なぜ今、勤怠管理システムの導入が必要なのか
働き方改革の推進やテレワーク、フレックスタイム制の普及により、企業の勤怠管理は年々複雑化しています。従業員の働き方が多様化する一方で、企業にはこれまで以上に正確で客観的な労働時間管理が求められるようになりました。
特に労働基準法の改正や監督指導の強化により、勤怠管理の不備は是正勧告や労務トラブルにつながるリスクがあります。紙のタイムカードやExcel管理では対応が難しくなっている今、勤怠管理システムの導入は多くの企業にとって現実的かつ有効な選択肢となっています。
【導入ステップ1】現状の課題洗い出しと要件定義
勤怠管理システムの導入を成功させるためには、いきなり製品を比較するのではなく、まず自社の現状を正しく把握することが重要です。現状の課題や業務フローを整理しないまま導入を進めると、システムが現場に定着しない原因となります。
現状課題の可視化
最初に行うべきは、現在の勤怠管理においてどのような問題が発生しているのかを明確にすることです。表面的な不満だけでなく、日々の業務の中で発生している手間やミスを洗い出す必要があります。
- ●打刻忘れや修正申請が頻発している
- ●残業時間や休日労働の把握が曖昧になっている
- ●勤怠集計作業が特定の担当者に依存している
現場担当者や管理職へのヒアリングを行い、実務レベルでの課題を可視化することが、導入後のミスマッチ防止につながります。
必要な機能の整理
課題を把握した後は、それらを解決するためにどのような機能が必要なのかを整理します。勤怠管理システムには多くの機能がありますが、自社に不要な機能まで含めてしまうと、コスト増や運用負荷につながります。
- ●スマートフォン・ICカードなどの打刻方法
- ●シフト作成・変更管理機能
- ●休暇・残業の申請および承認フロー
- ●給与計算ソフトとのデータ連携
自社業務に直結する「必須機能」と、将来的に活用を検討する「補助的機能」を切り分けて整理することがポイントです。
目標設定(KPI)
勤怠管理システム導入の効果を正しく評価するためには、事前に目標を設定しておく必要があります。目標が明確であれば、導入後の効果測定や改善もしやすくなります。
- ●勤怠集計作業時間の削減
- ●打刻修正件数の減少
- ●有給休暇取得率の向上
KPIを数値で設定することで、導入成果を客観的に判断できるようになります。
【導入ステップ2】最適なシステムの比較・選定
要件が整理できたら、それを満たす勤怠管理システムを比較・検討する段階に進みます。このステップでは、短期的なコストだけでなく、長期的な運用を見据えた選定が重要になります。
提供形態の選択
勤怠管理システムは、提供形態によって運用方法やコスト構造が大きく異なります。それぞれの特長を理解したうえで、自社に合った形態を選択する必要があります。
- ●クラウド型:初期費用を抑えやすく、法改正対応が自動
- ●オンプレミス型:自社要件に合わせた柔軟なカスタマイズが可能
近年は、運用負荷の軽さやコスト面からクラウド型を選択する企業が増えています。
選定のチェックポイント
システムを比較する際は、機能や価格だけで判断するのではなく、長期的に安心して使い続けられるかという視点も重要です。特に操作性は、従業員の定着率に直結するため、慎重に確認しましょう。
- ●初期費用・月額費用を含めた総コスト
- ●サポート体制や導入実績
- ●操作画面の分かりやすさ
- ●将来的な機能拡張への対応
デモ・トライアルの活用
比較検討の段階では、デモや無料トライアルを積極的に活用することが重要です。実際の操作感を確認することで、資料だけでは分からない課題が見えてきます。事前に使用感を確認することで、導入後のミスマッチを防げます。
- ●画面構成が直感的か
- ●日常業務で無理なく使えるか
- ●現場のITリテラシーに合っているか
【導入ステップ3】初期設定とデータ移行の進め方
導入するシステムが決まったら、実際の運用に向けた準備を進めます。初期設定やデータ移行は、勤怠管理システムの成否を左右する重要な工程です。
就業規則の反映
勤怠管理システムは、自社の就業規則に沿って正しく設定する必要があります。設定内容に誤りがあると、勤怠データの不整合や従業員からの不信感につながります。労務担当者と連携しながら、慎重に設定を進めましょう。
- ●所定労働時間・休憩時間
- ●残業・休日・深夜労働の計算ルール
- ●休暇区分と承認フロー
データのクレンジングと移行
既存の勤怠データや従業員情報を移行する際は、事前にデータを整理しておくことが重要です。不正確なデータをそのまま移行すると、後々の修正作業が増えてしまいます。テスト移行を行い、問題がないことを確認したうえで本番移行を実施します。
- ●重複・不要データの削除
- ●表記ゆれや古い情報の修正
整合性の確認
移行後は、勤怠データが正しく反映されているかを必ず確認します。特に残業時間や休暇残日数は、トラブルになりやすいポイントです。初期段階での入念な確認が、安定運用につながります。
【導入ステップ4】試験運用(トライアル)と従業員教育
本格導入の前に試験運用を行うことで、実際の業務に即した課題を把握できます。また、従業員への事前教育もこの段階で進めることが重要です。
パイロット部署でのテスト
まずは一部部署で試験運用を行い、業務フローや運用ルールに問題がないかを確認しましょう。洗い出した課題を全社導入前に改善することが重要です。
- ●操作上の不明点やエラー
- ●承認フローの使いやすさ
対象別研修の実施
管理者と従業員では利用する機能が異なるため、役割に応じた研修を行います。この研修の有無で導入効果の実感が大きく変わってくるといえるでしょう。
- ●管理者向け:勤怠確認・承認操作
- ●従業員向け:打刻・申請方法
マニュアル・FAQの整備
操作マニュアルやFAQを整備し、導入後も従業員が自ら疑問を解消できる環境を整えます。
【導入ステップ5】本格導入と運用ルールの明文化
試験運用で得られた知見をもとに、全社での本格導入を進めます。この段階では、運用ルールの明文化が特に重要です。
ルールの策定
勤怠管理に関するルールを明確にし、全社で統一しましょう。ルールを明文化することで、運用の属人化を防げ、長期的な運用に繋がります。また、一定期間は旧システムと並行運用を行い、勤怠データを照合しながら段階的に切り替えるのがおすすめです。
- ●打刻漏れ時の申請方法
- ●モバイル打刻の利用条件
- ●シフト変更の締切
【導入ステップ6】運用後のモニタリングと継続的改善(PDCA)
勤怠管理システムは、導入して終わりではありません。運用状況を定期的に確認し、改善を重ねることで効果を最大化できます。
効果測定
導入時に設定したKPIをもとに、定期的な効果測定を行います。以下の指標を参考に、導入前後でどれだけの成果が上がったか測定することで、振り返り時も適切な対応を取ることができます。
- ●打刻修正件数
- ●残業時間の推移
- ●勤怠管理業務の工数
他システムとの連携拡張
運用が安定した後は、給与計算や経費精算、人事評価システムとの連携を検討することで、バックオフィス全体の効率化を進められます。ITトレンドでは他の各システムについても分かりやすい記事を用意しているので、ぜひチェックしてみてください
失敗を避けるための5つの注意点
勤怠管理システム導入を成功させるためには、事前の準備と運用設計が欠かせません。特に以下の点に注意しましょう。これらを事前に洗い出せているかどうかで、上司への提案から発注、導入までがスムーズに進みます。
- ●現場の意見を反映する
- ●総所有コストで判断する
- ●過度なカスタマイズを避ける
- ●法令遵守を前提に運用する
- ●セキュリティと個人情報保護を徹底する
まとめ
勤怠管理システムの導入は、単なる業務ツールの入れ替えではなく、働き方改革の推進やコンプライアンス強化を実現するための重要な取り組みです。正確な労働時間管理は、法令遵守だけでなく、従業員の安心感や企業への信頼にもつながります。
導入を成功させるためには、現状の課題整理から要件定義、システムの比較・選定、初期設定、試験運用、本格導入、そして運用後の改善まで、各ステップを計画的に進めることが欠かせません。特に、現場の声を反映した運用設計や、導入後の継続的な見直しは、システムを定着させるうえで重要なポイントとなります。
自社の業務や働き方に合った勤怠管理システムを選び、適切な運用ルールを整備することで、管理部門の負担軽減だけでなく、組織全体の生産性向上も期待できます。本記事を参考に、自社にとって最適な勤怠管理システムの導入を検討してみてください。


