勤怠管理システム導入のありがちな失敗例
勤怠管理システムを導入したからといって、必ずしも勤怠管理業務の効率化につながるわけではありません。システムが自社に合っていなければ、導入に失敗する可能性もあります。ここでは、以下の4つのケースを紹介します。
- 1.自社の規模に見合っていない
- 2.従業員の使いやすさが考えられていない
- 3.自社の勤務形態に対応していない
- 4.他システムと連携できない
それぞれのケースにどのような悪影響があるのか確認しましょう。
1.自社の規模に見合っていない
勤怠管理システムは企業にとってメリットの多い魅力的なシステムですが、自社の従業員数や必要な機能に見合ったシステムを選べず、コストだけが必要以上にかかってしまうケースがあります。
システムの対象規模が大きすぎる
小規模企業の場合、タイムカードやエクセルなどで勤怠管理を行っていたとしても、それほど業務負担が大きくないのであれば、大がかりな勤怠管理システムを導入する必要はありません。
ただし勤怠管理システムの中には、簡単な機能だけで比較的安価に使えるものもあります。業務負担を少しでも減らすために、簡便な勤怠管理システム導入を検討してみましょう。
システムの対象規模が小さすぎる
一方で大規模な企業が十分な検討をせずに安価だからという理由で、求めている機能がない勤怠管理システムを導入するパターンもあります。
本来目的としていた業務負担の軽減が難しくなったり、かえってコスト増になってしまったりと、デメリットになりかねません。自社で必要な機能や従業員規模に対応した勤怠管理システムを選ぶ必要があります。
2.従業員の使いやすさが考えられていない
勤怠管理システムは全従業員が利用するシステムです。管理者以外に従業員の使いやすさも重視する必要があります。
例えば打刻ですが、内勤や外回り・出張など従業員のワークスタイルに適した方法を選ばなければ、従業員は打刻のたびにストレスを感じてしまうでしょう。正確な出退勤時刻が記録されず、データの正確性に疑問が生じたり、不正打刻が行われやすくなります。また打刻情報の確認や修正など、管理者の手間が増える可能性もあります。
3.自社の勤務形態に対応していない
アルバイトやパートなど異なる雇用形態、フレックスや裁量労働制、夜勤シフトや直行・直帰などさまざまな勤務形態に対応できるシステムでなければ、勤怠管理は煩雑になるでしょう。自社の就業規則や勤務形態に対応した勤怠管理システムを導入しなければ調整が必要になり、かえって業務効率が落ちます。独自の就業規則をもつ企業の場合、対応できない勤怠管理システムもあるため、注意が必要です。
また労働関係の法令改正に対応していなければ、自社で改善する必要があります。
4.他システムと連携できない
勤怠管理システムが給与計算システムや人事管理システム、原価計算システム、会計システムなどと連携していないことで、従業員の勤怠に関するデータを他システムに流用できず、業務効率化ができないケースがあります。
特に給与計算システムと連携できない勤怠管理システムは、一回データを出力してから再度給与計算システムにインポートする必要があります。工数や手間の軽減につながらない場合、勤怠管理システムのメリットを活かしきれないでしょうん。
勤怠管理システムの基本的な選び方
勤怠管理システムの導入に失敗しないために、自社に最適な製品を選ぶにはどうすればよいのかについて解説します。
オンプレミス型か、クラウド型か
勤怠管理システムには主に2つの提供形態があります。オンプレミス型とクラウド型です。自社の規模や求める機能にもとづいて、自社にあった提供形態がどちらかを考えましょう。
それぞれのメリットを挙げるなら、まず最近の主流でもあるクラウド型勤怠管理システムは、短期間で導入できコストをあまりかけずに高性能な機能を利用できます。対応従業員規模は2人~1,000人程度が目安で、小規模企業にも適しています。オンプレミス型はカスタマイズ性の高さが最大のメリットで、従業員規模は1,000人~が目安となるでしょう。
こちらの記事では、2つの提供形態の特徴とメリット・デメリットについて詳しく解説しています。迷っている方は、ぜひ参照してみてください。
自社に必要な打刻方法はあるか
勤怠管理システムごとに対応している打刻デバイスは異なるため、自社のワークスタイルにあった打刻方法が選べるかどうかを確認しましょう。スマホ、タブレット、ICカードはもちろん、システムによっては生態認証にも対応しているので不正打刻を防止できます。
他システムとの連携ができるか
勤怠管理システムで集計した情報は、給与計算システムなどの他システムで効果的に活用できます。そのため勤怠管理システムのメリットを最大限引き出したいのであれば、多くの他システムと連携できるかどうかを確認しておきましょう。
勤怠管理システムの導入に関するアンケート調査を実施!
ITトレンド編集部は勤怠管理システムを導入した企業の担当者50人にアンケート(※)を行い、多くの企業が勤怠管理システムをどんな基準で導入しているのか、そして実際に導入してみてどうだったかを調べました。(※ITトレンド実施「勤怠管理システム導入についてのアンケート」有効回答数:50 実施期間:2019年10月)
質問項目としては、「製品導入の際に重視したポイント」や「システムを選ぶ際に用いた手段」「無料トライアルを実施したかどうか」など、どのようにしてシステムを選んだのかについてのものと、「導入して満足した点・不満だった点はなにか」「もっと検討すべきだったと思う点はどこか」など、導入した結果の満足度に関してのものがあります。
ここでは、主な質問事項とその結果について詳しく解説します。
システム導入の際に重視したポイント
システム導入の際に注意したポイントで多かったのがこちらです。(一人3つまで回答可)
- 1位:使いやすさ(76%)
- 2位:価格(48%)
- 3位が打刻方法(36%)
やはり操作感は多くの企業が重視しているようです。一方で、「法改正への対応(8%)」や「サポート体制(28%)」を重視している企業は少ないということがわかりました。
無料トライアルを利用したかどうか
勤怠管理システムの無料トライアルを利用した企業は半数以下という結果になりました。
また「誰がトライアルに参加したか」という質問では、多くの企業が人事部や営業部のみであり、複数の部署の社員に参加させた企業は少ないことがわかりました。
導入したシステムについて不満な点
上のような選び方で、導入後の満足度はどうなのでしょうか。寄せられた声を見てみましょう。
- ・設定が煩雑
- ・使い慣れるまでに時間がかかる
- ・機能が多いので、もっとサポートが欲しかった
- ・情報提供がなさすぎる
- ・サポート体制に疑問
実は一番多かった項目が操作感についての不満です。次に多いのが、サポート体制への不満です。
多くの企業がシステムを選ぶ際に操作感を重視しているのにも関わらず、実際には使いやすいシステムを導入できていないということがわかります。また低価格に固執した結果、十分なサポート体制を得られていないといった問題点もみえてきます。
「この部分をもっと検討して選ぶべきだった」と後悔している点
実際に導入した皆さんの後悔の声を紹介します。
- ・数社の無料トライアルをもっと使ってみればよかった
- ・2年契約なので不満に思ってもすぐに変更できない
契約の縛りがない会社も検討すればよかった
- ・もう少しシンプルで安いものと比較しておけばよかった
要するに他の製品も比較検討すべきだったのでしょう。特にシンプルさとセキュリティの面を、より重視すべきだったという声もあります。
アンケートでわかった!導入で失敗しないコツ
ここではアンケート結果をもとに、何をすれば導入で失敗しないのかを解説します。
無料トライアルを利用する
アンケート結果からわかるのは、48%の企業しか無料トライアルを実施していないということです。ですが導入後の不満な点を聞くと、「使えていない項目がある」「スマートフォン操作に手間がかかる」といった声があります。機能や操作感については無料トライアルを利用して確認できますから、失敗リスク軽減のためにも無料トライアルを活用してみましょう。
無料トライアルを利用する際には、以下の点についても話し合っておきましょう。
- ・導入目的
- ・予算の大枠
- ・無料トライアルの対象者
自社の課題や導入目的の確認は、必要な機能の優先付けや機能の確認漏れに役立ちます。また予算の大枠を決めておけば、ある程度製品の絞り込みができ、機能性とコストパフォーマンスの比較などがより具体的に行えるでしょう。
こちらの記事では、無料トライアルが可能な勤怠管理システムも紹介していますので、参考にしてみてください。直近のITトレンド年間/上半期ランキングにおいて人気だった製品も一目でわかるので、多くの製品を比較検討したい方にもおすすめです。
多くの部署の意見を聞く
無料トライアルを実際に活用した企業の多くで、トライアルに参加した社員は一つの部署に限られていました。勤怠管理システムは基本的には全従業員が使用し、全社的に導入していくものです。部署によって就業形態・勤怠の打刻方法などが異なる場合もあるでしょう。
このアンケートでよくあったのが、「総務部10人くらいで無料トライアルに参加した」という回答です。しかし可能であれば全社的にトライアルを行い、参加者を選抜するとしても各部署から少人数を集めて参加してもらったほうがいいでしょう。無料トライアルを利用しないとしても、勤怠管理システムを検討している段階でさまざまな部署の意見を拾うことをおすすめします。
システムの比較検討に時間をかける
今回のアンケートにおける「勤怠管理システムを比較する際に用いた手段、Webサイトはなにか」という質問に対する回答です。
- ・提供会社のサービスサイト(48%)
- ・比較サイト(36%)
- ・知り合いの口コミなど(16%)
計84%の企業は自社でシステムを検討しているものの、残り16%の企業は、自社で導入検討をしていません。勤怠管理システムは全社的に導入するシステムであるうえ、全社員が日常的に利用するとても影響力のあるシステムです。たしかに口コミも信頼性があればよいですが、自社でも時間をかけて比較検討するのに越したことはないでしょう。
自社にあった勤怠管理システムを選んで、導入失敗を防ごう!
勤怠管理システムの導入で失敗しないためにはまず、以下の3点を確認しましょう。
- ●自社の規模に適したシステムかどうか
- ●自社の勤務形態にあった打刻方法があるか
- ●他システムと連携できるか
勤怠管理システムにはさまざまな製品が用意されていますので、無料トライアルを活用し、自社にあった勤怠管理システムを選んでみてください。