人事評価で活用する目標設定とは
人事評価制度は、業務における従業員の成果や能力、勤務態度などを多角的に評価する仕組みで、結果をもとに人材の適性配置や育成、給与査定を検討します。四半期や半年、または1年ごとに実施されることが多いです。
人事評価を行うにあたり、最初に目標設定を行い、期末にどれだけ目標を達成できたかを指標にします。目標があることでモチベーションを維持しながら業務に臨めるほか、目標達成のために必要なスキルや現状の課題点が明確になり、効率的に能力向上できるでしょう。結果として企業全体の生産性の向上も期待できます。
人事評価における目標の重要性
目標を設定して人事評価を行う重要性について解説します。
人事評価の材料となる
人事評価で目標設定が重要な一番の理由は、設定した目標の達成率や達成するまでの業務姿勢などが、従業員それぞれの評価材料として活用できる点にあります。特に目標の達成度合いは客観的な数値が出せるため、従業員本人も人事評価に納得してくれやすいです。そのためにも、上司と相談しながら自身で目標を立てることが必要でしょう。
適切なポジションの獲得につながる
従業員が達成するべき目標のために日々努力し目標を成し遂げた場合、その業務姿勢や目標の達成度を評価材料として昇格や人事異動の決定を行います。従業員は目標を達成できれば適切なポジションの獲得につなげられ、一方で管理職側でも従業員の強みや特性、スキルや経験を活かした適材適所への人員配置が可能です。
企業と従業員の関係性向上に役立つ
企業のビジョンを理解したうえで同じ方向性の個人目標を立てれば、企業と従業員が一丸となって達成に向けて努力できるので、相互理解の促進やパートナーシップの向上につながります。そのためには目標設定だけでなく、目標管理の過程でしっかりとフォローを行うことも必要です。
目標設定の5つのポイント「SMART」
目標設定を行うには、企業の目標や従業員が求められている役割を理解しなければなりません。明確な目標設定で確実に達成できるものを考えましょう。ここからは、目標設定を行う際に不可欠な指標である「SMART」について解説します。SMARTは目標設定のポイントの頭文字を表し、具体的には以下の内容を指します。
「SMART」の5つの要素
- ■Specific:具体的な目標
- ほかの人が見てもわかるよう明確な目標を立てる。「5W1H」を組み込むとなおよい。
- ■Measurable:測定可能な目標
- 達成の程度が可視化できるよう、極力定量化できるような目標にする。
- ■Achievable:達成可能な目標
- 現実的に達成可能な範囲で目標を設定する。
- ■Related:企業の目標に関連した目標
- 目標を企業理念やビジョンと関連付ける。
- ■Time-bound:期限などの時間制約をつける
- 目標達成を引き伸ばさずに、いつまでに行うか期限を決める。
これらの要素すべてが目標に落とし込めているか、今一度確認してみてください。また目標設定後は、達成に向けてどのように行動していくかのプランもスケジュールとあわせて明確にするといいでしょう。
目標設定例と人事評価
目標設定のポイントを知ったところで、つぎに具体的な設定の方法を紹介します。まずは一般企業に共通する、人事評価での目標設定例を解説します。
数値目標を立てられる場合
数値目標を立てられる場合は、従業員と話し合い、具体的な数字を目標に盛り込みましょう。具体的な数字を示すことで説得力のある目標になり、本人も納得のいくものになるでしょう。「新規顧客を◯件獲得する」「アポイントを◯件獲得する」など、本人が努力をすれば実行可能な範囲での目標を設定するようにしましょう。
また、数値以外にも目標を達成することで得られるスキルや経験などを目標に盛り込むことをおすすめします。
数値目標が立てられない場合
具体的な数値目標が立てられない場合は、従業員が目標を達成した場合に「形」として残せるものを目標に設定しましょう。例えば、「◯◯の効率化を図るため、◯◯のマニュアルを作成する」など、業務における改善策を挙げ、その行動内容を明確に示すことで、具体性のある目標になります。
加えて自己啓発や業務に臨む姿勢なども目標に盛り込みましょう。
自己啓発で目標を作る場合
上記の目標設定例以外には、自己啓発を目標に設定する場合もあります。「セミナーに自発的に参加する」「〇〇取得のために通信教育受講」など、自己啓発やスキルアップを図っている点を従業員の目標に盛り込むのもよいでしょう。
また、後輩の指導育成を記載するようにすると評価につながりやすくなり、本人も納得できる目標設定ができるようになります。
【職種別】目標設定例と人事評価
実際に目標を設定する際は、職種ごとに業務内容が異なるため、目標の立て方も変える必要があります。それぞれの人事評価における目標の設定方法と目標例を解説します。
公務員
国家公務員や地方公務員は、年1回の能力評価と年2回の業績評価で人事評価が行われます。
管理職が設定した組織目標を、部下職員ごとの職位や役割分担に応じた目標に細分化し、具体的な目標を盛り込みます。例えば、「◯◯制度の再検討にあたり、必要性の低い規制を廃止し、ニーズを基にした改善策を検討する。期末には数字で示せるようにする」など、具体的な事案を盛り込んだ目標を決定します。そして期末に目標達成状況を勘案し、人事評価を行います。
営業職
営業職の場合は、従業員やチームと話し合い、売上目標や契約本数などの具体的な数値を目標設定に盛り込みます。「◯月までにアポイントを◯本とり、前年比◯%の売上を上げる」など、数値だけではなく、その目標に至るまでのプロセスや期限などを目標に盛り込みましょう。数値の設定は、部署全体の目標との擦り合わせを行い前期より高い数値を目標として設定します。
製造業
製造業の目標設定は各従業員が果たすべき役割を基に、その役割での貢献度を目標に設定し、ラインごとの業績・成果項目などで目標を数値化します。「◯◯商品のコストダウンを◯%図る」など、数字を示すことで本人は努力や工夫をしやすくなるでしょう。
技術職
技術職では目標達成のため、具体的にどのような行動をとるのかを明確に示します。数値化できる項目があれば数値化し、もしそれが難しければ具体的な期日や業務内容を盛り込みましょう。例えば新製品開発であれば、「いつまでに◯◯を、どの程度の状態にもっていく」など、具体的に記入します。
数値化が難しい業種ですが、できる限り数値化できる箇所は数字を記載するようにします。
事務職
事務職では営業職のように目標を数値化するのが難しいことが多いため、日々の業務の改善など目に見える成果が出せるものを目標にしましょう。「書類の保管棚を整理し、スペースを◯割空ける」「ダブルチェックを必ず行い毎月の計算ミスを0にする」などできるだけ具体的な数字を盛り込んだ目標がおすすめです。
管理部門
人事・総務・経理などの管理部門は、経費の削減や業務の効率化などが数値化しやすいです。「社内FAQを充実させ、問い合わせ件数を◯割減少させる」「勤怠管理の転記ミスを0にする」などがあげられます。業務における改善点は大掛かりなものにしすぎず達成可能な範囲で設定しましょう。
看護師
看護師の目標設定は属する科や勤続年数によって異なります。
ほかの職種と同様、数値化できる目標は数字で示し、所属に応じた具体的な目標設定を行うようにしましょう。例えば「医療セミナーへの参加」「患者さんとのコミュニケーションを密にする」など、数字を盛り込みにくい場合は具体的な活動内容を示すようにします。また、勤続年数により所有する医療スキルも異なってくるため、職員のスキルにあわせて目標を決めるようにします。
消防士
消防士の人事評価は、能力評価と業績評価によって行われます。能力評価ではあらかじめ設定された項目により評価され、業績評価は職員が設定した目標の達成度やそのほかの取り組みにより評価されます。
消防士の目標は、現場や訓練での活動を掘り下げて設定するのがいいでしょう。例えば研修への参加や地域住民との連携があげられます。「現場での判断ミス、器材の操作ミスを0にする」「訓練大会では入賞を目指す」など、具体例をあげて目標設定を行います。
適切な目標設定で企業全体の利益向上を叶えよう
人事評価の目標を作る上で、最も重要なポイントは「納得できる」ことです。部下が納得できない内容であれば、実りある達成は難しいでしょう。一方的なアドバイスを押し付けるのではなく、部下の意見を聞き、モチベーションを上げられるような目標を作ってみましょう。
なお、人事評価のための目標を効率的に管理するには人事評価システムの導入が便利です。製品の比較表で目標管理機能の有無や価格がひと目でわかりますのでぜひ参考にしてください。
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