契約書管理の必要性
契約書はビジネス運営の根幹をなす文書です。これらを適切に管理することで、企業は法的な保護を確保し、業務の透明性を高め、リスクを管理できます。
一般的に契約書はビジネス取引の合意内容を正式に記録した文書であり、法的なトラブルが発生した際に重要な役割を果たすものです。例えば、取引条件に関する不一致が生じた場合、適切に管理された契約書は、その解決のための確かな根拠となります。さらに、契約違反が疑われる状況では、契約書は企業の権利を守るための不可欠な証拠にもなり得るでしょう。
また、契約書を適切に整理し、確認したいときに探せる状態に保つことは、業務の透明性を高めます。例えば、契約書に記載された納期や支払い条件などは、プロジェクト管理や財務計画の基盤です。容易に確認ができないと、思わぬトラブルのもとになってしまうかもしれません。
近年では電子帳簿保存法の改正により、電子取引で授受した契約書の電子データは、電子データのまま保存する必要が出てきました。このような法改正にもとづくコンプライアンス遵守のためにも、適切な契約書管理を進める動きが活発になっています。
契約書管理システムとは
あらゆる契約書の一元管理に加え、契約書作成・進捗管理機能や検索機能を備えたものが「契約書管理システム」です。煩雑になりがちな文書の作成や編集業務を効率化させます。契約書管理システムで管理できる代表的な文書は、以下のとおりです。
- ●売買契約書
- ●業務委託契約書
- ●機密保持契約書
- ●雛型文書
- ●契約締結文書
契約書管理システムのタイプ(種類)
契約書管理システムには、対応範囲や使いやすさに応じてさまざまなタイプが存在します。主なタイプとして、次の4つに分類されます。自社のニーズに合ったシステムを選択することで、契約管理のプロセスをスムーズに行えるでしょう。
契約書管理に特化しているタイプ
余計な機能が一切なく、契約書の入力作業や検索機能が強化されているシステムが該当します。このタイプは、管理業務の効率化を重視する企業に最適です。特に、PDFやスキャンデータから自動で情報を読み取り、整理する機能があるシステムを使うと、時間と労力の大幅な削減が期待できるでしょう。
契約に関するフローすべてに対応できるタイプ
契約の作成から締結、その後の管理までを一つのシステムで行えるタイプも存在します。このタイプは、業務の一本化を図りたい企業に適しているでしょう。契約に関するすべてのフローを同じシステムで管理できると、情報の整合性を保ちやすくなります。
紙の契約書でも電子化して管理できるタイプ
紙の契約書を電子化して管理できるタイプの契約書管理システムもあります。すでに紙の契約書を大量に保管している場合や、契約書を紙と電子文書の両方で管理したい場合におすすめです。また、電子化できるタイプのシステムであれば、電子帳簿保存法にも対応しやすいのもメリットとして挙げられます。
契約書に限らず文書の管理全般が可能なタイプ
契約書に加え、その他の業務文書も一元管理したい場合に適しているタイプです。法務部門だけでなく、総務や営業部門など幅広い部署での活用が期待でき、ペーパーレス化や業務効率化を推進するのに役立つでしょう。
契約書管理システムの機能
契約書管理システムは、具体的にどのような機能があるのでしょうか。
契約更新の管理
契約更新の時期になると、メールやアラートでお知らせする機能です。通知後は、契約の自動更新・延長・破棄などを自由に設定できます。通知回数・条件・日時・通知先なども、業態にあわせてカスタマイズが可能です。
例えば、月はじめに翌月が期限の契約書一覧を通知し、期限を迎える何日か前に個別アラートを設定することで、契約更新の漏れを防ぎます。自動廃棄後も管理者であれば復元できるため、誤って契約書を消失することもありません。
また通知先には登録者・承認者・責任者のほか、特定の部署や社員個人を設定可能なため、自社にあわせた柔軟な運用が実現します。
閲覧権限の管理
社員個人や部署単位で、閲覧権限を管理します。契約書の閲覧・編集・決裁など、必要に応じて細かな権限設定が可能です。そのため業務の分担が的確になり、契約書を安全に管理できます。
文書の検索
契約先・契約開始日・有効期限などに加え、複数単語や文字列によるキーワード登録に対応しています。これらの属性情報をもとに、全文・項目別による絞り込み検索が可能です。検索結果は、CSV形式でエクスポートできる製品もあります。
関連契約や契約締結過程の確認
基本契約・個別契約・覚書など各契約書の関連性、契約締結過程を確認できる製品もあります。契約書の作成・編集・承認など一連のプロセスに加え、作成者・編集者・修正日時などを把握可能です。関連文書をリンクさせるため、契約書の更新・管理がしやすくなります。
他サービスとの連携
電子契約サービスとの連携により、各種契約書を管理システムへ自動的に取り込める製品もあります。管理システムに契約情報を再入力する必要がなく、入力漏れも解消できるでしょう。また文書保管サービスと連携して、契約書原本の管理が不要になる製品もあります。
契約書管理システムを活用するメリット
契約書管理といえば、エクセルで管理を行うケースも多いでしょう。エクセルを使えば担当者への教育や利用料が必要ないため、コスト削減が可能です。反面、契約書や関連書類の一元管理・共有・有効期限の通知設定はできません。利用者の把握や権限管理も難しいため、セキュリティ面で不安が残るでしょう。
契約書管理システムなら、契約書や関連書類を一元管理し、有効期限のアラートを設定できます。電子データとして管理するため、保管場所にも困りません。さらに、複数人での共有も可能で、多段階で閲覧権限を付与できます。
以下の記事では、契約書管理システムのメリット・デメリット、おすすめ製品を詳しく紹介しています。
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契約書管理システムの選び方
契約書管理システムは、どのようなものを選べばよいのでしょうか。ここでは導入時の選定ポイントを紹介します。
システムの特性が自社にあっているか
契約書管理システムは製品によってさまざまな機能や特徴をもちます。自社のニーズにあった特性をもつ製品を導入しましょう。前述のとおり、契約書管理システムには以下の種類があります。
- ●契約書の管理に特化したシステム
- ●契約書の作成から締結、管理まで一元的に管理できるシステム
- ●紙の契約書でも電子化して管理できるシステム
- ●契約書以外の文書も管理可能なシステム
導入形態は適しているか
契約書管理システムには、クラウド型とオンプレミス型が存在します。
クラウド型は、多額の初期費用やメンテナンスが不要な形態です。外部サーバを利用するため、利用料金さえ支払えば比較的簡単に導入できます。ただし、カスタマイズ性や拡張性は高くありません。
オンプレミス型は、自社で契約書管理システムを運用・導入する形態です。カスタマイズ性やセキュリティを高くできる反面、初期費用やメンテナンス代が高くなります。
一定の初期費用を受容でき、運用ノウハウ・知識が豊富ならオンプレミス型がおすすめです。コストを抑えたいなら、クラウド型がよいでしょう。
適切な料金か
ライセンス料金や導入にかかる費用だけでなく、メンテナンス費用や機能を拡張する際の費用など、トータルコストを比較検討しましょう。
利用人数などで価格が変動する製品もあります。はじめて利用する場合は、製品の無料トライアルを活用するとよいでしょう。実際に使用して操作性を確認してください。
安さだけでなく、必要な機能を備えているかが重要です。料金と機能のバランスがとれた製品を選びましょう。
セキュリティレベルは十分か
重要な契約書情報を取り扱う契約書管理システムでは、十分なセキュリティ機能が備わっているかを確認しましょう。
例えば、社員の不正な持ち出しや改ざんを防止するために、ログを保存・確認できる機能や閲覧・アクセス・ダウンロード制限機能などがあると安心です。
電子契約サービスに対応可能か
電子契約サービスは、クラウド上で契約締結が行えるサービスです。印刷代や郵送費などのコスト削減につながるだけでなく、スピーディーに対応できるメリットがあります。すでに電子契約を利用している場合は、既存システムと連携可能なものを選びましょう。
おすすめ製品の比較表
この記事で紹介している製品の提供形態や無料トライアルの有無などを比較表でまとめました。各製品の詳細情報については後述します。
おすすめの契約書管理システム人気TOP5を紹介
最新の契約書管理システム資料請求数ランキングから、TOP5の製品を紹介します。製品は資料請求(無料)ができるので、比較のうえ自社に合うものを検討してください。
《リーガレッジ》のPOINT
- 契約書の登録・管理を効率化する。
- 契約書内の情報を現在の契約レビューなどに有効活用する。
- 電子契約サービスとも連携し、紙と電子の契約書を一元管理。
ITトレンド上半期ランキング2023(契約書管理システム)1位
株式会社コスモルートが提供する「リーガレッジ」は、登録した契約書を条文単位で保存し活用できるクラウドサービスです。条文検索によって、過去に締結した契約書から参考にしたい条文を引用できます。条文のテンプレート化も容易で、ナレッジとして蓄積されるため、契約書の作成業務に役立つでしょう。無料トライアルも実施しています。
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
クラウド |
参考価格 |
ー |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
業種 |
その他製造 |
従業員規模 |
1,000名以上 5,000名未満 |
リーガレッジのいい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5
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契約データをナレッジとしてクラウドベースで共有することが出来る点と、ストックされた契約データに手軽にアクセス・検索できデータの利活用がしやすい点です。
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業種 |
その他製造 |
従業員規模 |
1,000名以上 5,000名未満 |
リーガレッジの改善してほしい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5
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契約書の更新期日の管理においてアラート機能などがあると管理業務が楽になるので、ぜひ実装してほしいですね。
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製品・サービスのPOINT
- 累計契約送信件数1000万件超!※弁護士が監修した電子契約サービス
- 大手金融機関からスタートアップまで幅広い層の導入実績
- マニュアルなしで誰でも使えるシンプルなUI
ITトレンド上半期ランキング2023(契約書管理システム)2位
弁護士ドットコム株式会社が提供する「クラウドサインクラウド型電子契約」は、弁護士が監修した電子契約サービスです。契約書などの文書をアップロードし、宛先を入れて送信するだけで、自動的に電子署名やタイムスタンプが発行されます。CRMやRPAなどさまざまなサービスと連携できるため導入しやすいでしょう。
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
クラウド / SaaS |
参考価格 |
●Light:月額10,000円 ●Corporate:月額28,000円 ※無料プラン・無料トライアルあり |
業種 |
金融・証券・保険 |
従業員規模 |
1,000名以上 5,000名未満 |
クラウドサインクラウド型電子契約のいい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5
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紙での管理がほとんど不要になるので、契約書の管理が簡素化されますし、システムを通して必ず社内メンバーのチェックが入るのも素晴らしいです。
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業種 |
情報処理、SI、ソフトウェア |
従業員規模 |
50名以上 100名未満 |
クラウドサインクラウド型電子契約の改善してほしい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5
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他社システムとの融和性に他社の電子契約システムと一長一短なところがあるため水準を都度アップデートしてほしいです。
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《MyQuick》のPOINT
- 悩ましい電子契約と紙契約の一元管理をシステム面でサポート
- 電子署名サービスと連携して締結、期限管理等の業務効率をアップ
- 重要な書類を守るセキュリティ対策・バックアップサービスも提供
ITトレンド上半期ランキング2023(契約書管理システム)3位
インフォコム株式会社が提供する「MyQuick」は、契約書の作成・締結・管理までをクラウド上で行える契約書管理システムです。クラウドサインやGMOサイン、ドキュサインと連携することで契約締結後に電子契約書の自動保管が可能です。さらにファイアウォールやIP接続制限、通信暗号化など、充実のセキュリティ対策も魅力といえます。1か月間の無料トライアルを実施しています。
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
オンプレミス / クラウド / SaaS / ASP |
参考価格 |
クラウド版の場合:20,000円~ |
業種 |
情報処理、SI、ソフトウェア |
従業員規模 |
10名以上 50名未満 |
MyQuickのいい点 |
★ ★ ★ ★ ☆ 4
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検索機能による全文検索が可能であり、表示項目をカスタマイズすることもできるため、非常に利便性が高いです。さらに、設定も簡単なので初めて導入する場合でも使い始める際のハードルが低くおすすめです。
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業種 |
運輸 |
従業員規模 |
100名以上 250名未満 |
MyQuickの改善してほしい点 |
★ ★ ★ ☆ ☆ 3
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現行では、PDF化した契約書を保管するツールとして利用をしておりますが、検索機能でPDFの中身まで調べることができると良いと感じます。企業名をキーに検索することがもっぱらですが、文書内検索ができると、より便利かと思います。
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《OPTiM Contract》のPOINT
- 初期費用不要で、月額9,980円からお手軽導入!
- 契約書をアップロードするだけで管理台帳を自動で作成
- 契約終了と自動更新の接近を自動通知
ITトレンド上半期ランキング2023(契約書管理システム)4位
「OPTiM Contract」は株式会社オプティムが提供しており、AIが契約情報を抽出し管理台帳を作成します。契約書をアップロードするだけで契約書種別や契約相手、有効期限などの情報取得が可能です。契約終了日が近づくと自動で通知が届くため、更新などの対応漏れを防げるでしょう。さらに、スキャンした契約書はOCR(光学的文字認識)処理によりテキストデータ化され、本文検索に対応します。
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
クラウド / SaaS |
参考価格 |
●スターター:月額9,980円 ●ビジネス:月額49,800円 ※無料トライアルあり |
製品・サービスのPOINT
- 契約書作成ー申請ー承認ー締結ー保存ー管理までまるっとサポート
- 送信料・保管料がずっと0円。定額制のシンプルな料金体系
- 紙の契約書も電子契約もまとめて一元管理
ITトレンド上半期ランキング2023(契約書管理システム)5位
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド契約」は、契約書の申請承認から締結、保管や管理を一気通貫で行う電子契約・契約書管理サービスです。契約書の押印申請ワークフローで、契約業務が効率化します。電子契約データはもちろん、紙の契約書や他社サービスで締結した契約書の一元管理も可能です。担当者や契約日時など社内の契約業務情報をひとつの画面で管理できるため、内部統制の強化に役立つでしょう。無料トライアルを実施しています。
対象企業規模 |
すべての規模に対応 |
提供形態 |
クラウド / SaaS / ASP / サービス |
参考価格 |
●小規模・中小企業向け:月額2,980円~ ●中堅・大企業・IPO準備中の企業向け:月額50,000円~ ※無料トライアルあり |
マネーフォワード クラウド契約のいい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5
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過去の契約書の検索・アクセスが容易になった。キーワード検索を行えば一発でヒットしてくれる。また、UIもシンプルで分かりやすく、操作性(動作など)は問題ない。
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業種 |
エネルギー |
従業員規模 |
100名以上 250名未満 |
マネーフォワード クラウド契約の改善してほしい点 |
★ ★ ★ ★ ★ 5
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導入していない企業への機能説明が少々難しいところです。あと設定及び管理画面のUIが少し使いにくいところです。
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ITトレンドでは、このほかにも多数の契約書管理システムを取り扱っています。導入製品にお悩みで、まずは最新の人気製品から検討してみたい、という方はこちらのランキングも参考にしてください。
契約書管理システムを導入・活用し、業務を効率化しよう
契約書管理システムは、契約書の一元管理を行うツールです。主に、契約書の自動更新・有効期限のアラート・閲覧制限ができます。また、電子契約サービスとの連携により、契約情報の引き継ぎがスムーズになるでしょう。製品によって機能や特徴はさまざまなので、まずは契約書管理システムの資料を取り寄せて比較してはいかがでしょうか。