今さら聞けない!働き方改革とは?
働き方改革は「一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジ」と位置づけられ、政府主導のもとで行われる労働制度の抜本的な改革です。働き方改革関連法案をもとに推進されています。
働き方改革の目的は、少子高齢社会による労働力不足の問題の解決です。多様化したライフスタイルや働き方に柔軟に対処することで労働人口を確保し、生産性を維持していく狙いがあります。
働き方改革が必要となった背景
働き方改革が必要となった背景として以下の3つが挙げられます。
生産年齢人口の減少
少子高齢社会により生産年齢(15~64歳)人口の減少が急速に進み、内閣府のHPによると90年後には生産年齢の人口が現在の半分になると予測しています。
そのようなリスクを避けるためにも政府は多様な働き方を可能にし、労働人口を確保する目的で働き方改革を進めているのです。
出典:内閣府|平成29年版高齢社会白書(全体版)
長時間労働問題
世界的に見ても日本の長時間労働は問題視されています。2013年には国連から是正勧告を受け、また、大手企業で相次ぐ過労死問題により、長時間労働の是正が求められました。
生産性の向上
労働生産性とは、労働者1人あたりが1時間で生み出す成果を指標化したものです。日本は労働生産性が低く、先進7カ国中では最下位です。
長時間労働を美徳とする文化から脱却し、政府主導のもとで労働生産性の向上を目指す意識改革が行われています。
出典:日本生産性本部|労働生産性の国際比較 2018
働き方改革で推進されている法整備
2019年4月1日より、「働き方改革関連法案」が順次施行されています。この法律は、働き方改革を総合的かつ継続的に推進することを目的として定められたものです。
働き方改革において企業が注意すべきポイントは「長時間労働の是正」、「多様で柔軟な働き方の実現」、「公正な待遇の確保」の3つに分けられます。
1.長時間労働の是正
長時間労働を是正するためには以下の6つを中心に法整備が進められます。
- ●残業時間の罰則付き上限規制の実施
- ●勤務間インターバル制度の推進
- ●年次有給休暇の取得義務化
- ●残業の割増賃金率引上げ
- ●労働時間の客観的な把握
- ●産業医・産業保健機能の強化
それぞれを詳しく説明します。
残業時間の罰則付き上限規制の実施
現在の労働基準法では労働時間について1日8時間週40時間を原則としていましたが、法的拘束力は持っていませんでした。
働き方改革において時間外労働の上限規制の法制化を求める動きが高まり、労働基準法が改正され残業時間の上限規制について法整備が実現しました。
改正労働基準法では残業時間の上限は月45時間、年360時間を限度とし臨時的な特別の事情がない限りこれを超えられません。
勤務間インターバル制度の推進
勤務間インターバル制度とは、勤務終了後から翌日の出社までの間に一定時間の休息時間を設ける制度です。この制度により、労働者の最低限の睡眠時間の確保や生活時間の確保ができ、「ワーク・ライフ・バランス」を実現しやすくなると考えられています。
年次有給休暇の取得義務化
現在、使用者は一定数の有給休暇を付与する義務がありますが、付与した有給休暇を消化させる義務はありません。また、有給休暇を取得して休みにくい風潮があるため、日本の有給休暇の取得率は49.4%にとどまっています。
改正法案では、有給休暇が10日以上付与される労働者に対して、毎年時期を指定して5日の有給休暇を付与することが使用者に義務付けられます。
残業の割増賃金率引上げ
現在、中小企業では月60時間を超える時間外労働に対して25%の割増賃金の支払いが義務化されていますが、改正法案では50%の割増賃金の支払いが義務化されます。
労働時間の客観的な把握
労働時間を客観的に把握することが法律で義務付けられます。健康管理の面においても、労働時間の客観的な把握が必要であり、改正法案では裁量労働制※1が適用される労働者や管理監督者も対象となります。
※1:労働時間に関係なく仕事量に応じて給与を支払う仕組み。
産業医・産業保健機能の強化
事業者は、労働者が安心して就労できるよう産業医を選任しなければいけません。また、労働者の健康診断を行う環境整備に務める必要があります。
産業医から労働者の健康管理の観点から勤務状況などの情報を求められた場合は必要な情報を提供しなければならず、産業医から勧告を受けた場合には労使と産業医で構成される衛生委員会に勧告内容を報告する義務があります。
2.多様で柔軟な働き方の実現
多様で柔軟な働き方を実現するため、以下の2つの制度が新設されます。
フレックスタイム制の精算期間の延長
フレックスタイム制の精算期間の上限は1ヶ月以内でしたが、改正法案では精算期間を3ヶ月以内へと延長可能としています。
例えば、1月、2月、3月のうちで1月が法定労働時間を超えてしまった場合、2月か3月で超えてしまった分の労働時間を精算できます。
高度プロフェッショナル制度
高い年収を確保しつつ自由な働き方を選択できる制度であり、この制度を導入する際は企業内手続きが必要ですが、新たな規制の枠組みに対応した働き方ができます。
対象者は専門知識をもち、年収の高い労働者限定になります。例えば金融商品の開発業務やディーリング業務、アナリストの業務に携わる方が該当します。
総務省・厚生労働省主導のテレワーク推進
就業場所・時間に縛られないような柔軟な働き方のことをテレワークといいます。テレワークは「モバイルワーク」「在宅勤務」「サテライトフィス」という3つの就業形態に分類でき、それぞれ普及が推進されています。
例えば、中小企業がこれらのテレワークを自社で導入すると時間外労働等改善助成金(テレワークコース)を受け取れます。
テレワークについては以下の記事で詳しく説明しています。テレワーク導入に興味がある方は、是非参考にしてください。
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3.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保のため、以下の3つの規定が整備されます。
不合理な待遇差をなくすための既定の整備
今までは正規雇用と非正規雇用との間で待遇面に格差が生じていましたが、新たにガイドラインを設置すること不合理な待遇差をなくしていきます。具体的には以下の通りです。
- ●均衡待遇規定 (不合理な待遇差の禁止)
- 職務内容、その他の事情を考慮した上で不合理な待遇差を禁止。
- ●均等待遇規定 (差別的取扱いの禁止)
-
- 職務内容が同じ場合に差別的取扱いを禁止。
待遇に関する説明義務の強化
非正規雇用者は、正規雇用との待遇差に関する説明を求められます。事業主にはこれに応じる義務があります。
行政による事業主への助言・指導等
都道府県労働局にて無料・非公開の紛争解決手続きを行います。均衡待遇や待遇差の内容や理由の説明も行政ADRの対象です。
裁判外紛争解決手続 (行政ADR):裁判をせずに事業主と労働者間の紛争を解決する手続き。
出典:
厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」
働き方改革をサポートする勤怠管理システムの機能
働き方改革を推進していくうえで企業は多様な働き方への対応が求められるため、より正確で柔軟な勤怠管理が重要となります。そこで活用したいのが勤怠管理システム。
勤怠管理システムの機能を解説し、導入効果を見ていきます。
労働時間の管理機能
適正な勤怠管理は事業主の義務であり、勤怠管理システムの導入により従業員の勤怠管理を正確に行うことが可能です。
勤怠管理システムには出退勤(打刻)の記録を自動化できる製品もあるため、より正確に従業員の勤怠管理ができ、出勤簿も簡単に作成できます。
従業員の就業状況や休暇の取得状況を可視化できるため、適切な労働管理が行えます。
テレワーク対応機能
企業は今後、多様な勤務形態に対応する必要があります。勤怠管理システムはスマホなどのさまざまなデバイスからでも打刻できるため、時間・場所に制限されない働き方であるテレワークの導入に対応できます。
さまざまな勤務形態に対応するためには、エクセルによる勤怠管理では対応が難しくなるでしょう。
勤怠管理自動化機能
従来の勤怠管理の方法では人事担当者がタイムカードや出勤簿のデータを集計し、エクセルに入力する作業を行っており、担当者の作業コストは大きなものになっていました。
勤怠管理システムは勤怠に関するデータを自動で管理でき、また、給与計算ソフトとの連携により給与計算も勤怠データをソフトに取込むことで効率よく給与計算を行えます。
適正な勤怠管理で働き方改革を推進
国を挙げての課題となっている「働き方改革」。2018年7月6日の「働き方改革関連法案」の公布を受け、企業は早急な対応を求められています。
適切な勤怠管理を実施することは、働き方改革を推進するために非常に大きな役割を持つことになります。長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現に向けて、勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
以下の記事では、様々な勤怠管理システムを徹底比較しています。自社に最適な製品を選ぶために参照してください。
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