MBOとは
MBOは「Management by Objectives」の略で、日本語に訳すと「目標による管理」となります。アメリカの経済学者ピーター・ドラッカー氏によって提唱された組織のマネジメント手法です。
組織が掲げる目標を社員と分かち合い、社員がその目標を自分のこととして捉え、向上していく状態を目指します。これならば、社員は企業のために無理やり働かされているのではなく、自ら納得して働いているという自覚を抱けるのです。また、社員は目標達成に向けて時間や労力を適切に活用できているかを自ら振り返ることで、業務効率化を図れます。
今では、多くの日本企業がMBOを人事評価に取り入れています。
OKRとは
OKRは「Objectives and Key Results」の略で、日本語に訳すと「目標と主な結果」となります。アンディー・グローブ氏によって提唱されました。
OKRはその名のとおり、目標と結果を明確化し、目標達成を目指すマネジメント手法です。企業に所属するすべての人物の目標が連動している状態を理想的とします。もともとはIntel社が採用した手法ですが、その後Google社がOKRを活用し始め脚光を浴びることになりました。
MBOとOKRの違い
MBOとOKRは、社内で目標を共有し、その達成を目指すという点で共通しています。では、逆にどのような点が異なるのでしょうか。主な違いは以下のとおりです。
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OKR(組織活性化・業務効率化) |
MBO(人事評価・賃金査定) |
目標の共有範囲 |
社内全体 |
部下と直属の上司 |
評価の頻度 |
1ヶ月~4半期に1度 |
半年~1年に1度 |
計測方法 |
定量 |
定量・定性の併用 |
成功基準 |
60%~70% |
100% |
これらの中でも、特に顕著な違いが目標の共有範囲と成果の計測方法です。この2つについて詳しく見ていきましょう。
違い1:目標の共有対象
OKRでは、個人の目標を社内全体で共有します。
社内全体で目標の方向性を一致させることで、組織を活性化するのが目的だからです。また、業務を効率化するうえでも、できるだけ社内で広く目標を共有したほうが、改善点などを見つけやすくなるでしょう。また、自分以外の社員がどのような目標を持っているかが分かることで、社内のコミュニケーションが円滑化するというメリットもあります。
一方、MBOは人事評価やそれに基づいた賃金査定を目的とするマネジメント手法であるため、個人の目標を組織全体で共有する意味はありません。
あくまで、その目標を目指す個人と、その個人を評価する直属の上司の間で共有されていれば充分です。むしろ、賃金に関わる極めて個人的な情報が社内で共有されるようでは、社員は苦痛に感じてしまうでしょう。
違い2:目標設定・評価・計測のやり方
OKRの目的の1つは業務の効率化です。したがって、業務を常に効率的な状態で進めるために、頻繁にフィードバックを行います。短い場合では1ヶ月ごと、長くても4ヶ月に1度は行うのが一般的です。
また、OKRにおいては定量評価を行います。業務の効率化を目指すにあたって、数値化できない定性データよりも定量データのほうが客観性を確保しやすいからです。さらに、OKRでは理想的な目標達成度を60%~70%とします。これは、100%を極めて達成困難な目標とし、それを目指す過程での成長を重視するためです。
一方、MBOの目標は人事評価と賃金査定であるため、半年あるいは1年に1度しかフィードバックしません。また、人事評価の項目には意欲や態度といった数値化できない要素も含まれるので、定性評価も行います。さらに、MBOでは達成可能なものを目標に設定するため、理想的な目標達成度は100%とします。
MBOとOKRの共通点
MBOとOKRは、組織の目標達成を目指すという点で共通しています。個人の目標も設定しますが、最終的には組織として目標に到達できるのが目的です。
また、組織の目標から逆算して、個人や部門の目標を設定・管理するためのマネジメント手法である点も共通しています。個人の目標が集積した先に組織の目標があるのではなく、組織の目標を達成するために必要な小さな目標を、個人が達成するのです。常に組織としてのゴールを意識した、堅実な成長が実現します。
MBOとOKRのどちらを導入すべきか
MBOとOKRのどちらを導入すべきなのでしょうか。両者の間にある相違点を踏まえて解説していきます。
トップダウンで意思決定を行う場合は「MBO」
MBOはもともと、社員個人が目標意識を持つためのものでした。しかし、日本の企業で採用される中で、次第にMBOは人事評価と結びつくようになりました。ここまでで紹介してきたMBOの特徴の多くは、日本企業で使われる中で生まれたものなのです。
人事評価と結びつくようになったMBOは、個人ではなく企業が主導権を握るものになりました。したがって、MBOは上意下達構造の企業に適しています。個人と直属の上司の間で目標を共有するというスタイルは、MBOが上意下達構造に適したマネジメント手法である表れと言えるでしょう。
組織に柔軟性を持たせる場合は「OKR」
OKRはMBOとは逆に、下意上達構造の企業に適しています。上層部が決めた目標に社員が従うのではなく、社員が積極的に企業の成長を推し進めるスタイルに最適なマネジメント手法です。
OKRでは、達成が非常に困難な目標を100%とし、60%~70%を理想的な達成度とします。これは、理想的な達成度に到達しても、まだ上があることを示しています。つまり、社員が常に上を目指し続けるのに適した手法なのです。
また、フィードバックが頻繁なうえ、人事評価が目標ではないため、社員は臨機応変に目標を変更できます。したがって、OKRは変化が激しいビジネス環境に適応できる、柔軟な組織を作るのにも有効です。
MBOやOKRを効果的に活用するポイント
MBOとOKRはどちらか一方を選ぶのではなく、2つを両立させるのも有効です。
前述したように、MBOは人事評価に用いる手法であり、理想的な目標達成度は100%です。つまり、MBOにおける目標は「最低でもこれだけは達成したい」レベルと言えます。
一方、OKRは60%~70%を理想的な目標とする手法です。これはつまり、「最低限の目標は達成しつつ、さらなる上も目指す」ための手法と言えます。
したがって、OKRとMBOを両立することで、「攻め」と「守り」の姿勢を両方とも管理できるのです。どちらかの手法をすでに導入しているのであれば、既存の体制にもう一方の要素を加えるだけでも、大きな改善につながる可能性があります。
MBOとOKRの違いを理解し、自社に合った導入を!
MBOは、社員と直属の上司が目標を共有し、その目標達成度を人事評価に活かす手法です。一方、OKRは社内で目標を共有し、その達成度を高頻度で確認することにより、業務の効率化を目指す手法です。前者はトップダウン、後者はボトムアップの企業に適しています。
ただしOKRとMBOを両立するのも有効です。それぞれの特徴を理解し、自社に適した形で活用しましょう。