テレワークの導入状況
テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用して場所や時間に制限されない柔軟な働き方のことをいいます。総務省が推進する働き方改革のもと、時間や場所に制限されない柔軟な働き方として注目を集めているテレワークですが、どれくらい導入されているのでしょうか。
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企業におけるテレワークの導入率は20.2%
総務省の調査によると、令和元年9月末時点で企業におけるテレワークの導入率は20.2%に達しています。導入予定がある企業も含めると3割となり、年々増加傾向にあります。加えて、令和二年には新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、テレワークを導入した企業が増えているので、導入率が高くなる見込みです。
出典:令和元年通信利用動向調査の結果|総務省
テレワークの課題は業務が限定されること
テレワークは働き方改革が推進されていることもあり、徐々に普及してきていますが、課題もあります。
多くの企業にとってテレワーク導入の弊害となるのは、社内にいないと完遂できない業務があることです。また、情報漏洩のリスクが発生してしまうことへの懸念もあります。
テレワーク導入の進め方7ステップ
労働人口の減少に対策するための「働き方改革」のもとで、総務省が主体となってテレワークの導入支援がなされています。総務省が公開した「テレワーク導入手順書」には、テレワーク導入のプロセスがさらに詳しく解説されています。
参考:テレワーク導入手順書|総務省
では、具体的にテレワークはどう導入すればいいのでしょうか。テレワークの導入方法は、導入の検討から導入後の評価まで7つのプロセスに分類できます。
- 1.導入検討・全体方針決定・経営判断
- 2.現状把握
- 3.導入に向けた推進体制の構築
- 4.テレワークに関する社内ルール作り
- 5.ICT(情報技術)環境の整備
- 6.セキュリティー対策の実施
- 7.テレワークの導入・評価
導入の進め方をそれぞれ解説していきます。
1.導入検討・全体方針決定・経営判断
テレワーク導入にあたってまず重要なのが、最終的に得たい効果を考えて目的を明確にすることです。例えば生産性の向上や、人材の確保などがあります。テレワークの導入自体が目的にならないように、導入段階で目的意識を持つことは非常に重要です。
その後、テレワーク導入のガイドライン(ポリシー)を策定します。進め方のポイントは、労使でよく話し合い、認識を前者で共有することです。
2.課題の把握
テレワーク導入のポリシー策定ができたら、具体的な検討段階に進みます。確認ポイントは以下のようなものです。
- ・就業規則に関連する社内の制度(勤怠管理制度など)
- ・人事評価制度(目標管理制度、成果に基づく評価制度など)
- ・ICT環境
- ・日常での仕事の進め方
- ・労働組合がある場合は組合の考え方(労働組合がない場合には従業員の考え方)
特に、就業規則や社員の評価制度は明確にしておかないとトラブルが起きてしまいます。
3.推進体制の構築
社内の課題を把握した後は、テレワーク導入に向けた推進体制の構築に着手します。社内の各部署がテレワークの意義を理解し、導入が円滑に進むよう体制を整えましょう。
そのためには、プロジェクトチームを設置するのが有効です。メンバーは、テレワーク導入に関わる社内制度や施策を担当する部門を中心にします。セキュリティや権限に関しては全社で共有してセキュリティ対策を徹底させましょう。
4.テレワークに関する社内ルール作り
推進のプロジェクトチームを編成できたら、テレワーク導入に向けた社内のルールを作ります。定めるルールには以下のようなものがあります。
テレワークの導入範囲を決める
まずは、テレワークを導入する範囲を決めましょう。テレワークの形態には「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス(施設利用型)」があります。自社の適応範囲(部門)にあった形態を選びましょう。
勤怠管理を徹底する
テレワークを初めて導入する場合、勤怠管理方法を確認し、就業規則にテレワーク勤務に関する規定を盛り込みましょう。
これには就業規定に直接規定を加える方法と、「テレワーク勤務規程」という個別の規程を定める方法があり、所定の手続きを踏む必要があります。
テレワーク導入のための教育・研修を実施する
テレワーク導入で失敗しないためには、教育や研修は不可欠です。こうしたプログラムは、テレワーカーだけでなく全社的に実施するのが望ましいでしょう。
5.ICT(情報通信技術)環境の整備
テレワークには、ICT環境の整備が不可欠です。ICT環境整備の進め方を3つのポイントから解説していきます。
現在利用するICT環境を活用する
まず、テレワーク用のICT環境は、利用しているIT資産を生かして構築することも可能です。以下のいずれかの仕組みがあるか確認しましょう。
- リモートデスクトップ
- 遠隔でデスクトップを操作
- 仮想デスクトップ
-
- テレワークで働く社員に割り当てた仮想デスクトップを操作
- クラウド型アプリケーション
- クラウド上で提供されるアプリケーションに、社内外からアクセスして操作
- 会社支給のPC
- 会社で使っているPCなどを持ち帰って利用
労務管理をリモート化する
労務管理には、始業・終業時刻の記録や報告をする勤怠管理、業務時間中の在席管理、業務遂行状況を把握する業務管理があります。
例えば、インターネットを使って始業・終業などが記録できるクラウド型の勤怠管理システムを使えば、リアルタイムで就業状況の確認ができます。
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コミュニケーション環境を整える
テレワークは、オフィス以外の場所で上司や同僚と顔をあわせずに仕事をする時間が増えます。その結果、コミュニケーション不足が生じ、テレワーク利用者の業務効率の低下につながります。
この問題の解決には、ビジネスチャットや社内SNSなどのコミュニケーション活性化ツールを活用しましょう。さらに、端末の画面やファイルなどを共有し、リアルタイムの共同作業ができる「Web会議システム」といったITツールを使えば、より密度の高い意思疎通が図れるでしょう。
テレワークに役立つITツールは以下の記事でまとめて紹介しています。ぜひご覧ください。
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6.セキュリティー対策の実施
社外でIT機器などを利用するテレワークでは、不正アクセスやIT機器の紛失による情報漏洩リスクなどのセキュリティリスクが発生します。ここでは効果的なセキュリティ対策について紹介します。
端末管理を徹底する
端末の紛失や、ウイルスによる情報漏洩のリスクは端末管理を徹底して対策しましょう。具体的には、ウイルス対策ソフトウェアを導入するのがおすすめです。
また、モバイル端末を使う場合は、複数の端末を一元管理できるMDMを導入するのも良いでしょう。リモートロックやデータ暗号化など、端末からの情報漏えいを防ぐ機能が搭載されています。
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ファイアウォールを導入する
社外からの不正アクセスに対策するためには、ファイアウォールの導入が効果的です。社内ネットワークと外部との境界を設定し、不正アクセスを防ぎます。
また、IPS(侵入防止システム)、IDS(侵入検知システム)を導入すれば、不正アクセスの侵入検知や排除ができます。
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7.テレワークの導入・評価
最後に、導入による効果を測定する方法について2つ紹介します。
量的評価
量的評価には以下のようなものがあります。
- ・顧客対応(顧客対応回数、時間)
- ・情報処理(伝票などの処理件数、企画書の作成件数など)
- ・オフィスコスト(賃貸料、電気代など)
これらを評価の基準にして改善していきましょう。
質的評価
質的評価には以下のものがあります。
- ・業務改善(知識・情報の共有など)
- ・成果・業績(業績評価の向上など)
- ・全体評価(会社への満足度、仕事への満足度など)
これらを参考に、導入効果を見てみましょう。
テレワーク導入時の3つのポイント
テレワークを導入する際には、いくつかの押さえるべきポイントがあります。
1.システム導入時にセキュリティを確認する
ICT環境を整える際に情報通信システムを導入しますが、そのシステムを選定する際にセキュリティを考慮しましょう。システムによって搭載されているセキュリティ機能が異なるので、自社のセキュリティポリシーとの適合性をチェックすることが必要です。
2.テレワーク先の経費に関して取り決めをしておく
テレワーク先でかかる通信費や光熱費の負担に関しては原則会社負担ですが、事前に会社とテレワーカーとの間で取り決めを結びましょう。
また、そのような取り決めはテレワーカーだけでなく全社員に共有すべきです。なぜならテレワーカーとオフィスワーカーが共同作業する際に、認識のズレが起きてしまう可能性があるからです。
3.助成金を申請する
中小企業の場合に限られることが多いですが、テレワークを導入するなら助成金を申請しましょう。働き方改革推進支援助成金は、テレワークに取り組む中小企業に対して導入にかかる一部の費用を助成するという制度です。ほかにもITツールを導入する企業向けのIT導入補助金などがありますので、有効活用しましょう。
テレワークを導入して、業務効率化を!
今回は、テレワークの導入プロセスをまとめました。テレワークの推進は社内の複数部署が関係するため調整に時間を要することもありますが、目的を明確にしてスモールスタートで一部の部署から進めてみるのも良いでしょう。
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、テレワークは今後も普及していく見込みです。この機会にぜひテレワークを導入を検討しましょう。