦略の後に行われることが多いようです。人事異動をおこなう際の3つのポイントは以下のとおりです。
- ・ 経営方針や経営戦略を考慮
- ・ 従業員の本音を聞き取り
- ・人事異動の目的を社内で共有
人事異動における注意点を押さえて、適切な人事異動を行いましょう。