テレワークの導入率
総務省の調査によると、令和元年9月末時点で企業におけるテレワークの導入率は20.2%でしたが、令和2年には47.5%まで大幅上昇しています。東京都内企業におけるテレワーク実施率は令和3年6月時点で63.6%と高い数値を示し、半数以上の企業でテレワーク導入が進んでいるようです。
参考:通信利用動向調査(令和2年調査)|総務省
参考:テレワーク実施率調査結果をお知らせします!| 東京都
企業がテレワークを導入するメリット
ここでは企業の視点でみる、テレワークの導入メリットを解説します。
生産性・効率性の向上
社内で勤務していると、予定外の打ち合わせや会議、顧客の訪問などによる作業中断が起こりえます。しかしテレワークでは主に一人で作業を進めるため、誰かに話しかけられることもなく、作業に集中できます。そのため、テレワークでは業務効率化や生産性向上が可能です。
またテレワークの導入を機に、これまで後回しにしていた業務プロセスの見直し・DX化を進められるでしょう。例えば、在宅環境でもオンライン上でスムーズに情報共有するため、社内資料のペーパーレス化やクラウドサービスの導入が考えられます。
営業効率・顧客満足度の向上
営業担当者の場合、オンライン商談やWeb会議を活用すれば、オフィスへの出勤頻度や時間、顧客先への移動時間が削減できます。浮いた時間を新規顧客の開拓や既存顧客の対応にあてれば、営業効率や顧客満足度が上がり、業績向上も見込めるでしょう。
コスト削減
テレワークを導入すると、通勤にかかる費用が削減できます。さらにワークスペースを縮小すれば、オフィスの賃料や設備費も節約可能です。テレワーク利用者に定期的な出社を課している場合でもフリーアドレス制にしておけば、オフィスを効率的に利用できます。完全に在宅勤務に切り替えられる企業の場合、支店の廃止や縮小に伴い、大幅なコストダウンも期待できるでしょう。
また、業務で必要な資料や書類を電子ファイル化し、社外からでもアクセスできるようにすれば、紙書類の保管スペースや印刷コストも削減できます。
人材の確保
テレワークでは時間や場所に縛られない柔軟な働き方が可能です。例えば出産・育児・介護・配偶者の転勤など、家庭のやむを得ない事情でも離職せずに勤務できます。また、ワークライフバランスの実現を重視する人が増えていることからも、テレワークの実施は企業のアピールポイントとなるでしょう。スキルをもっていながらも就業が困難だった人を即戦力にできれば、大きなメリットになります。
事業継続性の確保
テレワークは事業継続においてリスクヘッジの役割も担います。例えば地震などの自然災害が起きた場合、テレワークを導入しておけば在宅勤務やモバイルワークを活用し、事業を継続できるでしょう。なお近年では新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、3密を避けるためにテレワークを導入する企業が急増しています。予期せぬ事態が起こった時にも業務を続けられる環境は今後も必要でしょう。
テレワーク導入による社員のメリット
ここからは、テレワーク導入で社員側が得られるメリットについて説明します。
ワーク・ライフ・バランスの実現
ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と私生活の時間をバランスよくとることです。育児・介護・趣味の時間など、プライベートが充実すれば仕事の生産性向上や離職防止が期待されます。
テレワークでは通勤時間が短縮されるため、社員に時間の余裕が生まれます。個人の生活にゆとりがもてるだけでなく、より業務に集中でき、仕事の効率性もあがるでしょう。
育児や介護と仕事の両立が可能に
テレワークは、育児や介護をする社員にも有効です。育児中の社員は、仕事と育児で心身の負担が大きく、両立できずに仕事をあきらめる人も少なくありません。しかし、テレワークなら通勤しなくていいため時間にも体力的にも余裕ができます。実際に、テレワークを取り入れた柔軟な働き方で、出産後も離職せずに働き続ける女性は多くいます。
介護を必要とする家族がいる場合も同様です。介護では、食事の世話など決まったタイミングで時間を割かなければいけないのが一般的です。テレワークと時短勤務の制度を適用すれば、介護の時間を確保しながら働けるでしょう。
通勤のストレス軽減
人によって程度は異なりますが、満員電車などで通勤にかかるストレスを感じる人は多いでしょう。テレワークであれば、オフィスに出社する必要がなく、通勤による肉体的・精神的な疲労が緩和されます。より健康な状態で働けるため、社員は高い集中力を維持しながら仕事ができるでしょう。
空いた時間を有効活用できる
通勤時間の短縮や業務効率化により空いた時間で、スキルアップや副業などの自己投資へ時間を費やせます。社員の能力があがれば、企業にとってもメリットとなるでしょう。
生産性・意欲向上
テレワークでは一人で業務に取り組むことが多いため、手を止める機会が減ります。そのため、オフィスよりも集中できる社員が多いようです。また、自身の働きやすい環境下でリラックスして仕事ができるため、生産性もあがるでしょう。
さらに、テレワークを選択できることで企業への信頼が高まるほか、業務に対するモチベーションの向上も期待できます。
テレワークのデメリットと解決策
ここでは、注意すべきテレワークの問題点と解決策について解説します。
勤怠管理が難しい
テレワークでは上長の目の届かない場で勤務するため、社員の勤怠状況を把握できません。自己申告に頼って正確な勤怠管理を怠ると、長時間労働の原因となるでしょう。
解決策:勤怠管理やログ管理システムの活用
テレワーク下で勤怠管理するには、ログ管理システムや勤怠管理システムを活用するのがおすすめです。
勤怠管理システムは、さまざまなデバイスでどこからでも出退勤時間を管理できます。長時間労働の防止や正確な労働時間の把握に役立つでしょう。勤怠をリアルタイムに確認できる点も強みです。ログ管理システムは、パソコンの操作ログを収集し管理できます。パソコン操作の時間を把握すれば、業務開始のおおよその目安がわかるほか、時間管理の意識付けにも有効でしょう。
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セキュリティリスクが高まる
テレワークでは、業務用のパソコンやスマホなどの端末を外部に持ち出して作業をします。そのため、紛失や盗難に気をつけなくてはなりません。また画面を他者に見られてしまったり、会社との連絡や顧客先との商談内容が流出したりといった情報漏えいのリスクが発生します。
解決策:セキュリティ対策ツールの利用や教育の徹底
セキュリティリスクを回避するためには、パスワードロックの設定やデータをクラウド上に置くといった工夫が必要です。さらにウイルス対策ソフトの導入や通信の保護や暗号化、持ち出しに関する社内ルールの設定なども行いましょう。
総務省では、テレワークを業務に活用する際のセキュリティ上の不安を払拭するためのガイドラインを策定しています。経営者、システム・セキュリティ管理者、テレワーク勤務者の立場ごとに行うべきセキュリティ対策を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:テレワークセキュリティガイドライン(第5版)(令和3年5月)|総務省
コミュニケーションが少なくなる
テレワークを導入すると、社員がそれぞれ違う場所で働くため、社員同士のコミュニケーションが少なくなりがちです。コミュニケーションが少なくなると、情報共有がスムーズにできず業務効率が落ちてしまうなどの問題が生じます。
解決策:コミュニケーションツールで接点を増やす
日常的なコミュニケーションの活性化を狙うには、ビジネスチャットやグループウェア、社内SNSなどのツール活用が有効でしょう。メールよりも心理面でのハードルが低く、気軽に報告や相談ができるでしょう。リアルタイムでの双方向コミュニケーションがとれるため、仕事ぶりの確認ができるメリットもあります。
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自己管理が難しい
テレワークはオフィスから離れた場所で、すべての業務を自己責任で遂行しなければなりません。長時間労働やサービス残業を行わないよう、仕事の優先順位を整理して、時間配分や業務内容を管理する必要があります。特に在宅勤務の場合、仕事とプライベートの切り替えが難しいため、集中力が低下して生産性が落ちる恐れもあるでしょう。
解決策:システムや運用ルールで業務内容を見える化
勤怠管理システムやログ管理システムは、労働時間の可視化、パソコン操作・業務内容の可視化につながります。そのため、オンオフの切り替えや自己管理が苦手な人の意識改革に有効です。ほかにもコミュニケーションツールを使って、業務開始時に予定している業務内容の報告、終了時に進捗や成果物の報告を徹底するなど、テレワーク運用のルールを作成しましょう。
部下のマネジメントや評価がしにくい
部下を直接指導する機会が減少するため、細かな指導や十分なフォローが行われないことも課題としてあげられます。人材育成や部下のモチベーションに影響がでる可能性もあるでしょう。また、労働実態が見えにくいため、勤務態度の評価が難しい点もデメリットの一つです。
解決策:Web会議システムを使い面談や研修を開催
Web会議やテレビ会議システムを導入すれば、対面での面談と大差ない環境でワンオーワンミーティングなどが行えるでしょう。業務の進捗確認以外にも、困り事や悩み事の早期発見、キャリアプランのサポートなどにも活用可能です。ほかにも、ディスカッションやロールプレイング、オンライン研修など、人材育成にも役立てられるでしょう。
総務省の調査によると、テレワーカーのコミュニケーション確保や情報共有のための対策として、8割以上の企業がビジネスICTツールや制度の導入を行っています。中でも、ビデオ会議システムの導入が最多で、次いでチャットの導入と続いています。
参考:テレワークによる働きやすい職場の実現|総務省
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テレワークを導入する際には、勤怠管理の徹底を!
テレワークは企業にとって生産性やコスト削減、育児・介護を抱える社員の離職防止といった効果があります。また長期的には、多様で優秀な人材を確保できるといった効果も期待できます。
だからといって安易に始めると、業務が滞り、かえって生産性が落ちる原因にもなるため注意が必要です。一部の部門からスモールスタートするのがよいでしょう。
テレワーク導入の際には、クラウド型の勤怠管理システムを導入するのがおすすめです。無料トライアルや資料請求を活用して自社に適した製品を見つけてみてください。