最新のテレワーク導入状況
総務省が推進する働き方改革のもとで、テレワークは、時間や場所に制限されない柔軟な働き方として注目を集めています。令和3年の総務省による調査では、企業におけるテレワークの導入率は、前年度の47.5.%から増加して51.9%に達し半数を超えました。導入予定がある企業も含めると6割近くとなり、年々増加傾向にあります。
テレワークの導入目的は、「新型コロナウイルス感染症への対応(感染防止や事業継続)」が多く、感染症拡大によるテレワークの急増が背景にあることがよくわかります。
参考:令和3年通信利用動向調査の結果|総務省
テレワーク導入の進め方7ステップ
テレワークはどのように導入すればよいのでしょうか。テレワークの導入プロセスは、検討から導入後の評価まで7段階に分類できます。
テレワークの導入にあたっては、社内でプロジェクトチームを結成して体制を整えます。なお、労働人口の減少に対策するための「働き方改革」のもとで、総務省や厚労省が主体となったテレワークの導入支援がなされています。厚労省が公開しているテレワーク総合ポータルサイトには、導入のプロセスが解説されているのであわせて参考にしてください。
参考:テレワークの導入方法|厚労省
1.導入検討・経営判断・全体方針決定
最終的に得たい効果を考えて、導入の目的を明確にすることが重要です。例えば生産性の向上や、人材の確保などが挙げられます。テレワークの導入自体が目的にならないように、自社が得たい効果を整理しましょう。またテレワーク導入の目的や意義については、経営トップから従業員へ説明・共有し、理解や協力を得られるように努めましょう。
そして、テレワーク導入のガイドライン(ポリシー・基本方針)を策定します。ガイドラインに盛り込む内容の例は、以下のとおりです。
- ●導入目的
- ●導入範囲
- ●対象業務
- ●頻度
- ●導入コスト
2.推進体制の構築
次にテレワーク導入に向けた推進体制の構築に着手します。各部署がテレワークの意義を理解し、導入が円滑に進むよう体制を整えましょう。
円滑な導入には、プロジェクトチームの設置が有効です。チームの中心には、テレワークに関わる制度や施策を担当する従業員がおすすめです。中心メンバーのほかには、「経営企画部門」「総務・人事部門」「情報システム部門」「テレワーク導入の対象部門」などで構成しましょう。
3.現状把握や導入課題の抽出
プロジェクトチームが発足したら、各部署の現状分析を実施します。確認すべきポイントは以下のとおりです。
- ●就業規則に関連する社内の制度(勤怠管理制度や給与や手当など)
- ●人事評価制度(目標管理制度、成果にもとづく評価制度など)
- ●ICT環境(テレワークに対応できるシステムかなど)
- ●業務時間や業務で使用する書類の形態(紙か電子かなど)
- ●労働組合がある場合は組合の考え方(労働組合がない場合には従業員の考え方)
- ●セキュリティや個人情報の取扱いルール
現状を把握しないと、現場に余計な混乱を生じさせ、非効率になる可能性があります。特に就業規則やテレワークにおける評価制度が不明確だと、トラブルの原因になるため、確認しましょう。
4.テレワークに関する社内ルール作り
現状を把握し、対象者や対象業務を決めた後は、社内ルールの作成に移りましょう。定めるテレワークルールの例は以下のとおりです。
- ●テレワークの形態や頻度を決める
- 各部署や業務にあわせて「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィスワーク(施設利用型)」から選択する。導入初期段階ではトライアルとして週1~2日程度でスタートさせるのがおすすめ。
- 在宅勤務の場合、部分在宅と終日在宅勤務どちらにするのか決める。サテライトオフィスワークの場合は、自社専用か他社共用のシェアオフィスも認めるかなど詳細も詰める。
- ●勤怠管理を見直す
- 導入前に、就業規則にテレワーク勤務の規定を盛り込む。就業規定に直接規定を加える方法と、「テレワーク勤務規程」という個別の規程を定める方法があり、所定の手続きを踏まなくてはならないので注意。
- テレワークを利用する場合の申請や承認方法について、フローを決めておく。
- 始業・終業時刻の報告と記録の残し方も決めておく。(メールやチャットツール、電話で報告する方法や、勤怠管理システムやエクセルを活用して労働時間を記録管理する方法など)
- ●電子化すべき紙文書を選定する
- テレワークでも見積書や稟議書の捺印・回覧ができるよう、電子化できる紙文書について優先順位をつけて選ぶ。ワークフローシステムの活用もおすすめ。
- ●テレワーク導入のための教育・研修を実施する
- 社内における認識のすり合わせや意識改革、スムーズな導入と業務遂行のためにも教育や研修は不可欠。テレワーカーだけでなく全社的に実施するのが望ましい。
5.ICT(情報通信技術)環境の整備
テレワークには、ICT環境の整備が不可欠です。テレワークに役立つツールやシステムを紹介しながら、ICT環境整備の進め方を解説します。
テレワークに役立つツール・システム
- ●ビジネスチャットや社内SNSなどのコミュニケーションツール
- ●PC画面やファイルを共有し、リアルタイムの共同作業ができるWeb会議システム
- ●労務管理をリモート化できる勤怠管理システム・労務管理システム
クラウドサービスならインターネット環境さえあれば利用できるため、多くの製品がテレワークに活用できるでしょう。チャットツールでの勤怠報告をもとに勤怠管理システムとデータ連携させ自動で情報を登録するなど、各システム同士の連携もできればより業務の効率化が叶います。テレワークの導入を機にシステムの見直しや再構築を図るとよいでしょう。
また既存のIT資産を生かして、テレワーク用のICT環境を構築することも可能です。以下のいずれかの仕組みがあるか確認しましょう。
- ■リモートデスクトップ
- 遠隔でオフィス端末のデスクトップを操作。テレワーク端末へのデータ保存は不可。
- ■仮想デスクトップ
- オフィスのサーバから提供される仮想デスクトップを遠隔操作。テレワーク端末へのデータ保存は不可。
- ■クラウド型アプリケーション
- クラウドで提供されるアプリケーションに、社内外からアクセスして操作。テレワーク端末へのデータ保存は選択できる。
- ■会社支給のPC
- 会社で使っているPCなどをもち帰って利用。テレワーク端末へのデータ保存が可能。
リモートデスクトップや仮想デスクトップ、クラウド型アプリのいずれも情報通信ネットワークのセキュリティは確保されますが、初期費用を抑えられるのはリモートデスクトップやクラウド型アプリです。さらにテレワークに必要なシステムを知りたい方は以下のページをご覧ください。
6.セキュリティ対策の実施
近年のサイバー攻撃被害の増加に伴い、テレワーク環境でも情報資産を守るための適切なセキュリティ対策が求められます。ここではテレワーク導入にあたって、企業が事前に準備できるセキュリティ対策について解説します。
- ■端末管理を徹底する
- MDMによるモバイル端末の一元管理、テレワーク用端末の支給
- ■セキュリティソフトを導入する
- IPS(侵入防止システム)・IDS(侵入検知システム)などの導入
- ■アクセス制御を行う
- ファイアウォールによるアクセス制御、IPアドレスの制限、不要ポートの閉鎖
- ■アカウント・認証管理を強化する
- 多要素認証の設定、パスワードの使いまわし禁止
- ■ログ管理を行う
- 不審なログに対するアラート設定
また、クラウドサービスの大規模障害が度々発生しています。複数環境にバックアップの保管や、よりセキュリティの高い製品を利用するなど、クラウドサービスの依存度に応じた対策が求められるでしょう。
参考:テレワークセキュリティガイドライン(第5版)|総務省
7.テレワークの導入・評価
テレワークは、導入したら終わりではありません。テレワークによる効果を測定し、勤務環境を改善します。評価する方法について紹介します。
定量的評価
定量的評価とは、数字に表して評価することです。定量的評価項目には以下のようなものがあります。
- ●顧客対応(顧客対応回数、時間)
- ●情報処理(伝票などの処理件数、企画書の作成件数など)
- ●残業時間(テレワーク対象者とオフィス勤務社員で比較)
- ●オフィスコスト(賃貸料、電気代など)
- ●移動コスト(移動時間、通勤・出張コスト)
- ●情報通信コスト(情報システム保守費用、通信費用)
- ●人材確保(入社応募者数・質、離職率)
定量的評価項目を手動で集めると労力を費やします。システムやツールで自動収集できる仕組みもあわせて構築しましょう。
定性的評価
定性的評価とは、数字に表すのが困難な評価のことです。定性的評価項目には以下のものがあります。
- ●業務改善(知識・情報の共有など)
- ●成果・業績(業績評価の向上など)
- ●コミュニケーション(質や頻度)
- ●情報セキュリティ意識の徹底度
- ●業務の自律性
- ●働き方の質(仕事や働き方・会社に対する満足度、通勤疲労度)
- ●生活の質(ワーク・ライフ・バランスの実現)
定性的評価項目は、従業員へのアンケートなどで収集します。評価項目を参考に、導入効果を図り改善しましょう。
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テレワーク導入による助成金
中小企業の場合、テレワーク導入時に助成金を得られるケースがあります。テレワークの実施により、労働者の人材確保や雇用管理改善などの一定の効果をあげた中小企業事業主に対して「人材確保等支援助成金(テレワークコース)」という支援があります。機器等導入助成や目標達成助成が支給されるため、活用しましょう。
参考:人材確保等支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省
また、ITツールを導入する企業向けの「IT導入補助金」もあります。申請の締切などに注意しながら、有効活用しましょう。
参考:IT導入補助金2022| 一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
テレワークの種類
テレワークは、働く場所により3つの種類に分類されます。それぞれの働き方は以下のとおりです。
- 1.在宅勤務
- 従業員が雇用されている企業のオフィスに出勤せず、一日の業務を自宅で行う形態をいいます。短時間だけオフィスに出勤したり、顧客訪問をしたりするなど自宅から外出して働く「部分在宅勤務」や「半日在宅勤務」というパターンもあります。
- 2.モバイルワーク
- 顧客先や交通機関での移動中の車内、出張先のホテル、カフェなどで仕事をする形態です。企業や顧客との連絡にはノートPCやタブレット、携帯電話などのモバイルIT機器を使います。
- 3.サテライトオフィス(施設利用型)ワーク
- 従業員が所属する企業の外部オフィスや施設を利用して働く形態です。サテライトオフィスには自社専用で使用する施設、レンタルオフィス、複数社が共同で利用するオフィス(シェアオフィス)などがあります。
テレワークのメリット・デメリット
テレワークの導入では、働き方が大きく変わります。テレワークを導入した場合のメリットやデメリットを解説します。
テレワークを導入するメリット
自然災害や新型コロナウイルス流行などがあっても、業務の継続ができるようにテレワークの導入をする企業は多いでしょう。その他得られるメリットは、以下のとおりです。
- ●生産性の向上が期待できる
- ●移動や場所にかかるコストを削減できる
- ●育児・介護に携わる従業員の継続雇用が望める
- ●優秀な人材を確保できる
- ●BCP(事業継続計画)対策ができる
テレワークを導入すると、自分だけのスペースで集中して業務に取り組めるので、生産性の向上が期待できるでしょう。また、通勤にかかる交通費やオフィスの賃借料といったコスト削減もできます。場所を問わないことから育児や介護とも両立が可能で、やむを得ない休職・退職リスクを防止でき、優秀人材の確保にも効果的です。
テレワークを導入するデメリット
一方、テレワーク導入によるデメリットは以下のとおりです。
- ●従業員の労働を管理しにくい
- ●管理職による指導が従来と異なり難しい
- ●従業員が孤独感を抱える可能性がある
- ●セキュリティ対策が従業員依存になる
勤務時間や成果は従業員の申告次第になるので、正確な労働状況の把握は困難といえます。また、社内でともに仕事をしていれば、部下への直接指導ができます。しかし、顔の見えない状況での指導は、慣れていない管理職も多くいるでしょう。管理職へのマネジメント研修も検討しましょう。また気軽なやり取りが難しいことから、コミュニケーション不足で孤独感を抱える可能性もあります。
さらに、社外で端末を使用するため、紛失や情報を盗み見られる、ウイルスに感染するなど情報漏えいのリスクも考えられます。今まで以上にセキュリティ対策への意識向上が求められるでしょう。
テレワークでも、従業員の労働を正確に管理するためには、勤怠管理システムがおすすめです。まずは人気のシステムを知りたい方は、以下のボタンより最新の資料請求ランキングをご覧ください。
テレワーク導入時の3つのポイント
テレワークの導入には、セキュリティ面や勤怠管理において不安が残る方もいるでしょう。スムーズなテレワーク導入のために、気を付けるべきポイントを紹介します。
セキュリティ対策をする
テレワークでは、使用する端末のウイルス感染、端末や記録媒体の紛失・盗難、通信内容の盗聴といったセキュリティリスクの発生する確率が高いといえます。ICT環境を整える際に情報通信システムを導入しますが、セキュリティを考慮しましょう。システムによって搭載されているセキュリティ機能が異なるので、自社のセキュリティポリシーとの適合性をチェックする必要があります。
また、以下の総務省のガイドラインにもセキュリティ対策について記載されています。セキュリティガイドラインや手引きをもとに、万全な対策をとりましょう。
参考:テレワークにおけるセキュリティ確保|総務省
経費に関する取り決めをする
出社の場合は、企業が設置したネットワークを使用しますが、テレワークの場合は働く場所のネットワークを使用します。テレワーク先でかかる通信費や光熱費の負担に関しては原則会社負担ですが、事前に会社とテレワーカーとの間で取り決めを結びましょう。また、テレワーカーとオフィスワーカーの共同作業では、認識のズレが発生する可能性もあるため、取り決めについて社内で共有しましょう。
労務・勤怠管理を見直す
テレワークはオフィス外で勤務するため、働き方にあった勤怠管理の方法や評価制度の導入が重要といえるでしょう。テレワークにあわせた評価項目の設定や、評価方法の統一化などが考えられます。
また企業によっては「テレワークの実施が週に1~2日程度であれば、労務管理制度をほとんど変えなくてもよい」、「テレワークの頻度が高い人の場合には成果報酬型に評価制度を変更した方がよい」というケースもあるでしょう。テレワークをする人とそうでない人の間で評価に不平等が生じないように、適切な人事評価について検討しましょう。
テレワークの勤怠管理には、勤怠管理システムの活用が効率的です。クラウド型の勤怠管理システムであれば、インターネット経由で始業・終業時刻などがリアルタイムで記録できるため、労働時間の把握ができます。パソコンのログイン・ログアウトや、各システムの利用状況などで労働時間を把握できるなど、出社をしない勤怠でも適切な管理につながるでしょう。
以下の記事では人気の勤怠管理システムについて詳しく説明しています。機能や企業規模、提供形態別の比較表もあるので、導入の参考にしてください。
テレワークの導入で生産性を向上させよう
新型コロナウイルスの流行によりテレワークの導入企業は、増加傾向にあります。テレワーク導入手順を理解し、取り入れましょう。また、テレワークには導入の助成金もあります。助成金適用企業か、確認して検討してください。
テレワークの導入には、セキュリティ対策や勤怠管理の見直しが重要です。勤怠管理システムでは、出社しなくても従業員の労働時間の把握が可能です。テレワーク導入の際に、あわせて検討しましょう。