ワークフローとは
ワークフローの概要を見ていきましょう。
組織内の業務手続で発生する一連の流れ
ワークフローとは、組織内で発生する業務手続の流れのことです。
たとえば、稟議でいえば稟議書の提出から上長による承認、そして申請者の手元に返ってくるなどの流れがあります。誰がどのような順番で担当するのかといった具体的な事項も、組織であらかじめ決められているでしょう。この固定的な手続きの流れがワークフローです。
また、図形や記号を用いて分かりやすくワークフローを示したものをワークフロー図と呼びます。担当者や進捗状況などを視覚的に把握できます。
稟議や申請業務において設計される
一般的にワークフローは稟議や申請の手続きにおいて設計されます。稟議書は本来、意思決定を行う会議に先立って確認するための書類ですが、すべての事案について会議を開くのは非現実的です。
そのため、書類の回付・承認だけで決裁が行われることも多く、その流れがワークフローとして管理されます。
稟議書を回付する代表的な事案は以下のとおりです。
- 購買・支払申請
- 物品やサービスの購入に伴う手続き
- 経費精算関係
- 出張費、交際費などの精算
- 労務管理関係
- 残業申請、有給取得申請など
- 営業活動関係
- 見積書の提出、契約締結の申請など
- 人事関係
- 採用、異動などに伴う手続き
- 製品開発・販売関係
- 開発投資、製品の価格決定などに要する手続き
- 利用許可申請
- パソコンやソフトウェアなどの利用許可を得る手続き
ワークフローの歴史
業務の流れを管理しようという考えが登場したのは1880年代後半ごろです。科学的管理法の提唱者であるフレデリック・ウィンズロー・テイラーと、機械技術者・経営コンサルタントのヘンリー・ガントが業務フローの概念の生みの親とされています。
ガントはガントチャートの考案者として知っている人も多いでしょう。彼らは当時、特に製造業において効率的に業務を管理する方法を研究していました。その後、労働環境が技術的に進歩する中で、業務フローに関する研究も深まり普及していきました。
ワークフロー(workflow)という用語が初めて登場したのは1920年前後のことでした。業務の流れに対する最適化理論の適用も始まっていました。そして、第二次大戦やアポロ計画の影響もあって、ワークフローへの関心はさらに高まっていきます。
その後、1980年代にワークフローの考え方はさらなる脚光を浴びます。グローバル化に伴って企業間の競争が激化し、より合理的な業務管理・品質管理が求められるようになったからです。
さらにその後もコンピュータの普及に伴って、業務の合理化が進みました。そして、その高度化したワークフローをもっと幅広い業務に適用しようと試行錯誤が重ねられ、現在に至ります。
紙で運用されるワークフロー業務の課題
現在では多くの企業がワークフローをコンピュータ上で運用しています。しかし、紙で運用している企業もまだ少なくありません。そのような管理体制にはどのような課題があるのでしょうか。
承認・決裁スピードの遅延
承認や決裁の速度において、紙による運用はコンピュータ上での運用に比べて大きく劣ります。たとえば、申請書に印を押す上長が出張などで不在の場合、その人が帰って来るまでワークフローが完全に停滞します。
また、上長とオフィスが離れている場合は申請書を郵送するだけでも数日かかるでしょう。
そのほか、手書きであることによるタイムロスもあります。手で書くこと自体にも時間がかかるうえ、わずかな書き損じでも全体を書き直さなければならず大きな手間がかかることになります。さらに、書類を整理するのにも時間がかかるでしょう。
書類の盗難・紛失
紙の書類には、常に紛失のリスクが付きまといます。ほかの書類に紛れて分からなくなることもあれば、誤って捨ててしまうこともあるでしょう。さらに、盗まれて第三者の手に渡る可能性もあります。盗まれたのか紛失したのかを判断しにくいのも難点です。
また、データの改ざんや流出が起きた場合にも発見や原因の特定に時間がかかるでしょう。統一的な管理が難しいため、決定的な対策が立てにくいなどの点でも、安全性に課題があるといえるでしょう。
保管・郵送コストの発生
紙の書類にはさまざまなコストがかかります。印刷するだけでも用紙やインク、プリンターにお金がかかります。離れた場所へ書類を回付する際には郵送費が必要です。
また、決裁を終えた書類の保管も無料でできるわけではありません。ファイルやキャビネットだけでなく、土地にもコストが生じることになります。さらに、それらの手間にかかる人件費も考えると、見えないところでも大きなコストが発生しているといえるでしょう。
課題を解決する「ワークフローシステム」とは
コンピュータ上でワークフローを管理する際には、ワークフローシステムが使われます。これは、ワークフローの管理を効率化する機能を備えたITツールです。「Workflow Management System」を略してWFMSと呼ばれることもあります。
基本的に電子上の申請フォームと、それをあらかじめ設定した流れに沿って回付する機能からなります。つまり、申請者はシステム上で必要事項を記入すれば、あとは設定どおりに書類が回付されていくということです。
上長による閲覧・承認もシステム上で行われます。すべて電子上で完結するため、紙に印刷する必要はありません。
決裁を終えた書類も電子データとして保存されます。それらを探したいときは検索すればよいだけであるため、紙の書類と違って管理の手間はほぼありません。
ワークフローシステム活用のメリット
ワークフローシステムにより業務がどのように変化するのでしょうか。システムを活用するメリットを4つ見ていきましょう。
業務を効率化できる
紙で運用するよりもワークフローの流れが早くなります。手書きで記入する手間がなく、修正も簡単です。また、時間や場所を選ばずに手続きできるため、地理的に離れていても問題はありません。書類を郵送するのにかかる時間も出張中の上長を待つ時間もかかりません。
次は誰に回付すればよいのか分からず遅れるといった問題も回避できます。ワークフローシステムにあらかじめ流れを設定しておけば、利用者が次に書類を渡す相手を意識する必要もありません。
現在書類が誰の承認待ちなのかといったワークフロー上の状況をリアルタイムで把握することも可能です。それらの結果、申請してから決裁されるまでにかかる時間を大幅に短縮できます。フットワークの軽い経営が実現し、ビジネスを加速できるでしょう。
また、効率化するのは申請から決裁までだけではありません。紙の書類と違って管理の手間はかからず、書類を探したいときも検索すれば瞬時に見つかります。ワークフローシステムを導入すれば、ワークフローに関係するほぼすべての段階を円滑化できます。
内部統制を強化できる
ワークフローシステムでは、書類が誰の手元にあるのか一目で確認できます。遅延を招いた場合はそれがすぐに露呈するため、各人が迅速に対応するようになるでしょう。
イレギュラーな対応を防止できるのもメリットです。システムではあらかじめ決められたフローでしか承認できないため、個人の勝手な判断による変更はできません。何らかの事情でやむを得ずフローを変更したい場合は、権限に基づいて手続する必要があります。
また、万が一データの改ざん・流出などの問題が生じた場合には、誰がそれをやったのか履歴から確認できます。二度と同じことが起きないように対策を立てられます。見える化によってコンプライアンスの強化を図れるでしょう。
そのほかにも、自動的に現行の書式に統一されるなど、適正な手続きを実現する機能が豊富に備わっています。
コストを削減できる
ワークフローシステムを使えば、ワークフローにおけるすべての作業が電子上で完結します。したがって、紙の書類を扱う場合のようなコストがかかりません。具体的には用紙代やインク代、郵送費、FAX代、管理費などを削減できます。
また、手間が減るということは人件費も減るということです。見えないところでもコストカットできるため、それらを総合すると削減できる金額は侮れません。
柔軟な働き方を提供できる
紙でワークフローを運用する場合は、その紙が関係者の手元に物理的に渡らなければなりません。そのため、「本人がこの場にいないからどうしようもない」という事態が発生しがちです。
その結果、営業社員が経費精算のためだけにオフィスに戻るような、大きな無駄が発生します。
しかし、ワークフローシステムを使えばその課題を解決できます。電子上でワークフローが完結するため、関係者が必ずしも出社する必要がないからです。出張先からはもちろん、自宅からでも申請や承認が可能です。時間や場所にとらわれない先進的な働き方が実現するでしょう。
ワークフローシステムを導入し、柔軟な組織を構築しよう!
ワークフローとは、組織における手続きの一連の流れのことです。紙でワークフローを運用する場合、以下の課題があります。
- ■承認・決裁の遅延
- ■書類の盗難・紛失リスク
- ■保管・郵送のコスト
こういった課題の解決にワークフローシステムが有効です。そのメリットは以下のとおりです。
- ■業務の効率化
- ■内部統制の強化
- ■コスト削減
- ■柔軟な働き方の実現
以上を踏まえ、ワークフローの効率的な運用を目指しましょう。
ワークフローへの理解を深めるには下記の記事も参照ください