テレワークとは
テレワークとはICT(情報通信技術)の活用による、場所や時間に制限されない柔軟な働き方のこと。人材確保や生産性の向上を目的に、総務省や厚生労働省が推進する働き方改革のもとで注目を集めています。近年、新型コロナウイルスのまん延防止策として実施されるケースも多く、急速に広まりつつあるといえるでしょう。
テレワークは社外で業務を行いますが、その就業形態は「雇用型」と「自営型」に大別できます。
- ■雇用型
- 従業員がオフィスとは違う場所で働く。営業職などの外勤型、事務職などの内勤型がある。
- ■自営型
- 個人・小規模事業者が委託を受けて出社せずに働く。SOHO(※)やクラウドソーシングなどが該当する。
※SOHOとは:スモールオフィス・ホームオフィスの略。小規模オフィスや自宅などでビジネスを行う事業者のこと
テレワークの3つの種類
テレワークは雇用型・自営型の雇用形態に加えて、働く場所により3つの種類に分類されます。それぞれの働き方を詳しく見ていきましょう。
1.在宅勤務
従業員が雇用されている企業のオフィスに出勤せず、一日の業務を自宅で行う形態をいいます。いったんオフィスに出勤したり、顧客訪問をしたりするなど自宅から外出して働く「部分在宅勤務」や「半日在宅勤務」というパターンもあります。以下の記事では在宅勤務を詳しく取り上げていますので、参考にしてください。
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2.モバイルワーク
顧客先や交通機関での移動中の車内、出張先のホテル、カフェなどで仕事をする形態です。企業や顧客との連絡にはノートPCやタブレット、携帯電話などのモバイルIT機器を使います。以下の記事もあわせてご覧ください。
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3.サテライトオフィス(施設利用型)ワーク
従業員が所属する企業の外部オフィスや施設を利用して働く形態です。サテライトオフィスには自社専用で使う施設、レンタルオフィス、複数社が共同で利用するオフィス(シェアオフィス)などがあります。以下の記事で支社との違いやメリットなども解説していますので、詳しく知りたい方はご覧ください。
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テレワークの歴史と注目を集める背景
テレワークの起源は、1970年代にエネルギー危機対策としてアメリカで導入された「テレコミュート」です。しだいに普及率は高まり、現在では米国で85%の企業が導入しています。
日本では少子高齢化が進み、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)のさらなる減少が予測されることから、政府が総務省・厚生労働省主導の「働き方改革」を打ち出しました。働き方改革の実現に向けた施策の一つに「柔軟な働き方がしやすい環境整備」があり、実現する方法としてテレワークの推進を挙げました。しかし日本で普及が加速した大きな要因は、やはり新型コロナウイルスの感染拡大です。このような経緯で、テレワークへの関心はますます高まっているといっても過言ではありません。
テレワークの導入状況
では、日本でテレワークはどの程度普及しているのでしょうか。2021年に発表された総務省の「令和2年通信利用動向調査」によると、2020年9月時点での日本企業におけるテレワーク導入率は47.5%。前年に比べ倍以上の数値となりました。
また、導入理由として最も挙げられたのは「非常時(感染症の流行など)の事業継続」です。新型コロナウイルス感染症のまん延が、いかにテレワーク導入の後押しになったかがわかる結果となりました。今後のウィズコロナ、アフターコロナ時代の働き方を見据え、ますます普及は拡大していくと予想されます。
参考:令和2年通信利用動向調査の結果|総務省
大手企業でのテレワーク導入が進む
実際、大手を中心にテレワークの導入企業は増えています。例えば、ある企業では約3万5000人の全従業員を対象に2017年から「テレワーク勤務制度」を正式に導入すると発表しました。
同社では仮想デスクトップと電子メール、ポータルサイト、文書管理、Web会議などを使ったグローバルなコミュニケーション基盤システムを活用して、場所にとらわれない柔軟な働き方に取り組むとしています。
東京商工会議所の調査でも、従業員規模数が大きいほどテレワークの実施率は高まるとの結果がでており、従業員30人未満の企業のテレワーク実施率は38.1%、300人以上の企業では69.2%となっています。
実施率の高さが際立つのはITエンジニア
同調査によると、業種別では製造業の実施率が最も高く、建設業が最低となっており、次いで小売業と続きます。
また、ITエンジニア向けプラットフォーム「paiza」を運営するpaiza株式会社の調査では、2020年4月時点でITエンジニアのテレワーク実施率は約80%と非常に高く、自社サービスをもつIT系企業では、約9割のITエンジニアがテレワークを実施していることがわかりました。
参考:「テレワークの実施状況に関するアンケート」調査結果|東京商工会議所
参考:ITエンジニアのテレワーク実施率は4月に約80%へ急上昇。業態別実施率、開始時期、課題、使用ツールを登録者数32万人のITエンジニア向けプラットフォーム「paiza」が調査|PR TIMES
政府によるテレワーク導入促進の取り組みとは
働き方改革のもとで、政府が主体となってテレワークの普及を進めていますが、具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか。ここでは関連する施策や事業について具体的に見ていきましょう。
テレワーク月間
テレワーク推進フォーラム(総務省、経済産業省、厚生労働省、国土交通省、学識者、民間事業者などで構成)による普及推進運動が、この「テレワーク月間」です。毎年11月をテレワーク月間として、ポスター掲示やインターネットでの動画配信といったPR、イベントやセミナーの開催などを行っています。
参考:11月はテレワーク月間|テレワーク推進フォーラム
テレワーク先駆者百選
総務省では、テレワークの導入・活用を進めている企業や団体を公募・選出する「テレワーク先駆者百選」と、応募企業・団体から特に優れた取り組みを表彰する「テレワーク先駆者百選総務大臣賞」を実施しています。テレワークの導入事例集も公開しているので、参考になるでしょう。
参考:テレワークの推進|総務省
テレワーク導入マニュアル
行政では普及への啓発や推進活動に加え、テレワーク導入を検討している企業や団体に向けて、導入ポイントなどをまとめたガイドブックやガイドラインも用意しています。例えば厚生労働省では、以下のようなガイドブックやガイドラインを配布・公表しているので一読するとよいでしょう。
ほかにも地方や都市部など、どこでも同じ労働環境を保てるようにする総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」や、東京都の「テレワーク活用・働く女性応援助成金」「働き方改革助成金」などがあります。
参考:テレワーク総合ポータルサイト|厚生労働省
参考:テレワーク活用・働く女性応援助成金|公益財団法人東京しごと財団
参考:働き方改革助成金|東京都産業労働局
テレワークを導入するメリット
ここまでテレワークの歴史や普及が拡大した経緯、行政の取り組みなどを見てきました。それではいざ導入を検討するにあたり、どのようなメリットがあるかを考えてみましょう。主なメリットとしては、以下のような項目が挙げられます。
- ●生産性の向上が期待できる
- ●移動や場所にかかるコストを削減できる
- ●育児・介護に携わる従業員の継続雇用が望める
- ●優秀な人材を確保できる
- ●BCP(事業継続計画)対策ができる
テレワークを導入すると、自分だけのスペースで集中して業務に取り組めるので、生産性の向上が期待できるでしょう。また、企業にとっても通勤にかかる交通費やオフィスの賃借料といったコストが削減できる利点があります。場所を問わないことから育児や介護とも両立が可能で、やむを得ない休職・退職リスクを防止でき、優秀人材の確保にも効果的です。
また自然災害や感染症のまん延などがあっても業務を継続できることは、企業にとっても従業員にとっても大きな安心材料といえるのではないでしょうか。
テレワークを導入するデメリット
以上のように、テレワークにはさまざまなメリットがあります。一方でデメリットも存在しますので、どのようなことが考えられるかを見ていきましょう。
- ●従業員の労働を管理しにくい
- ●管理職による指導が従来と異なり難しい
- ●従業員が孤独感を抱える可能性がある
- ●セキュリティ対策が従業員依存になってしまう
一番のデメリットは、従業員の労働状況を現認できないことでしょう。勤務時間や成果は従業員の申告次第になるので、正確な労働状況の把握は困難といえます。また、社内でともに仕事をしていれば管理職は部下に直接指導を行えますが、テレワークという顔の見えない状況での指導は特殊なので、慣れていない管理職も多いことでしょう。管理職へのマネジメント研修が必要になるかもしれません。また気軽なやり取りが難しいことから、孤独感を抱える従業員が出る可能性もあるでしょう。
セキュリティ面でも不安はあります。端末を社外で使うため紛失する、外部Wi-Fi経由で情報を盗み見られる、ウイルスに感染するなどで情報漏えいが起きるリスクがあります。従業員は今まで以上にセキュリティ対策を意識しなければなりません。
テレワーク導入時の3つのポイント
このように、テレワークにはメリットもデメリットも存在します。テレワークの利点を享受し、欠点を補いつつ自社の要件に見合った運用方法をとるにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、テレワークを導入する際の重要なポイントを解説します。
1.労務・勤怠管理を見直す
テレワークはオフィス外で勤務するため、働き方にあった勤怠管理の方法や評価制度の導入が重要になるでしょう。テレワークにあわせた評価項目の設定や、評価方法の統一化などが考えられます。
また企業によっては「テレワークの実施が週に1~2日程度であれば、労務管理制度をほとんど変えなくてもよい」、「テレワークの頻度が高い人の場合には成果報酬型に評価制度を変更した方がよい」というケースもあるでしょう。テレワークをする人とそうでない人の間で評価に不平等が生じないように、適切な人事評価について社内でよく検討しましょう。
勤怠管理には、ITシステムの活用が効率的です。例えばクラウド型の勤怠管理システムであれば、インターネット経由で始業・終業時刻などがリアルタイムで記録できて便利でしょう。パソコンのログイン・ログアウトなどで自動的に勤怠時間が打刻できるものや、各システムの利用状況で労働時間を把握できるものなど、さまざまな製品があります。
以下の記事では人気の勤怠管理システムについて詳しく説明しています。機能や企業規模、提供形態別の比較表もありますので、導入の参考にしてください。
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2.ITシステムを活用する
テレワークを行うには社外でも変わらず業務が行え、従業員同士のコミュニケーションも円滑に行えなければなりません。この問題はITツールやシステムの活用で解決するでしょう。例えば「リモートアクセス」と「リモート会議システム」、「チャットツール」の導入などが考えられます。
リモートアクセスは、社外業務で使うソフトウェアやアプリケーションを利用するための仕組みのこと。社外のどこでもオフィスと同じ環境で仕事ができます。また、リモート会議システムは従業員同士のコミュニケーションに役立つでしょう。TV会議や電話会議、Web会議などが該当し、Web会議ではPCやタブレット、スマートフォンなどさまざまな端末から参加できます。顧客との商談も含め、あらゆるシーンで活用できるでしょう。
チャットツールでは気軽にコミュニケーションがとれ、ちょっとした相談や確認が迅速に行えます。社内で一緒にいるようなシームレスさを特長とする製品もあるので、業務の効率化だけでなく、孤独感の解消にもつながるでしょう。
効率よくテレワークを行うには、社内文書のペーパーレス化も欠かせません。電子認証システムや文書管理システムなどを活用すれば社外でも必要な書類が閲覧でき、わざわざ出社せずともすむ体制が整います。
3.セキュリティを強化する
デメリットの項目で述べたとおり、テレワークでは使用する端末のウイルス感染、端末や記録媒体の紛失・盗難、通信内容の盗聴といったセキュリティリスクが発生します。そのためセキュリティ対策は必須といえるでしょう。具体的なセキュリティ対策については、以下の総務省のガイドラインが参考になります。セキュリティガイドラインや手引きをもとに、万全な対策をとりましょう。
参考:テレワークにおけるセキュリティ確保|総務省
ITツールや制度を活用してテレワークを効果的に導入しよう
テレワークの導入には勤怠管理や評価制度の整備、ITシステムの選定・導入、働く人の環境構築などやるべきことは多いものの、それを上回る多くのメリットがあります。
国や自治体の制度、ITツールなどを活用してテレワークを実現し、生産性向上や人材確保、ワークライフバランスの向上などにつなげていきましょう。