給与計算で発生しやすいミス
給与計算で多いミスには、単純な計算間違いのほかに、雇用形態の変更や保険料率の改訂が反映されていないなど、さまざまな項目があげられます。給与計算業務において、ミスが発生しやすいポイントを紹介します。
異動や扶養変更の入力漏れがある
給与計算のミスで特に発生しやすいのが、異動や扶養など環境の変化による項目の入力漏れです。異動に関しては、内示が出るタイミングでの入力によってミスを防げるでしょう。一方で、家族が増えたり就職のため扶養から外れたりするなど、イレギュラーな変更も多いため、特に抜け漏れが起こりやすいポイントです。
保険料率の改定が反映されていない
労働保険料率や社会保険料率は、毎年改訂されます。労働保険料率の改定は、毎年4月です。社会保険料は、毎年7月に行われる「定時改訂」と特定の要件を満たした際に行う「随時改訂」があります。定時改定は年に一度の同月ですが、随時改訂は昇給や降給、時給などの単価変更時に従業員それぞれのタイミングで発生するため、改訂手続きの失念が起こりやすいでしょう。
40歳からの介護保険料が徴収されていない
介護保険料は、40歳以上65歳未満の従業員を対象としており、加入が義務付けられています。ただし注意すべきは、「満40歳に達したとき」からの徴収であり、40歳の誕生日の前日が属する日を基準にしている点です。例えば、7月1日生まれの人が40歳になる場合は、誕生日の前日が6月30日のため、6月分から介護保険料が徴収されます。
参考:介護保険制度と介護保険料について|全国健康保険協会
日割り計算を間違える
入社や退職が月末日ではなかった場合、給与は日割り計算となります。日割り計算は、控除対象となる手当の計算間違いが発生しやすいため、注意が必要です。日割り計算の方法は法律の定めがないため、就業規則や賃金規定に明記し、従業員と共有することでトラブル回避につながります。また社内ルールによって計算方法を統一化すれば、担当者変更時も円滑に事務処理できるでしょう。
雇用形態の変更が反映されていない
アルバイトから正社員への変更や定年後の再雇用など、雇用形態や時給が変わる場合、適切に反映されなければ正しい給与計算ができません。基本的に月額報酬は4月から6月の給与により算出され、9月から翌年の8月までは変更なしとされています。しかし、昇給などが発生した場合は、改定が必要です。この際に、厚生年金や健康保険の変更届が漏れやすい傾向にあります。
各種手当が計上されていない
住宅手当や役職手当、通勤手当など、各種手当は従業員一人ひとり金額が異なります。正確に手当を計上するためには、従業員情報は随時確認しておく必要があるでしょう。また企業によって、扶養手当や住宅手当など出勤日数にかかわらず必要な費用は、日割り計算せず全額支給する場合もあれば、基本給と同じく日割り計算の対象となるケースもあります。
退職者の保険料控除に間違いがある
月途中または月末で退職する従業員の保険料徴収においても、ミスが生じやすいでしょう。ポイントは、退職日の翌日が属する月は、保険料控除の対象とならないことです。そのため月途中での退職では、退職月が保険料控除の対象とならず、退職する前月まで保険料が発生します。ただし、月末に退職した場合は、退職月の保険料も控除されます。
- ■7月30日退職の場合
- 退職日の翌日が7月31日のため、6月分までの保険料が発生
- ■7月31日退職の場合
- 退職日の翌日が8月1日のため、7月分までの保険料が発生
参考:退職した従業員の保険料の徴収|日本年金機構
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給与計算においてミスが起こる原因
給与計算におけるミスの原因には、手作業によるヒューマンエラーや法律の知識不足、社内規則の整備や共有が不十分などさまざまなケースがあるでしょう。以下で詳しく解説します。
法律の知識が浅い
給与計算では、年度ごとの各種保険料改定や年齢によって徴収項目の変更が生じるため、担当者は常に法律の改定情報を把握しておく必要があります。また従業員一人ひとりに適用される控除の条件も異なるため、計算も複雑になりミスが発生しやすくなります。各種法律についてはもちろん、労働条件に関するルールについても十分な理解が求められるでしょう。
社内規則が整備・共有されていない
法律で定められていない項目に関して、社内規則の整備・共有が不十分なためミスを招くケースがあります。また社内規則を整備するにあたって、実際の運用に即していなければ、正しい項目を選択できず抜け漏れが生じます。会社の業務実態にあわせて、給与の締め日や支払日、各種手当の支払要件、日割り計算の方法などさまざまな社内規則を定め、共有しておくことでミスを回避できるでしょう。
従業員の雇用形態を把握しきれていない
企業によっては、正社員や契約社員、アルバイトなど複数の雇用形態があるでしょう。それぞれ適用する就業規則や給与規定は異なるため、従業員一人ひとりの雇用形態を把握しておかなければなりません。さらにフレックス制や時短勤務など働き方が多様化するにつれて、勤怠管理も複雑化し給与計算上のミスも発生しやすくなります。
給与計算業務を手作業で行っている
企業によっては、給与計算をエクセルなどで管理しているケースもあるでしょう。手入力の場合は、勤怠情報や従業員情報のデータ転記において抜け漏れが起こりやすくなります。また従業員一人ひとりで異なる保険料や各種手当などの計算式を誤るリスクもあるでしょう。チェック体制の強化や給与計算システムの導入検討など、ヒューマンエラーを防ぐ対策が必要です。
給与計算におけるミスを回避するためには、給与計算専門企業に依頼するのも一つです。以下の記事では、おすすめの給与計算アウトソーシングを規模別に分類して紹介しています。メリットや選び方も解説しているのであわせてご覧ください。
給与計算ミス発生時の対処法
給与計算のミスが発生した場合、再計算や給与明細の再発行などさまざまな処理が必要ですが、一番に行うべきことは、対象従業員へのお詫びです。ミスに気がついた時点で、速やかに謝罪の連絡をしましょう。
ここでは給与計算ミスを、支給額の不足時と過払い時に分けそれぞれの対処法を解説します。
【給与の不足時】現金支給で対処する
不足分の給与を支給する場合、控除する源泉所得税や雇用保険料が増えるケースもあるため、注意しましょう。追加分を当月現金支給する場合、処理の流れは以下のとおりです。
- 1.給与計算の再計算を行う
- 2.正しい給与支給額と誤った給与支給額の差額から不足額を算出する
- 3.不足額と正しい給与明細を従業員へ支給する
追加支給分を翌月精算する場合、不足支給額を「調整金」などの手当項目で計上し、通常の給与計算を行います。しかし不足分を翌月に精算して支給することは「賃金払いの5原則」の「全額払いの原則」に反します。金額の大小にかかわらず、不足分は同月内に支給しましょう。
参考:賃金の支払方法に関する法律上の定めについて|厚生労働省
【給与の過払い時】現金回収か翌月精算で対処する
過払いに関しては法律に抵触しないため、翌月精算でも問題ありません。現金回収も可能ですが、従業員の状況に応じた対応を取りましょう。また過払い分を回収する場合、源泉所得税や雇用保険料が減ることもあるため注意が必要です。過払い分を現金回収する場合の流れは以下のとおりです。
- 1.給与の再計算を行う
- 2.誤った給与支給額と正しい給与支給額の差額から不足額を算出する
- 3.過払い額と正しい給与明細を従業員へ通知し、過払い分を現金で回収する
翌月精算する場合「調整金」などの手当項目でマイナス計上し、通常の給与計算を行います。なお信頼関係を崩さないためにも、従業員へ事前に通知したうえで、過払い分の手続きを行いましょう。
以下の記事では、給与計算でミスが発生したときの詳しい対処法について解説しています。あわせてご覧ください。
給与計算ミスが原因となるトラブルや損害
給与計算のミスにより、労務や納税において思わぬトラブルを引き起こす可能性があります。以下で一例を紹介します。
労務リスクが発生する
給与計算ミスは、労務管理の不備として従業員から訴訟を起こされる場合があります。一度従業員から不信感をもたれると、信用回復するには時間も労力もかかるでしょう。また、対応が遅れると労働基準監督署から是正勧告を受けたり、場合によってはペナルティが課せられたりすることもあります。
納税に関するミスが発生する
給与計算ミスと連動して、税額控除額にも誤りがある可能性があります。納税は国民の義務であるため、ミスがあれば従業員は大きな損害を被るでしょう。また納付が遅れた分、遅延損害金を支払う必要があります。会社そのものの信用問題にもかかわるため、税額に関するミスがないか細心の注意を払いましょう。
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給与計算ミスを防ぐ方法
給与計算ミスを防ぐには、チェック体制の強化やマニュアル整備が必要です。また専用システムを導入したり、外部委託するのも有効でしょう。以下で詳しく解説します。
チェック体制を強化する
複雑な給与計算においてミスを防ぐためには、まずチェック体制を強化しましょう。
異動情報や扶養家族、控除に関する項目などミスが発生しやすい箇所についてチェックリストを作成します。
また、雇用形態やワークスタイルによって従業員一人ひとりの給与計算方法は異なります。複雑な処理が必要なため、人員に余裕があれば、複数人で担当しダブルチェックを欠かさないようにしましょう。
マニュアルやスケジュール管理表を作成する
マニュアルの作成は、ミスや漏れを防止するだけでなく、担当者変更時の引継ぎにも役立ちます。また、税金や保険料が改定される月をスケジュール表で管理すれば、ミスの抑制につながります。税金・保険料の改定は以下の流れを参考にしてください。
- 健康保険料率:3月
- 雇用保険料率:4月
- 住民税額:6月
- 厚生年金保険料率:9月
給与計算の専任者を雇用する
給与計算の専任者を雇用すれば、正確で効率的な作業が期待できます。また、専任者のノウハウや知識が社内に蓄積されるのもメリットです。ただし自社の業務フローが確立されており、教育体制が整えられていることが前提です。
また専任者を雇う場合はコストがかかるほか、機密情報を取り扱うため信頼性の高い人物を採用しなければなりません。また専任者の雇用により業務が属人化し、退職時に作業がストップするなどのリスクもあります。
給与計算システムを導入する
給与計算システムの導入で担当者の作業効率化・ミスの軽減が期待できるでしょう。
主なメリットは以下のとおりです。
- ●給与・賞与・社会保険処理などのあらゆる計算業務を一元化
- ●法令改正への自動対応
- ●労働基準法に則ったコンプライアンスの徹底
- ●さまざまな雇用形態にあわせてカスタマイズ可能
- ●給与明細の印刷や封入など業務を軽減化
さらに勤怠管理・人事システムとの連携で、従業員情報の変更にともなう徴収漏れや人材リソースの適正化が可能です。自社の業務拡張や既存システムとの連携可否も視野に入れ、十分に検討しましょう。
給与計算アウトソーシングを利用する
代行業者に在籍するスタッフは給与計算のエキスパートです。代行の利用によって、従業員の負荷低減やミスの防止につながるでしょう。また法令改正時にも適切な対応ができ、給与計算に求められる正確性も担保されています。
さらに経理担当者の人件費やシステムの運用費、専任者に委託する費用などと比較すると、コストを抑えて利用できます。外部委託により、社内の人員をコア業務に割ける点もメリットでしょう。
以下の記事では、給与計算アウトソーシングのメリットや導入事例について詳しく解説しています。事例を参考に、導入を検討してみましょう。
給与計算ミスを削減するなら代行がおすすめ
給与計算ミスは、専門知識の不足や社内規則の整備・共有が不十分など、さまざまな原因により発生します。またエクセルなどを利用し手作業で計算している場合も、ヒューマンエラーが起こりやすいでしょう。
給与計算におけるミスを削減するなら、給与計算アウトソーシングがおすすめです。外部委託は計算の正確性が担保されているほか、質の高いサービスを提供しています。また、システム導入や専任者雇用よりもコストを抑えて利用できるのもメリットでしょう。以下のボタンから給与計算アウトソーシングの資料を取り寄せ、さっそく比較検討してみてはいかがでしょうか。