株式会社エンファクトリー 代表取締役社長 加藤 健太さん
(所属・役職は取材当時)

「専業禁止!!」をかかげるエンファクトリーさんでは、出社後いきなり複業の業務を始めるのもアリ。定時という概念はなく、完全フレックスタイム勤務。テレワークもOKなんだそうです。こんな自由度の高い働き方を認めることは、社員の自立を促すためでもあります。それでは、社員がどんどん自立していった先には、いったい個人と会社の関係はどうなっているのでしょうか。エンファクトリー代表の加藤さんに、働き方についての取り組みと、未来のあるべき姿について語っていただきました!

※インタビュー前編はコチラ
「副業って会社にメリットある? 」“専業禁止”をかかげる社長に聞いた(前編)

「雇用」という概念は消えるかもしれない

──エンファクトリーさんのように、社員にパラレルワークをどんどん認めていくと、社員にとって「エンファクトリーに雇われ続ける意味」って、どんどん薄れていくように思います。 最終的には組織がバラバラになってしまいませんか。

「雇われ続ける意味」は薄れていくと思いますよ。ただ、会社という場で仕事をする意味はあります。個人で仕事を請け負う場合は、案件の規模に限界がありますよね。でも、会社なら資本力や資産、ブランドを含めて、顧客からの信頼性があるおかげで、大きな仕事ができます

ただ、デメリットもあって。とくに大企業で起こりがちな現象ですが、「社員は巨大な機械の中のひとつの歯車」になってしまう。そうなると、要領のいい賢い人ほど、仕事がどんどん「自分ごと」じゃなくなっていく。これはいちばんダメなパターンで、個人として成長しようがない。

一方、フリーランスはその逆で「自分ごと」の意識はすごくある。でも大きな案件の全部を引き受けられない。人的広がりや学ぶ機会もなく、これまた成長ができなくなってしまうわけです。そこで、会社の社員とフリーランス、両者のいいとこ取りをしたらいいんじゃないかと思って『チームランサー』というサービスを立ち上げました。

──どのようなサービスなのでしょう。

プロジェクトやタスクが発生したとき、会社という垣根を越えて人材が集まって動く。それを支援するプラットフォームです。2017年からスタートしました。大きな仕事に携われるし、それを「自分ごと」として手がけられる。いちばん成長できるカタチだと思います。最終的にぼくが目指しているイメージは、これに近いですね。

──案件ごとに集まるとなると、雇用ではない…?

まぁ、なんらかのカタチで契約を結ぶことになるとは思います。請負なのか雇用なのか、どちらとも違う新しい形態かもしれません。いずれにせよ、「会社に雇用されたから安心」なんて時代ではもうないのだから、そんなものにしがみついてちゃいけない。ぼくもこの会社にしがみついてるわけじゃない (笑)。

エンファクトリーは「箱」である

──えっ! でも、経営者なんですから「エンファクトリーを大きくしていこう」とか、考えているわけですよね。

そんな面倒くさいこと考えていませんよ(笑)。それは冗談ですが…、それよりもおもしろいからやってるだけなんです。もちろん、株主から委任を受けて経営しているわけですから、株主が求める成果を出す必要はあります。でも、そこをしっかりやっておけば、あとは好きなことをできるわけです。株主のお金を使ってね(笑)。エンファクトリーというのはそのための“箱”であって、エンファクトリーという魂があるわけではない。そこにとらわれないほうがいいですね。

──“箱”ですか。加藤さんがその“箱”でやりたいことは何なのでしょう。

そうですねぇ。いま、世の中が大きく変わっていく中で「こういう会社もあるんだぞ」という存在に、エンファクトリーがなればいいなと。そうできたらいいですね。

──なるほど。既存の会社とどんな点で違っているのでしょうか。

社員がみんな「自分ごと」として仕事をとらえている点です。大企業だと「私たちの会社は未来をつくります」とか「当社は世界への貢献を目指します」とか、誰も反対しないような、抽象的で当たり障りのないビジョンを掲げます。意味ないですよね。その会社の社員の誰ひとりとして、そのビジョンを「自分ごと」だと思っていない。そのくせ、「ぼくは○○株式会社の社員です」みたいな帰属意識だけはある。

当社の場合、帰属意識は薄いでしょうね。でも、「私はエンファクトリーでこういうことを成し遂げます」という意識はある。思い入れが前面に出てきて、自分の言葉で自分のビジョンを掲げられる。そのビジョンに賛同した人、応援したい人が集まってプロジェクトが始まる。エンファクトリーは、そういう会社なんです。

「オンライン上での雑談」で心をつなぐ

──帰属意識は薄いけれども、ビジョンを応援したい人たちが集まっている。個人と組織の関係の面で、とても珍しいあり方ですね。では、そんなエンファクトリーさんでは、働き方に関してどんな取り組みをしていますか。

勤務時間については、コアタイムなしのフレックス。定時という概念はないですね。基本的には自由です。ただ、当社ではチーム単位で動くケースが多い。チームごとに「9時半に集まろう」「10時に来てください」などと、その都度決めごとをつくっている場合もあります。

それから、テレワークも基本的にはOK。これもチームによって「週1日まで」などと決めている場合もあります。ただ、実際には、オフィスに出勤している人のほうが圧倒的に多いです。チームで動くには、実際に会ってコミュニケーションするのが手っ取り早いですから。

──なるほど。「チームで動くこと」と「テレワーク」を両立させる方法に悩んでいる経営者は少なくないと思います。よい方法があれば教えてください。

ひとことで言えば、社員同士が雑談できる環境をつくること。メールとかWeb会議とかって、「送信ボタンを押す」とか「カメラの前に座る」とか、ひと動作必要でしょう。それだと、雑談できない。かまえてしまうんですよね。

そこで当社ではSlackとかChatworkとかFacebookの秘密のグループであるとか、いろいろなチャットツールを使っているようです。「ようです」というのは、チームごとにやっていることだから、ぼくはよく知らないんですよ(笑)。チャットでの雑談を通して、「私たちのチームは何のためにこの仕事をしていて、私自身はチームの中でこういう役割を果たす」ということを、みんなが認識することが大事です。

それを役割分担表みたいなものだけで管理しようとすると、「私はこれだけやっていればいい」となりがち。そのメンバーがテレワークだと、「あいつ、オフィスにいないから、自分のやりたいことだけやってチームに貢献していない」なんてことに。

それはテレワークが問題なのではなく、日々のコミュニケーションの密度が低いことが問題なんです。当社でも、「オンライン上での雑談」に慣れてきたころにテレワークを始めましたね

──社員一人ひとりが自立していて、なおかつチームメンバーとして濃いコミュニケーションをはかりながら動く。そんな組織が理想、ということでしょうか。

そうですね。マネジメントも必要ないくらいのプロフェッショナルの集まり。たとえば映画『オーシャンズ11』みたいに。バーッとプロが集まって大胆に仕事を進めていくのが理想です。そういう連中ほど仕事を楽しんでるじゃないですか。仕事でも何でも楽しくないと続きません。結局のところ、いちばん大事なのが「楽しむ」というスキルかもしれませんね。

──楽しむのもスキルですか。

そうです。仕事するのなら楽しく働きたいですよね。だから、どうやれば楽しくできるかを考える。考えたことを実行すると、スキルになる。たとえば、「イヤなことがあっても、とにかくニヤッと笑ってみよう」とか。これもひとつのスキルです。

社長自身が楽しく生きることを考えよう

──最後に、「働き方改革を進めたいのだけど、なにをしたらよいのかわからない」という経営者の方へ、アドバイスをお願いします。

アドバイスなんて、そんなおこがましい (笑)。そうだな、あえて言うならば、経営者は「自分が楽しくなるにはどうしたらいいか」を考えたらいいんじゃないですかね。経営者だってひとりの人間です。特別な存在というわけではない。そこをカン違いしないで、「自分自身がどうしたらイキイキ生きていけるか」を突きつめる。そこから会社を変えるためのアイデアが湧いてくるはずです。社長自身が楽しくなければ、その会社は全然楽しくない会社でしょうからね。

──それは働き方改革とは関係なく、ということですね。

関係なくです。経営者が副業したかったらすればいいんですよ。経営者の楽しめる方向に進めばいい。楽しいと時間って短く感じますよね。ものすごく集中してるわけです。そういう時間をいっぱいつくれるような会社にしていけばいいんじゃないのかな。すみません、アドバイスになってないですね。


──いえいえ、貴重なアドバイスだと思います。社長自身が楽しいと思えないような会社は、社員も楽しくない。まさにその通りだなぁと思いました。社長も、社員も、自分の人生を楽しくするにはどうしたらいいかを真剣に考え、具体的にチャレンジしていく。その中から、新しい働き方が生まれてくるのかもしれませんね。本日は、ありがとうございました!

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