稟議の電子化とは
紙で運用されることが多い稟議業務ですが、ワークフローシステムで稟議書を電子化する企業が増えています。まずは、稟議書の定義をおさらいし、電子化の方法を解説します。
そもそも稟議書とは
稟議書とは、自身に決定権がない業務を実行するにあたって、上層部の承認を得るために提出する書類のことです。購買・調達、受発注、人事異動などのシーンで稟議書がよく使われ、起案書、立案書と呼ばれる場合もあります。
例えば高額な備品を購入する際に、物品の金額や購入目的などを稟議書に記します。その後、意思決定権のある複数の者に稟議書を提出し、全員の承認が得られると備品を購入できる、という流れです。稟議業務は日本特有の文化であり、意思決定のスピードを重視する欧米ではめったにない風習でしょう。
なお、稟議の内容に応じて記載すべき項目・フォーマットが異なり、申請者は都度適切なフォーマットで提出しなければなりません。また、法令には定められていないものの、決裁後の稟議書は永久保存するのが望ましいです。
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稟議書は面倒で非効率
紙の稟議書では承認者の手に渡るまでに時間がかかります。小規模の企業であればあまり問題になりませんが、大企業では地理的に離れた関係者へ郵送する必要も生じます。承認者の人数が多いほど回覧に時間を要するうえ、差戻しや承認の停滞があれば非効率でしょう。
さらに、スムーズに承認を得るためには根回しをしなければなりません。決裁後に不利益が生じてしまったら承認者も責任を負うことになるため安易に承認できず、事前に稟議内容を伝えて検討してもらう必要があります。承認者が複数人いれば一人ひとりに根回ししなければならず、労力がかかるでしょう。
それらのデメリットを解決する方法の一つが、稟議の電子化です。ペーパーレス化により、稟議書の印刷や郵送の必要はなく、稟議書のデータをメールやシステム上で送受信できます。
ワークフローシステムなら電子化が簡単
稟議書の電子化というと、ワークフローシステムを導入する方法が一般的でしょう。ワークフローシステムとは、申請・承認の業務フローを電子化・効率化する製品のことです。
稟議書のフォーマットは自由に作成でき、あらかじめ搭載されたテンプレートを使えたり、Excelで作成していたフォーマットをそのまま使えたり、柔軟性が高いといえます。根回しや承認のフローもシステム上で行われ、紙の稟議書だと承認者の印鑑が必要でしたが、電子印鑑や承認ボタンを押せば作業は完了です。自動で回覧されていき、決裁後、稟議書はシステムに保存されます。
ワークフローシステムについては、以下の記事で詳しく解説しています。ジョブカンワークフローなどの人気製品のほか、操作が簡単な製品や大企業向けの製品など複数紹介しているのでぜひご覧ください。
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稟議書を電子化するメリット
ここからは、稟議書を電子化するメリットを詳しく見ていきましょう。
1.決裁までがスムーズで、意思決定を迅速化
紙の稟議書では、申請者が適したフォーマットを探し出し、書類を印刷して、承認者のもとへ届けに行く必要がありました。さらに、承認者が一人とは限らず、係長→課長→部長に回付する場合や、購入する物品の額が◯円以上なら3人以上の承認が必要など条件分岐の承認ルートであるケースもあります。もし承認者が出張などで長期間不在にしていれば業務フローがストップしてしまい、待機しなければならないのです。これでは決裁までに相当な時間がかかるでしょう。
ワークフローシステムで稟議書を電子化することで、こうした課題を解消できます。システム内に申請フォーマットやテンプレートが一元管理されており、検索が容易です。そのうえ、システム上で稟議書を回付するため印刷の必要がありません。稟議内容に応じて適した承認者のもとへ自動で回覧されるよう、承認ルートを事前に設定しておけるので、書類提出の手間もなくなります。
また、スマホやタブレットに対応した製品なら申請されたタイミングで承認者のもとへ通知が届き、どこからでも承認が行えます。承認の進捗は可視化され、どこで停滞しているのか一目瞭然です。承認遅れや漏れが減り、決裁までスムーズに進むでしょう。
2.ペーパーレス化によるコスト削減、内部統制強化
システム上で稟議書が回付されるので、ペーパーレスとなります。ペーパーレス化されると、紙代や印刷代のほか、文書管理にかかっていた人件費や保管庫の管理費なども削減できるでしょう。
加えて、申請・承認の状況をすべて可視化するため、社内ルールに則った正規のルートで決裁されたのかがわかります。承認者を飛ばして決裁され、業務とは関係のない物品が購入された、というような不正行為を防止できます。稟議書にミスや不備があればアラートが表示される製品もあるので、適切な業務フローで進められるのです。これは内部統制の強化にも効果があります。
特に上場企業やその関連企業は、公認会計士あるいは監査法人の監査を受けますが、その際にワークフローシステムで業務フローや決裁データが可視化されていれば役に立ちます。過去の決裁データなどの開示を求められた場合にすぐ取り出せれば、対応がスムーズでしょう。
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稟議書を電子化するデメリット・注意点
実は、稟議書の電子化はメリットばかりではありません。デメリットもあるので、電子化にあたっての注意点を紹介します。
1.業務フローや社内ルールの見直しが必要
まず、申請や承認のフローをワークフローシステムに反映しなければなりません。稟議内容ごとに申請フォームや承認ルートを設定します。その際、現状の業務フローで問題ないのか検討し、無駄のない最も効率的なフローをシステムに登録しましょう。なお、業務フローの見直しはシステム導入時だけでなく、人事異動や組織変更があれば都度必要です。
また、組織内に新たなシステムを導入するとなれば、当然業務に変更点が出てきます。社内ルールや運用体制を見直し、長期的にシステムを運用し続けられる体制を整えましょう。具体的には、システム導入により稟議までの日数を3日短縮する、というような目標を立てて全員に共有したり、システムの操作方法やエラー時の対処法などをまとめたマニュアルを作ったりします。ベンダーによっては導入初期からコンサルをしてくれるサービスも用意しているので、必要に応じて利用するとよいでしょう。
2.システムの導入や運用にコストがかかる
印刷代や文書管理にかかっていたコストを削減できる一方で、ワークフローシステムの導入・運用にコストがかかるデメリットがあります。特にオンプレミス型のシステムだと、初期費用が高くなる傾向があり、自社内でシステムを稼働させるのでメンテナンスにも手間とコストがかかるのです。
しかし、最近はクラウド型が主流となっており、初期費用が無料の製品や、1ユーザー月額300円程度で利用できるものが増えていて、コストを最小限に抑えられます。以下の記事ではクラウド型のワークフローシステムを紹介しているので、こちらから導入検討してみるのもおすすめです。
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稟議を効率化するためのポイント
稟議を効率化するために行うべきことは、稟議書の電子化や根回しだけではありません。稟議書の作成においてもポイントがあります。
稟議書は承認者を説得するための書類です。そのため、稟議書の中に十分な情報が詰まっていないといけません。承認者の多くは上層部で、現場の業務を事細かに理解していることは少ないでしょう。業務に直接関わりのない人が見てもわかるように、稟議に至った経緯や稟議内容、金額、日程、メリットなどの必要な情報を漏れなく記載してください。
特にメリット・効果に関しては詳しく書きましょう。例えば購入稟議なら、サービスの導入によって業務に要する日数を10日短縮できるなど、具体的な数値を見せると承認してもらいやすくなります。
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稟議書を電子化し業務改善につなげよう
稟議書の電子化は、ワークフローシステムで簡単に行えて、意思決定の迅速化や、ペーパーレス化によるコスト削減、内部統制の強化といったメリットを得られます。一方で、ワークフローシステムの導入にあたって、業務フローや社内ルールの見直しが必要となり、システムの導入や運用にコストがかかるのがデメリットです。しかし、コストやメンテナンスの手間を抑えられるクラウド型システムもあるので、さまざまな製品を比較して適したものを導入し、電子化を進めましょう。