人事評価における目標設定とは
人事評価における目標設定とは、評価期間中に従業員が目指す成果や行動を明確にし、その達成度や取り組みの過程を評価につなげるための取り組みです。
個人の役割や会社・部門の方針を踏まえて目標を設定しておくことで、従業員が目指す方向を明確にでき、人事評価の基準も共有しやすくなります。目標達成に必要な行動やスキルも整理しやすくなり、人材育成や業務改善にもつながるでしょう。
ただし、「売上を伸ばす」「業務を効率化する」といった曖昧な内容では、達成度を適切に判断できません。具体的な達成基準や期限まで設定することが重要です。
人事評価の目標設定に役立つ「SMARTの法則」
適切な目標を設定する際に役立つのが「SMARTの法則」です。具体性のない目標や達成が現実的でない目標を避け、評価しやすい目標へ落とし込むための考え方として活用されています。
SMARTは、目標設定で意識したい以下の5つの要素の頭文字を取ったものです。
- ■Specific:具体的である
- 誰が見ても内容を理解できるよう、何を達成するのかを明確にします。「5W1H」を意識すると具体化しやすくなります。
- ■Measurable:測定可能である
- 達成度を判断できるよう、件数・金額・割合・時間などの指標を設定します。数値化が難しい場合は、成果物や完了条件を決めましょう。
- ■Achievable:達成可能である
- 本人の役割や能力、評価期間を踏まえ、努力すれば達成を目指せる水準に設定します。
- ■Relevant:組織の目標と関連している
- 個人目標を会社や部門の方針、本人に期待される役割と関連付けます。
- ■Time-bound:期限が明確である
- 「上期末まで」「9月末まで」など、いつまでに達成するのかを設定します。
目標を作成したら、5つの要素が盛り込まれているか確認しましょう。特に「何を」「どの程度」「いつまでに」を明確にすると、本人と評価者の認識をそろえやすくなります。
人事評価の目標の書き方
人事評価の目標は、思いついた内容をそのまま記載するのではなく、会社の方針や自分の役割を整理してから具体化します。ここでは、目標設定の基本的な流れを解説します。
1.企業や部門の目標を確認する
まず、会社全体や所属部門がどのような目標を掲げているか確認します。個人目標と組織目標の方向性がずれていると、本人が成果をあげても適切な評価につながりにくくなるためです。
例えば、売上拡大を重視する部門なら新規顧客獲得や売上への貢献、業務効率化を重視する部門なら作業時間の短縮や業務の標準化などが候補になります。
2.自分の担当業務や役割を整理する
次に、評価期間中に担当する業務と、自分に期待されている役割を整理します。営業職なら売上や商談、事務職なら正確性や業務改善、管理職なら組織目標の達成や部下育成など、職種や役職によって重点項目は異なります。
日常業務のなかで「改善したい課題」「さらに伸ばしたい成果」「継続したい行動」を洗い出すと、目標候補を整理しやすいでしょう。
3.達成したい目標を具体化する
目標候補が決まったら、「売上を増やす」「スキルを高める」のような抽象的な表現から、具体的な行動や成果へ落とし込みます。
例えば「売上を増やす」であれば、「既存顧客への提案回数を月◯件に増やし、上期売上を前年同期比◯%向上させる」のように、行動と成果を組み合わせると評価しやすくなります。
4.達成基準と期限を決める
目標には、達成したと判断するための基準と期限を設定します。売上・件数・割合・作業時間など数値化できるものは具体的な数字を使用しましょう。
数値化が難しい場合は、「業務マニュアルを完成させる」「社内FAQを作成して公開する」など、成果物や完了条件を設定する方法があります。
5.上司とすり合わせて確定する
目標は本人だけで決定せず、上司と内容を確認して確定します。難易度が高すぎないか、反対に容易すぎないか、会社・部門の方針と一致しているかなどを確認しましょう。
評価する側とされる側で達成基準を共有しておくことが、評価時の認識のずれや不満を防ぐポイントです。
6.期中に進捗を確認する
目標は設定して終わりではありません。評価期間中にも進捗を確認し、必要に応じて行動計画や優先順位を見直します。業務環境や担当範囲が大きく変わった場合は、上司と相談しながら目標自体を調整することも必要です。
目標設定や期中の進捗確認、評価結果をExcelや紙で管理している場合、従業員数の増加にともなって管理負担も大きくなります。人事評価システムを活用すれば、目標設定から進捗確認、評価まで一元的に管理できます。
「自社に合う人事評価システムを知りたい」「どの製品を選べばよいかわからない」という方は、無料診断もご活用ください。簡単な質問に答えるだけで、自社に適したシステムを絞り込めます。
人事評価におけるよい目標・悪い目標の例
目標を設定する際は、抽象的な表現を避け、「何を・どの程度・いつまでに行うのか」を明確にすることがポイントです。悪い目標と改善例を比較してみましょう。
| 悪い目標例 | 改善した目標例 |
|---|---|
| 売上を伸ばす | 上期末までに新規顧客を◯社獲得し、担当売上を前年同期比◯%向上させる |
| 業務を効率化する | 月末処理の手順を見直し、9月末までに作業時間を月◯時間削減する |
| 顧客対応を改善する | 社内FAQを整備し、問い合わせ1件あたりの平均対応時間を◯%短縮する |
| スキルアップする | 9月末までに◯◯資格を取得し、担当業務で活用する |
| 部下を育成する | 毎月1回1on1を実施し、各メンバーの課題と次月の行動計画を記録する |
目標そのものだけでなく、達成までの行動を具体化しておくと、期中の進捗確認や評価もしやすくなります。
【職種別】人事評価の目標設定例・例文
職種によって求められる成果や役割は異なるため、人事評価の目標も業務内容にあわせて設定する必要があります。ここでは、代表的な職種ごとに目標の立て方と例文を紹介します。
営業職
営業職は、売上や受注件数、新規顧客数、商談数など成果を数値化しやすい職種です。ただし結果だけではなく、目標達成に必要な行動量も設定すると進捗を把握しやすくなります。
- ●上期末までに新規顧客を10社獲得し、売上1,000万円を達成する
- ●毎月20件の新規商談を設定し、受注率を25%まで引き上げる
- ●既存顧客への提案件数を月15件に増やし、契約更新率90%を目指す
事務職
事務職は売上のような成果指標を設定しにくいため、作業時間・ミス件数・処理件数・業務改善などを基準にすると具体化しやすくなります。
- ●月末処理の手順を見直し、作業時間を月5時間短縮する
- ●ダブルチェックを徹底し、入力ミスを前期比50%削減する
- ●書類の保管ルールを見直し、9月末までに共有マニュアルを作成する
総務
総務では、備品管理や社内問い合わせ、施設管理、社内制度の運用などを目標に落とし込めます。コスト削減や問い合わせ件数など、測定可能な指標を探してみましょう。
- ●消耗品の購入方法を見直し、年間購入費を10%削減する
- ●社内FAQを9月までに整備し、定型的な問い合わせ件数を20%削減する
- ●備品管理台帳を更新し、所在不明の備品を0件にする
経理
経理では、正確性や処理スピード、決算業務の効率化などが主な目標候補です。ミス削減だけでなく、業務プロセスの改善も評価対象として設定できます。
- ●請求書発行時のチェック手順を見直し、入力ミスを0件にする
- ●月次締め作業を標準化し、完了までの日数を2日短縮する
- ●経費精算に関する社内マニュアルを8月末までに改訂する
人事・労務
人事では、採用数や応募者数、面接設定率、内定承諾率などを指標として活用できます。労務業務では、手続きの正確性や処理時間、問い合わせ対応なども目標候補です。
- ●求人媒体と求人票を見直し、応募者数を前期比20%増加させる
- ●面接連絡のフローを改善し、面接設定率を60%から75%へ高める
- ●入社手続きのチェックリストを整備し、手続き漏れを0件にする
企画・マーケティング
企画・マーケティングでは、リード獲得数やサイト流入数、問い合わせ数、施策の実施件数などを目標に設定できます。成果だけでなく、分析や改善のサイクルも盛り込むとよいでしょう。
- ●上期中に新規施策を6件実施し、問い合わせ数を前年同期比15%増加させる
- ●Webサイトの改善施策を月3件実施し、対象ページのCVRを10%向上させる
- ●毎月施策結果を分析し、翌月の改善案を3件以上提案する
エンジニア・技術職
エンジニアや技術職では、開発件数だけでなく、納期・品質・障害件数・スキル習得なども目標として設定できます。数値化が難しい場合は、成果物や完了条件を明確にしましょう。
- ●担当機能を9月末までに開発し、予定したリリース日に公開する
- ●コードレビューの実施方法を見直し、リリース後の不具合件数を前期比20%削減する
- ●10月までに新しい開発技術を習得し、担当プロジェクトへ適用する
製造業
製造業では、生産量や不良率、原価、作業時間、安全性など、現場の成果に関連する指標を活用できます。担当者自身の工夫によって改善を目指せる水準を設定しましょう。
- ●製造工程を見直し、1製品あたりの作業時間を10%短縮する
- ●品質確認を徹底し、不良率を1%以下に抑える
- ●原材料の使用方法を改善し、製造コストを5%削減する
管理職
管理職では、自身の業績だけでなく、チーム全体の成果や部下の育成も重要な評価項目です。組織目標とマネジメント行動の両方を設定するとよいでしょう。
- ●チームの上期売上目標3,000万円を達成する
- ●メンバー全員と毎月1回1on1を実施し、課題と行動計画を記録する
- ●属人化している業務を3件洗い出し、年度末までにマニュアルを整備する
新入社員・若手社員
新入社員や若手社員では、売上などの成果だけを求めるのではなく、基本業務の習得や知識の獲得、自立して担当できる業務範囲の拡大などを目標にする方法があります。
- ●6月末までに担当業務の基本手順を習得し、一人で処理できる状態を目指す
- ●業務に必要な製品知識を身につけ、社内テストで80点以上を取得する
- ●毎月1件以上、業務上の課題や改善案を上司へ共有する
目標管理を効率化したい場合は、人事評価システムの活用もおすすめです。以下の記事では、各製品の目標管理機能や特徴、価格などを比較しています。
人気製品から比較したい方は、最新のランキングも参考にしてください。
数値化しにくい仕事の目標設定方法
事務職や管理部門など、売上や契約数といった成果を直接数値化しにくい職種もあります。その場合も、目標を曖昧なままにする必要はありません。評価時に達成状況を確認できる基準を設定しましょう。
| 設定方法 | 目標例 |
|---|---|
| 件数で表す | 毎月◯件以上の業務改善案を提出する |
| 時間で表す | 定型業務の作業時間を月◯時間短縮する |
| 期限を設定する | 9月末までに業務マニュアルを完成させる |
| 成果物を設定する | 問い合わせ対応用のFAQを作成して社内公開する |
| 頻度で表す | 毎月1回チーム内で業務改善ミーティングを開催する |
| 品質で表す | チェック工程を見直し、書類の記載漏れを0件にする |
自己啓発やスキルアップを目標にする場合も、「勉強する」だけではなく、「◯月までに資格を取得する」「月1回セミナーへ参加し、学んだ内容をチームへ共有する」など、達成状態まで具体化することがポイントです。
人事評価の目標設定でよくある失敗と注意点
適切な目標を設定しなければ、本人のモチベーション低下や評価への不満につながる可能性があります。ここでは、目標設定で注意したい代表的なケースを紹介します。
抽象的な目標を設定する
「積極的に行動する」「業務を改善する」など抽象的な内容だけでは、何をもって達成したと判断するのかがわかりません。具体的な行動や成果、期限を加えましょう。
達成困難な目標を設定する
本人の役割や経験に対して極端に高い目標を設定すると、目標そのものが形骸化するおそれがあります。現在の実績や業務環境を踏まえ、努力によって達成を目指せる水準に調整することが大切です。
本人だけで目標を決める
本人だけで目標を設定すると、会社や部門から求められている役割とずれる場合があります。上司との面談などを通じて、期待する成果や難易度をすり合わせましょう。
設定したまま進捗を確認しない
期初に目標を設定しても、期末まで確認しなければ行動の修正が遅れます。1on1や評価面談などを活用し、定期的に進捗や課題を共有することが重要です。
結果だけを評価する
外部環境の変化など、本人の努力だけではコントロールできない要因によって目標未達となる場合もあります。最終的な成果だけでなく、達成に向けた行動や改善、取り組みの過程も確認しましょう。
人事評価において目標設定が重要な理由
適切な目標設定は、単に評価点を決めるためだけのものではありません。従業員が求められている役割を理解し、成長や組織成果につなげるためにも重要です。
人事評価の基準を明確にできる
あらかじめ達成基準を共有しておけば、評価者と従業員が共通の基準をもとに振り返れます。特に数値や成果物など客観的な指標を設定すると、評価の根拠を説明しやすくなります。
従業員の成長につなげられる
現在の業務より少し高い水準の目標や、新しいスキルの習得を目標に盛り込むことで、従業員の成長を促せます。達成した成果や身につけた能力は、その後の配置や育成方針を考える材料にもなります。
組織と従業員の方向性をそろえられる
会社や部門の目標を個人目標へ落とし込むことで、従業員は自分の業務が組織全体の成果にどのようにつながっているか理解しやすくなります。組織と従業員の方向性をそろえるうえでも、目標設定は重要です。
人事評価の目標設定に関するよくある質問
人事評価の目標設定では、目標数や数値化の方法、設定後の運用について悩むケースも少なくありません。ここでは、よくある疑問について回答します。
- ■人事評価の目標は何個くらい設定するのが適切ですか?
- 目標数に一律の正解はありません。多すぎると優先順位が曖昧になり、管理や振り返りも煩雑になります。評価期間中に継続して進捗を確認できる範囲に絞り、重要度の高い目標から設定しましょう。
- ■数値化できない職種でも人事評価はできますか?
- 数値化が難しい職種でも評価は可能です。成果物や完了条件、行動頻度、期限などを設定すれば、達成状況を判断しやすくなります。例えば「業務マニュアルを完成させる」「月1回改善提案を行う」などの設定方法があります。
- ■人事評価の目標設定はいつ行いますか?
- 一般的には評価期間の開始時に目標を設定します。期初に会社・部門の目標や本人の役割を確認し、上司との面談を通じて個人目標を決めます。期中にも進捗を確認し、必要に応じて見直しましょう。
- ■目標を達成できなかった場合はどう評価しますか?
- 達成率だけで判断せず、目標の難易度や達成に向けた行動、途中で発生した環境変化なども確認します。結果とプロセスの両方を振り返り、次回の目標設定や育成につなげることが大切です。
- ■人事評価システムを導入するメリットは何ですか?
- 目標設定や進捗確認、評価記録などの情報をまとめて管理しやすくなります。評価シートの配布・回収や集計といった作業負担を軽減できるほか、評価プロセスを可視化し、運用の標準化にも役立ちます。
まとめ
人事評価の目標は、会社や部門の方針と本人の役割を踏まえ、「何を・どの程度・いつまでに達成するのか」を具体的に設定することが重要です。数値化が難しい職種でも、成果物や行動頻度、期限などを基準にすれば達成状況を判断しやすくなります。
また、目標は設定して終わりではありません。上司と従業員が定期的に進捗を確認し、必要に応じて行動を見直すことで、評価への納得感や人材育成にもつなげられます。目標設定や進捗管理、評価業務を効率化したい場合は、人事評価システムの導入も検討してみましょう。



