派遣社員の勤怠管理は派遣元・派遣先両方の対応が必要
派遣社員は派遣元である人材派遣会社と雇用契約を結ぶため、派遣元が派遣社員の勤怠情報を把握・管理し、賃金を支払う必要があります。しかし派遣社員が実際に労働する場所は派遣先企業のため、日々の勤務においては派遣元企業の目は届きません。
派遣元企業が賃金を正確に支払うためには、派遣先企業が勤怠状況を正確に管理する必要があります。派遣元と派遣先は、派遣社員に対してそれぞれ異なった責任を負わなければなりません。
賃金の支払いや有給休暇は派遣元企業から付与されるため、イメージしやすいでしょう。気をつけたいのは勤務時間や休憩時間など、勤怠における時間管理です。派遣社員の給与形態は一般的に「時給制」がとられます。そのため派遣社員には時間単位での勤怠管理が必要です。
日々の始業・終業時刻や休憩時間については、基本的には派遣先(就業先)の企業が管理し、派遣元企業に報告します。
ここでは、派遣元企業・派遣先企業それぞれの管理項目について解説します。
派遣元企業の管理項目
派遣社員は、派遣元の企業と雇用契約を結んでいます。そのため、賃金支払いや年次休暇付与は派遣元が責任を負います。派遣先で時間外労働や休日出勤した場合、割増賃金を実際に支払うのは派遣元です。
具体的に派遣元企業が管理すべき項目には、以下が挙げられます。
賃金支払/時間外労働の割増賃金の支払い
派遣社員ないしは派遣先企業から提出された勤怠管理情報に則り、賃金を支払う必要があります。また時間外労働(残業)や休日労働、深夜業等が発生した際は、割増賃金を支払わなければなりません。
年次休暇の付与/管理
雇用日から6か月間継続勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤している場合は年次休暇が付与されます。
また2019年4月から施行された働き方改革関連法により、10日以上の年次有給休暇が発生した社員には年5日の取得が義務付けられています(労働基準法第39条)。有給取得義務は「派遣元」に課せられるため、派遣社員の有給管理も求められるようになっています。
災害補償
労働者災害補償保険法(平成28年4月1日施行)では、「この法律においては、労働者を使用する事業を適用事業とする。(第3条)」と記載されています。労災保険の適用は、労働者を使用する事業=派遣元企業の義務とされています。
参考:労働基準法
参考:労働者災害補償保険法
健康管理
派遣社員の業務中における安全管理や衛生管理は派遣先企業が行います。しかし労働安全衛生法によれば、一般的な健康管理は派遣元企業の役割です。そのため、労働者数に応じて産業医や衛生管理者などを選任し、各派遣従業員の健康診断受診など、安全衛生管理体制の整備が求められます。
参考:労働安全衛生法 | e-Gov法令検索
派遣先企業の管理項目
派遣社員に対する業務の指示・指導は派遣先企業の役目です。そのため派遣先企業の指揮命令下で直接派遣社員に関わることは、派遣先企業が管理しなければなりません。
具体的に派遣先企業が管理する項目は、以下のとおりです。
労働時間
始業や終業、休憩時刻の記録により勤務時間を把握するだけでなく、長時間労働の改善も派遣先企業の責任です。派遣社員の場合、36協定は派遣社員と派遣元企業で締結します。そのため派遣先企業はその締結内容を正しく把握し、締結された範囲内に収まるよう労働時間を管理しなければなりません。
休憩の取得
休憩時間の取得は派遣社員・正規雇用社員といった雇用形態に限らず、労働者に与えられた権利です。労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間が必要です。健康に業務に取り組める環境づくりは派遣先・派遣元共通の義務といえます。なお健康診断については、派遣元企業が管理します。
安全衛生面での管理
労災については派遣元企業に責任があります。しかし、実際に業務の指示を出し、設備を管理するのは派遣先企業です。設備の不具合など「労働者派遣の実態からみて、派遣元に責任を問うことが困難な場合」は、派遣先企業が責任を負うことになります。また契約条件に含まれない危険性を伴う業務や、健康に影響がでる材料を扱わないなどの注意も必要です。
パワハラやセクハラの防止など
パワハラやセクハラについては安全衛生面の管理同様、派遣先企業に管理責任が課されています。また、苦情の申し出を受けた場合は、派遣先管理台帳へ記載したうえで、派遣元への連絡が必要です。
派遣社員の勤怠管理における注意点
派遣社員は所属元と勤務先が異なるため、正規雇用の社員と比べると勤怠管理が煩雑になりがちです。ここでは、派遣社員の勤怠管理における課題点や注意すべきポイントを解説します。
派遣社員の管理が派遣先企業任せになってしまう
日々の労働時間については、勤務時の指揮命令を下す立場である派遣先企業による管理が一般的です。そのため、派遣元企業が社員の労働時間をリアルタイムで把握するのは困難です。
また派遣社員が派遣元に提出した出勤表に虚偽がないか、申請していない時間外労働がないかなど、勤務実績に関するチェックは派遣先頼みになってしまいます。これではサービス残業や、賃金の未払いが生じるリスクも生じるでしょう。
タイムカードの破棄は違法となることも
タイムカードや出勤簿で勤怠管理を行っている場合、労働基準法の改正によって5年間のタイムカード保管が使用者に義務付けられています。派遣社員の場合、派遣元だけでなく派遣先もタイムカードの保管義務があるため注意が必要です。
なお、派遣契約の満了後から5年間と定められている保管期間内に、情報開示の求めに応じられない場合違法となる場合があります。
派遣社員の勤怠管理に対応した勤怠管理システムとは?
課題であるリアルタイムでの勤怠管理を可能にするのが、勤怠管理システムです。紙やタイムカードで管理する場合、実際の勤務時間を派遣元企業が確認できるまでに最大1か月のタイムラグが発生します。長時間労働の是正が遅れる、適切な賃金を支払えないなどのトラブルにつながりかねません。派遣社員の正しい勤怠管理は、派遣社員自身だけでなく派遣元・派遣先企業のためにも必須といえるでしょう。
派遣社員を多く雇用している企業であれば、派遣会社向けに特化した勤怠管理システムがおすすめです。ただし、既に導入している勤怠管理システムも活用できます。
以下の記事では、おすすめの勤怠管理システムを紹介しています。複数製品を比較したい方はぜひこちらも参考にしてください。
派遣社員の勤怠管理に役立つ機能一覧
ここでは、派遣社員の勤怠管理に活用できる機能を紹介します。
- 1.スタッフ管理機能
- 派遣社員の契約情報や法定帳票の管理・更新をします。また派遣社員の稼働状況をリアルタイムで把握できます。
- 2.クライアント管理機能
- 派遣先企業との契約書や法定帳票の管理、更新が可能です。派遣先の要求や、派遣社員の希望条件を把握します。
- 3.受注管理機能
- 派遣社員の契約終了日や更新日を管理できます。派遣先企業との案件状況の管理も可能です。
- 4.勤怠管理機能
- 派遣社員の勤怠管理ができます。クラウド型のシステムであれば、スマートフォンによる打刻も対応可能です。勤怠情報を派遣社員への給与計算、派遣先企業への請求額計算にそのまま用いることもできます。
製品選びに迷ったら、実際に問い合わせ数の多い勤怠管理システムの資料をまず取り寄せてみて、自社ならどんなシステムが合うのかを検討してみてはいかがでしょうか。ITトレンドでは、資料請求数の多い勤怠管理システムをランキング形式で紹介しています。気になる製品は「リスト追加」して、まとめて資料請求ができます。
派遣対応の勤怠管理システム導入のメリット
ここでは、派遣社員対応の勤怠管理システムの導入メリットについて解説します。
管理業務の負担軽減
派遣社員と派遣先それぞれの管理を一括で行えます。派遣元企業は勤務状況を簡単に確認でき、リアルタイムで労働時間を把握することも可能です。派遣先企業も勤怠データの通知が不要になるため、情報共有の手間が互いに削減できるでしょう。また、打刻漏れや記入ミスなどのヒューマンエラー解消にもつながります。
勤怠管理の業務効率化
従来の問題点であった勤怠情報の集計にかかる手間を、システムによる自動化で大幅に効率化できます。給与計算システムとの連携に対応した製品であれば、給与計算作業も正確かつスピーディーに実施できます。
契約状況の一括管理
派遣社員の契約書類や帳票を一括管理できます。労働基準法や労働者派遣法などで保管が義務付けられている書類も簡単に管理できるでしょう。
派遣社員の勤怠管理もシステムで!
派遣社員の勤怠情報の管理は、派遣先・派遣元の企業がそれぞれ責任をもつため、複雑化し問題が生じていました。しかし、勤怠管理システムを導入することで解決できる問題点もあります。派遣社員の勤怠管理に問題を感じている場合は、勤怠管理システムの導入を考えてみてください。