人事評価に対する不満の理由とは
企業の人事評価に不満を持っている人は62.3%もいるといわれています。逆に満足している人は1割にも満たないようです。まずはアンケート結果をもとに、人事評価に不満がある主な理由と、その背景を考察します。
参考:6割以上が勤務先の人事評価制度に不満、約8割が評価制度を見直す必要性を感じている。|アデコ株式会社
評価基準が不明確
人事評価への不満で一番多いのが「評価基準が曖昧なので自分の人事評価に納得いかない」という意見です。評価基準を公開していなかったり、そもそも明確に決められていなかったりすると不満が出やすくなります。
営業など、個人の成果が目に見えてわかるような職種は比較的評価が容易ですが、チームで行う作業や結果がすぐに出ないような職種の場合は、評価を下すのが難しいでしょう。さらに、今の日本の人事評価は成果主義が中心となっており、目に見える評価を重視しがちです。こうした背景から、人事評価制度の見直しを求められる企業が増えています。
評価が不公平
人事評価制度に対してではなく評価者に不満をもつケースも多いです。具体的には「上司の好き嫌い(主観)が評価に反映されている」「評価者によって結果が違う」などの不満があります。これは、評価者と従業員との関係性の問題や評価基準が不明確なことも原因でしょう。
評価結果の説明やフィードバックが不十分
人事評価に納得できないのは、その評価結果に至った経緯や理由が明らかにされないためでもあります。今後の課題や改善点が説明されず、評価結果だけを伝える企業が多いようです。本人が思っていたより評価が低い場合にも、理由が不明確だと不満を抱きやすいでしょう。評価者によるフィードバックやフォローは的確に行うべきです。
人事評価の不満が高まることで起こる問題
人事評価の不満が高まるとどのような問題が起きるのでしょうか。
会社全体の生産性が低下する
人事評価に不満をもったまま業務を続けていると、従業員のモチベーションが下がり、生産性の低下を招く可能性があります。サービスの質が低下し、業績へ影響するかもしれません。
退職者が増え、離職率が高まる
正当に評価されていないと感じている従業員は、モチベーションの低下に限らず他社への転職を考えるでしょう。キャリアのある従業員を失えば、現場の士気の低下や退職者の穴埋めなど、周囲への影響も懸念されます。また離職率が高くなれば新たに人材を雇用するためのコストも増えてしまいます。
訴訟や大きなトラブルに発展した事例
医薬品製造販売業A社に勤めるBは、勤務中に同僚の前で経営陣を批判する発言をしたため上司や会長から注意されましたが、謝罪を拒否していました。その後の人事評価で勤務成績を理由に降格が決まり、賞与不支給事項に該当するとして賞与の査定が行われませんでした。以降の賞与査定も低い状態が続いたため、A社に対して降格処分の無効と賞与減額分の支払い、慰謝料を求めて裁判を起こしたのです。
当時の判決では、人事評価は雇用者側の裁量権が広く認められると同時に、裁量の逸脱や乱用は違法になることが明らかになりました。
つまり、裁判で争うことになると、企業側は人事評価が公正な評価であったことを証明する必要があります。そのため日頃から人事評価制度の整備や情報開示を行うべきでしょう。また社内に従業員の声を受け止める、異議申立制度を導入するのもおすすめです。
参考:労働基準判例検索|公益社団法人全国労働基準関係団体連合会
人事評価の不満に対してどう対応する?
ここからは、人事評価に対して不満を抱えている人を減らすための改善方法を紹介します。
低評価者への具体的なフォローとアドバイス
残念ながら低評価を受けた従業員は不満をもったり、やる気を失ったりしてしまいます。その際上司が評価の理由や個々の課題点、改善点などを示し、丁寧にフォローを行うことが重要です。評価に納得してもらい、今後の目標を明確にすれば不満は解決するでしょう。
自社の人事評価制度を理解してもらう
低い評価をされた従業員は、人事評価制度に対して「会社の都合でどうにでもなる」とか「自分自身に対して正しい評価が下されない仕組み」というイメージを持ちます。このような感情を持たないように、会社の人事評価制度はどのように運用されているのか、どんな目的があるのかを開示し、理解してもらいましょう。
評価制度の概要や評価の仕組み、評価基準などを理解してもらえれば、会社が求めている従業員像もはっきりとします。またこの説明が、有能な従業員を増やすことにもつながります。
普段から積極的にコミュニケーションを取る
評価者に不満をもつ従業員に対しては、評価者との関係性を構築していくことで解決できる場合が多いでしょう。自分の仕事への取り組み方や、普段の態度などをよく知っている人からの評価は受け入れられやすいためです。評価をする上司は、業務内容だけではなく何気ない会話などをして、積極的に部下とコミュニケーションをとるようにしましょう。
また、関わりが増えると日頃の業務の中で注意などもできますので、評価に対して納得できる部分も増えてきます。
人事評価システムでは、業務形態や職種にあった適切な人事評価制度を取り入れながら、効率的に人事評価を行えます。人事評価が適切にできていないと感じている人事の方はこの際導入を検討してみてはいかがでしょうか。
以下の記事では人気の人事評価システムや選び方を解説していますので、ぜひ参考にしてください。
関連記事
watch_later
2022.01.28
【2022比較表】最新の人事評価システム18選!特徴や価格を徹底解説
続きを読む ≫
人事評価の不満を解決し業績を改善させる
人事評価に満足していると、従業員の離職率も低くなりますし、業務への取り組みも真剣なものになります。ノウハウを蓄積させた従業員が意欲的に業務に取り組むことで、会社の業績も好調になります。自社の人事評価制度の問題点を洗い出して従業員の不満を解消し、離職率の改善や無用なトラブルの回避に繋げましょう。