当期利益約18億円(2017年12月期:連結)という規模で、リンクアンドモチベーションは全社員が集まる総会の開催や社内報の発行など、社内コミュニケーションに億単位の投資をしているそうです。同社代表の小笹さんによれば、社内コミュニケーションに投資する目的は、「エンゲージメントスコア(ES)」を上げること。
このエンゲージメントスコア(ES)が高いほど、従業員は働きやすいと感じ、企業は利益を伸ばしていくことができる傾向があるそうです。つまり、ESをおさえれば、働き方改革の推進と業績向上を両立させられるということですね!ロングインタビュー後編は、ESを向上させるコツについて聞いてみました。

*前編はコチラからご覧ください。
「古い感性は捨て去れ!」LMI小笹会長に聞いた“働き方改革”論(後編)

企業と従業員の「関係性」を強化せよ

──たいていの経営者が「働き方改革は業績の低下を招く」と心配しています。両立させるための方法を、ぜひ、伝授してください!

小笹さん(以下、敬称略):わかりました。企業と従業員との「エンゲージメント(相互理解・相思相愛度合い)」を高めることです。企業と従業員との「関係性」を改善してエンゲージメントの度合いを高めると、収益力に好影響をもたらします。当社がこれまで行ってきた調査でも、「売上・純利益の伸長率とエンゲージメントスコアとの間に、高い相関関係がある」という結果が出ているんですよ。

そこで当社では、従業員のエンゲージメントに大きく影響する16の要素(エンゲージメントファクター)を抽出しています。診断結果を、「期待度(従業員が会社に求める期待)」と「満足度(その期待の充足度合い)」という2軸で整理し、組織の優先課題を把握。その合致度合いを数値化したものが「エンゲージメントスコア(ES)」というものです。

──なるほど。従業員の期待度や満足度という観点で、企業と従業員の関係性がスコア化されていれば、他社との比較や時系列での変化もすぐにわかりますね。

小笹ええ。私自身がESを活用した例をお話ししましょう。当社では企業成長の手段のひとつとして、M&Aに注力しています。でも、相手先の企業風土や従業員のモチベーションがどうなっているか、事前に詳細を知るのは限界がありますよね。グループインしてもらったあとに、ESを調べたら、偏差値が予想以上に低かった、なんてこともあるわけです。そこから時間をかけて、私たちのグループへの統合作業をしていきます。

統合のための期間中、その会社のESを定点観測していると、どんどん上がっていくのがわかるんですよ。ESというカタチで、「どのファクターでエンゲージメントが弱いのか」がわかるから、計画的に施策を打ち、改善していくことができます。結果、ESの上昇に比例して、その会社の売上高もアップしていったんです。

社内コミュニケーションは「血流」である

──まさにES向上が業績アップにつながったわけですね。では、ESを上げるためには、なにをすればよいのか教えてください。

小笹エンゲージメントを高めるには、社内のコミュニケーションに投資することがポイントです。当社はよく組織を生き物に例えますが、コミュニケーションはその血流であると考えます。私たち人間は、血流が滞ると肩こりなどの病気にかかりますよね。組織も同じです。社内でのコミュニケーションがうまく循環しないと、病気になるんです。逆に、社内コミュニケーションが上下左右前後斜めにサラサラ流れている状態ならば、従業員は高いモチベーションをもってイキイキと働いてくれます。

また、職種も価値観もそれぞれ異なる多様な従業員を束ねていくためにも、社内コミュニケーションの流れをよくすることがカギになってきます。

──なるほど…。理解できた気がしますが…。

小笹ははは。図を描いて説明したらわかりやすいかもしれないですね。

当社がエンゲージメントに着目した背景には、「組織の問題は『人』にあるのではない。『人と人との“間(あいだ)” 』にある」という考え方があります。たとえば「営業部門と技術部門」「本部と各店舗」など。多くの問題が、「間」で生じていることがわかるでしょう。その問題というのは、コミュニケーション上の不具合によって意思疎通がはかれなかったり、摩擦が生じたりすることで起きていることがほとんどです。

「人」ではなく、「間」に注目すると、10人の組織ならば45本の「間」があります。これが100人の組織になると、「間」は4,950本になります。「人」は10倍ですが、「間」は110倍になり、複雑性が大幅に増していることが分かります。経営トップが4,950本のすべてに対応するのは難しいでしょう。そこで、多くの組織では、10人のチームにつき1人のミドルマネジャーを置き、経営トップはミドル層とコミュニケーションを取ることで効率化をはかっているわけですが、このミドルマネジャーがコミュニケーションの結節点となるわけですから、非常に重要な役割であり、問題が起きやすい。

経営者は社内にある「間」を把握して、「一体、どことどこの“間”をコミュニケーションでつなぎ合わせればいいか」という視点をもつべきです。おおもとのところは「会社と社員との間」、ミクロで見れば「A社員とB上司との間」など。そのような見立てで複雑にからみあった問題を「見える化」してみることが重要です。

従業員が10人から100人に増えると、
『間』が45本から4,950本へと激増する。
だから「ミドル=コミュニケーションの結節点」が必要なんです。

コミュニケーション強化に億単位を投資

──それでは、具体的に、社内コミュニケーションに投資したことでESを高められた例を教えてください。

小笹当社の例を話しましょう。当社では、社内コミュニケーションに年間1億円以上を投じています。

──えっ。そんなにですか!

小笹そうです。具体的には、毎日17:00に社内イントラにグループの業績の最新情報などがUPされます。また、毎月初めに、私からの従業員向けメッセージを発信。さらには、毎月、グループで問題意識が高まっているテーマでの幹部同士の対談企画など、Web版の社内報を配信。そして毎週、イントラ上で動画版社内報も配信して、メンバーのリアルな姿を共有。そして、クォーターごとに紙の冊子を発行し、中長期のビジョンなどを伝えています。

そして、リアルなコミュニケーションの場として、クォーターに1回、全社員が集まる総会を開催します。私をはじめ経営陣の考え方を直接伝えるとともに、メンバー同士の交流をはかっています。また、四半期で活躍した人や高い成果をあげたプロジェクトを表彰します。「今期はこんなプロジェクトが、このような理由で表彰された」と、誰かにあとから説明されるのではなくて、直接肌で感じてもらうため、全社員が集まる総会が大事なんです。毎年4回、丸1日、全社員が社外とかかわる仕事をしません。それだけでも、大変なコストをかけているわけです。開催のためにかかる実際的なコストとあわせると、大きな投資をしています。

──社内コミュニケーションが円滑になると、どんな成果があるのですか。

小笹数多くの成果があるなかで大きいのは、コミュニケーションの結節点である、ミドルマネジャーの負担が大きく軽減されることです。経営トップが末端の従業員にまでなにかを伝える際には、通常、ミドルマネジャーを介します。しかし、ミドルマネジャーは、「トップからの情報を翻訳して自分の言葉で現場に伝える」「現場で起こっていることを吸い上げてトップに伝える」「ほかの部門と横の連携をとって問題を解決する」などなど、じつにさまざまな業務を抱えています。

ですから、社内報や総会といったコミュニケーションの場をもうけて、私たち経営陣の考えを末端に直接、伝えているのです。ミドルマネジャーの仕事がそれだけ軽減され、彼らの能力と時間をより必要としている仕事にあてられるわけです。そのことによる業績UPの効果は絶大です。

ミドルマネジャーの負担軽減を含め、投資金額以上のリターンがあるから、継続しているのです。コミュニケーションに投資するということは、従業員を楽しませるためのボランティア活動ではありません。確実に企業成長させるために手堅い投資なんです。

商品・サービスでなくヒトに目を向けよ

──最後に、働き方改革を推進して、新しい時代に生き残っていこうとする経営者にアドバイスをお願いします。

小笹労働市場に着目してください。これまで、多くの経営者は、「商品市場」で生き残ることを最優先に考えてきました。「自社の商品やサービスを売る」ということを真っ先に考え、競合他社と競いつつ戦略的なポジションを確保して市場に適応していくという考え方です。しかし、いまはどんな競合優位性のある商品・サービスでも、すぐにマネされたり、イノベーションが起きて別のものに代替されたりします。商品市場への適応をいくらやっても、生き残るのは難しい時代なのです。

いま、もっとも重要なのは労働市場への適応です。ヒトに選ばれ続け、優秀な人材を確保できる企業が生き残る時代なのです。典型例がサービス業。労働市場への適応が遅れたために、たとえば店舗の24時間営業ができなくなったり、運送業では荷物の再配達ができなくなったり。商品市場だけしか見てこなかったツケが回ってきたのです。

企業の存続や発展を願うのならば、「働き方改革」を推進させることは、もはや絶対不可欠です。ヒトに選ばれる企業になるために、自社独自の「働き方改革」を追求してほしいですね。

──ありがとうございます。「働き方改革」の推進は、「残業時間を減らす」といったわかりやすい指標に目がいきがちですが、これからの企業経営の本質にかかわるものなんですね。読者のみなさん、“ヒトに選ばれる企業”になるためのヒントを、このインタビューからつかんでもらえれば幸いです!

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