勤務体系と雇用形態の違い
勤務体系(形態)と雇用形態は似ているため、混同する人が多いでしょう。勤務体系は勤務頻度や時間帯などの働き方を表し、勤務形態ともいいます。例として、日勤・夜勤・交代制・非常勤があげられます。対して雇用形態は、正社員・契約社員・アルバイト・パートタイマーなど、企業と従業員間で交わされる雇用契約の種類です。
勤務体系の種類
近年では、少子高齢化による働き手の不足や女性の社会進出など、労働者のニーズが多様化したことで勤務体系の種類も増えています。
主要な勤務体系は以下の4つです。
- 1.固定時間制(通常の労働時間制)
- 2.変形労働時間制
- 3.フレックスタイム制(フレックス制)
- 4.裁量労働制
1.固定時間制
平日9時ー18時など、1日8時間・週40時間の「法定労働時間」におさまるよう、就業規則で定めた勤務時間に働く制度です。定時が決まっているため、スケジュールが立てやすく、勤怠管理も行いやすいといえます。
2.変形労働時間制
一定期間の労働時間数を平均して、法定労働時間の範囲内であれば、1日8時間・週40時間を超えて勤務が可能な制度です。多くの企業が採用しています。
変形労働時間制には次の4つの種類があります。
- ・1年単位の変形労働時間制
- ・1か月単位の変形労働時間制
- ・1週間単位の変形労働時間制(※導入可能な規模・業種が限定)
- ・フレックスタイム制
なおシフト制(シフト勤務)も、変形労働時間制の一種です。
3.フレックスタイム制(フレックス制)
変形労働時間制の一つの制度で、主にIT企業などで導入が進んでいます。1か月を上限とする一定期間(清算期間)の総労働時間を労使協定で定めれば、従業員が始業・終業時刻を自由に設定できる制度です。
フレックスタイム制では、必ず全員が勤務すべき時間帯である「コアタイム」と、出社や退社が自由な時間帯である「フレキシブルタイム」に分けられます。なお、コアタイムは設定の義務はありません。しかし、会議やチームの業務予定をあわせるためにコアタイムを設定する企業が多いようです。
4.裁量労働制
みなし労働時間制の一つです。勤務時間帯を固定せず出勤・退勤の時間は自由で、実働時間の管理もされない制度です。適用業務の範囲は厚生労働省が定めた業務に限定されています。主に開発者や士業、コピーライターなどの職種に適応される「専門業務型」と、企業の中枢部門で企画立案などの業務を自律的に行う者に適応される「企画業務型」とがあります。
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雇用形態の種類
雇用形態の種類について解説します。処遇や待遇の違いもおさえておきましょう。
1.正社員
正社員とは、雇用期間の定めがないフルタイム勤務の労働者です。企業と従業員の間で直接契約を交わし、雇用保険や社会保険への加入も義務付けられています。後述する非正規社員という区分に対して正規社員と呼ばれることもあります。
正社員のメリットやデメリットは以下のとおりです。
- メリット
- ●雇用期間に定めがないため安定して働ける
- ●賞与や退職金がある場合がほとんど
- ●福利厚生が手厚い
- ●長期的に働けるため昇給昇格が見込める
- ●社会的な信用につながる
- デメリット
- ●責任が重い
- ●残業の発生や勤務時間が長くなる可能性も
- ●転勤や異動がある
2.非正規社員
非正規社員とは、雇用期間に定めがあり、正規社員と比較して短時間で働く労働者を指します。法律で明確に定義された言葉ではなく、正規社員以外の労働者を総称する場合もあるようです。一定の要件を満たせば社会保険の加入義務が発生します。
非正規社員のメリットやデメリットは以下のとおりです。
- メリット
- ●働き方(時間・日数)の自由度が高い
- ●転勤や異動、ジョブローテーションがない
- ●副業も可能
- デメリット
- ●有期雇用のため安定感に欠ける
- ●手当や会社の制度、福利厚生などが利用できない場合も多い
非正規社員、非正規雇用には次の種類があります。
- ■契約社員・嘱託社員
- 契約社員がフルタイム勤務であるのに対し、嘱託社員は時短勤務や週3・4回の勤務も可能。そのため、一般的に定年後に再雇用した人を指す場合が多い。
- ■パートタイマー・アルバイト
- パートタイマーは主に主婦層を対象としており、家庭があっても働ける短時間の勤務や業務内容が設定されている。アルバイトは学生やフリーターを対象とする場合が多く、正社員より短時間で自分の都合にあわせて勤務できる。なお、パートタイマーとアルバイトには法律上明確な違いはない。
- ■派遣社員
- 人材派遣会社(派遣元企業)と雇用契約を結び、派遣先企業で働く雇用形態のこと。企業とは間接雇用となる点が最大の特徴。
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【勤務体系別】勤怠管理の注意点
勤務体系が異なると、勤怠管理の方法にも違いが生じます。ここからは勤務体系ごとの勤怠管理の注意点について説明します。
固定労働時間制:残業時間のデータ活用が大切
固定労働時間制は、ほかの勤務体系と比べ勤務時間が定まっているため、残業時間が管理しやすいです。一部の従業員の残業時間が突出していないかどうか確認しましょう。業務の偏りによって、効率や生産性に問題が生じることもあります。場合によっては業務内容や業務量の調整などを行いましょう。
また多くの社員の残業が、月初や月末に集中しているなどの傾向があれば、変形労働時間制の導入も検討することで、残業の削減などにつながる可能性があります。
変形労働時間制:割増賃金の発生や計算方法が特殊
変形労働時間制を採用していない会社の場合、割増賃金は1日8時間を超えるか、あるいは週40時間を超えた際に支払いが発生します。しかし、1か月単位の変形労働時間制の場合は計算方法が変わるため注意しましょう。あらかじめ定めた労働時間が、法定労働時間8時間より長いか短いかによって、割増賃金の発生が異なるのです。
例えば1日の労働時間を8時間よりも長く設定した日は、その日に設定した時間を超えた労働時間に対して割増賃金が発生します。一方で、1日の労働時間を8時間よりも短く設定した日は、法定労働時間を超えた時間について、2割5分以上の割増賃金が発生します。なお、法定労働時間内であっても残業であることには変わりありません。原則として、割増をしない通常の賃金相当額の残業代を支払う必要があります。
フレックスタイム制:ルーズな働き方になりかねない
従業員の労働時間の自由度が高い分、あらかじめ定めた労働時間に不足や超過がないかどうか、従業員本人と管理者側で注意が必要です。また、一斉出勤や一斉退社ではないので、出退勤の時間管理がルーズになる可能性があります。あらかじめルール制定と、正確に出退勤の記録を行う仕組みづくりも必要です。
裁量労働制:労働者の健康と福祉の確保も義務
評価の基準を成果に置き、従業員の裁量により労働時間が決まるという制度ですが、実労働時間がみなし労働時間をオーバーする可能性があります。常時月間80時間の過労死ラインを超えるような場合にはもちろん、実態とみなし労働時間にあまりに乖離がある場合には、労使で是正の見直しが必要となります。
また残業代は発生しませんが、割増賃金や有給は適用されるため、正確な労働時間の把握が必要不可欠です。
勤怠管理システムの選び方
労働安全衛生法では、企業による従業員の勤怠情報の正確な把握を義務化しています。また、勤怠管理は客観的な記録により適正に記録するよう定めされているため、各企業が勤怠管理システムを導入する追い風となりました。勤怠管理システムは、従業員の勤怠情報を管理するほか、残業時間・有給休暇の管理や給与計算の自動化などが可能です。管理の手間が省けるだけでなく、法改正にも対応するためコンプライアンスの向上にもつながるでしょう。
昨今では働き方改革の推進や在宅勤務の増加に伴い、多様な雇用形態や勤務体系に対応する勤怠管理システムが増えてきました。どの製品を導入すればいいのか迷っている方も多いでしょう。勤怠管理システムを選ぶ際のポイントは次のとおりです。
- ●自社の就業規則・勤務体系に対応しているか
- ●コストは適正か
- ●同業・同規模の導入事例があるか
- ●サポートが受けられるか
- ●既存の人事・給与システムと連携できるか
- ●自社の運用にあった打刻方法があるか
例えば、「夜勤による日付をまたいだ退勤が可能か」「現場からの直行直帰にも対応するか」など、企業の勤務状況に応じて必要な機能を洗い出したうえで製品を選定するとよいでしょう。また、できるだけ無料トライアルを活用し、従業員が使いやすいシステムかを確認することも重要です。
勤務体系の種類にあわせて適切な勤怠管理をしよう
働き方改革の推進により、従業員の勤務形態は複雑化し、企業の勤怠管理が難しくなっています。しかし、勤怠管理は企業の義務です。管理に漏れがあり、気付かないうちに労働基準法に違反していたとならないよう、自社にあった勤怠管理システムを導入して正確に管理しましょう。