人事担当者が行う「退職面談」とは
人事担当者が行う面談の種類の中に、退職面談があります。名前のとおり、退職する社員と行う面談です。退職に伴うすべての手続きを終えた後や退職する直前に実施します。
退職面談を行う本来の目的は、退職の原因を知り、次の人事施策や社内改善につなげることです。退職者を引き留めるためではありません。
少子高齢化により働き手が不足している昨今、優秀な社員の離職が深刻な問題となっています。早期離職は既存社員への負担につながるほか、採用・教育コストの損失にもつながります。したがって、社員の離職防止は企業をあげて取り組まねばならない課題です。
自社の離職率を下げるためには、退職の原因を分析することが大切です。そのうえで、面談を通じて退職者の意見に耳を傾けることは、今後の人事施策・社内改善に活かしていくために欠かせません。同じ理由で退職する社員が今後出てこないための対策になるからです。
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人事が退職面談を行う際の注意点
人事担当者が退職面談を実施する際の注意点を紹介します。
退職者の本音を引き出すために重要となるため、確実におさえていきましょう。
退職にまつわる不安点を解消する
退職に伴う手続きが済んでいない状態で退職面談を実施した場合、退職者は大きな不安を感じます。「ここで本音を話したら、退職までに嫌な思いをさせられるのではないか」と懸念するのです。このような不安を抱えた退職者から、本音を引き出すのは困難です。
したがって、基本的に退職面談は退職に要する手続きがすべて済んでから実施しましょう。もし手続きが終わる前に退職面談を実施したい場合は、面談内容がその後の手続きに影響が出ないと充分に伝える必要があります。
感情を抑えてヒアリングに徹する
退職面談では、退職者の本音を引き出すことになります。退職者の本音とは、基本的に企業に対する不満です。人事担当者は退職面談の最中、自分が属する企業の悪口を聞かされ続けるため、感情的になる可能性があります。
しかし、ここで留意点が2つあります。1つは自社の弱点を知り、改善を目指すことです。決して退職者を引き留めるためでも、説教をするためでもありません。
もう1つは、退職面談は退職者にとってはメリットがないことです。退職面談は企業が自社の弱点を知るために行うものであり、退職者のために実施するのではありません。いわば、企業の利益のために退職者を付きあわせているのです。
したがって、退職面談では感情を抑えてヒアリングに徹しましょう。退職者が抵抗なく不満を打ち明けてくれたなら、実りある面談だったといえます。
ねぎらいの言葉を伝える
退職面談をはじめる際、まずはねぎらいの言葉を伝えましょう。なぜなら、退職の直前ではあっても、その人は自社に貢献してきた社員だからです。退職者は、退職を決意するほどの不満にこれまで耐えてきたのですから、「大変な状況の中、働いていただきありがとうございました」などの感謝の気持ちを伝えましょう。
また、ねぎらいの言葉をはじめに伝えることで、面談の雰囲気が和らぎます。お互いに緊張感がほぐれれば、退職者は面談で有益な意見を話しやすくなるからです。
さらに、感謝を伝えることで、その感謝に応えたいという気持ちを喚起させることも可能です。人事担当者が最初に感謝を伝えれば、退職者は真摯な気持ちで面談に臨んでくれるでしょう。
退職後の繋がりを確保する
退職面談は、退職する直前に行う面談です。そのため、面談で退職者と企業の関係が悪化しても、今後に悪影響は及ばないと考える人もいるでしょう。しかし、考えを改めたほうが賢明です。
転職において、魅力的な企業に入ったつもりが、後になって見当違いだったと判明する例は珍しくありません。その際に、転職者は元の企業に帰りたいと思うことがあります。
これは企業にとって大きなチャンスです。社員の新規雇用よりも、一度自社で経験を積んだいわゆる「出戻り社員」のほうが育成コストをおさえられるためです。しかし、退職時に関係を悪化させてしまうと、このチャンスを失ってしまいます。
また、戻ってこなかったとしても、退職者の転職先と自社の間になんらかの取引関係がある場合、その退職者が利益をもたらしてくれる可能性もあります。少しでも利益につながり得る以上、関係を良好にしておきましょう。
退職面談の内容を社内改善へ活かす方法
退職面談で知り得た社員の不満は、人事施策へ活かしましょう。たとえば、適切に評価されないことに不満を抱いた社員が退職したのなら、評価制度を見直す必要があります。では、そうした施策を実現するためには、具体的に何をすればよいのでしょうか。
まずは、退職面談の内容をレポートにして、保管するとともに、マネジメント層に報告しましょう。その際、できればマネジメント層に直接届けるのが理想的です。なぜなら、あいだに退職者と関係があった部署や社員が関わると、不都合を隠そうとレポート内容を改ざんするおそれがあるためです。現場の実態を包み隠さずマネジメント層に伝えるために、直接報告するのが最善といえます。
そして、受け取った報告をマネジメント層が具体的にどう活かすのかを検討しましょう。検討しないまま放置しておくと退職者が立て続けに出る可能性があるため、可能な限り早めに手を打つことが大切です。
退職面談から本音を聞き出し、社内改善に活かそう
退職面談とは、退職する社員に対して実施する面談です。退職者から本音を聞き出し、社員の不満を追究・解消するために実施します。退職面談で知り得た情報は、直接マネジメント層に伝え、新たな人事施策や社内改善につなげてください。
退職面談を適切に実施し、自社の離職低下に役立てましょう。