相対評価の基本的な内容
相対評価とは、ある集団内における個人の能力を相対的に測り、それをもって評価する手法のことです。基準が相対的なものになるため、能力自体は変わらなくとも所属する集団が変われば評価は異なります。
人事評価で活用される相対評価
人事評価は、主に「絶対評価」と「相対評価」に分けられますが、日本では長らく相対評価が用いられてきました。相対評価では、「一定のグループ内でのみ比較を行う方法」と「グループ単位で平均実績を出し、そこから個人の貢献度を測る方法」が用いられます。
前者はグループ内に限定した比較、後者はより全社的な比較になるでしょう。
教育現場で活用される相対評価
相対評価が用いられている場としては、学校教育が挙げられます。通知簿の5段階評価はある程度分布の割合が決まっているため、該当する生徒を順に割り当てていく手法が用いられています。また、学校内だけでなく、全国レベルで「偏差値」のような基準も設けられており、これも相対評価の例として挙げられるでしょう。
相対評価と絶対評価の違い
相対評価と絶対評価には、下記のような違いがあります。
絶対評価とは
絶対評価では、設定された目標に対する達成度で処遇が決定されます。そのため、周囲との関係で評価が変わることはなく、個人の努力で評価を上げることが可能です。
反面、目標設定が難しいというデメリットがあります。目標値に実態が反映されていないと、メンバーに多大な負荷を与えてしまう可能性があります。
大きな違いは評価方法が異なる
絶対評価では設けられている基準に対する達成度が評価対象となりますが、相対評価はグループ内のメンバーとの比較によって判断されます。そのため、相対評価ではどれほどよい成績を挙げても、他のメンバーがそれを上回る成果を挙げている場合、評価は低くなってしまいます。
相対評価と絶対評価どちらがいいのか
2つの評価軸がありますが、実際のところどちらを採用すればよいのでしょうか。
一概にどちらがいいとうことはない
評価軸としてどちらが優れているということは、ありません。どちらの評価方法にもメリット、デメリットがあります。これらの特徴を把握した上で、自社にとってどちらが適切かということを判断する必要があります。
また、単にどちらかのみを採用するという手法をとるのではなく、併用していくという方法もあります。個人の業績に関わる部分では数字による絶対評価を行い、全体の業績での評価では相対評価を行うなどの方法もあります。
相対評価のメリット・デメリット
相対評価のメリットとデメリットは何があるのでしょうか。
相対評価のメリット
相対評価には、下記のようなメリットが存在します。相対評価を用いることで、評価者の負担を軽減できます。
- 集団内での評価が容易
- 評価者の判断に左右されない
- 景気に左右されない
- モチベーションアップに繋がる
- 評価が偏らない
- 人件費管理が楽
相対評価はグループメンバー全員の成績によって評価基準が変わるため、評価者の判断に左右されない評価を行うことができ、また景気動向を反映することが可能です。そして、全員一律で評価が低くなることも防げ、競争意識によってモチベーションアップにも繋がるでしょう。
相対評価のデメリット
対して、相対評価には下記のようなデメリットが考えられます。
- 評価が説明しづらい
- チームのレベルによって評価にばらつきがでる
- 他のチームと比較しにくい
- チーム内で足を引っ張り合うことがでてくる
相対評価の基準は曖昧なため、それをグループメンバーに説明するのは難しいところです。そのため、人によっては仕事の意義や目的を見失ってしまう可能性が考えられます。また、チームのレベルによって評価がばらついてしまったり、他のチームとの比較に関する問題も生じます。加えて、相対評価はある意味メンバー間に順位づけをする評価手法になるため、自分の評価を上げようとチームメンバーの足を引っ張る人も出てくるかもしれません。
絶対評価のメリット・デメリット
反対に絶対評価のメリットとデメリットは何があるのでしょうか。
絶対評価のメリット
絶対評価には、下記のようなメリットが存在します。相対評価を用いることで、評価者の負担を軽減できます。
- 周りとの実力差で評価の上下がない
- 決まった基準に沿うので納得しやすい
- 基準から改善点が明確になる
- 組織と個人の目標がリンクさせやすい
絶対評価は決まった基準に沿って評価され、個人ごとに評価がつくので、納得感が強いことが特徴です。基準が明確なので、個々人が目指すべき部分が明確になるので、社員のモチベーションアップにもつながってくるでしょう。
絶対評価のデメリット
対して、相対評価には下記のようなデメリットが考えられます。
- 評価側の能力によって評価が変わりやすい
- 評価基準の設定が難しい
- 評価者の主観が入りやすい
絶対評価は、評価者によって評価が別れやすい方法になります。ある評価者から見ると達成していると感じられても、別の評価者からは未達であると感じるかもしれません。それにより評価がばらつきやすく不満に繋がる可能性があります。
相対評価を人事評価に導入する時の実例
相対評価を人事評価に導入する際には、どのような点に気をつければよいのでしょうか。実例を挙げてご紹介します。
キャリアごとで使い分ける
相対評価を上手く活用するためには、絶対評価の存在が欠かせません。基本的には、明確な数値目標が出せる分野については絶対評価を、そうでない場合には相対評価を用いることをおすすめします。
キャリアによって使い分けるのもよいでしょう。キャリアによって絶対評価の評価基準を変えるのはもちろんですが、絶対評価と相対評価のバランスを変更するのも一つの方法です。
評価段階で使い分ける
一人の人材に対し、段階的な評価を行う方法も考えられます。たとえば、一次評価は絶対評価で行い、二次評価を相対評価で行うといったやり方が挙げられるでしょう。
人材を多角的に審査することにより、評価の偏りをなくすことができます。
大阪府大阪市で実際に相対評価を導入した公務員の事例
大阪府大阪市で実際に相対評価が導入された例を挙げて解説します。大阪市では、相対評価の分布は五段階に分かれており、上から5%・20%・60%・10%・5%と区分されています。
そして、昇給や昇給抑制、勤勉手当といった領域に役職と区分によって明確な規定が設けられており、評価が曖昧になることを防いでいます。ポイントは、役職が上になればなるほど評価区分による差が明確になる点であり、ポジションが上がれば上がるほど成果や努力が求められる仕組みが構築されている点です。
人事評価の概要は下記の記事で解説しています。合わせてご覧ください。
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相対評価を導入することで客観的評価ができる
自社の人事評価に相対評価のメリットを活用して導入してはいかがでしょうか?相対評価を用いることで、実態を反映した公正な評価を行うことができます。分布の割合や、それを実際の評価にどのように活用するか、といった点を考えるのは少々大変かもしれませんが、一度評価基準を構築してしまえば評価者の主観に依存することなくクリアな運用が可能です。
そして、ご紹介した大阪市のように基準を公開してしまえば、従業員の不満もある程度は解消されるのではないでしょうか。相対評価のデメリットを防ぎつつ、なるべくメリットのみを享受できる導入方法を模索しましょう。