税制改正大綱とは
税制改正大綱(たいこう)とは、政府が翌年度以降に実施する税制改正の基本方針や具体的な内容をまとめた公式文書です。毎年、年末に閣議決定され、翌年の通常国会に提出される税制改正法案の土台になります。
税制改正大綱の内容は、翌年の国会審議を通じて修正される場合もありますが、基本的に、要旨は大きく変わらない傾向があります。企業は、来年度の投資計画や節税対策の検討のためにも、早めに動き出しましょう。
経理・財務:青色申告とインボイス対応の総仕上げ
経理業務においては、デジタル化への対応度合いによって受けられる税制優遇に差がつく改正が見込まれています。紙ベースの業務から脱却し、会計ソフトや電子請求書システムを使いこなすことが、今後の節税と業務効率化の両面で重要視されていくでしょう。
青色申告特別控除の見直しと優良電子帳簿
個人事業主やフリーランスにとって重要な「青色申告特別控除」の要件が見直される方針です。2027年分以後の所得税より、優良な電子帳簿を備え付けている場合は最大75万円に引き上げられる一方、書面(紙)申告の場合は控除額が10万円に縮小される方向で調整が進んでいます。
企業側も、取引先である個人事業主が適正な申告を行えるよう、電子データでの取引情報の授受が求められるようになります。優良電子帳簿の要件を満たす会計ソフトや電子帳票システムへの完全移行が、これまで以上に強く推奨される状況となるでしょう。
インボイス経過措置の変更とシステム対応
インボイス制度についても、小規模事業者向けに「3割特例」が創設されるほか、買い手側の少額特例等のスケジュール変更が見込まれています。これにより、請求書の受領・発行業務における税額計算ロジックへの対応が必要となります。
手計算でのミスを防ぐためには、インボイス制度の最新法令に自動対応するWeb請求書システムや会計ソフトの活用が効果的です。特に税額計算ロジックの変更に迅速に対応できるクラウド型システムの重要性が増すと考えられます。
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暗号資産の申告分離課税化への対応
暗号資産取引について、従来の雑所得から20%の申告分離課税へ移行し、損失繰越が可能になる方針が示されました。これにより、個人投資家等の確定申告において、より精緻な資産管理が求められることになります。
個人の確定申告における会計ソフトの資産管理機能の重要性が増すでしょう。複数の取引所やウォレットのデータを統合し、正確な損益計算を行えるツールの需要拡大が予測されます。
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「103万円の壁」として議論されてきた基礎控除等の引き上げ方針が示され、パート・アルバイト従業員の働き方に変化が訪れるでしょう。企業の年末調整業務やシフト管理においても、大幅な見直しが必要になると考えられます。
基礎控除等の引き上げと基準額「178万円」への対応
基礎控除等の引き上げにより、非課税枠が103万円から178万円へ拡大される方針です。これにより、給与計算における税額計算ロジックの変更が必須となるほか、扶養範囲内で働く従業員のシフト調整にも影響が出ると予想されます。
特に、勤怠管理システムにおいては、新たな基準額(178万円)に基づいたアラート設定などの改修が求められるでしょう。法令改正に即座に対応できるシステムの導入が、労務リスク回避の鍵となります。
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賃上げ促進税制の改組とデータ管理
賃上げ促進税制について、中小企業向けは維持されるものの、中堅・大企業では要件厳格化や廃止が行われる見通しです。適用要件の判定を行うため、正確な賃金データの管理がより一層重要になります。
労務管理システムを活用し、従業員の賃金推移や評価データを一元管理することで、税制適用の可否をスムーズに判断できる体制を整えることが望まれます。
設備投資:少額資産の基準引き上げとIT投資
企業の生産性向上を後押しするため、設備投資に関する税制優遇が拡充される方針です。特に中小企業にとっては、PCやソフトウェアなどのIT機器・ツールを購入しやすくなる好機となる可能性があります。
少額減価償却資産の基準が40万円に拡大
中小企業者等が取得した資産について、即時償却できる基準額が「30万円未満」から「40万円未満」に引き上げられる見込みです。これにより、これまで30万円を超えていた高スペックなPCやサーバー等のIT機器、ソフトウェアも即時償却の対象となる可能性があります。
IT投資の増加に伴い、IT資産管理や固定資産管理システムでの償却設定の変更が必要になるでしょう。資産の取得から廃棄までを適切に管理し、税制メリットを漏れなく享受する体制づくりが推奨されます。
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大規模投資を促進する新税制とソフトウェア
特定生産性向上設備等投資促進税制が創設され、一定規模(70万円以上)のソフトウェアも対象となる強力な投資減税(即時償却または税額控除)が検討されています。これにより、大規模なERP(基幹システム)や生産管理システムへの投資意欲が高まると予想されます。
また、カーボンニュートラル投資促進税制も要件が厳格化された上で延長される方針です。認定を受けるための精緻なデータが必要となり、CO2排出量管理システムの活用が重要視されていくでしょう。
医療・インバウンド:外国人患者対応の強化
訪日外国人の増加に伴い、医療機関におけるインバウンド対応の規制緩和が進む見通しです。自由診療における価格設定の柔軟化に対応するため、システム改修の特需が生まれる可能性があります。
外国人患者への「3倍請求」容認とシステム対応
社会医療法人等が訪日外国人患者に対して、保険診療報酬の3倍まで請求することが容認される方針です。これに対応するため、電子カルテやレセプトコンピュータにおいて、患者属性(保険診療/自由診療/外国人特例)に応じた複数の価格設定機能(マルチプライス対応)が必須となるでしょう。
また、受入れ体制強化の一環として、多言語対応を支援するAI翻訳ツールなどの導入も進むと考えられます。医療現場の負担を軽減しつつ、適正な収益を確保するためのIT活用が鍵となります。
まとめ
2026年の税制改正大綱は、企業のデジタル化と生産性向上を強く後押しする内容となっています。特に経理・人事労務などのバックオフィス業務は、法改正への対応が遅れると業務負担が増大するリスクがあります。
また、少額減価償却資産の枠拡大案は、中小企業が最新のITツールを導入するハードルを下げてくれるでしょう。改正が施行される前に、自社の課題に合ったシステムの比較検討を行い、スムーズな導入計画を立てることをおすすめします。
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