勤怠管理とは
勤怠管理とは、従業員の出退勤時刻や休暇の取得状況を正確に把握し、労働基準法や会社の就業規則を守った労働ができているかどうかを管理することです。労務管理のベースとなる勤怠管理情報は、給与計算や人事評価に反映されます。
勤怠管理の必要性
勤怠管理が必要とされるようになった背景の一つに、働き方改革関連法によって見直された労働基準法や労働安全衛生法への対応が挙げられます。「客観的方法による労働時間の把握」が企業の義務となったため、会社側は従業員の出退勤状況を正確に把握しなければならなくなりました。また、労働基準法で定められた法定労働時間を守り、適切な給与計算をしていなければ、労務コンプライアンス上で問題が発生することになります。
参考:労働基準法
参考:労働安全衛生法
詳しくは以下の記事をご覧ください。
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勤怠管理の対象者と管理項目
2017年に発表された厚生労働省のガイドラインでは、勤怠管理の対象者は以下のように記載されていました。
- ■対象労働者
- 労働基準法第41条に定める者及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る。)を除くすべての労働者
つまり、「管理監督者」や「裁量労働制が適用される人」以外は、すべて勤怠管理を行わなければならないことを意味します。しかし2019年4月の法改正により、管理監督者や裁量労働制が適用される人も、勤怠管理の実施が義務化されました。働く人の健康を守るための措置であり、使用者には労働時間の客観的把握や健康管理時間の把握が求められます。
なお、勤怠管理で管理すべき項目には以下のようなものが挙げられます。
- ■管理項目
- ・労働日数、欠勤数
- ・始業、終業時刻、休憩時刻
- ・労働時間数
- ・時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数
- ・有給休暇日数、残日数
- ・遅刻や早退の回数と時間
労働日ごとの始業・終業時刻を確認するだけでなく、時間外労働や深夜残業、休日出勤の有無・時間の把握が必要です。また、年次有給休暇の取得も2019年4月から義務化されたため、有給取得の進捗状況の管理も求められています。
参考:労働時間の適正な把握 のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン|厚生労働省
参考:働き方改革
~ 一億総活躍社会の実現に向けて ~|厚生労働省
勤怠管理の方法
勤怠管理の必要性がわかったところで、具体的にどのように勤怠管理を行うのか、その方法を一つずつ見ていきましょう。紙の出勤簿、エクセル、タイムカード、勤怠管理システムと4つの方法があります。
管理方法 |
費用 |
従業員工数 |
管理工数 |
メリット |
注意点 |
紙の出勤簿 |
〇 紙と筆記具のみ |
× 社外での管理に不向き。 人によっては書くことに手間を感じる人も。 |
× リアルタイムでの把握ができない 集計業務に手間が発生 |
・とにかく安く導入できる |
・自己申告に依存するため
客観性に乏しい |
エクセル |
〇 PCのみ |
× 社外での管理に不向き。 人によっては記入に手間を感じる人も。 |
× リアルタイムでの把握ができない 集計業務に手間が発生 |
・紙に比べて、集計業務がやや楽になる |
・自己申告に依存する
・数式が壊れた場合など、手間がかかる |
タイムカード |
× 使い続けると費用がかさむケースが多い |
△ 社外での管理に不向き。 打刻ミスが起きやすいとの声も。 |
× リアルタイムでの把握ができない 集計業務に手間が発生 |
・どんな年代の方でも覚えやすい |
・他人が簡単に打刻できてしまう
・打刻したら変更ができない |
勤怠管理システム |
△ 1人200円~利用可能 |
〇 ワンクリックで打刻できるため、負担軽減 |
〇 ワンクリックで打刻できるため、負担軽減 |
・リアルタイムで勤怠状況が把握できる
・集計工数がほぼ発生しない
・自社の勤務形態に合わせた設定ができる |
・システムによっては高額になってしまうことも |
上記方法の中で、法に則った「客観的方法による労働時間の把握」に対応できるのは、勤怠管理システムです。以下のボタンでITトレンド掲載の製品を確認できるので、興味のある方はぜひご覧ください。無料で資料請求もできます。
1.紙の出勤簿への手書き
一つ目の方法が、出退勤のタイミングで所定の紙の出勤簿に、従業員が出退勤の時間を手書きをする方法です。月に一度、人事・労務担当者が従業員全員分の出退勤簿を回収し、総労働時間を集計したり給与計算システムへ反映したりするために、エクセルなどにデータとして転記します。
- ■メリット
- 紙の出勤簿であれば、紙と筆記用具があれば導入を始められるため、導入時のコストはほとんどかからないのがメリットです。勤怠管理用のテンプレートが印字されたシートが販売されているため、従業員分購入すればすぐに勤怠管理を開始できます。
- ■デメリット
- 毎月の集計を手作業で行わないといけないところがデメリットです。集計に時間がかかったり、転記ミスが発生したりと、正確な打刻の把握ができなくなります。いくら導入コストがほぼかからないとはいえ、集計する人件費はかかりますし、3年間の保存義務がある出勤簿を確実に保管するコストも発生します。
- また、従業員が偽の時間を記入したり、代理人に記入してもらったりと、不正申告が頻発する可能性があるでしょう。サービス残業が常態化するなど大きなデメリットになりかねません。
紙の出勤簿による勤怠管理は、自己申告にもとづくものであり、法で定められた「客観的方法による労働時間の把握」にはあてはまりません。そのため、紙の出勤簿で勤怠管理を行う場合、労働者に正しい記録や適正に自己申告するよう求め、十分な説明を行う必要があります。ほかにも、実際の労働時間と乖離がないかの実態調査なども実施が求められます。
2.エクセルでの管理
二つ目の方法は、エクセルでの管理です。従業員が出退勤時刻や休暇取得などの情報を、エクセル上で打ち込みます。人事・労務担当者など管理する側は、そこまで難しい関数を使うわけでもなく、減数、SUM関数、IF関数を使用すれば、簡単な勤怠管理表を作成できます。
- ■メリット
- いきなり大掛かりなシステムなどを導入せずとも、勤怠管理を始められるところがメリットの一つです。一度エクセルのテンプレートを作成したり外部からダウンロードしたりすれば、従業員が対応する箇所に記入するだけなので手軽に、かつ、コストをかけずにできます。また、このデータをCSVファイルとして、給与計算システムへインポートも可能です。
- ■デメリット
- コスト削減として外部のテンプレートをダウンロードしても、自社の就業形態にマッチしない場合もありえるのがデメリットです。勤怠管理を始める前に、自社の勤務形態にあっているかどうか、深夜残業や休日出勤の計算が正しくできるようになっているかなどを必ず確認し、必要であれば関数を組みなおす必要があります。
- また、紙での管理ではなくなったとはいえ、従業員の不正申告を減らすことは難しいでしょう。誰でも簡単に入力できるからこそ、記録された出退勤時刻が正確でない可能性があります。なお、エクセルによる勤怠管理は「自己申告制」とみなされ、客観的な記録とされない可能性があるため、その点においても注意が必要です。
エクセルでの勤怠管理に必要な関数や気をつけるポイントなどは、以下の記事で解説していますので参考にしてください。
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3.タイムカードでの打刻
三つ目の方法は、タイムカード打刻による勤怠管理です。従業員が出社・退社するタイミングで、タイムレコーダーにタイムカードを差し込み打刻します。打刻されたデータは、再度手入力でエクセルへと転記する場合がほとんどです。製品によっては、勤怠管理ソフトがついていて、USBケーブルやSDカードでパソコンに取り込める場合もあるでしょう。
- ■メリット
- タイムカードでの勤怠管理の場合、タイムレコーダーを比較的安価に導入できるのがメリットの一つでしょう。昔から存在するタイムカードですが、近年のタイムレコーダーは進化を遂げており、データの出力機能や社員証と連携させた認証機能がついているものもあります。
- ■デメリット
- タイムカードでの勤怠管理では、打刻方法が限られてしまう点がデメリットです。外出が多い営業は直行・直帰に対応できず、不便に感じるシーンも多いでしょう。在宅勤務などテレワークなどにも不向きと言わざるを得ません。また、出退勤時刻の打刻は問題なく行えても、残業時間の管理や有給管理が難しい側面もあります。
- さらに、タイムカードは他人に渡せば不正打刻もできてしまいます。印字がうまくいかなかったり、間違えて他人のタイムカードに打刻をしてしまったり、さまざまなミスも想定されます。
タイムカードで勤怠管理をする課題については、以下の記事で整理しています。参考までにご覧ください。
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4.勤怠管理システムの活用
四つ目の方法は、勤怠管理システムを使った打刻です。勤怠管理システムはさまざまな場所・デバイスで出退勤時間を記録できるようになっています。
- ■メリット
- 勤怠管理システムで勤怠管理を行うメリットは、数多くあります。従業員にとっては、ICカードやスマホなどさまざまな打刻方法が可能になり、承認申請などがワンクリックでできるようになるなど負担軽減のメリットが大きいでしょう。また、管理者にとっては、従業員の出退勤情報をリアルタイムで確認でき、必要なときにはCSV出力もできます。さらには給与計算システムと連携できる給与計算システムもあり、総じてスムーズに勤怠管理を行えるでしょう。
- ■デメリット
- 自社に適した勤怠管理システムを導入できないと、逆にコスト増になってしまったり、従業員がうまく活用できず定着しなかったりと、人事・労務担当者の負担増大を招くでしょう。
以下の記事で、勤怠管理システムの人気製品を比較できるのでぜひ参考にしてください。価格や機能が比べられるほか、無料トライアルの有無や導入後の使用感など口コミも確認できます。
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勤怠管理システムで管理業務を効率的に
働き方改革やコロナ禍により、勤怠管理は複雑化しており、手書きの出勤簿などアナログな方式で対応するのは難しくなってきています。もし自社の勤怠管理方法を改めたいとお考えであれば、さまざまな種類の勤怠管理システムが登場していますので、ぜひこの機会に比較検討することをおすすめします。