360度評価でコメントする際のポイント
360度評価では、上司や同僚、部下など周囲の従業員について、それぞれの評価項目に点数をつけたりコメントを書いたりします。まずはお悩みの方が多い、コメントの書き方のポイントを解説します。
- ●問題点や改善点は明確に記載する
- ●誹謗中傷や過剰評価、過小評価は控える
- ●上司に対してはマネジメント力を評価する
- ●部下に対してはスキルや仕事への熱意を評価する
問題点や改善点は明確に記載する
360度評価を行う際には被評価者のよいところだけでなく、悪いところを書くこともありますが、その際は問題点や改善点を明確に記載しましょう。「このような点がよくない」というだけでは単に批判しただけなので、被評価者の気分を害すだけでなく、解決への指針が不明確になります。
誹謗中傷や過剰評価、過小評価は控える
360度評価のコメントを書く際には、被評価者への誹謗中傷や過剰評価、過小評価は控えましょう。360度評価は、あくまでも複数人で評価を行うことにより、被評価者の仕事ぶりや成果を公平に判断することが目的です。
それにもかかわらず誹謗中傷や過剰・過小評価に終始してしまうと、本来の目的から大きく外れてしまうでしょう。自身の感情を混じえず、客観的にコメントすることが大切です。
上司に対してはマネジメント力を評価する
上司に対して評価するのは少々やりにくさもありますが、マネジメント力を評価の対象とするよう心がけましょう。マネジメント力というのは「上司が部下を管理する能力」のことであり、もう少し具体的にいうと「部下が仕事をしやすい環境を整える能力」です。
マネジメント力に優れた上司は部下の動かし方や育成方法に長けており、結果的にチーム内によい雰囲気が生まれ、成果も上がる傾向があります。自分の上司がしっかりとマネジメントを行っているか、またチーム全体を見ているかについて、日頃から注視しておきましょう。
部下に対してはスキルや仕事への熱意を評価する
上司から部下に対して評価を行う際は、部下のもつスキルや仕事への熱意を評価対象にします。スキルは容易に掴めますが、仕事に対する熱意は、普段から部下をしっかりと観察していないと見抜くことはできません。
本人は「やる気があります!」といっていても、実際は手を抜いて仕事をしているケースもあるものです。逆に、一見やる気がなさそうに見えても自分の責任はしっかりと果たし、見えない部分でチームの根幹を支えているような人もいるのではないでしょうか。
上司である以上、そういった部下の見えにくい一面もしっかりと評価の対象に加えなければなりません。そうでないと不公平な評価につながり、被評価者のやる気に水を差してしまいます。
【職種別】360度評価のコメント例(上司・部下・同僚)
それでは、実際にコメント例を見ていきましょう。「接客・営業職」「管理職」「企画・クリエイティブ・エンジニア職」の3つの職種ごとに、評価コメントの例文やどのような点を評価すればよいのかを詳しく解説します。
接客・営業職のコメント例文
接客業や営業職では、売上や営業成績など目に見えた成果が出るため評価が行いやすいでしょう。しかし、あらゆる立場から多角的に評価する360度評価においては、成果だけの評価では不十分です。部署内での協調性や報告・連絡・相談の徹底ぶり、スキルアップなど向上性をもって業務に臨んでいるかといった、日々の業務への取り組みも評価しましょう。コメント例は、以下のとおりです。
【接客業における評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「お客様が来店されたときには必ず笑顔で挨拶し、お客様に気分よく過ごしてもらうことを意識して仕事に励んでいる。常に店内を観察し、お客様のニーズを察知することで、いち早い対応を行っている。」
- ■部下から上司へのコメント
- 「メンバーの業務や進捗を把握し、こまめに声をかけてくれるので、すぐに相談できる環境が整っていると感じる。トラブル時にもすぐにサポートしてくれる。」
- ■同僚へのコメント
- 「イベントやキャンペーン施策を積極的に企画提案し、意欲的に業務に取り組んでいる。手作りのPOPがお客様に好評だった。」
- ■自身へのコメント
- 「アンケートによる顧客満足度が前年を大きく上回った。従業員間での挨拶を推進し、チーム内でよい関係を築いたことによる連携が功を奏したと考えられる。」
【営業職における評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「顧客第一主義を掲げ、常に顧客に意識を向けた営業活動を行っている。顧客から『彼は頼りになる』という評価を受けたこともあり、顧客との関係性は非常に良好である。」
- ■部下から上司へのコメント
- 「顧客の引き継ぎの際に、先方の情報やこれまでのやりとりの経緯などを丁寧に教えてくれる。おかげで序盤から相手に安心感をもってもらえたため、商談がスムーズに行えた。」
- ■同僚へのコメント
- 「資格の取得に意欲的で、その知識を実務に活かせているように感じる。顧客からの問い合わせも多く、厚い信頼関係を獲得しているようだ。」
- ■自身へのコメント
- 「営業成績が前年比120%を達成した。これは、営業チームの連携強化を行ったことが大きく影響している。具体的にはミーティングの密度を濃くしたり、情報共有を徹底したりしたことが挙げられる。」
管理職のコメント例文
上司や同僚が管理職の場合は、主にマネジメント能力について評価するとよいでしょう。チームをよくするためにどのような行動を取っているかを具体的にコメントし、感情論を入れないようにするのがおすすめです。また、管理職である上司から部下へコメントする際は、業務に関する行動面を評価します。対して自身へのコメントは、成果や目標達成率などの数値を挙げて具体的に書きましょう。管理職における評価コメント例は、以下のとおりです。
【管理職における評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「業務効率30%アップという個人の目標に沿って、タスク管理ツールをカスタマイズしたり、部署内フローの改善案を提案したりと具体的に行動している。」
- ■部下から上司へのコメント
- 「業務中の雑談が少し多いのが気になる。ただし、マネージャーとしてチームの雰囲気をよくしようと努めているのが伝わるし、以前よりメンバーと他愛もない会話をするようになった。業務に支障のない範囲で、コミュニケーションをとる機会を別途作って欲しい。」
- ■同僚へのコメント
- 「自身の部署内のメンバーの特性をよく把握していると感じる。コミュニケーションをうまくとりながら、業務の振り分けやフォローを的確に行っている。」
- ■自身へのコメント
- 「管理職に就いてからチーム内の関係づくりと業務効率化を意識的に行い、売上を前年より20%向上させた。具体的には、メンバーに一人で仕事をさせるのではなく、チームを作って仕事をしてもらうように心がけた。」
企画・クリエイティブ・エンジニア職のコメント例文
企画・クリエイティブ・エンジニア職は、特に個人の能力が厳しく評価される仕事でもありますが、やはりチームメンバーとの連携も欠かせません。技術面だけでなく、チーム内でのコミュニケーション能力や、業務効率化をすすめる努力などを評価しましょう。また、自己評価する際は、独りよがりな評価にならないよう、メンバーと協調して仕事を進める意欲もあわせて表明しましょう。企画・クリエイティブ・エンジニア職における評価のコメント例は、以下のとおりです。
【企画職における評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「企画のアイデア出しには大変貢献しているものの、実務が少々苦手なように感じる。企画は形にしてこそ意味が生じるため、最後まで意欲を持って取り組んでほしい。そのためにも、今以上に報告や相談を密に行っていってほしい。」
- ■部下から上司へのコメント
- 「こちらの出したアイデアに対して、いきなり是非をいうのではなく、具体的な改善案を出してくれる。また、よりよくするにはどうしたらよいか、考えを促すような質問をしてくれるので、自己成長につながると感じる。」
- ■同僚へのコメント
- 「日頃から、他部署とも積極的にコミュニケーションをとっているように見える。そのため、業務の連携をスムーズに進めてくれるので助かっている。」
- ■自身へのコメント
- 「〇〇という企画の反響が大きく、平均してほかの企画より150%の売上を達成した。企画発案者だからといって情報を溜め込まず、チームに共有したことが功を奏したのではないかと思う。」
【クリエイティブ職における評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「ディレクターを任せた〇〇プロジェクトでは、関係者への伝達漏れなどのミスが目立った。普段から自分一人で頑張ってしまいがちなので、周囲のメンバーに業務を割り振る采配を今後の課題としてほしい。」
- ■部下から上司へのコメント
- 「出張などでオフィスにいない際の承認フローを事前に細かく決めて周知してくれていたため、不在時にもトラブルなく迅速に対応できた。」
- ■同僚へのコメント
- 「クライアントの要望に柔軟に応えられるような提案力が強みだと感じる。成果物に対する分析も的確で、資料がわかりやすいとチーム内でも評判である。」
- ■自身へのコメント
- 「今年度に行ったデザイン案件は〇〇件だった。前年に自分が行った案件数と比べると1.5倍以上の消化率で、業務効率化に寄与したと自負している。」
【エンジニア職における評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「作業工程の無駄を省くために改善案を提案し、4件の提案が採用され約10%のコストダウンに成功した。日頃から積極的に業務改善案をだしてくれる姿勢は非常に評価できる。」
- ■部下から上司へのコメント
- 「チームメンバー一人ひとりと面談を行い、配置転換やチームワークをよりよくするような施策を実践している。おかげで前よりも同僚とコミュニケーションをとりながら、作業を行えるようになった。」
- ■同僚へのコメント
- 「チーム全体の進捗を見ながら、納期を見据えて早めに作業の指示を出してくれるため、スケジュールに余裕をもって設計が完了できた。周囲へのフォローも細やかだと感じる。」
- ■自身へのコメント
- 「業務効率化を促進するために、専用のツールを開発した。活用することで1〜2割程度の時間短縮につながり、チームメンバーにも喜ばれた。」
【評価種目別】360度評価のコメント例(上司・部下・同僚)
人事評価制度には、「成果・能力・情意」といった3つの評価軸があります。これらの面から評価コメントを書く際に、役立つコメント例を紹介します。
成果評価のコメント例文と注意点
成果評価とは、売上や営業成績、個人の目標達成度などを客観的に評価する手法です。具体的な数字を挙げて評価コメントを書くとよいでしょう。ただし、目標値に対して達成したかどうかだけを書くのではなく、未達成だった場合にはほかのよい点を挙げるなどの工夫が必要です。コメント例は、以下のとおりです。
【成果を重視した評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「売上目標に対し80%の達成率だった。ほかのメンバーは全員100%達成していたため、努力不足や認識の甘さが原因のように感じる。今後は顧客情報にしっかりと目を通し、アプローチすべき顧客とそうでない顧客をしっかりと分けてほしい。
しかし、チームメンバーとしっかり連携を取り営業活動に励んでいた点は評価に値する。自分の担当ではない顧客の折衝にも手を抜かず行っており、それゆえ時間がうまく使えず達成率が悪かった面もあるだろう。」
- 「日々やるべきことをリスト化し漏れなく取り組んでいるため、無事売上目標を達成した。ToDoリストにしっかりと柔軟性をもたせ、今後も意欲的に仕事に取り組んでもらいたい。」
- ■自身へのコメント
- 「今月は先月に比べ20%の売上減となった。理由としては、商談の途中キャンセルが複数件あったことが挙げられる。今後は顧客とのコミュニケーションを疎かにせず、最低でも月2回以上は訪問することを目標とする。」
- 「今月は先月に比べ150%の売上をあげ、新規顧客も3社獲得できた。個人的な新規アプローチのノルマを設けており、それが形になってきたように感じる。」
能力評価のコメント例文と注意点
能力評価は業務を行ううえで、必要な知識やスキルから評価を行うものです。能力評価は必ずしも数値で表せるものではありませんが、客観的な指標があればそれを用いましょう。また、能力評価はどうしても主観的になりがちですが、「結果としてどうなったか」を記載することにより、それを防げます。コメント例は、以下のとおりです。
【能力を重視した評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「論理的な思考力、物事をフラットに見る視点を活かし、実現性の高い企画を次々と提案してくれている。成果も上々であり周囲の評価もよいが、より斬新なアイデアを出せるようになれば一皮も二皮もむけるだろう。」
- 「チーム内でいまいち個性や能力が、発揮できていないように見受けられる。シャイな性格のせいか、なかなかコミュニケーションを図れないようだが、ユニークなキャラクターを持っていると思うため、さらに自信をもって周囲と接してほしい。」
- ■自身へのコメント
- 「今期はチーム内での情報共有をテーマとし、改善に努めた。具体的には既存システムの再活用や、些細なことでもいい合える関係づくりに注力した。その甲斐あってか、顧客に関する詳しい情報を各メンバーで共有でき、顧客満足度の向上につながっている。」
- 「自分の強みである『コミュニケーション力の高さ』を活かして業務に取り組んでいる。チーム内の潤滑油としてメンバーの間を取りもったり、顧客のクレームを先読みして対処したりすることで、顧客満足度の向上につなげている。」
情意評価のコメント例文と注意点
情意評価は、業務への取り組み方や積極性、協調性などを評価する手法です。比較的に主体的なコメントになりがちなため、具体的な事実を添えて客観的に評価するとよいでしょう。自身の評価に対しては、今現在取り組んでいることをアピールするのもおすすめです。コメント例は、以下のとおりです。
【情意を重視した評価コメント例】
- ■上司から部下へのコメント
- 「積極的に改善提案を行ったり、プロジェクトへの参加表明をしたり、仕事に対する意欲が十分みなぎっているように感じる。積極性は何よりの武器になるため、その強みを活かして今後とも活躍してほしい。」
- 「仕事に対する姿勢が消極的で、意欲に欠けているように見える。それではせっかくの能力の高さを活かせず勿体なく感じるため、モチベーション管理を重視してほしい。」
- 「会社で受講しているセミナーだけではなく、プライベートでも積極的に知識を吸収すべく勉強に励んでいるように見受けられる。しかし、熱意があるあまりに体調を崩して仕事を欠席することもあったため、体調管理には気を配って頑張ってほしい。」
- ■自身へのコメント
- 「スキルアップを図るために、〇〇についての勉強を始めた。実務でも積極的に〇〇の知識を活かせるプロジェクトに志願し、経験を積んでいる。〇〇に関するスキルが十分に身についたら、次は△△の勉強を始めようと考えている。」
- 「仕事に対するモチベーションを維持するために、休日の過ごし方を意識している。具体的には、オンオフの切り替えを明確にするために、週に一日だけは仕事に関する情報を一切見ないようにしている。」
なお、3つの評価軸について詳しく解説した記事はこちらからご覧いただけます。
自他ともに満足度の高い人事評価の実現へ
360度評価を用いた多角的な人事評価は、公正で客観的に行えるため、導入する企業が増えています。評価コメントに悩まれる方は少なくありませんが、相手のよい点や改善点をわかりやすく的確に書き出すことがポイントです。
また人事評価業務を効率化するには、人事データベースとしても役に立つ人事評価システムの導入がおすすめです。360度評価に対応した製品も多くありますのでぜひ参考にしてください。