給与計算における「法定休日・法定外休日」とは
ここでは、法定休日と法定外休日の定義や概要についてそれぞれ解説します。
法定休日:労働基準法が定める休日
労働基準法では、最低でも1週間に1日(または4週間に4日以上の休日)の付与を定めています。また労働時間の上限は週40時間です。
勤務形態には「週休制」と「変形週休制・変形休日制」の2種類があり、週休制は1週間に1日の休みです。一方、変形週休制・変形休日制は、毎週1日の休みを設定しません。たとえば「4週間に4日の休み」「4週間に5日の休み」などさまざまです。
労働基準法が定める法定休日を下回る休日の付与は認められていません。たとえば週休制の場合、第1週に休みを2日付与し、第2週は休みなしなどの勤務形態は、労働基準法違反です。
法定外休日:法定休日以外の、会社が定める休日
企業の就業規則などで定められた、法定休日以外の休日です。
年末年始休暇や夏季休暇などが法定外休日に該当します。しかし、法定休日以外の休日がすべて法定外休日に該当するわけではありません。たとえば週休2日の場合、土日の両方を法定休日にできます。または土日のいずれかを法定休日、他方を法定外休日にすることも可能です。
休日労働の賃金割増率
給与計算時、法定休日・法定外休日での休日労働は割増賃金が加算されます。
法定休日、法定外休日で異なる
法定休日に労働する場合の賃金割増率は、35%以上です。法定休日に時間外労働が発生した場合の割増率はそのままで、時間外手当は発生しません。
一方法定外休日の場合、週の労働時間が40時間を超えたときは25%以上の割増賃金が発生します。週の労働時間が40時間内の場合だと割増賃金は発生しません。
また、法定休日・法定外休日の深夜労働は、25%の深夜手当が加算されます。その場合、法定休日は35%+25%、法定外休日は25%+25%となります。
代休・振替休日で異なる
休日労働後に、別日で補填する休みが代休です。代休を取得しても法定休日に働く場合は、35%以上の割増賃金が発生します。法定外休日の場合は、週40時間超えのときに25%の割増賃金が発生します。
一方振替休日とは、休日労働前に指定された出勤日を休みにしたものです。振替休日は、法定休日・法定外休日共に、同じ週に代わりとなる休みを指定すれば割増賃金は発生しません。しかし、振替休日が週をまたぎ、週の労働時間が40時間を超えた場合は25%以上の割増賃金が発生します。
休日出勤における給与計算の注意点
休日出勤時の給与計算で注意すべきポイントが3つあるため、それぞれ解説します。
事前に36協定を結んでおく必要がある
労働基準法ではそもそも、休日出勤や残業が認められていないことを前提にしておかなければなりません。認められていない中で残業するためには、事前に「36協定」を結んでおく必要があることを覚えておきましょう。36協定は別名「時間外・休日労働に関する協定」とも呼ばれています。事前に36協定を結んでいないにもかかわらず、休日出勤や残業をさせている企業は、そもそも違反であるため注意してください。
就業規則で法定休日が定められていない場合がある
法定休日が定められていない場合、日曜日が週の起算日となります。土日の両日に出勤した場合は土曜日が法定休日に該当し、割増賃金35%を支払わなければいけません。日曜日は週40時間を超えた労働に対して25%の割増賃金となります。ただし、土日いずれかに出勤するケースは、法定休日の休日出勤に該当しません。
したがって、就業規則で法定休日の定めがなく土日出勤した場合、土曜日のみ法定休日労働になるため注意しましょう。
時間外労働の割増賃金は法定労働時間を超えた分だけ適用する
法定休日の休日出勤には時間外労働の割増賃金は適用されません。
法定外休日労働の場合、週40時間の法定労働時間を超過した労働時間に対して25%以上の割増賃金を計算します。
たとえば、月曜日~金曜日の5日間の労働時間が36時間、土曜日に8時間労働をした場合で、時給を1,200円とします。この場合、週40時間を超える4時間のみが時間外労働に該当し、6,000円の時間外手当加算となります。割増賃金の計算方法については、以下の例を参考にしてください。
1,200円×1.25=1,500円
1,500円×4=6,000円
従業員全員分の割増賃金を計算するリソースを確保しづらい場合は、適宜ツールなどを活用しましょう。割増賃金は従業員の基本給にもかかわる要素であるため、必ず注目してください。
また、ITトレンドに掲載している給与計算アウトソーシングを利用するのもおすすめです。以下の記事でおすすめの製品を紹介しているので、自社のリソースだけで割増賃金の計算含めた給与計算が難しい場合はぜひ利用してください。
休日出勤の割増賃金がもらえない場合がある
「みなし残業」と「労働基準法の管理監督者」に該当する場合、休日出勤の割増賃金が発生しない可能性があります。
みなし残業には、「固定残業代」という名目で賃金・手当に一定時間の残業代が含まれています。たとえば、雇用契約書に「月40時間の残業代を含む」と記載がある場合、月40時間までは残業代が発生しません。そのため、法定労働時間超過分・深夜労働(22時~5時)・休日出勤時の割増賃金は適用されないケースもあります。また年俸制の場合、時間外労働・休日出勤時の割増賃金に相当する賃金が含まれることがあります。「みなし残業」をどこまで含めるかは各企業の就業規則により異なるため、迷ったらまずは就業規則を確認しましょう。
一方、管理監督者に該当する場合、休日出勤時の割増賃金は発生しません。
管理監督者は、労働基準法において割増賃金などの適用対象外です。また、労働基準法上の管理監督者は勤務時間に縛りがなく、職位相当分の待遇をもつ者を指します。部長や支店長などの管理職が該当するでしょう。
法定休日と法定外休日を区別して、正しく給与計算しよう!
法定休日は労働基準法が定める休日で、法定外休日は法定休日以外の企業が定める休日です。
休日出勤時の給与計算は、法定休日・法定外休日、または代休・振替休日かどうかで賃金割増率が異なります。また休日出勤時は法定外休日の時間外労働該当分のみ割増率を適用します。
さらに、みなし残業を採用している企業や管理監督者の場合、割増賃金は発生しません。
以上の点を踏まえ、正確な給与計算を心がけましょう。