雇用形態と勤務形態の違い
勤務形態と雇用形態は似た言葉ですが、意味は全く異なります。混同しないように確認しておきましょう。
雇用形態
雇用形態とは、企業と従業員間で交わされる雇用契約の種類をいいます。一般的な雇用形態の例として、正社員や契約社員、アルバイト、パートタイマーなどが挙げられます。
勤務形態
一方、勤務形態とは日勤・夜勤・交代制・非常勤など、働き方を表します。勤務体系と呼ばれることもあるようです。働き方改革の影響などもあり、多様化をみせています。
雇用形態の種類
雇用形態の種類について解説します。処遇や待遇の違いもおさえておきましょう。
1.正社員
正社員とは、雇用期間の定めがないフルタイム勤務の労働者です。企業と従業員の間で直接契約を交わし、雇用保険や社会保険への加入も義務付けられています。後述する非正規社員という区分に対して正規社員と呼ばれることもあります。
正社員のメリットやデメリットは以下のとおりです。
- メリット
- ●雇用期間に定めがないため安定して働ける
- ●賞与や退職金がある場合がほとんど
- ●福利厚生が手厚い
- ●長期的に働けるため昇給昇格が見込める
- ●社会的な信用につながる
- デメリット
- ●責任が重い
- ●残業の発生や勤務時間が長くなる可能性も
- ●転勤や異動がある
2.非正規社員
非正規社員とは、雇用期間に定めがあり、正規社員と比較して短時間で働く労働者を指します。法律で明確に定義された言葉ではなく、正規社員以外の労働者を総称する場合もあるようです。一定の要件を満たせば社会保険の加入義務が発生します。
非正規社員のメリットやデメリットは以下のとおりです。
- メリット
- ●働き方(時間・日数)の自由度が高い
- ●転勤や異動、ジョブローテーションがない
- ●副業も可能
- デメリット
- ●有期雇用のため安定感に欠ける
- ●手当や会社の制度、福利厚生などが利用できない場合も多い
続いて、非正規社員、非正規雇用の種類を見ていきましょう。
契約社員/嘱託社員
契約社員も嘱託社員も、雇用主と有期契約を結ぶ点が共通しています。専門性の高い特別なスキルを求められたり、フルタイム勤務であったり、正規社員に近い働き方の一つともいえます。
契約社員がフルタイム勤務であるのに対し、嘱託社員は時短勤務や週3・4回の勤務も可能です。そのため、一般的に定年後に再雇用した人を指す場合が多いようです。
パートタイマー
主に主婦層を対象とした働き方で、家庭があっても働ける短時間の勤務や業務内容が設定されています。
アルバイト
法律上、パートタイマーとアルバイトで違いはありませんが、アルバイトは学生やフリーターを対象とする場合がほとんどです。正社員より短い時間で自分の都合にあわせて勤務できます。
派遣社員
派遣社員とは人材派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結び、派遣先企業で働く雇用形態で、企業とは間接雇用となる点が最大の特徴です。
勤務形態の種類
雇用形態について理解したところで、ここからは働き方の種類でもある勤務形態について解説します。
主要な勤務形態は以下4つです。
- 1.固定時間制(通常の労働時間制)
- 2.変形労働時間制
- 3.フレックスタイム制(フレックス制)
- 4.裁量労働制
1.固定時間制(通常の労働時間制)
1日8時間、週40時間(法定労働時間)において、平日9時ー18時など就業規則で定めた勤務時間で勤務を行う制度です。定時が決まっているためスケジュールが立てやすく、勤怠管理も行いやすい働き方です。
2.変形労働時間制
一定期間の労働時間数を平均して、法定労働時間の範囲内であれば、1日8時間、週40時間を超えて勤務が可能な制度です。多くの企業が採用しています。
変形労働時間制には次の4つの種類があります。
- ・1年単位の変形労働時間制
- ・1か月単位の変形労働時間制
- ・1週間単位の変形労働時間制 ※導入できる規模、業種が限られています。
- ・フレックスタイム制
なおシフト制(シフト勤務)も、変形労働時間制の一種です。
3.フレックスタイム制(フレックス制)
変形労働時間制の一つの制度です。1か月を上限とする一定期間(清算期間)の総労働時間を労使協定で定めれば、 始業・終業時刻を従業員の自由にできる制度です。IT企業などで導入が進んでいます。必ず全員が勤務すべき時間帯(コアタイム)と、出社や退社が自由な時間帯(フレキシブルタイム)とに分けている企業もありますが、設定については必須ではありません。
4裁量労働制
みなし労働時間制の一つです。勤務時間帯を固定せず出勤・退勤の時間は自由で、実働時間の管理もされない制度です。適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されています。主に開発者や士業、コピーライターなどの職種に適応される「専門業務型」と、企業の中枢部門で企画立案などの業務を自律的に行う者に適応される「企画業務型」とがあります。
【勤務形態別】勤怠管理の注意点
勤務形態が異なると、勤怠管理の方法にも違いが生じます。ここからは勤務形態ごとの勤怠管理の注意点について説明します。
固定労働時間制:残業時間のデータ活用が大切
固定労働時間制は、ほかの勤務形態と比べ勤務時間が定まっているため、残業時間が管理しやすいです。一部の従業員の残業時間が突出していないかどうか確認しましょう。業務の偏りによって、効率や生産性に問題が生じることもあります。場合によっては業務内容や業務量の調整などを行いましょう。
また多くの社員の残業が、月初や月末に集中しているなどの傾向があれば、変形労働時間制の導入も検討することで、残業の削減などにつながる可能性があります。
変形労働時間制:割増賃金の発生や計算方法が特殊
変形労働時間制を採用していない会社の場合、割増賃金は1日8時間を超えるか、あるいは週40時間を超えた際に支払いが発生します。しかし、1か月単位の変形労働時間制の場合は、少し計算の方法が変わるため注意が必要です。あらかじめ定めた労働時間が、法定労働時間8時間より長いか短いかによって、割増賃金の発生が異なるのです。
例えば1日の労働時間を8時間よりも長く設定した日は、その日に設定した時間を超えた労働時間に対して割増賃金が発生します。一方で、1日の労働時間を8時間よりも短く設定した日は、法定労働時間を超えた時間について、2割5分以上の割増賃金が発生します。なお、法定労働時間内であっても残業であることには変わりありませんので、原則として割増をしない通常の賃金相当額の残業代の支払いは必要です。
フレックスタイム制:ルーズな働き方になりかねない
従業員の労働時間の自由度が高い分、あらかじめ定めた労働時間に不足や超過がないかどうか、従業員本人と管理者側で注意が必要です。また、一斉出勤や一斉退社ではないので、出退勤の時間管理がルーズになる可能性があります。あらかじめルール制定と、正確に出退勤の記録を行う仕組みを設けることも必要です。
裁量労働制:労働者の健康と福祉の確保も義務
評価の基準を成果に置き、従業員の裁量により労働時間が決まるという制度ですが、実労働時間がみなし労働時間をオーバーする可能性があります。常時月間80時間の過労死ラインを超えるような場合にはもちろん、実態とみなし労働時間にあまりに乖離がある場合には、労使で是正の見直しが必要となります。
また残業代は発生しませんが、割増賃金や有給は適用されるため、正確な労働時間の把握が必要不可欠です。
多様な雇用形態や勤務形態に対応できる勤怠管理システム
前述のとおり雇用形態や勤務形態は多様化しており、勤怠管理は複雑になっています。勤怠管理の方法はタイムカード打刻や、エクセル管理など色々ありますが、勤怠管理システムの導入がおすすめです。
勤怠管理システムを活用すれば、雇用形態や勤務形態の違う人が一緒に働く職場の勤怠管理を効率化することも可能です。管理の手間が減り、業務効率の向上にもつながるでしょう。
ここからは勤怠管理システムでできることを紹介します。
正確な時間管理が行える
勤怠管理システムは、ICカードや自分のPC・スマートフォンで打刻でき、出退勤時間を正確に記録できます。勤務時間だけでなく、残業時間や深夜残業時間の算出にも対応し、みなし労働時間の管理も可能です。
データ入力の簡略化
勤怠データの入力や集計は自動化されるため、手作業による転記や集計ミスが防げます。管理者、従業員ともに業務負担を軽減できるでしょう。また、勤怠データをリアルタイムで確認できる点もシステムのメリットです。
給与計算が効率よくできる
雇用形態によって時給制、月給制など給与の計算にも違いが生じますが、勤怠管理システムの多くが、さまざまな雇用形態に対応しています。勤務データと給与システムを連携すれば、給与計算が自動化できるでしょう。
また、複雑な割増賃金の算出もシステム上でミスなく行え、未払いなどのリスクも防げるでしょう。
法改正にスムーズに対応できる
勤怠管理システムの中でも、クラウドの勤怠管理システムは、法改正にも自動的に対応可能です。自社の就業規則にも柔軟に対応可能なため、慌てる必要がありません。
業務指導や人事戦略にデータを有効活用
勤怠管理システムに収集された、従業員の勤怠・就業状況を分析ツールにより、グラフなどで可視化できます。これにより、部門ごとの残業時間数などオーバーワークの偏りや、特定の従業員の過剰労働を把握でき、適正人員数を見直すなど、人事戦略に活用できます。
複雑化する勤怠管理にはシステム導入がおすすめ
働き方改革の推進により、従業員の勤務形態は複雑化し、企業の勤怠管理はむずかしくなっています。しかし、勤怠管理は企業の義務です。管理に漏れがあり、気付かないうちに労働基準法に違反していたとならないよう、きちんと管理しましょう。
また、「サービス残業」や「ブラック企業」の話題がメディアで頻繁に取り上げられており、社員の徹底した労務管理は企業課題となってきています。いかなる勤務形態であっても、適切に勤怠管理を行うことが大切です。自社の勤務形態の現状にあわせて勤怠管理システムを活用しながら、適切な勤怠管理をしていきましょう。