タイムカードによる勤怠管理の課題
タイムカードは簡単に打刻でき、コストも安いのがメリットです。また、手書きやエクセルを使った勤怠管理よりも、客観的に労働時間を把握できます。なぜタイムカードは廃止され、勤怠管理システムに移行しつつあるのでしょうか。タイムカードを使った勤怠管理の課題点について詳しく解説します。
集計・計算・データ化に手間がかかる
タイムカードを使った勤怠管理は、タイムカードに書かれた打刻情報・勤怠情報をエクセルなどに転記する工程が発生します。タイムカードを目視で確認しながら入力するため、ミスが起きやすいというデメリットもあるでしょう。ミスに気付きにくく、間違った労働時間が集計されてしまう可能性もあります。
誤った勤怠情報が給与計算に反映されてしまえば、給料の未払いが発生し、従業員の会社への不満へとつながりかねません。
また、雇用形態・勤務体系が異なる従業員の勤怠管理は複雑なため、集計に時間がかかりがちです。管理者の労働生産性が下がってしまう恐れもあるでしょう。
タイムカードの保管場所・費用が必要
労働基準法によると、労働関係に関する重要な書類は従業員の退職後、最終出社日から3年間の保管が義務づけられています。さらに2020年の法改正により、2020年4月1日以降のタイムカードは3年から5年の保管に変更されました。そのため、長期に渡り全従業員のタイムカードを保管しなければいけません。
タイムカード自体はそれほど大きくありませんが、一般的に毎月一人一枚発行します。従業員数によっては広い場所や保管コストが必要になります。また、再度タイムカードを参照する際にも、手作業で探す手間が発生するでしょう。
参考:労働基準法|e-Gov法令検索
打刻方法が限られる
タイムカードを利用した勤怠管理は、打刻方法や時刻が限られます。出勤時に打刻をする際、自分のタイムカードを探すのに手間取ったり、タイムレコーダーの前に行列ができたりすることもあるでしょう。
また、直行直帰などで外出先から打刻ができない場合や、打刻の入力漏れが発生した際は、正しい労働時間を記録できません。働き方改革が進み、テレワークでの働き方が広まっていけば、タイムカードでの勤怠管理だけでは手に負えなくなるでしょう。
不正打刻が起こりやすい
タイムカードでの勤怠管理は、打刻漏れや残業時間の申告時に手書きで修正されるのが一般的です。手書きで修正された勤怠情報は、いつ誰に変更されたかがわからないため、データ改ざんの危険性があります。
また、タイムカードの仕組み上、本人による打刻かどうかを証明できません。遅刻をごまかすため同僚に代理打刻を依頼するなど、不正打刻が起きる恐れもあります。
月内での残業・有給管理が難しい
タイムカードは残業時間をリアルタイムで把握しづらく、月末にはじめて長時間労働が可視化するといった問題が起こりがちです。現法では有給休暇の取得・消化が義務化しており、企業は適切に管理を行わなければなりません。しかし、タイムカードでは対応が難しいため、別のシステムを利用して取得数や消化状況を確認する必要があるでしょう。
タイムカード廃止のメリット
タイムカードを使った勤怠管理のデメリットを解決できるのが、勤怠管理システムです。ここでは、タイムカードを廃止して勤怠管理システムに移行するメリットについて解説します。
集計業務の効率化やミス削減
勤怠管理システムは総労働時間や残業時間、休暇の取得状況などを自動集計できます。エクセルや他システムへの転記入力が不要になり、入力・転記・計算ミスなどを防ぎます。
また、集計データをCSVやPDFなどの形式で出力し、給与計算や人事評価などの他システムへ反映可能です。雇用形態・勤務体系や、事業部・個人単位など、さまざまな条件で簡単にデータを出力できます。
コスト削減
勤怠管理システムは勤怠情報をデータで管理するため、関連書類の保管コストやタイムカードの購入費用がかかりません。また、勤怠時間の集計や給与計算システムへの転記にかかっていた時間を削減できるため、人件費も減らせるでしょう。
なお、勤怠管理システムのなかには給与計算機能を兼ね備えた製品があります。一つのシステムで管理できれば、従業員一人ひとりに対応した労働時間での給与が自動計算され、業務効率化・コスト削減につながるでしょう。
多彩な打刻方法
勤怠管理システムの主な打刻方法は、PCやモバイルを使って出勤・退勤時間の記録をする方法です。ほかにも、ICカードや生体認証などを使った打刻方法や、入退室管理システムと連動した製品などがあります。
特にモバイル端末を使った打刻は、直行直帰やテレワークの多い企業におすすめです。GPS対応機器から打刻をすれば、打刻した場所も管理できるため、より正確な勤怠情報の管理につながるでしょう。
不正打刻や改ざんの防止
生体認証による打刻方法を用いれば、本人でないと打刻できないため不正打刻を防げます。
またタイムカードによる勤怠管理では、打刻漏れや修正申請は紙やメールで行い、タイムカードに手書きで修正するのが一般的です。対して勤怠管理システムは、打刻情報の修正申請はシステム上で完結します。さらに、上長の承認機能・機能制限・ログ管理などで改ざん対策が可能です。
法令遵守できる
タイムカードは勤怠時間の管理のみ可能でしたが、勤怠管理システムは残業時間や休暇の取得状況も管理できます。従業員が今どのくらい残業をしているのか、月末時点でどのくらい残業をしそうかなどの落着残業時間がわかります。事前に把握できれば、残業時間が多くなりそうな従業員をフォローできるでしょう。
また、企業は勤怠管理データを保管しておく義務があります。勤怠管理システムならデータを保持していればいいため、簡単に長期保管できるでしょう。
タイムカード廃止のデメリット
ここからは、タイムカードを廃止するデメリットについて紹介します。
導入にコストや工数がかかる
無料の勤怠管理システムもありますが、多くの製品は月額費用やシステムの導入費用が必要です。また、勤怠管理システムは全従業員が利用するため、ルールや使い方の周知が欠かせません。複数回にわたり説明会を開催する、操作がわからない人に対応するなど、従業員への細やかなフォローが必要でしょう。
打刻方法によってはトラブルが増える可能性もある
勤怠管理システムを導入すると、指紋認証・静脈認証・顔認証といった生体認証に対応するほか、社員証や交通系ICカードをタッチするだけで打刻できます。非常に便利な反面、クラウドサービスだとインターネット環境に依存するため回線トラブルのリスクがあります。
ほかにも生体認証がうまくいかないケースや、操作が複雑で一人あたりの打刻の時間がかかってしまうなどの問題も考えられるでしょう。職場環境や従業員の勤務時間などから適切な打刻方法を採用するのがおすすめです。
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勤怠管理システム検討時のチェックポイント
勤怠管理システムへの移行を考える際には、どのような点に注意してシステムを選定するとよいのでしょうか?ここでは、勤怠管理システム選びのチェックポイントを紹介します。
自社の就業規則に対応可能か?
シフト管理やスケジュール管理、変形労働時間への対応なども含め、自社の就業規則に無理なく対応できるシステムを選ぶことがポイントです。労働基準法をはじめとした労働関係の法令は頻繁に改正されるため、法改正に対応可能なシステムかも見極めたいところです。
給与計算システムとの連携は可能か?
勤怠管理システムと給与計算システムが連携されると、出退勤データの入力や勤務時間の計算業務が不要になり、業務効率化が期待できます。勤怠管理システムとあわせて、給与計算システムのリプレイスも検討してみてもいいかもしれません。
自社の従業員にとって使いやすいツールか?
出退勤データを収集するタイムレコーダーなどのターミナルの種類や、管理画面でのデータの集計・抽出といった機能が、自社の従業員もしくは管理者にとって使いやすいものかを見極めましょう。
勤怠管理・就業管理システムには、ICカード・生体認証・Web打刻など、多様な打刻方法が用意されています。自社の業務や従業員、コストにあわせて最適なものを選びましょう。
さらに、人事・総務担当者や管理監督者がどのような情報を必要とし、その情報をツールから簡単に取り出せるかどうかも確認します。従業員も管理担当者も扱いやすい勤怠管理システムを選定するようにしましょう。
キャパシティとセキュリティは十分か?
クラウド型の勤怠管理システムは、サーバのキャパシティを確認しておく必要があるでしょう。例えば朝の始業時間や月末にデータの大量の出し入れがあるなど、特定の時間や期間に負荷が集中するケースは多くあります。
また、情報の機密性やバックアップなどのセキュリティ体制も選定のポイントです。情報セキュリティマネジメントシステムの導入や、ISO27001(ISMS認証)の取得などはひとつの目安になるでしょう。
タイムカードから勤怠管理システムへ
タイムカードを廃止して勤怠管理システムを導入すると、単なる勤怠管理の効率化だけではなく、さまざまなメリットを享受できます。まずは、どの製品が自社ニーズに合致するのか、比較検討からはじめてみてはいかがでしょうか。