
コールセンターの生産性向上における課題
現状、コールセンターの統括者であるSVは、兼任業務が多すぎて生産性向上のための時間を確保できていません。その業務範囲は、以下のように多岐にわたります。
- ■オペレーターからの質問受付
- ■全体の業務管理
- ■電話応対の品質管理
- ■オペレーターの勤怠管理
- ■品質管理
- ■育成プログラムの作成
- ■専門知識が必要なクレーム処理
本来であればコールセンターのマネジメントに集中すべきところを、兼任業務が足かせとなって生産性の向上が後回しになっている状態です。オペレーターからSVに昇格した場合は、業務に慣れるのに手一杯でそれどころではないでしょう。
加えて製品や料金体系が複雑化したことで、内容についていけないオペレーターや顧客が出始め、1件の問い合わせ処理にかかる時間も増大しています。これにより、生産性の改善がさらに難しくなったといえるでしょう。
コールセンターの生産性を向上させる施策
具体的に何をすれば、生産性を向上させられるのでしょうか。
KPIの管理・活用
KPIとは、目標達成の目安となる指標のことです。コールセンターで生産性を向上させたい場合は、KPIに「平均処理時間(AHT)」「平均通話時間(ATT)」「平均後処理時間(ACW)」が設定されることが多いです。
AHTとは、オペレーターが顧客の問い合わせを処理するのにかかった時間のことです。ACWは電話応対が終わった後のデータ入力にかかる時間、ATTは平均通話時間を指します。AHT・ATT・ACWの関係は、以下の計算式で表現することが可能です。
- ■AHT=ATT+ACW
このようにAHTは、ATTとACWの効率化によって短縮できます。分析を行う時は、平均値ではなく中央値を見た方が効果的です。たとえば1件の問い合わせ処理にかかった時間が「12分・14分・17分」の場合は、「14分」という数値を参考にします。
ワークフォースマネジメントの実施
ワークフォースマネジメントとは、オペレーターの人員配置を最適化し、業務の質を落とさずに人件費を抑えることです。
コールセンターは、時間帯・曜日・月・季節ごとに問い合わせ件数が増減します。理想なのは問い合わせ件数の増減のたびに人員を適切に配置することですが、実際はそううまくはいきません。フルタイムとアルバイト社員を活用すれば対応できないことはありませんが、そうなると今度は管理コストが増大します。
特に日本はいまだに手作業でシフト管理・人員配置をする傾向があるため、日々増減する問い合わせに対し、柔軟な人員配置を行うのは困難です。
上記のような問題の解決を図るために、ワークフォースマネジメントのシステムを導入しているコールセンターは少なくありません。このシステムを用いると、日々の問い合わせ件数の自動計算が可能で、人員配置の最適化を効率的に行えます。
休憩制度の整備
人間の集中力は50分~90分程度で限界がくるため、休憩制度を適切に整備することが大切です。
コールセンターは短い時間で集中する作業が多いです。したがって、数時間に1回10分程度の小休憩をはさむのがよいとされています。短時間で休憩を挟むことで、脳と体のリフレッシュが行えます。
また、生産性を向上させるには昼寝も効果的です。厚生労働省でも2014年の「健康づくりのための睡眠指針2014」において、昼寝が業務効率を向上させると発表しました。具体的には、昼食後の眠くなる時間帯に15~20分程度の仮眠をとります。30分以上の睡眠は、おすすめできません。脳が熟眠モードに入り、逆に目覚めが悪くなるため、起床後の生産性を低下させてしまいます。
コールセンターシステムの活用
コールセンターシステムとは、コール業務の応対記録や自動返答機能を備えたシステムのことです。過去のコール業務から問題点を抽出し、その改善にあたることで、生産性を向上させます。
たとえばオペレーターごとのパフォーマンスや稼働率を見れば、最適な人員配置の考案が可能です。課題が明確になるため、オペレーターごとに具体的な改善案を提案できます。パフォーマンスが一定基準を下回ったときにアラームを設定すれば、現場ごとに細かな指示を与えることも可能です。
コールセンターにおける生産性向上のポイント
コールセンターの生産性を向上させるには、サービスの品質向上が不可欠です。一般的に生産性と応対品質は両立できないと思われがちですが、実際はそうではありません。品質を向上させると顧客の悩みを迅速に把握・解決でき、全体のトークタイムが短くなります。
品質評価は、応対品質と生産性の両面で考えます。応対品質は定期的にモニタリングを実施して総合的に判断しましょう。生産性は、時間当たりの処理回数をベースにします。
また、目標をコールセンター全体で共有することも重要です。オペレーターごとに目標を設定するだけでは 、個々の目標が優先され、コールセンター全体の質が落ちます。たとえばコール数を目標にすると、通話を早く切り上げようとするオペレーターが出てくるでしょう。顧客満足度が低下すれば、どれだけ生産性が向上したところで、その施策は失敗です。
コールセンターの生産性を改善し、利益を生み出そう!
現状、コールセンターは、生産性を向上させるための施策を実行できていません。業務が多すぎて、生産性の向上まで手が回っていない状態です。生産性を向上させるには、以下の施策を試してみましょう。
- ■KPIの管理・活用
- ■ワークフォースマネジメント
- ■休憩制度の整備
- ■コールセンターシステムの活用
コールセンターの生産性を改善して、利益を生み出してください。
