勤務形態別、勤怠管理の注意ポイント
具体的に以下の主要な勤務形態について特徴と勤怠管理の注意点をまとめます。
- ①固定時間制(通常の労働時間制)
- ②変形労働時間制
- ③フレックスタイム制(フレックス制)
- ④裁量労働制
①固定時間制(通常の労働時間制)
1日8時間、週40時間(法定労働時間)において、平日9時ー18時など就業規則で定めた勤務時間で勤務を行う制度です。多くの企業が採用している勤務制度です。
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■固定労働制の勤怠管理の注意点
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勤怠管理を行うことで、一部の従業員の残業時間が突出していないかどうか確認しましょう。突出している人がいれば、本人の業務内容を見直して、他の人に比べて業務量が過剰になっていないかということや、効率や生産性に問題がないかどうかを検討する必要があります。
- また、多くの社員の残業が、月初や月末に集中しているなどの傾向があれば、変形労働時間制の導入も検討することで、残業の削減などにつながる可能性があります。
②変形労働時間制
一定期間を平均して、法定労働時間の範囲内であれば、1日8時間、週40時間を超えて勤務が可能な制度です。こちらも多くの企業が採用しています。
変形労働時間制には次の4つの種類があります。
- 1年単位の変形労働時間制
- 1ヶ月単位の変形労働時間制
- 1週間単位の変形労働時間制 ※導入できる規模、業種が限られています。1i>
- フレックスタイム制
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■変形労働時間制の注意点
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変形労働時間制を使用していない会社であれば、割増賃金は1日8時間を超えるか、あるいは週40時間を超えた場合に支払いが発生します。しかし、1か月単位の変形労働時間制の場合は、少し計算の方法が変わってくるので注意が必要です。割増賃金の発生について、予め定めた労働時間が法定労働時間8時間より長いか短いかによって異なるためです。
例えば、1日の労働時間を8時間よりも長く設定した日はその日に設定した時間を超えた労働時間に対して、割増賃金が発生します。一方で、1日の労働時間を8時間よりも短く設定した日は、法定労働時間を超えた時間について、2割5分以上の割増賃金が発生します。なお、法定労働時間内であっても残業であることには変わりありませんので、原則として割増をしない通常の賃金相当額の残業代の支払いは必要になります。
③フレックスタイム制(フレックス制)
変形労働時間制の一つの制度です。1カ月を上限とする一定期間(清算期間)の総労働時間を労使協定で定めれば、 始業・終業時刻を従業員の自由にできる制度です。IT企業などで導入が進んでいます。必ず全員が勤務すべき時間帯(コアタイム)と、出社や退社が自由な時間帯(フレキシブルタイム)とに分けている企業もありますが、設定については必須ではありません。
- ■フレックスタイム制の勤怠管理の注意点
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従業員の労働時間の自由度が高い分、あらかじめ定めた労働時間に不足していないかどうかや、オーバーしていないかどうか従業員本人と管理者側で注意が必要です。また、一斉出勤や一斉退社ではないので、出退勤の時間管理がルーズになる可能性があります。予めルール制定と、正確に出退勤の記録を行う仕組みを設けることも必要です。
④裁量労働制
みなし労働時間制の一つです。勤務時間帯を固定せず出勤・退勤の時間は自由で、実働時間の管理もされない制度です。適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されています。主に開発者や士業、コピーライターなどの職種に適応される「専門業務型」と、企業の中枢部門で企画立案などの業務を自律的に行う者に適応される「企画業務型」とがあります。
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■裁量労働の勤怠管理の注意点
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評価の基準を成果に置き、従業員の裁量により労働時間が決まるという制度ですが、実労働時間がみなし労働時間をオーバーするということが発生する可能性があります。常時月間80時間の過労死ラインを超えるような場合にはもちろん、実態とみなし労働時間にあまりに乖離がある場合には、労使で是正の見直しが必要となります。
さまざまな勤務形態に対応する勤怠管理システム
ここまでさまざまな勤務形態とその管理の注意点をまとめました。具体的な勤怠管理の方法には、タイムカード打刻や、エクセル管理など様々な方法があります。
ここでは、近年、多様な勤務形態に対応でき、管理の手間を解消できる仕組みとして導入が進んでいるクラウド型勤怠管理システムを紹介します。
勤怠管理システムできることとメリット
- データ入力の簡略化
- 従業員、管理者ともに手計算が不要になります。
- 手作業での集計がなくなることで、転記や集計のミスを防ぐことができます。
- システムで管理でき、より正確でリアルタイムのデータが出力できます。
給与計算が効率よくできる
- 勤務データと給与システムを連携し、自動で計算可能です。
- 複雑な割増賃金の算出もシステム上でミスなく可能なことで、担当者の負担の減少と、未払いなどのリスクを防ぎます。
法改正にスムーズに対応できる
- クラウドの勤怠管理システムなら、法改正にも自動的に対応可能です。
- 自社の就業規則にも柔軟に対応可能なため、慌てる必要がありません。
業務指導や人事戦略にデータを活用
- 勤怠管理システムに収集された、従業員の勤怠・就業状況を分析ツールにより、グラフなどで可視化することができます。これにより、部門ごとのオーバーワークの偏りや、特定の従業員の過剰労働を把握でき、適正人員数を見直すなど、人事戦略に活用することができます。
まとめ
今回は、主要な勤務制度の特徴と勤怠管理で気をつけるべきポイントをまとめました。企業に適した勤務制度の整備とともに、従業員一人ひとりの勤怠情報を管理することは重要です。労働基準法により、労働時間や休暇の基準などが定められており、その管理を行うことは企業の義務となっています。管理に漏れがあることで、気付かないうちに労働基準法に違反ということにならないよう、きちんと管理をする必要があります。
また、「サービス残業」や「ブラック企業」の話題がメディアで頻繁に取り上げられており、社員の徹底した労務管理は企業課題となってきています。いかなる勤務形態であっても、適切に勤怠管理を行うことが大切です。自社の勤務形態の現状に合わせて勤怠管理システムを活用しながら、適切な勤怠管理をしていきましょう。