裁量労働制とは
裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ね、実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。労使協定または労使委員会の決議で定める時間を「みなし労働時間」といいます。
例えば、1日のみなし労働時間を8時間と定めた場合、実際の労働時間が7時間または9時間であっても、原則として8時間働いたものとして賃金を計算します。ただし、裁量労働制であっても深夜労働や法定休日労働の割増賃金に関する規定は適用されます。
また、裁量労働制は、すべての職種や従業員に適用できる制度ではありません。法律で定められた対象業務に該当し、労使協定の締結や労使委員会の決議、対象労働者本人の同意など、所定の手続きを行う必要があります。
裁量労働制でも労働時間の把握は必要
裁量労働制では賃金計算にみなし労働時間を用いますが、使用者が実際の勤務状況を把握しなくてよいわけではありません。長時間労働の防止や健康・福祉確保措置の実施、深夜・休日労働の割増賃金計算のため、入退室記録やパソコンの使用時間、勤怠システムの打刻などを用いて労働時間の状況を把握する必要があります。
裁量労働制の対象となる2つの種類
裁量労働制には、「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。どちらも業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ねる制度ですが、対象となる業務や導入手続きが異なります。
専門業務型裁量労働制
厚生労働省令・告示で定められた20業務が対象です。新商品・新技術の研究開発、情報処理システムの分析・設計、コピーライター、デザイナーなど、業務の性質上、その進め方や時間配分を労働者の裁量に大幅に委ねる必要がある業務が該当します。
- 専門業務型裁量労働制の対象業務
- ■新商品または新技術に関する研究開発等の業務
- ■情報処理システムの分析または設計業務
- ■新聞もしくは出版の事業、または放送番組制作のための取材もしくは編集業務
- ■衣服、室内装飾、工業製品、広告等のデザイン業務
- ■放送番組、映画等の制作事業におけるプロデューサーまたはディレクター業務
- ■コピーライターの業務
- ■システムコンサルタントの業務
- ■インテリアコーディネーターの業務
- ■ゲーム用ソフトウェアの創作業務
- ■証券アナリストの業務
- ■金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発業務
- ■大学における教授研究の業務
- ■公認会計士の業務
- ■弁護士の業務
- ■建築士の業務
- ■不動産鑑定士の業務
- ■弁理士の業務
- ■税理士の業務
- ■中小企業診断士の業務
- ■銀行または証券会社における顧客の合併・買収に関する調査・分析・助言業務
専門業務型裁量労働制の導入には、労使協定の締結と就業規則への明記、労働基準監督署への届け出が必要です。労使協定では以下の項目を定めなければなりません。
- 1.制度の対象とする業務
- 2.1日あたりのみなし労働時間
- 3.業務遂行の手段や時間配分について、使用者が具体的な指示をしないこと
- 4.対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置
- 5.対象労働者からの苦情処理措置
- 6.制度の適用にあたり、対象労働者本人の同意を得ること
- 7.同意しなかった労働者を不利益に取り扱わないこと
- 8.制度の適用に関する同意を撤回する手続き
- 9.労使協定の有効期間
- 10.労働時間の状況や各措置の実施状況、同意・撤回に関する記録の保存
みなし労働時間は、対象業務の内容や実際の勤務状況などを十分に検討し、適切な水準に設定することが重要です。必要に応じて対象労働者へのヒアリングなどを行い、業務量や働き方の実態を確認しましょう。
参考:専門業務型裁量労働制について|厚生労働省
参考:専門業務型裁量労働制の解説|厚生労働省
企画業務型裁量労働制
企画・立案・調査・分析など、事業の中核を担う業務に適用されます。専門業務型と同様に、対象業務を遂行するための知識と経験を有し、常態として従事している労働者が対象です。
企画業務型裁量労働制の導入には、労使委員会の設置と就業規則への明記、労働基準監督署への届け出が必要です。労使委員会では以下の事項を決議します。
- 1.対象業務の具体的な範囲
- 2.対象労働者の具体的な範囲
- 3.労働時間としてみなす1日あたりの労働時間
- 4.対象労働者の健康・福祉確保の措置の具体的内容
- 5.対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
- 6.対象労働者個人からの同意の取得・不同意者の不利益取り扱いの禁止について
- 7.決議の有効期間
- 8.制度の適用に関する同意を撤回する手続き
- 9.賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会へ変更内容を説明すること
- 10.労働時間の状況や各措置の実施状況、同意・撤回に関する記録の保存
企画業務型裁量労働制を適用するには、対象労働者本人の個別同意が必要です。決議の有効期間満了後も新たな決議に基づいて制度を継続適用する場合は、改めて本人の同意を得る必要があります。
また、労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する必要があります。労働基準監督署への定期報告は、決議の有効期間の始期から6か月以内に初回を行い、その後は1年以内ごとに1回行います。
参考:企画業務型裁量労働制について|厚生労働省
参考:企画業務型裁量労働制の解説|厚生労働省
裁量労働制とフレックスタイム制の違い
フレックスタイム制とは、一定期間における総労働時間をあらかじめ定め、その範囲内で労働者が日々の始業時刻と終業時刻を自主的に決められる制度です。一方、裁量労働制は、対象業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ね、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。
両者の大きな違いは、労働時間の計算方法です。フレックスタイム制では、清算期間中の実労働時間を集計し、あらかじめ定めた総労働時間と比較します。実労働時間が法定労働時間の総枠を超えた場合は、原則として時間外労働に対する割増賃金が発生します。
これに対し、裁量労働制では、労使協定または労使委員会の決議で定めた「みなし労働時間」をもとに賃金を計算します。そのため、実労働時間がみなし労働時間を超えただけでは、原則として追加の残業代は発生しません。ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合は時間外労働の割増賃金が必要です。また、実際に深夜や法定休日に勤務した場合も、深夜・休日労働の割増賃金が発生します。
年次有給休暇は、どちらの制度を適用している労働者にも付与する必要があります。フレックスタイム制では、労使協定で定めた標準となる1日の労働時間を、有給休暇を取得した日の労働時間として扱うのが一般的です。裁量労働制では、就業規則や賃金規程などに基づき、有給休暇を取得した日の賃金を適切に支払います。
裁量労働制やフレックスタイム制も管理できる勤怠管理システムの導入で、適切な有給休暇や残業の管理が可能です。以下のボタンより勤怠管理システムの一括資料請求ができるので、自社に最適な製品を比較しましょう。
裁量労働制における勤怠管理の注意すべきポイント
裁量労働制では、あらかじめ定めたみなし労働時間をもとに賃金を計算しますが、使用者が実際の勤務状況を把握しなくてよいわけではありません。長時間労働の防止や健康・福祉確保措置の実施、深夜・法定休日労働に対する割増賃金の計算などのため、対象労働者の労働時間の状況を適切に把握する必要があります。ここでは、裁量労働制の勤怠管理で注意すべきポイントを解説します。
労働時間を把握する
裁量労働制では、実労働時間ではなく、あらかじめ定めたみなし労働時間をもとに賃金を計算します。ただし、使用者が対象労働者の勤務状況を把握しなくてよいわけではありません。長時間労働を防ぎ、労働者の健康と福祉を確保するため、入退室記録やパソコンの使用時間、勤怠システムの打刻など、客観的な方法で労働時間の状況を把握する必要があります。
把握した労働時間の状況に応じて、代償休日や特別休暇の付与、健康診断の実施、健康相談窓口の設置、産業医による保健指導など、労使協定または労使委員会の決議で定めた健康・福祉確保措置を実施します。また、深夜労働や法定休日労働に対する割増賃金を正しく計算するためにも、実際の勤務状況を適切に記録・管理することが重要です。
休日や深夜労働の割増賃金を計算する
裁量労働制であっても、実際に深夜労働や法定休日労働を行った場合は、割増賃金を支払う必要があります。労働基準法では、22時から翌朝5時の間の深夜労働においては、深夜割増賃金が発生すると定められています。裁量労働制も、適用対象です。
裁量労働制では、勤務時間が定められていないため、さまざまな時間帯に打刻される場合があるでしょう。そのため、長時間勤務や深夜労働などの管理が困難となる場合があります。把握が困難な裁量労働制こそ、適切な労働時間の管理で正確な割増賃金の計算が求められるでしょう。
参考:労働基準法
休日や深夜労働を事前承認制にする
裁量労働制では従業員の働き方によっては、割増賃金の対象である休日労働や長時間労働が多く発生し、支払う賃金が増加する可能性もあります。割増賃金の支払いトラブルが生じるかもしれません。そのため、休日や深夜労働においては、事前承認制にするのがおすすめです。申請により休日労働や深夜労働について把握できるため、勤務状況の管理がしやすいでしょう。
勤怠管理システムには、裁量労働制に対応した製品もあります。まずは人気の製品を知りたい方は、以下のボタンより最新の資料請求ランキングをご覧ください。
裁量労働制を導入する条件
裁量労働制は、企業の判断だけで一方的に導入できる制度ではありません。法律で定められた対象業務に該当することを確認したうえで、専門業務型では労使協定の締結、企画業務型では労使委員会の決議など、制度の種類に応じた手続きが必要です。また、対象となる労働者本人の同意を得なければなりません。
専門業務型裁量労働制を導入する場合は、労働者の過半数で組織する労働組合と労使協定を締結します。該当する労働組合がない事業場では、投票や挙手などの民主的な方法で選出された過半数代表者と協定を締結します。協定には、対象業務やみなし労働時間、健康・福祉確保措置、本人同意と同意撤回の手続きなどを定め、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。
企画業務型裁量労働制では、労使双方の委員で構成される労使委員会を設置し、対象業務や対象労働者の範囲、みなし労働時間などについて、委員の5分の4以上の多数による決議を行います。その後、決議内容を所轄の労働基準監督署へ届け出たうえで、対象労働者本人から個別に同意を得ます。
いずれの制度でも、同意しなかった労働者や同意を撤回した労働者を不利益に取り扱うことは認められません。就業規則や労働契約も整備し、労働時間の状況の把握や健康・福祉確保措置を含めて、適切に運用することが重要です。
裁量労働制を適切に管理するには勤怠管理システムがおすすめ
社内すべての従業員に対して、裁量労働制が適用されるわけではありません。従業員ごとに出退勤が異なるため、勤怠管理は煩雑といえるでしょう。さまざまな勤務形態の従業員において、適切な勤怠管理をするには、勤怠管理システムがおすすめです。
勤怠管理システムとは?
勤怠管理システムとは、出退勤の時間や休憩、休日を管理するシステムです。従業員の出勤時刻を正確に把握でき、適切な労働時間の管理が可能です。さらに入力されたデータに基づき、欠勤や休暇、給与などの計算が自動化されるため、手作業の負担が軽減されます。
さまざまな勤務形態を管理できる
勤怠管理システムでは、従業員が出退勤のタイミングでPC・スマホ・ICカード・生体認証などを用いて打刻し、データが自動集計されます。みなし労働時間を超えている場合はアラートが表示されるため、長時間労働の防止につながるでしょう。さらに、有給休暇の取得状況も可視化され、健康福祉確保措置の面でも役立ちます。
以下のページではおすすめの勤怠管理システムを紹介しています。無料でお試しできる製品もあるので、試しに使用し比較しましょう。
勤怠管理システムの導入で適切に裁量労働制を管理しよう
裁量労働制とは、業務の進め方や時間配分を労働者の裁量に委ね、あらかじめ定めた時間を働いたものとみなす制度です。実労働時間がみなし労働時間を超えただけでは、原則として追加の残業代は発生しません。ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合や、実際に深夜労働・法定休日労働を行った場合には、割増賃金を支払う必要があります。
また、長時間労働の防止や健康・福祉確保措置の実施、割増賃金の適切な計算のため、裁量労働制でも労働時間の状況を把握しなければなりません。制度を導入する際は、専門業務型では過半数労働組合または過半数代表者との労使協定、企画業務型では労使委員会の決議など、所定の手続きを行い、労働基準監督署へ届け出ます。
裁量労働制をはじめ、複数の勤務形態を正確かつ効率的に管理するには、勤怠管理システムの活用がおすすめです。自社の勤務制度や管理上の課題に適した製品を比較し、適切な運用体制を整えましょう。



