人事担当者が行う「退職面談」とは
人事担当者が行う面談の種類に、退職面談があります。名前のとおり、退職する従業員と行う面談です。退職にともなうすべての手続きを終えた後や退職する直前に実施します。
退職面談を行う本来の目的は、退職の原因を知り、次の人事施策や社内改善につなげることです。退職者を引き留めるためではありません。
少子高齢化により働き手が不足している昨今、優秀な従業員の離職が深刻な問題となっています。早期離職は既存従業員への負担につながるほか、採用・教育コストの損失にもつながります。そのため、従業員の離職防止は企業をあげて取り組まねばならない課題です。
自社の離職率を下げるためには、退職の原因を分析することが大切です。そのうえで、面談を通じて退職者の意見に耳を傾けることは、今後の人事施策・社内改善に活かしていくために欠かせません。同じ理由で退職する従業員が今後出てこないための対策になるからです。
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退職面談ですべき質問
退職面談を通じて従業員の退職理由を理解することで、組織の改善点を見つけ出し、将来的な人材流出を防ぐための貴重なフィードバックを得られます。会社の未来につながる効果的なフィードバックを得るために、退職面談で尋ねるべき主な質問を紹介します。
退職理由
最も基本的で重要な質問は、従業員が退職を決断した理由についてです。具体的には、「退職を決意した主な理由は何ですか?」や「当社での業務や環境に不満はありましたか?」といった質問を通じて、従業員の不満点や改善が必要な領域を探ります。この質問から得られる情報は、組織内の問題点を特定し、将来的な人材の定着率向上につながるものです。
会社に対する率直な評価
退職する従業員に会社の文化、管理体制、キャリアアップの機会などに関する率直な評価を求めることも重要です。例えば、「会社の文化や職場の雰囲気についてどう感じていましたか?」や「管理職やリーダーから十分なサポートを受けられたと感じますか?」といった質問が該当します。また、「当社でのキャリア成長に関してどのような感想をもっていますか?」と尋ねることで、従業員が感じる成長の機会やその欠如についての貴重なフィードバックを得られるでしょう。
この質問では会社に対する率直な評価として、よかった点、悪かった点に関する奇譚のない意見を貰うようにしましょう。
退職後の仕事や働き方
退職後の計画について尋ねることも有益です。「退職後はどのようなキャリアを目指していますか?」や「新しい職場で求める働き方や環境はありますか?」といった質問から、従業員が新たな職場に何を期待しているのか、または現在の職場で満たされなかったニーズが何であったのかを理解できます。
退職までのスケジュール
退職プロセスを円滑に進めるためには、退職までのスケジュールについて明確にすることが重要です。「正式な退職日はいつですか?」や「引き継ぎに必要な期間はどのくらい見込んでいますか?」といった質問を通じて、残された業務の引き継ぎ計画を立て、業務に支障が出ないようにします。また、従業員がもつ懸念事項や必要なサポートについてもこの段階で確認し、スムーズな退職プロセスをサポートしましょう。
お互いに気持ちのよい退職面談をするポイント
退職面談を実施する際は、従業員と組織の間に良好な関係を保ったまま円満に終わらせるのが望ましいでしょう。次に、双方にとって気持ちのよい退職面談を実施するためのポイントを紹介します。
退職にまつわる不安点を解消する
退職にともなう手続きが済んでいない状態で退職面談を実施した場合、退職者は大きな不安を感じます。「ここで本音を話したら、退職までに嫌な思いをさせられるのではないか」と懸念するのです。このような不安を抱えた退職者から、本音を引き出すのは困難です。
そのため、基本的に退職面談は退職に要する手続きがすべて済んでから実施しましょう。もし手続きが終わる前に退職面談を実施したい場合は、面談内容がその後の手続きに影響が出ないと充分に伝える必要があります。
カジュアル面談の形式で実施する
退職面談は、必ずしもフォーマルな設定で行う必要はありません。場合によっては、カジュアルな雰囲気で実施することで、従業員がよりオープンに感じ、率直な意見を共有しやすくなることがあります。コーヒーを飲みながらのリラックスした環境での面談や、外での散歩をともなう面談など、相手がリラックスできる環境を選ぶことがポイントです。
退職面談をする相手も適切に選ぶ
退職面談を実施する際は、面談を行う相手も慎重に選ぶことが大切です。従業員と良好な関係を築いているメンバーや上司が面談に参加できれば、従業員が心を開きやすくなることも考えられるでしょう。
ねぎらいの言葉を伝える
退職面談を始める際、まずはねぎらいの言葉を伝えましょう。なぜなら、退職の直前ではあっても、その人は自社に貢献してきた従業員だからです。「大変な状況のなか、働いていただきありがとうございました」などの感謝の気持ちを伝えましょう。
また、ねぎらいの言葉をはじめに伝えることで、面談の雰囲気が和らぎます。お互いに緊張感がほぐれれば、退職者は面談で有益な意見を話しやすくなるからです。
さらに、感謝を伝えることで、その感謝に応えたいという気持ちを喚起させることも可能です。人事担当者が最初に感謝を伝えれば、退職者は真摯な気持ちで面談に臨んでくれるでしょう。
退職後のつながりを確保する
退職面談は、退職する直前に行う面談です。そのため、面談で退職者と企業の関係が悪化しても、今後に悪影響は及ばないと考える人もいるでしょう。しかし、考えを改めたほうが賢明です。
転職において、魅力的な企業に入ったつもりが、後になって見当違いだったと判明する例は珍しくありません。その際に、転職者は元の企業に帰りたいと思うことがあります。
これは企業にとって大きなチャンスです。従業員の新規雇用よりも、一度自社で経験を積んだいわゆる「出戻り社員」のほうが育成コストを抑えられるためです。しかし、退職時に関係を悪化させてしまうと、このチャンスを失ってしまいます。
また、戻ってこなかったとしても、退職者の転職先と自社の間になんらかの取引関係がある場合、その退職者が利益をもたらしてくれる可能性もあります。少しでも利益につながり得る以上、関係を良好にしておきましょう。
人事が退職面談を行う際の注意点
次に、人事担当者が退職面談を実施する際の注意点を紹介します。退職者の本音を引き出すために重要なため、押さえておきましょう。
深堀りした質問をしすぎない
退職理由や会社への評価について尋ねる際は、相手が不快に感じない範囲で質問を行うことが重要です。具体的な改善点や提案を求めることは有益ですが、個人の感情や決定に対して否定的な印象を与えるような深堀りは避けましょう。
「例えば誰がどんな点を改善すれば留まっていただけましたか?」といった質問は、相手にプレッシャーを感じさせる可能性があるため、適切なフィードバックを促すような形で質問を構成することが大切です。
引き留めようとしない
退職を決めた従業員に対して、強く引き留めようとする姿勢は避けるべきです。退職の意思が固い場合、強い引き留めは従業員のストレスになり、面談の雰囲気を悪化させる原因にもなります。代わりに、従業員の新しいキャリアへの一歩を理解し、支持する姿勢を示すことで、お互いにとって前向きな終わり方を目指しましょう。
感情を抑えてヒアリングに徹する
退職面談では、退職者の本音を引き出すことになります。退職者の本音とは、基本的に企業に対する不満です。人事担当者は退職面談の最中、自分が属する企業の悪口を聞かされ続けるため、感情的になる可能性があります。
しかし、ここで留意点が2つあります。1つは自社の弱点を知り、改善を目指すことです。決して退職者を引き留めるためでも、説教をするためでもありません。
もう1つは、退職面談は退職者にとってはメリットがないことです。退職面談は企業が自社の弱点を知るために行うものであり、退職者のために実施するのではありません。いわば、企業の利益のために退職者を付きあわせているのです。
そのため、退職面談では感情を抑えてヒアリングに徹しましょう。退職者が抵抗なく不満を打ち明けてくれたなら、実りある面談だったといえます。
退職面談の内容を社内改善へ活かす方法
退職面談で知り得た従業員の不満は、人事施策へ活かしましょう。例えば、適切に評価されないことに不満を抱いた従業員が退職したのなら、評価制度を見直す必要があります。では、そうした施策を実現するためには、具体的に何をすればよいのでしょうか。
ここでは、退職面談の内容を効果的に社内改善に活かす方法について、具体的なステップと例を挙げて解説します。
退職面談内容のレポート化と共有
退職面談の内容は、まず詳細なレポートにまとめることから始めましょう。このレポートは、面談で得られたフィードバックを包み隠さず、具体的かつ客観的に記録することが重要です。そして、レポートを作成したら、マネジメント層に直接提出するのが理想的でしょう。直接提出の理由は、情報の歪曲を避け、組織の上層部が現場の生の声を直接聞くことで、問題の真の原因と対策を理解しやすくするためです。
問題点の特定と優先順位付け
マネジメント層は、レポートをもとに具体的な問題点を特定し、それぞれの課題に優先順位をつけましょう。例えば、多くの退職者が「キャリア成長の機会が限られている」と感じている場合、人材育成やキャリアパスの整備が優先されるべき課題だと考えられます。この過程では、問題の根本原因を深掘りし、表面的な解決ではなく、長期的な改善策を検討することが求められます。
改善策の策定と実行
優先順位の高い問題に対しては、具体的な改善策を策定し、実行に移しましょう。例えば、評価制度の見直しには、パフォーマンスの評価基準を明確化し、公正な評価が行われるようにシステムを改善するといったことが改善策として挙げられます。また、キャリア成長の機会を増やすためには、内部でのジョブローテーションの促進や外部研修への参加支援なども考えられるでしょう。
定期的なレビューと改善の継続
改善策を実施した後も、その効果を定期的にレビューし、さらなる改善のためのアクションを続けることが大切です。例えば、新しい評価制度の導入後、半年ごとに従業員の満足度調査を実施することで、新たな改善点を見つけ出せるかもしれません。こうしたプロセスによって、組織は継続的に改善し、従業員の満足度を高めることにつながるでしょう。
退職面談から本音を聞き出し、社内改善に活かそう
退職面談とは、退職する従業員に対して実施する面談です。退職者から本音を聞き出し、従業員の不満を追究・解消するために実施します。退職面談で知り得た情報は、直接マネジメント層に伝え、新たな人事施策や社内改善につなげてください。
退職面談を適切に実施し、自社の離職低下に役立てましょう。