勤怠管理・給与計算のアウトソーシングについて
アウトソーシングは外部からの調達を意味し、外部委託とも呼ばれます。給与計算など専門性の高い業務を外部の業者に依頼する「アウトソーシング」という考え方は、アメリカで発展しました。専門的な知識をもつ人材の雇用や人材育成にかかるコストの削減を目的とし、日本でも1990年代のバブル崩壊以降に注目されはじめました。
勤怠管理や給与計算の代行サービスを利用するメリット・デメリットについて知る前に、まずはアウトソーシングの実態について解説します。
2021年度の人事業務アウトソーシングはプラス成長の見通し
矢野経済研究所の調査によると、2020年度の人事業務アウトソーシング(給与計算アウトソーシング・勤怠管理ASPサービス・企業向け研修サー ビス・採用アウトソーシング (RPO)・アセスメントツール)市場規模は、コロナ禍の影響を受け9,133億円(前年度比3.6%減)とマイナス成長でした。しかし、2021年度は日系大手企業の外注化機運の高まりなども受け、マーケットの拡大・プラス成長が見込まれています。
参考:人事・総務関連業務アウトソーシング市場に関する調査を実施(2022年)|市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
アウトソーシングで可能な勤怠管理業務
アウトソーシングには、オンラインで業務を代行してくれるオンラインアシスタントと、クラウドサービスがあります。オンラインアシスタントは、外部企業のスタッフが勤怠管理にまつわる業務(勤怠データの入力や集計・残業時間や有給休暇の管理・給与計算など)を代行します。クラウドサービスは勤怠管理システムを利用してクラウド上で勤怠管理を実施するサービスです。クラウドサービス(勤怠管理システム)で実施できる業務には、次のようなものが挙げられます。
- ●予定登録
- 残業や休暇、出勤日などの勤務予定を申請し登録できます。申請された勤務予定に対して上長が承認・差し戻しなどワークフローとしても利用可能。
- ●長期休暇登録
- 夏季休暇や育児休暇などの長期休暇の事前登録に対応。
- ●有給休暇管理
- 有給休暇の取得状況や取得限度日数の管理。
- ●残業時間の管理
- 製品によってはあらかじめ設定された限度時間を超過しそうな場合に、上長や本人に警告する機能もあり。
- ●稼働時間管理
- 稼働時間を集計し閲覧やエクスポートを可能にする機能をもつ製品もあり。
従業員の出退勤管理はもちろん、適切な労働時間かどうか、労務コンプライアンスが遵守されているかなどのチェックも代行してもらえます。
なお、上記で紹介した勤怠管理業務は、勤怠管理システムの導入でも対応可能です。現在クラウド型の勤怠管理システムが主流であり、外部スタッフにすべての業務を依頼するのに抵抗がある方などは、ぜひ以下のページの勤怠管理システムも参考にしてください。
勤怠管理・給与計算をアウトソーシングするメリット
勤怠管理の業務や給与計算を外部委託する最大のメリットは、専門人材の雇用や育成にかかるコストを抑えられる点でしょう。また外部委託により、自社スタッフをコア業務に集中させられるため、生産性の向上にもつながります。勤怠管理・給与計算それぞれのメリットについて以下で詳しく見てみましょう。
人件費とシステムのコスト削減
企業では毎月、出退勤の時刻集計や有給休暇の状況把握をし、勤怠情報を元に給与を計算します。特に給与計算は専門的な知識や細かい作業を必要とするため、専門知識をもつ人材の雇用・育成に人的コストがかかります。
給与計算システムを利用することで人件費の削減は可能ですが、システムを利用するためのコストがかかってしまうでしょう。
主要事業への集中が可能
勤怠管理も給与計算も専門的な知識を必要とし、さらに正確性も要求される重要な業務です。一方で、新たな利益を産み出すことのない業務でもあります。
アウトソーシングの利用で浮いた金銭的・人的なリソースを、育成計画や採用計画といった主要業務に集中的に投資できます。また、結果的に企業の利益拡大を図れるのもメリットです。
法令改定への対応がスムーズに
税制や社会保険制度、労働法などの法令が改定されると、給与の計算方式もあわせて変更しなければなりません。
その際、給与計算システムのアップデートや社内向けの業務マニュアルの改訂、勤怠管理・給与計算担当者への教育などの作業が発生します。アウトソーシングを利用すれば、面倒な法令改定もコストを抑えてスムーズに対応できるでしょう。
勤怠管理・給与計算をアウトソーシングするデメリット
アウトソーシングにおける最大の懸念点として、ノウハウが自社に残らないことや情報漏えいのリスクなどが挙げられます。デメリットを理解したうえで考えられる対策を講じましょう。また、どこからどこまでの業務を委託すべきかについてもよく検討しましょう。
勤怠管理・給与計算のノウハウが自社に残らない
アウトソーシングを利用すれば、自社に勤怠管理や給与計算に関するノウハウをもつ人材は必要ありません。しかしノウハウが蓄積されないため、軽微なことであっても給与計算や勤怠管理のアウトソーシング先に問い合わせや依頼をする必要があります。社内業務におけるボトルネックとなる可能性があるでしょう。
また、万が一アウトソーシング先で問題が発生した場合、自社で対応ができなくなり、勤怠管理・給与計算業務が滞ってしまうリスクもゼロではありません。
勤怠管理・給与計算の情報漏えい
勤怠管理や給与計算に必要な情報には、個人情報や企業の機密情報も含まれます。アウトソーシングする以上は重要な情報を社外にもち出すことになるため、情報漏えいのリスクがつきまといます。
個人情報・機密情報の取り扱いに関して徹底した教育や資格取得が行われている企業を選ぶなど、アウトソーシング先の選定には注意が必要です。
勤怠管理や給与計算におけるアウトソーシング導入を検討しているものの、リスクが気になるという方は、勤怠管理システムを導入するという方法もあります。人気製品や価格、機能などを確認したい人は、こちらの記事がおすすめです。アウトソーシングとあわせてぜひ比較検討してみましょう。
関連記事
勤怠管理・給与計算アウトソーシングの選び方
勤怠管理・給与計算のアウトソーシングサービスには費用が発生します。また、前述したとおり導入リスクも伴います。導入後に後悔しないためにも、アウトソーシングサービスを選ぶ際のポイントをチェックしましょう。
予算にあった料金相場であるか
アウトソーシングサービスの料金が人的・システムコストを上回ってしまっては意味がありません。自社での勤怠管理・給与計算にかかっている人件費やシステムの導入・維持費と、アウトソースサービスの料金を比較してください。そのうえで、コストを削減できるか確認しましょう。
費用は従業員規模や代行を依頼する業務の範囲、オプション等によって異なります。給与計算代行は給与計算のみの依頼なら割安で、社員50名規模でも月額40,000円から60,000円ほどで利用できます。しかし、勤怠管理などオプションをつけたぶんだけ割高になるでしょう。
自社に見合った業務範囲であるか
勤怠管理・給与計算といっても、業務範囲はさまざまです。勤怠管理と給与計算だけでなく、採用や退職、人材配置などの人事業務も依頼する必要があるかなど、アウトソースすべき範囲を検討してください。
安全性が高く、セキュリティが徹底されているか
勤怠管理・給与計算の実施には、社員の個人情報や企業の機密情報といった重要な情報をアウトソーシング先に提供する必要があります。
情報漏えいのリスクを減らすためにも、アウトソーシング先の安全性やセキュリティ対策には十分注意しましょう。プライバシーマークを取得しているか、業務を再委託していないかがチェックポイントです。
勤怠管理・給与計算のおすすめアウトソーシング
勤怠管理や給与計算をアウトソーシングできるおすすめのサービスを紹介します。業務の委託範囲や、対応可能エリアを確認し、自社にとって最適なアウトソーシングサービスを選択しましょう。
製品・サービスのPOINT
- 人事給与POSITIVE/勤怠管理LYSITHEAを基盤にサービスご提供
- 多様なニーズに対応する「ハイブリッド型サービス」をご提供
- 「安心安全な」データセンター運営でBCP対策をバックアップ
「MHCトリプルウィンの給与アウトソーシング」なら、自社で新たにシステムを導入する必要がなく、給与計算業務全般はもちろん、就業管理サービスや通勤費管理サービスのみの利用にも対応可能です。導入企業からは「迅速・柔軟に対応してくれる」などの声が寄せられています。
参考価格 |
ー |
対応エリア |
全国 |
対象従業員規模 |
すべての規模に対応 |
業務範囲 |
各種給与計算業務のほか、就業管理サービス・通勤費管理サービスの提供 |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
製品・サービスのPOINT
- プロフェッショナルチームが世界中をワンストップでサービス提供
- 毎年変更される保険料率、税率、法律の改正が自動アップデート
- 経営者、管理者、人事担当者の業務を効率化
「株式会社アイエーピーの給与アウトソーシング」は、勤怠管理や給与計算をはじめ、バックオフィスの業務全体をサポートします。給与計算は、国際会計に精通するバイリンガルの専門チームがサポートするため、外資系企業にも適しているでしょう。導入企業からは「人事労務管理が効率化した」との声が届いています。
参考価格 |
ー |
対応エリア |
全国 |
対象従業員規模 |
500名未満 |
業務範囲 |
勤怠管理・給与計算・社会保険・雇用保険手続きなどのバックオフィス業務 |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
《COMIT HR》のPOINT
- お客様に寄り添った柔軟な給与計算アウトソーシング
- 業界トップレベルのコストパフォーマンスを実現
- クラウド勤怠・給与システムの移行から運用維持もフルサポート
「COMIT HR」は、20年以上の人事BPO経験をもつ株式会社InfoDeliverが提供する、アウトソーシングサービスです。入社・退職・休職に関する業務や勤怠業務、給与計算など幅広い業務を依頼できます。導入によりコスト削減を実現した企業も多く、コストパフォーマンスや対応力にも定評があります。
参考価格 |
ー |
対応エリア |
全国 |
対象従業員規模 |
500名以上 |
業務範囲 |
給与計算・勤怠管理・年末調整などの人事労務業務、人事システム導入支援 |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
製品・サービスのPOINT
- きめ細かい対応によりアウトソーシングサービスを提供いたします
- 圧倒的なコストパフォーマンスでご提供いたします
- 一括受託によるワンストップサービス
「株式会社イージーネットの給与アウトソーシング」は、勤怠管理・給与計算・社会保険手続き処理などを一括受託します。実務を積んだうえでシステムを独自開発しているため、よりきめ細やかなサポートが可能です(既存システムとの併用可)。システムに強い点が強みであり、ほかサービスとの違いとして挙げる利用者もいます。
参考価格 |
ー |
対応エリア |
首都圏 |
対象従業員規模 |
50名以上 5,000名未満 |
業務範囲 |
給与計算・年末調整・社会保険・勤怠管理 |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
社会保険労務士法人エスネットワークスの給与アウトソーシング
社会保険労務士法人エスネットワークス/税理士法人エスネットワークス
製品・サービスのPOINT
- 社会保険労務士をはじめ給与計算のプロフェッショナルで安心!
- 初期投資・運用コストが最小限!
- 専門性の高いサービスが受けられます!
「社会保険労務士法人エスネットワークスの給与アウトソーシング」は、社会保険労務士の資格保持者が在籍しており、専門性の高いサービスを提供します。給与計算から人事制度の構築まで対応可能です。導入企業からは「プロに委託することで迅速な対応や、柔軟な業務処理が実現した」などの声が聞かれました。
参考価格 |
ー |
対応エリア |
首都圏 |
対象従業員規模 |
500名未満 |
業務範囲 |
給与計算・年末調整・銀行FBデータ作成・勤怠管理など |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
勤怠管理にも対応できる給与計算アウトソーシングは多いため、より多くのサービスを比較検討したい方は、以下の最新ランキングもぜひ確認しましょう。気になった製品は資料請求(無料)も可能なので、ぜひお申し込みください。
勤怠管理の代行には勤怠管理システムも有効
勤怠管理のアウトソーシングは、給与計算代行のオプションである場合がほとんどです。勤怠管理の業務効率化や担当者の負担軽減を目的とするのであれば、勤怠管理システムを導入するのもひとつの方法です。
勤怠管理システムには以下のようなメリットがあります。給与計算システムと連携できる製品や、両システムが入った製品を導入すれば、正確かつ効率的に事務作業ができコスト削減にもつながるでしょう。
- ■勤怠管理システムのメリット
- ●勤怠データの入力や集計が自動化される
- ●給与計算システムと連携対応していれば給与計算も自動化できる
- ●法改正にもシステムアップデートで対応できる
勤怠管理・給与計算はアウトソーシングやシステムで効率化!
勤怠管理・給与計算のアウトソーシングで、コストの削減や企業活動の促進につなげられます。一方で、情報漏えいや社内ノウハウの不足など新たなリスクも発生します。
アウトソーシングを検討する際には、メリット・デメリットを十分に理解しましょう。また、アウトソーシングによる効果を最大限に発揮するためにも、利用する機能や費用についてさまざまなサービスを比較する必要があります。必要に応じて、勤怠管理システムや給与計算システムの活用も検討してください。