
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、個人がもつ「知識」や「ノウハウ」を組織で共有・活用し、技術革新の促進と知識創造、生産性の向上を図る経営手法です。ナレッジマネジメントを効果的に行うことで、自社内の知識資産を有効に活用でき、企業の競争力や企業価値の向上が実現します。
今日のナレッジマネジメントは、著名な経営学者であり一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏が提唱した「知識経営」を基礎とした理論です。ナレッジマネジメントでは、組織がもつ知識を効率的に共有し、誰もが扱えるようにすることが組織を躍進させる方法だと考えられています。そこで、組織のなかに存在する知識を「暗黙知」と「形式知」に分類し、暗黙知を形式知にすることを目標とします。

参考:知識管理から知識経営へ-ナレッジマネジメントの最新動向-|北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究科 梅本研究室
暗黙知と形式知について、より詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
ナレッジマネジメントのメリット
ナレッジマネジメントを行うと、以下のようなメリットが得られます。
- ■業務効率化
- ・社内の知識共有により、マニュアル化された業務は口頭説明が不要になる
- ・新入社員や異動者への業務教育が効率化され、人材育成業務の負担が軽減される
- ■暗黙知の形式知化
- ・経験や勘に頼ってきた暗黙知を形式知化し、社内で共有可能になる
- ・業務のコツやポイントを若手社員にも伝えやすくなり、社員の成果向上につながる
- ■属人化の防止
- ・業務知識やノウハウの蓄積により、特定の担当者に依存しない業務運営が可能になる
- ・担当者の退職や休職、人事異動による混乱や業務停滞を防ぎ、安定した事業運営を実現
以下の記事ではナレッジマネジメントの重要性について詳しく解説しているので、理解を深めたい方は参考にしてください。
暗黙知を形式知化する「SECIモデル」と4つの場
ナレッジマネジメントを効果的に実施する手法の一つとして、「SECI(セキ)モデル」があげられます。「SECIモデル」とは、4つの知識創造のプロセスを繰り返し、継続的に「暗黙知」を「形式知」へ変換する手法です。SECIモデルは以下の4つのプロセスで暗黙知を形式知に変換します。
- ■Socialization(共同化)
- OJTやロールプレイング、営業同行など、同時に体験して他者と暗黙知を共有する段階。体を動かしたり五感を使ったりして知識の共同化を図る。
- ■Externalization(表出化)
- マニュアル作成や業務報告など、暗黙知を形式知へ変換する段階。具体例を盛り込み、複数名で話し合いながら暗黙知の形式知化を進める。
- ■Combination(連結化)
- 形式知同士を組みあわせて新たなアイデアを創造する段階。形式知単体では機能しないため、形式知同士を組みあわせ、体系的・総合的な知識を作り出すことが重要。ここでようやく個人の暗黙知が企業の知的資産となる。
- ■Internalization(内面化)
- 新たな形式知を習得し、自身の暗黙知に変化させる段階。ここで自身の業務の質向上など、具体的な成果が現れる。
また、SECIモデルのプロセスを実施するのに適した「場」が4つあります。この4つの場を社内で用意することで、ナレッジの共有・蓄積が促進されます。
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SECIモデルの4つの場と事例
- ●創発場:休憩室やランチ会など、気軽な場での会話から知識を交換
- ●対話場:ミーティングなど、本格的なディスカッションを通じた知識の共有
- ●システム場:ナレッジマネジメントツールなどで、お互いの形式知を結合化
- ●実践場:自身の作業スペースで反復練習し、新たに得た形式知を暗黙知へと変換
以下の記事では、SECIモデルについて活用方法も交えて詳しく紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
ナレッジマネジメントの導入手順

続いては、ナレッジマネジメントを実践するための導入手順やその方法について紹介します。まずは、ナレッジマネジメントの導入フローを見てみましょう。
1.ナレッジマネジメントの目的を明確にする
最初に、自社の導入目的を明確にし、具体的な目標を設定します。例えば集約したナレッジを誰もが検索しやすいように、FAQや社内Wikiを作成するなど、導入後の活用方法まで明確化するのがおすすめです。
そして、なぜ自社でナレッジマネジメントを実施するのか、社員への説明も欠かせません。全社員が目的をきちんと理解できるように、実施の背景を含めて必ず説明を行いましょう。
2.共有したい情報を選定する
ナレッジマネジメントの目的にあわせて、どのようなナレッジを蓄積すべきか、集約すべき情報を決めましょう。業務上の課題を洗い出すことで、必要な情報が見えてきます。
例えばコールセンター業務の生産性向上を目的にナレッジマネジメントを実施する場合、以下の情報の集約が有効です。
- ●問い合わせ内容に応じた最適な対応例
- ●優秀なオペレーターの会話術
- ●トラブルの発生事例や対処方法
- ●自社製品に関する知識
3.ナレッジマネジメントの実施方法を決める
ナレッジマネジメントの実施には、主に「エクセル」と「ITシステム」を活用する方法があります。どちらの方法で進めるのか、そしてどのように運用するのかを具体的に決めておきましょう。
エクセルを活用する
企業にとって身近なエクセルは、操作方法がわかりやすくナレッジの入力が簡単であるという利点があります。ナレッジの蓄積が目的であれば、運用しやすく導入もスムーズでしょう。しかし、蓄積されたナレッジをいつでも活用できるように分析したり共有したりするのは、エクセルでは難しいかもしれません。
ITシステムを活用する
エクセル以外だと、以下のようなITシステムが例としてあげられます。ナレッジマネジメントは企業によって適した方法が異なるため、ファイルサーバで代用する場合や企業内SNSを活用する場合など、方法はさまざまです。
- ●社内の知識を共有するためのデータベース型ファイルサーバ
- ●社内コミュニケーションを円滑にするための企業内SNS
- ●企業内の各部署に分散された知識を効率よく検索するためのエンタープライズサーチ
4.ナレッジマネジメント施策の見直しを定期的に行う
ナレッジマネジメントの運用開始後は、利用状況や効果測定を定期的に実施しましょう。社員へのアンケート調査などを行い、導入目的であるナレッジの蓄積や共有が進んでいるかを確認します。利用が進まない場合はボトルネックを解消し、ナレッジマネジメントの重要性を再度社員へ説明しましょう。
ナレッジマネジメントシステムとは
ナレッジマネジメントシステムとは、社内の知識やノウハウをデータベースに蓄積し、必要な情報を効率的に共有・活用するためのシステムです。情報の膨大化・細分化が進行する現代では、「全体を俯瞰して、総合的な判断を下す」という「総合知」の重要性も増してきました。特に暗黙知を形式知へスピーディーに転換し、それらを活用して迅速な経営判断を下すことが企業競争の鍵となっています。
また、現場では社員が必要な形式知を即座に引き出せるデータベースの構築が不可欠です。これらのニーズに対応する専用のシステムが「ナレッジマネジメントシステム」です。ナレッジマネジメントシステムは、社内SNS・グループウェアや業務システムと連携して知識をスムーズに収集できるほか、個別に最適なナレッジの提供を可能にするなどのメリットがあります。
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ナレッジマネジメントシステムのメリットについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
おすすめのナレッジマネジメントシステムを紹介
最新のナレッジマネジメントシステムのなかから、ITトレンドの年間資料請求ランキング2024で上位の製品を紹介します。製品ごとに価格や機能などを表にまとめているため、各ツールの特徴を比べながら見てみましょう。
QuickSolution
- [売上シェアNo.1 四冠達成] 発売から23年 5300サーバの導入実績
- 企業内に埋もれる情報の活用/共有の第一歩は検索から
- ChatGPTなど、生成AIとの連携(RAG対応)で社内情報に回答
ITトレンド年間ランキング2024(ナレッジマネジメントツール)1位
「QuickSolution」は、住友電工情報システム株式会社が提供する5,000サーバ以上に導入され、7年連続売上シェアNo.1を誇る純国産企業内検索システムです。ファイルサーバやWebサイト、社内システム、Google ドライブなどストレージなど点在する情報を検索します。AIによる絞り込みキーワードの自動抽出などクリック操作で基本的な操作が可能です。また、豊富なAPIでさまざまなシステムや製品への組み込みが実現するため、自社にあわせた柔軟な運用が実現するでしょう。
参考価格 | ー | 無料トライアル | ◯(1か月) |
提供形態 | オンプレミス / クラウド / パッケージソフト / その他 |
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
QuickSolutionを利用したユーザーの口コミ
オンプレでの運用時のアップデートに注意が必要です。 インデックスファイルなどを再生成するため、非常に時間がかかります。 その間サービスが使えなくなるので、事前に通知が必要になります。
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ナレッジマネジメントシステムの製品情報についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。価格や機能、口コミなどを参考に、最新製品を比較検討してみてはいかがでしょうか。
ナレッジマネジメントシステムの導入事例
ナレッジマネジメントシステムを導入したからといって、導入手順や運用が適切でないと、想定ほどの効果を得られない可能性があります。ここでは、ナレッジマネジメントシステムを活用して、業務の効率化や新たな価値を生み出した企業の事例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
株式会社熊谷組
大手ゼネコン・株式会社熊谷組の土木事業本部は、ICT技術の開発・展開やデジタル化時代にあわせた人材育成を担っています。そのなかで課題だったのが、ナレッジの蓄積と共有でした。図面や写真、関連書類など、現場単位で保管されている情報を共有できる仕組みが構築されておらず、ベテラン社員の退職によってどのような資料がどこに保存されているかを把握することが難しい現状でした。
そこで導入したのが、建設業や製造業の導入実績が多い「Knowledge Explorer」です。この製品は、AIによる参考文書(ナレッジ)のピックアップ機能によって過去の類似事例を簡単に見つけ出せたり、文書ファイルをドロップして関連性の強い文書ファイルを検索できたりします。「Knowledge Explorer」を導入したことで、蓄積してきたナレッジを進行中の案件に活かせる仕組み作りを構築しました。
参考:Knowledge Explorerとは?価格・機能・使い方を解説|ITトレンド
株式会社日本旅行
旅行業者の株式会社日本旅行では、勤務形態がシフト制のため、知識が属人化しやすく情報管理・共有が難しい状態でした。全体での情報共有方法や一つの疑問を解決するまでのスピード感に課題を感じていました。
そこで「全員が共通で使えて、簡単に質問できて、即時性がある」ことを条件にシステムを探し、ユーザビリティの高さを決め手に「Qast」を導入しました。商品の発売情報や新しい情報をメモに投稿し全員で情報をキャッチアップするほか、社内FAQを作成してナレッジの蓄積・共有にも活用しています。誰かが投稿するとほとんどのメンバーが既読になっているなど、社内での定着にも成功しています。
ナレッジマネジメントシステム導入時の注意点
ナレッジマネジメントシステムの導入には、注意すべき点もあります。導入前に確認しておきたいポイントは以下のとおりです。
- ●現場の人間に操作性を確認してもらう
- ●優秀な社員がナレッジ提供したくなる仕組みを作る
- ●自力で思考する重要性もあわせて周知する
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
現場の人間に操作性を確認してもらう
ナレッジマネジメントツールを積極的に活用するためには、操作性のよさが重要です。操作が難しかったり画面が見にくかったりして使いにくいと、システムを導入しても敬遠されてしまい、最後には使用されなくなる可能性もあります。無料トライアルを実施しているツールも少なくないため、導入前に実際の操作性を試してみるとよいでしょう。
なお、使いやすさの基準は社員のITリテラシーによっても異なります。ナレッジマネジメントツールを導入した場合に、使用頻度が高い部署や社員の意見を聞いてみてください。
優秀な社員がナレッジ提供したくなる仕組みを作る
企業が重要視するナレッジをもつのは優秀な社員である場合が多く、多忙ななかで、自分がもつ知識やノウハウをほかの社員のために提供することを避けたがる人もいるでしょう。そのような状況では、知識の蓄積が進みません。
移動時間にツールを利用できるようにタブレットを携帯させたり、過剰な成果主義から脱却して人事評価制度の見直しを行ったり、ナレッジマネジメントを促進するための体制作りを行いましょう。
自力で思考する重要性もあわせて周知する
ナレッジマネジメントツールの導入後、あらゆる面でマニュアル化を進めてしまうと、考えて行動する機会が減って、次第に自主性や仕事に対するやる気を失わせてしまうリスクがあります。このような事態を防ぐためにも、マニュアル化と並行して自力で思考する力を育てる社員教育もあわせて検討するのがおすすめです。
以下の記事では、ナレッジマネジメントツールの導入における失敗事例を紹介しています。成功させるヒントも解説しているため、ツール導入前にあわせてご覧ください。
まとめ
ナレッジマネジメントとは、企業が保有する隠れた資産を活用して、全社の生産性を向上させる取り組みです。ナレッジマネジメントを成功させるためには、組織の文化や風土、人材育成なども重要であり、やるべきことは多くあります。
より効率的にナレッジマネジメントを行うには、ナレッジマネジメントツールの導入がおすすめです。まずはナレッジマネジメントツールの価格や機能、特徴を比較し、導入を検討してみるとよいでしょう。下のボタンから各社製品の一括資料請求が可能なので、ぜひ活用してください。

会社全体ではなく、一部の部署に試験的に導入を行いました。 ファイル検索をファイルの名前だけではなく、中身まで含めて検索を行うことができるので、目的のファイル以外にも思いもよらない有益なファイルも見つけることができるようになりました。
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