
事業承継におけるERPの必要性
中小企業の経営者の高齢化が進み、後継者への事業承継が問題になっています。事業承継には、「親族内承継」「親族外承継」「M&A」という3つの手法があり、状況に合わせた使い分けが必要です。
このうち親族内承継は息子や娘などの親族が、親族外承継は親族以外の役員や社員に継承する方法となります。
最近は、親族や社員が経営者としての資質をもつまでの育成期間が長いことや、債務や株式の買取資金不足により、M&Aによる事業承継が増えています。M&Aは、後継者が見つからない場合や、積極的な事業展開を視野に入れて戦略的に行いたいときに実施されることが多いです。
いずれの場合でも、「対象事業に関して、承継後の意思決定に必要な材料の提供」が後継者から要求されます。
そのようなときに役立つのが「ERP」です。ERPなら企業の経営状況が可視化され、M&Aで重要な、相手先の求めるデューデリジェンスに対応できます。
事業承継を目的としたERP導入のメリット
事業承継にERPを活用するメリットは、なにがあるのでしょうか。
デューデリジェンスへの対応
デューデリジェンスとは、合併元の企業が負うべき事業実態調査への協力義務のことです。以下の3つが該当します。
- ■ビジネスデューデリジェンス
- ■ファイナンシャルデューデリジェンス
- ■リーガルデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスは、企業組織や意思決定プロセス、財務活動や人事労務制度などの、経営基盤に関する調査を行います。
ファイナンシャルデューデリジェンスは、各種財務諸表の分析やキャッシュフローの実態を把握するのが目的です。
リーガルデューデリジェンスは、法的な基本事項や契約内容、係争中の案件などを調査します。
合併元の企業は、デューデリジェンスを通して、事業の有用性をアピールしなくてはなりません。そこでERPが有効です。ERPには合併元のプロセスや財務データなどが一元管理されており、事業実態調査に役立ちます。
最近は、事業承継を担当する監査法人から、ERPの導入を義務付けられることもあるようです。
低コストでの導入
事業承継を目的にERPを導入した場合、事業承継補助金やIT導入補助金が受けられます。補助金を活用することで、低コストでの導入が可能です。事業承継補助金は、事業転換や経営革新を行う中小企業が対象となります。
補助金の額は、以下のとおりです。
- 【I型】後継者承継支援型
- ~225万円(補助率1/2以内)、~300万円(補助率2/3以内)
- 【Ⅱ型】事業再編・事業統合支援型
- ~450万円(補助率1/2以内)、~600万円(補助率2/3以内)
一方、IT導入補助金は、生産活動によってサービスを提供する中小企業や小規模事業者が対象となります。ソフトウェア費・導入関連費の一部が補助金として交付されます。
補助金の額は、以下のとおりです。
- A類型
- 150万
- B類型
- 450万
参照:お金を借りる方法がマルっとわかる!事業承継補助金ポータル|事業承継補助金事務局
IT導入補助金2022(令和元年補正サービス等生産向上IT導入支援事業)公募要領(通常枠 A・B型)|サービス等生産向上IT導入支援事業事務局
事業承継を目的としたERP導入を成功させるポイント
基本的に事業承継は、経営状況を把握できている経営者が先頭に立って行いましょう。継承者が先頭に立って行動を起こすことは困難です。多くの事例をみても、経営者が率先した事例が、事業承継の成功確率が高くなっています。
しかし、自ら創業し会社を育て上げた経営者の中には、経営状態を可視化していないケースが多く見られます。そのため、事業のプロセスや財務データを可視化するERPを事前に導入し、経営上の欠点を改善しましょう。
また、ERPを利用して経験の浅い継承者を支援することも可能です。ERPで事業内容を細部まで把握し、事業が順調に営まれているか確認できます。
ERPを導入し、事業承継を円滑に進めよう!
ERPは、基幹システムを統合管理し、プロセスや財務データなどが見える化され、事業計画の策定に役立ちます。
事業承継で重要なデューデリジェンスに対応可能なため、事業承継をお考えの方は、ぜひ活用してください。ERPを用いた事業承継は、経営者が率先して行うことが大切です。経営者としての最後の仕事であるため、ERPを導入し、事業承継を円滑に進めてみてください。
